管理職研修の目的と実施すべき内容

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管理職の役割と責任は、ビジネス環境の著しい変化などを背景として年々重くなっています。管理職としての責務を全うするためには、研修による知識・スキルの取得が欠かせなくなってきています。

今回は、管理職研修が必要となる理由から、職位ごとに分けられる研修の種類、実施すべき内容について解説していきます。

管理職研修が必要となる5つの理由

HR総研の調査によれば、大企業と中堅企業の約7割が管理職研修を実施しているといいます。

参考:HR総研「人材育成(階層別研修)に関する調査 結果報告【中堅社員・管理職研修編】」

なぜ管理職研修の重要性が叫ばれ、必要性が高まっているのでしょうか。5つの理由から解説していきます。

著しい環境変化と求められる意思決定

ビジネス環境の変化は著しいものがあり、これまでにない状況やトラブルが増えてきています。リモートワークやダイバーシティなどへの対応は、いまだに明確な答えが見つかっていない企業も多いことでしょう。

こうした様々な新しい課題のなかには、ときとして経営層の判断を仰ぐ間もなく、決断を迫られる場合もあります。現在の管理職は、多様な状況下で迅速な意思決定能力が求められているのです。

部下の育成・関係性の構築

管理職は人材の育成を担う立場であり、「上司と部下」という関係性の構築が求められます。管理職になって初めて部下を持つ人も少なくないでしょうし、学生時代に「先輩と後輩」という関係性すら経験してこなかった人もいるでしょう。

そのため、部下への指示の出し方や仕事の割り振り方などは、研修による学びの機会を設けるべきなのです。

上下、横との連携の必要性

管理職になると経営層や部下、他部署との連携が求められます。つまり、人間関係も上下、横と広がり、社内政治や利害関係に基づいた調整が必要となるのです。

管理職にはヒアリング力や調整力、ある種の鈍感力などが欠かせないため、研修を通して身につけていく必要があります。

経営目標に基づく方針設定

自身の目標を設定する経験は誰しもあるでしょうが、管理職では経営目標に沿うかたちで、チームの方針とメンバーそれぞれの目標・課題を設定しなければいけません。

メンバーの能力や個性を見極めつつ、経営層の要望を実現するのは容易なことではありません。広く「マネジメント」と呼ばれる能力を養うのも、管理職研修の重要な意義となります。

※マネジメントについては「人材育成におけるマネジメントとは」で詳しく解説しています。

関連記事:「人材育成におけるマネジメントとは」

管理職としての自覚を芽生えさせる

現状では、多くのビジネスパーソンが管理職への昇進に対してネガティブな印象を持っています。管理職研修は、こうしたネガティブな感情を少しでも払拭させるために実施する意味合いもあります。

株式会社識学が2023年に実施した調査によれば、回答者である管理職ではない男女の72%が「管理職になりたいとは思わない」と回答しています。

参考:株式会社識学「管理職に関する調査」

また、株式会社ビズヒッツが2022年に「管理職になりたくない人」を対象に行った調査では、管理職への昇進を打診された場合、60.6%が「断る」、5.2%が「退職・転職を検討する」と回答しています。

参考:株式会社ビズヒッツ「管理職になりたくない理由に関する意識調査」

いずれの調査でも管理職を避ける理由として、「責任の重さ」や「仕事量の増加」、「(自分が)管理職に向いていない」などを挙げています。

管理職研修では、こうした不満・不安を解消するためのプログラムを盛り込み、管理職としての自覚を芽生えさせることが非常に重要となるでしょう。

管理職研修の種類とそれぞれの目的

管理職研修は大きく3種類に分けられ、対象者の職位や年齢によって必要となる研修が異なります。ここでは、管理職研修の種類とそれぞれの目的について解説していきます。

新任管理職研修の目的

新任管理職研修は、昇進したばかりの管理職に対して行うものです。初級管理職研修と呼ばれることもあります。

新任管理職研修では、管理職の役割を学びつつ、管理職としての自覚を養っていくことが目的となります。また、コンプライアンスやハラスメント対策などについても責任を負う立場となるため、改めて管理職目線で学び直しを行います。

係長など現場リーダーの段階で研修を実施し、上長を補佐する立場から管理職としての実務経験を積んでいくのがよいでしょう。

中間管理職研修の目的

中間管理職研修は、経営者や上級管理職の指揮下にありながら、部や課といったチームを率いる人材に対して行うものです。いわゆるミドルマネジメントの育成を目的として実施します。

