階層別研修とは 実施する目的やカリキュラムについて解説

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多くの企業は、社員が新たな役職・ステージに就くタイミングで研修を実施します。新入社員研修や管理職研修などがその代表で、これらを総称して階層別研修と呼びます。

今回は、階層別研修を通じて社員の能力を底上げし、業務を担うためのマインドを醸成できるよう、研修の目的や実施すべきカリキュラムなどについて解説していきます。

階層別研修とは

階層別研修とは、社員の役職・ステージに合わせて、必要となるスキル・知識の取得を目指す研修のことです。

会社組織のなかには新人や中堅層、管理職などの階層が存在し、それぞれ必須となる知識と、逆に取得優先度の低いスキルがあります。

例えば、マネジメントスキルは中堅層と管理職にとって欠かせないスキルですが、新人にとっては将来的に学べばよいスキルであり、取得優先度は低めです。つまり、全社員一律に同じ内容の研修を実施しても、全員が同じ効果を得られるわけではないのです。

また、階層別研修は役職だけでなく、社員の年齢に応じても実施されます。とくに超高齢社会である現在、60歳などの節目に定年後再雇用に向けた研修を実施する必要があり、年齢層に応じたキャリアデザイン研修も重要度が増しています。

階層別研修の目的

階層別研修はどういった目的で実施すべきなのでしょうか。大きく2つの視点から解説していきます。

対象者全体の底上げ

階層別研修の対象者は、その役職・ステージに昇格した人材です。つまり対象者は「(役職の)適性がある」「スキル・知識などの面で条件を満たしている」ということになります。

これら対象者に対して、実務で必要となる知識やOFF-JTでしか取得できないスキルなどを取得してもらい、全体的な底上げを図るのが階層別研修の主たる目的となります。

例えば新卒者研修であれば、対象者は書類・面接選考などを通じて「自社で活躍できる人材」と見なされています。そして新卒者が現場に配属される前に、研修を通じて実務に必要なスキルやビジネスマナーの取得を促すわけです。

マインドの切り替え

階層別研修には、対象者の心の準備やマインドの切り替えといった、準備体操的な意味合いもあります。

新たな役職・ステージに立ち、いきなり実務を担うのは誰しも不安を覚えます。しかし研修を受けていれば、必要となるスキルや知識が身につくのはもちろんのこと、心構えとマインドを育てる準備期間になるのです。

新卒であれば学生から社会人への切り替え、管理職であれば部下を持つ心構えなどが挙げられます。階層別研修は、社員のパフォーマンスを向上させるために心理的な面からケアする制度という側面があるのです。

階層別研修と選抜研修の違い

選抜研修とは、優秀な人材を選抜して、重点的に育成を施す研修のことです。幹部候補や管理職候補などに実施されることが多い研修です。階層別研修とは対になる研修であるため、選抜研修についても理解を深めておくことで、より効率的な研修制度を整備できます。

それぞれの研修制度の特徴を一言で表すと、階層別研修は「底上げ」、選抜研修は「引き上げ」と表現されます。基本的に階層別研修は、その役職・ステージに立ったあとに実施され、対象者は全員です。新人研修を例に考えるとわかりやすいでしょう。

対して選抜研修は、その役職・ステージへの候補者に事前準備として施される研修であり、対象者は選ばれた人材のみです。経営幹部候補への研修を例に考えるとわかりやすいでしょう。

階層別研修を実施する際の3つのポイント

階層別研修を実施する際に押さえておくべき3つのポイントをご紹介します。

義務感を払拭する

会社として定期で実施している階層別研修は、受講者も半ば義務のような感覚で受けている可能性があります。

あらかじめ研修の目的や意義を打ち出しておき、受講者が得られるものを明確にして、義務感を払拭しましょう。

また、研修実施後にヒアリングを行い、研修内容が実務と結びついているかを確認しましょう。もし実務に役立たない内容があるのであればブラッシュアップし、より実践的な研修となるよう整備しなければいけません。

新しい働き方を見据える

研修というと「広い会場で全員が同じ内容の課題に取り組む」といったイメージを持たれがちです。しかしこうした研修は、新型コロナウイルスの感染拡大以降、適切なスタイルとは言えなくなっています。

社員に意欲的に研修へ取り組んでもらうためには、リモート対応は当然ながら、社員それぞれの働き方への配慮も必要となってきます。eラーニングやオンラインセミナーなどを活用し、柔軟な研修体制を整備しておきましょう。

社員のキャリアデザインへの配慮

今後の階層別研修は、社員の意欲をどれだけ引き出せるかも重要な項目となってきます。

ある人材サービス企業の調査によれば、役職についていない20代から50代の正社員の8割以上が「管理職になりたくない」と回答したという結果もあります。

参考:マンパワーグループ「8割超の一般社員が「管理職になりたくない」と回答。その理由とは?」

一回の研修を通じて、管理職としてのモチベーションを向上させるのは容易ではありません。意識改革を行うには、若手や中堅の段階から管理職への意欲が上がるように道筋を立てて、研修を実施していく必要があります。

階層別研修の種類とカリキュラム

ここでは階層別研修にはどのような種類があるかを挙げつつ、その対象やカリキュラムなどについて解説していきます。

新人社員研修

新人社員研修は自社へ入社した社員に対して、実務を担う前に実施する研修です。一口に新人社員研修といっても、新卒者と中途採用者では求められるものが異なります。さらに言えば、中途採用者でも経験者と未経験者では、やはり研修で学ぶべき内容が異なってきます。

