研修の感想を集めるためにアンケートを実施している企業は多いと思いますが、実は効果的なアンケートの作成には技術と計算が必要です。
社員の声を漏れなく汲み取るためには、どんな項目・質問が必要なのか解説していきます。
研修後にアンケートを実施すべき理由
研修後のアンケートが必要な理由を2つの視点から解説していきます。
研修の効果の把握
研修の効果の多くは、なかなか数値としては計測できません。研修を行ったからといって、わかりやすく売上の増加や生産性の向上などの成果が表れるとは限らないのです。
そのため、アンケートによって研修の効果を把握することが重要となります。社員の実感として実務に役立っているかを確認することで、研修の効果を探るわけです。
研修の改善点の把握
アンケートは研修の効果を把握するだけではなく、改善点を探るうえでも重要です。
例えば、研修内容で社員の多くが難しいと感じた部分があれば、次回の研修ではより時間を割く、研修の方法自体を変更するなどの対応が可能となります。
また、外部機関を利用している場合は、研修内容や講師の印象も確認し、評判が悪ければ依頼先の変更も検討すべきでしょう。
社員が研修中に感じた疑問や不満の多くは、次回以降の研修の改善点に直結するわけです。
※人材育成の課題については「人材育成の課題とその解決策」で詳しく解説しています。
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研修後のアンケートを成功させるための6つのポイント
研修後のアンケートで必要な情報を得るためには、どんなことに気をつければよいのでしょうか。6つのポイントに分けて解説します。
匿名で実施する
アンケートで社員の本音をくみ取るためには、匿名制にする必要があります。質問者側からすると記名制にして「誰が、どのように考えているか」を知りたくなるものですが、回答者は「回答内容によって評価を下げられるかも」「本音を書いたら嫌な奴と思われるかも」といった不安を感じてしまいます。
特に社内の人員が講師を担当する際にアンケートを記名制にすると、軋轢を避ける気持ちや配慮によって、正直な意見がくみ取れません。
属性の情報を集める
アンケートは匿名制が理想ですが、そのなかでも研修の効果を細かく分析するために、年齢や役職などの「属性」を収集しましょう。
属性を集めることで、「IT研修は20代が最も理解度が高かった」「入社年数の浅い社員は、リスクマネジメント研修の満足度が低かった」などの傾向を分析できます。
こうした情報は、研修内容や研修の対象者を精査するうえで欠かせない情報となるため、個人を特定できない範囲で属性の記入を求めるとよいでしょう。
質問数を増やしすぎない
アンケートの質問は厳選して、数を増やしすぎないようにしましょう。
なんらかのインセンティブでもない限り、積極的にアンケートに回答する人は少数です。業務の一環とわかっていても、質問数が多くて時間のかかるアンケートは、集中力が散漫となって回答の質が落ちやすくなります。
担当者としては確認したいことも数多くあるでしょうが、気持ちをぐっとこらえて質問を厳選しなければいけません。
選択式の項目を多めにする
アンケートの回答方式は、できるだけ選択式にしましょう。
まず選択式の項目は、集計を行いやすいというメリットがあります。また、経験がある方も多いと思いますが、回答者側からすると記述式のアンケートは面倒に感じるものです。
詳細な情報がほしいからといって記述式の項目を増やすと、逆に適当な回答が増える恐れがあり、有意義なアンケートから遠ざかってしまいます。
ただ、選択式の項目は、アンケート作成者が想定する情報しかくみ取れないデメリットもあります。研修の思いもよらない問題点や想定していなかった効果を計るためには、自由記述の項目も必要となります。
理解度テストは別に行う
研修後、研修の理解度を確認するためにテストを実施する場合がありますが、こうしたテストとアンケートは別物と考えましょう。
理解度テストは「研修を真面目に受講したか」「内容を理解しているか」などを確認するために実施するものであり、そもそも目的が異なるためです。
Googleフォームの活用
Googleフォームを活用することで、簡単にオンライン上でアンケートを作成できます。回答形式も自由に選択でき、集計も容易となるため、アンケート作成者側にとってメリットの多いツールです。
また、回答者側からしてもオンラインでそのまま提出でき、アンケート用紙を紛失する心配もありません。
研修後アンケートの質問例(テンプレート付き)