※部長は中間管理職に含む場合と、上級管理職に含む場合があります

中間管理職は自身の部署の成績に責任を持つため、部下のパフォーマンスを最大限引き出せるよう、チームビルディングについて学ぶ必要があります。また、部下の育成にも責任が生じることから、コーチング研修も欠かせません。

そのほかにも中間管理職は、業務計画の設計やプレイヤーとしての業務など様々な役割を担うため、状況に応じて研修内容をカスタマイズすることが大切です。

上級管理職研修の目的

上級管理職研修は、部門内のトップに就く管理職に対して行うものです。このポジションになるとプレイヤーとしての仕事をほぼ離れることになり、より経営層に近い視座から業務を遂行する立場となります。

上級管理職はいわゆる幹部候補にあたるため、リスクマネジメントや組織マネジメントなど、より経営に近い視座を手に入れることが目的となります。

管理職研修で実施すべき内容

管理職研修は、対象者の状況・職位に応じて異なる研修を行うべきと解説してきました。ここからは、具体的に管理職研修ではどのようなプログラムが実施されているのか解説していきます。

人材育成の方法・指導法

管理職は単に部下に指示を出すだけではなく、理想となる人物像を目標に据えて、成長を促していく必要があります。

部下の適性や経験などを確認したうえでキャリアプランを練っていくためには、様々な手法・フレームワークの知識が役立つでしょう。

※人材育成にまつわるフレームワークについては「人材育成で活用すべきフレームワーク」で詳しく解説しています。

関連記事:「人材育成で活用すべきフレームワーク」

また、「世代」や「文系・理系」などのカテゴライズに捕らわれていると、育成の方向性を一括りに考えてしまいがちです。部下の適性を見抜くためのコミュニケーションも、研修で学ぶべき内容といえるでしょう。

※コミュニケーション研修については「コミュニケーション研修とは 実施目的とその内容」で詳しく解説しています。

関連記事:コミュニケーション研修とは 実施目的とその内容

チームマネジメント

チームマネジメントの目的は「成果を上げるチーム作り」であり、コミュニケーションや目標設定、コーチングなど様々な要素が絡み合って成り立ちます。

部下への指示の出し方や進行管理の方法、適切な人員配置など、実務に直結する学びが多く、受講によって生産性の向上といった具体的な成果が期待できます。

その一方で、学びの範囲が広く、実践力も問われるため、研修の依頼先の「質」によって内容に差がつくことに注意しておきましょう。

※研修先の選び方については「優秀な研修講師の特徴 依頼時の見極めポイントは?」で詳しく解説しています。

関連記事:優秀な研修講師の特徴 依頼時の見極めポイントは?

リスクマネジメント

管理職になると、リスクマネジメントの対象は自身の業務だけでなく、部署や部下にまで広がります。

身近な例を挙げると、部下の欠勤も重要なリスクマネジメントの項目です。事業計画や業績に責任を持つ立場であれば、業務進行に直結する部下の欠勤は、事前に考慮すべきだからです。

具体的には、感染症の流行期や、育児・介護・持病を抱えた部下の存在など、チーム内で欠勤のリスクとなり得るものを洗い出したうえで、リモートワークの準備や作業フローの分担といった対策を打ち出します。

こうした対応には、研修を通じてリスクマネジメントの手順を理解しておく必要があります。

※リスクマネジメントについては「企業におけるリスクマネジメント 必要性や進め方を解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「企業におけるリスクマネジメント 必要性や進め方を解説」

コンプライアンス

コンプライアンスについては、新人社員研修でも導入する企業が増えてきています。しかし、管理職においては自身の判断が大きな問題に直結する機会も増えるため、改めて学び直しておくことが求められます。

基本的なことですが「なぜコンプライアンス違反が起こるのか」を把握しておくことは、部下の行動に目を光らせる際にも役立ちます。

リモートマネジメント

新型コロナウイルスの感染拡大以降、急速にリモートワークが普及しました。今後もワークライフバランスなどを背景として、一つの就業形態として定着していくでしょう。

一方で、離れた場所にいる部下のモチベーションや進捗を管理するのは、ほとんどの管理職にとって未経験の業務です。リモートマネジメントの習得は、多くの管理職にとって喫緊の課題といえます。

ただ、リモートマネジメントはまだ知見が集積しているとは言い難く、必ずしも研修によって成果が得られるとは限らないことに注意しましょう。

管理職研修を実施するまでの手順

管理職研修を実施するまでの手順を準備段階から解説していきます。

自社が求める人物像を明確にする

まずは管理職に求めるスキルや役割、立ち振舞いなどを人材要件として明確にしていき、自社が求める管理職として人物像を確立しましょう。

この人材要件(人物像)に基づくことで、研修の方向性や学ぶべき内容も明確になっています。

課題の確認と目標設定

次に、現状で自社の管理職が何を課題としているか確認しましょう。研修対象者が自覚していること、組織として課題となっていることをまとめておき、研修によって解決を目指します。これが研修の目標となります。