新卒者であればビジネスマナーや社内ツールの使用法、業界知識などを学び、OJTで学ぶ前段階で必要となる知識やスキルの取得を目指します。また、学生から社会人へのマインドの切り替えも重要な目的となります。

経験者の中途採用であれば、業界内における自社の立ち位置や、自社独自の文化・マナーなどを伝え、早々にOJTに切り替えるのもよいでしょう。

なお、新人社員研修については「新人社員研修に求められる内容や目標」でも詳しく解説しています。

関連記事:「新人社員研修に求められる内容や目標」

〈新人社員向けに実施すべきカリキュラム例〉

・ビジネスマナー研修

・ビジネス文書研修

・コンプライアンス研修

若手社員研修

若手社員研修は、主に入社後5年以内の若手人材を対象にして行う研修です。「指示待ち型」から「自律型」への成長を促し、先輩のサポートなしで業務遂行する力を身につけることが主な目的となります。

また、「新人と年齢が近い」「人に教えることで自身の経験を振り返る」といった理由から、若手社員に新人の教育係を任せている企業も多いことでしょう。そのため、若手社員研修としてメンター研修を組み込むのも効果的です。

具体的な実施内容としては、一連の仕事を遂行するために必要な「ロジカルシンキング」、新入社員のサポート役を担うための「コミュニケーション能力」など、ワンランク上のポジションに就くための育成プログラムが求められます。

〈若手社員向けに実施すべきカリキュラム例〉

・コミュニケーション研修

関連記事:コミュニケーション研修とは 実施目的とその内容

・メンター研修

関連記事:「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」

・ロジカルシンキング研修

関連記事:ロジカルシンキング研修とは 実施の目的と学ぶべき内容

中堅社員研修

中堅社員研修は主に、プロジェクトリーダーやチームリーダーを務めるために実施する研修です。中堅社員研修の対象となる年齢層は社内の人口ピラミッドによって異なり、社員の平均年齢が低ければ、一般的に若手と呼ばれる社員に対して実施する場合もあります。

また、企業によって中堅社員に求める役割は異なるため、中堅社員研修の内容や目的は多岐にわたります。そのため、事前に「プロジェクトリーダーとして課題を解決してほしい」「チームリーダーとしてのセルフマネジメント力を身につけさせたい」といった具体的な目標を据えて、その目的に合致した研修プログラムを選定しましょう。

〈中堅社員向けに実施すべきカリキュラム例〉

・リーダーシップ研修

関連記事:「リーダー研修とは 実施する目的と学ぶべき内容を解説」

・アサーティブコミュニケーション研修

関連記事:「アサーティブコミュニケーションとDESC法による実践」

・コーチング研修

関連記事:「コーチング研修とは 実施する目的とその内容」

次世代リーダー研修

次世代リーダー研修は、将来の経営層や管理職の候補に対して、早期から育成を施していく研修です。従来は課長・係長といった中堅層を対象とした選抜研修の意味合いが強い取り組みでしたが、人材の空洞化などを背景に一律で若手層に対して実施するケースも増えています。

内容としては中堅社員研修と重なる部分が多いですが、経営視点の獲得を目指すなど、より高い階層を目指したプログラムが含まれる場合があります。

なお、次世代リーダー研修の詳細については「次世代リーダー研修とは 実施対象や内容を解説」でも解説しています。

関連記事:「次世代リーダー研修とは 実施対象や内容を解説」

〈次世代リーダー向けに実施すべきカリキュラム例〉

・オーナーシップ研修

・ファシリテーション研修

関連記事:「ファシリテーション研修の目的と内容」

管理職研修

管理職研修で重要となるのは、メンタル・技能ともに経営層側の視点を学ぶことです。自身の業務・成績だけを追う日々から、部署全体の生産性や成績に責任を負う立場となり、人材育成にも深く携わることになります。

そのため、マネジメントやリスク管理にまつわる専門的・学術的な知識が必要となってきますが、これらの修得はOJTだけでは困難です。管理職研修はセミナーや教本など、外部の知見を積極的に取り込める内容としましょう。

なお、管理職研修については「管理職研修の目的と実施すべき内容」でも詳しく解説しています。

関連記事:「管理職研修の目的と実施すべき内容」

〈管理職向けに実施すべきカリキュラム例〉

・マネジメント研修

・ハラスメント研修

・リスクマネジメント研修

階層や苦手意識に合わせて数的センスを磨こう

ビジネスでは、上の階層へ上がるほど「数字力」が重要になります。プロジェクトに責任を持つ立場となれば、客単価のアップや利益率に目を向ける必要がありますし、さらに上の階層となれば会計・財務についても把握しなければいけません。

しかし、ビジネスパーソンの多くは「数字への苦手意識」を持っています。数字への苦手意識があると、階層別研修でプレゼンテーションや経営戦略を学んでも数字を扱う部分で成長が止まってしまい、なかなか研修の成果が実務で発揮されません。

また厄介なことに、こうした苦手意識は年齢や経験を重ねれば払拭できるわけではないので、一から数字の見方や扱い方を学んでいくことが大切です。

オルデナール・コンサルティング合同会社では、ビジネスシーンで役立つ数字力の向上を目指し、「ビジネス数学研修」を「入門」「基礎」「応用」「実践」の4段階のプログラムでご提供しております。

数的センスの向上はどの階層においても欠かせず、誰もが数字を根拠とした提案や意思決定を行えるようになれば、生産性が劇的に向上するでしょう。研修の詳細については、お気軽にお問い合わせください!

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