研修後アンケートでは、どのような質問を設ければよいのでしょうか。具体例については、テンプレートとしてもご活用ください。
業務との関連性
研修は実務に直結し、「生産性を高める」「リスクを減らす」などの成果に繋がらなければ意味がありません。
研修の内容について、「有意義に感じた」「不要(業務の役に立たない)と感じた」といった項目を用意して、チェックを入れる方式にするとよいでしょう。
また、業務との関連性の確認は、あえて研修から数週間ほど時間を空けてからアンケートを実施し、研修の経験が実際の業務で役立っているか確認するのも効果的です。
〈設問の例〉
・今回の研修のなかで「業務に役立ちそう」と感じたものすべてに○をつけてください。
1.○○の活用法 2.△△の計算方法 3.よくわかる□□の基本 4.いま必要な●●思考
・今回の研修のなかで「自分の業務とは関係ない」と感じたものすべてに○をつけてください。
1.○○の活用法 2.△△の計算方法 3.よくわかる□□の基本 4.いま必要な●●思考
研修内容のわかりやすさ
研修内容のわかりやすさについては、質問を細かく作成していく必要があります。この質問から、研修のどこに問題点があったのかを探らなければいけないからです。
わかりにくかった原因は、講義のテーマ自体が難しかったのか、講師や資料の質が低かったのか、理解度テストも併用しつつ探っていくとよいでしょう。
〈設問の例〉
「研修の資料はわかりやすかったか」
わかりやすかった・ややわかりやすかった・普通・ややわかりにくかった・わかりにくかった
「講師の説明はわかりやすかったか」
わかりやすかった・ややわかりやすかった・普通・ややわかりにくかった・わかりにくかった
「各講義の内容の難易度について、5段階で評価してください」
①「○○の活用法」の難易度はいかがでしたか
簡単 1 2 3 4 5 難しい
②「△△の計算方法」の難易度はいかがでしたか
簡単 1 2 3 4 5 難しい
研修の改善点や要望
アンケートの最後の設問として定番ですが、研修の改善点や要望について記述式で意見を求めることも大切です。
多くの場合は無回答となる設問ですが、広く研修中に感じた不満や問題点をくみ取るためには欠かせません。
良くない聞き方・質問例
研修後のアンケートでありがちな良くない質問例について、なにが問題なのかを解説していきます。
研修の満足度(不満度)
研修の満足度(不満度)を確認するのは定番の設問ですが、単に「研修の満足度(不満度)はどうでしたか」を段階評価で確認しても正確な情報は得られません。
例えば、回答者が「講義のテーマは満足だったが、説明の時間が短かった」という感想を持っていた場合、「内容は4点だけど時間は2点だから、3点で回答しよう」といった折衷案が取られがちです。
このように質問の聞き方が悪いと、「時間が短かった」という改善点が見落とされてしまうわけです。
研修の満足度(不満度)は、できるだけ細分化して設問を作ることで、必要な情報をくみ取れます。質問文を作る際は目的を明確にして、どうすれば欲しい情報をくみ取れるかについて精査しましょう。
〈設問の例〉
・研修の時間は適切でしたか。1を「短い」、5を「長い」として、ひとつに○をつけてください
短い 1 2 3 4 5 長い
今後実施してほしい研修
「今後実施してほしい研修」という設問は、社員のニーズをくみ取るためによく設けられますが、ほとんどの場合で無回答か「とくにない」といった空振りに終わります。
これは、回答者が具体的な研修名が思いつかない、「研修など進んで受けたくない」と感じている、といった原因が考えられます。
社員が潜在的に求めている研修を探りたいのであれば、質問の仕方をよく考えなければいけません。例えば「最近、スキル不足を感じることはありますか」といった聞き方であれば、素直な回答が得られやすくなります。
仮に「部下とのコミュニケーション」という結果が得られれば、マネジメント研修やコミュニケーション研修の実施を検討できるでしょう。
〈設問の例〉
・現在、難しさや不安を感じている業務はありますか。
まとめ
研修後のアンケートは、研修をより良いものにするために欠かせない情報となります。ただ、回答者の声を漏れなく汲み取るアンケートを作るには技術と知識が必要であり、質問や回答方式を精査しなければいけません。
たかがアンケートと思わず、質問の意図がしっかりと伝わる内容になっているか推敲したうえで、受講者へ配布しましょう。
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