さらに「何を学び、それによって何を達成するか」を明文化しておくことで、対象者が研修に臨む際、結果のブレが少なくなります。

研修の実施方法とスケジュールの設定

ここまでのプロセスで研修の内容や目的は定まっているはずですので、具体的に研修の実施方法を決定して、スケジュールを組み立てていきましょう。

基本的に管理職研修の内容は専門性が高いため、外部の研修機関でのOFF-JTが一般的です。目標達成の期限と対象者の予定をすり合わせて、スケジュールを設定していきましょう。

※研修のスケジュール設定については「研修スケジュールの設定とその流れ」で詳しく解説しています。

関連記事:「研修スケジュールの設定とその流れ」

効果測定

研修を実施したあとは、効果測定を行います。ただ、研修の効果測定は難しく、とくに管理職研修の内容はマネジメントや人材育成など効果が出るまでに時間がかかるものが多いため、定量的な成果を観測しにくいといえます。

そのため、理解度テストによる知識面の確認や、アンケートなどから受講者自身が感じる成果などを汲み取っていくとよいでしょう。

※研修後のアンケートについては「研修後のアンケートに必要な質問例や項目」で詳しく解説しています。

関連記事:「研修後のアンケートに必要な質問例や項目」

管理職研修を実施する際の3つのポイント

最後に、管理職研修を実施する際に注意すべき3つのポイントをお伝えします。

配属前または配属から少し時間を空けて実施する

管理職研修を実施する時期は、配属前または配属から少し時間を空けてからがおすすめです。

配属前に管理職として最低限知っておくべき知識・スキルを学んでおけば、安心して管理職にステップアップできます。配属直後にいきなり失敗してしまうと自信を失う恐れがあるため、とくに新任管理職研修は配属前に実施するのがよいでしょう。

配属後に管理職研修を実施する場合は、配属日から2、3ヶ月ほど空けて実施しましょう。配属直後は実務に慣れることに精一杯で、研修を実施しても成果は上がりません。

また、一通り実務を経験したあとならば自分のなかでも課題が見えてくるため、研修への意欲が高まることも期待されます。

研修内容は自社の状況や課題に合わせてカスタマイズする

管理職研修の内容は、自社の状況や課題に合わせてカスタマイズすると効果が上がりやすくなります。

例えば「チームマネジメント」ひとつをとっても、社内の平均年齢によって学ぶべき内容は異なります。離職率が高いという課題があれば、コミュニケーション面の研修に時間を割くのもよいでしょう。

全社的に一括りで管理職研修を実施するのではなく、部署や対象者の課題ごとにプログラムをカスタマイズできれば、より成果が上がってくるはずです。

実務につながるプログラムを組む

管理職研修ではマネジメントやコンプライアンスなど、専門的かつ概念的になりやすい分野について学んでいきます。そのため、プログラムによっては座学で知識を詰め込むばかりとなり、実務と乖離した研修になりがちです。

研修プログラムを組む際は、学んだことを自社の課題に照らし合わせ、具体的な対応策に結び付けられるような内容にしなければいけません。

まとめ

管理職研修の必要性は、ビジネス環境の著しい変化や管理職を避ける心理といった様々な背景から、年々高まっています。

管理職研修は大きく3種類に分けられ、それぞれの階層によって目的が異なります。学ぶべき内容も人材育成の方法やリスクマネジメント、コンプライアンスなど様々なので、自社が求めるものを明確にして、研修内容を選定していく必要があります。

数字力を磨いて納得感のある意思決定を行おう

現在の管理職は、ビジネス環境の激しい変化に対応しながら意思決定を行う必要があります。そんなときに求められるのが、部下や経営層を納得させるだけの「根拠」です。

では、納得感が生まれる「根拠」とはなにかと言うと、それは数字やデータをもとにした結論です。管理職には、数字やデータをもとにした意思決定を行える数字力が求められるわけです。

弊社の「数的センス向上トレーニング・実践編」は、管理職の方が直面するであろう様々なシチュエーションを用意して、実践的に研修を進めていきます。データを把握・分析したうえで、相手にわかりやすく伝える表現力を磨いていくのが、「実践編」の大きな目標となります。

「納得感のある意思決定を行えるようになりたい」とお考えでしたら、ぜひ弊社オルデナール・コンサルティングの「ビジネス数学研修」をご活用ください。い。

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