コーチング研修とは 実施する目的とその内容を解説

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コーチング研修は、主に人材育成やマネジメントに携わる立場となった管理職などを対象に実施されます。研修を通じて社内にコーチングスキルが広まれば、社員のモチベーションアップや自律型人材の増加など様々な好影響をもたらします。

今回は、コーチング研修の目的や内容だけでなく、コーチングとティーチングの違いや、コーチングの5つの基本スキル、GROWモデルなどについても解説していきます。

コーチング研修とは

コーチング研修とは、人材の潜在能力や強みを引き出す方法を身につけるために、知識やスキルを学ぶ研修です。なお、コーチング研修は受講者がコーチングスキルを身につけることが目的であり、講師にコーチングを施してもらう研修ではありません。

そもそもビジネスにおけるコーチングとは、対象者の成長や気力の向上を促しながら、目標達成に向けてサポートを行う人材育成手法です。

例えば、営業成績が振るわなかった部下に対して「今期の成績が低迷した理由を一つずつ考えてみよう」と、解決策や問題点について考えさせるのがコーチングです。具体的な改善策を指示するのではなく、自身のなかから答えを見つけ出させるのがポイントです。

一般的なコーチングは「運動や勉強、技術などを指導すること」という意味なので、ビジネスではより発展的な意味合いで用いられていると言えるでしょう。

コーチングによる育成を受けることで、主体的に考えて行動できる人材、つまり自律型人材として成長することが期待されます。また、コーチングではあくまでも判断は自分自身で下すため、「自身で選択した」という責任感・納得感が芽生えます。このことから、業務に対するモチベーションが向上しやすくなるメリットもあります。

コーチングとティーチングの違い

コーチングに似た言葉として、ティーチングという手法があります。ティーチングはスキルや知識、業務ノウハウを教えるという意味で、ビジネスにおいては指導者のスキルや知識を伝える取り組みとされ、対象者を業務に従事できる状態にするのが主な目的となります。

ティーチングが正解・結論を伝えるのに対して、コーチングは対象者の自主性・自発性を尊重して、本人のなかから答えを引き出す点が大きな違いといえるでしょう。

例えば新人研修において、出退勤管理ツールの使い方を教える際にコーチングは必要はありません。ティーチングによって、正しい使い方を教えるのが最善となります。

コーチング研修の目的とその効果

ここでは、どのような目的を持ってコーチング研修を実施すべきなのか、研修によってどのような効果が得られるのかについて解説していきます。

マネジメント力の向上

コーチング研修を受講することにより、マネジメント力が向上します。相手の考え方や嗜好をくみ取り、適切なコーチングを施す課程は、マネジメントの本質といっても過言ではありません。

コーチングの取得は、マネジメントで重要なコミュニケーションスキルやアセスメントスキルの向上に直結するため、管理職やリーダー候補の育成にも最適な研修といえるでしょう。

社員のモチベーションアップ

管理職が質の高いコーチングスキルを身につければ、業務やメンタル面に対するサポートが手厚くなり、社員のモチベーションアップにつながります。また、社員が自身の行動について納得感を感じやすくなる点からも、モチベーションの向上が期待されます。

さらにコーチングによって上司と部下のあいだに信頼関係が構築されれば、離職率の低下や生産性の向上といった成果にもつながっていくでしょう。

自律型人材の増加

コーチングを受ける社員が増えるということは、自律型人材が増えるということでもあります。コーチングを担うことによって管理職の負担は一時的に増加しますが、長い目で見れば能動的に動ける部下が増えることで、管理職の負担は軽減していきます。

また企業の生産性や競争力の面でも、コーチングによって社員を「指示待ち型」から自律型人材に成長させることは、人手不足が深刻化する現代においては非常に意義深いといえるでしょう。

コーチング研修の内容

コーチング研修では具体的にどのような内容を学び、コーチングスキルを伸ばしていくのかについて解説していきます。

コーチングの3原則

コーチングは、3つの原則によって成り立っています。研修ではまず、この原則を理解することで、コーチングスキルの基礎を身につけます。

・双方向(インタラクティブ)

コーチングを成り立たせるには、双方向のやり取りが欠かせません。とくに指導者と対象者のあいだで上下関係が作用すると、コーチングに圧迫感が生じてしまい、対象者の自発性が損なわれてしまうので注意が必要です。

・個別対応(テーラーメイド)

コーチングを行う際は、対象者の個性や置かれている状況を踏まえて、その人に合った個別対応を行う必要があります。セオリーや経験則に縛られていると、コーチング本来の効果が損なわれてしまうので注意しましょう。

・現在進行(オンゴーイング)

コーチングによって導き出された答えは、常に最善とは限りません。ビジネスにおける状況は刻一刻と変化するため、対象者が目標を達成するまで継続的にサポートすることが大切です。また、コーチングを継続していくことで信頼関係が深まり、育成効果がより高まることも期待されます。

コーチングに必要な5つの基本スキル

コーチングには多くのスキルが存在しますが、そのなかでも基本となる5つのスキルがあります。研修においては、これら5つの基本スキルの効果について理解し、正しく実施できるように具体的な手法などを学んでいきます。

・傾聴

傾聴はただ注意深く話を聞くだけでなく、受容と共感によって相手を理解することがポイントとなります。傾聴の姿勢はコーチングの土台であり、対象者から安心感や信頼感を引き出すために欠かせないスキルです。

また、ジェスチャーや表情といった非言語コミュニケーションを汲み取ることも、重要な傾聴スキルです。

・承認

コーチングでは、対象者の長所や能力を認めることで、対象者をポジティブな状態へと誘導していきます。承認の基本は「おうむ返し」で、対象者が無自覚で話していることを再認識させる効果があります。

傾聴と承認は密接に関わるスキルであり、対象者の言葉を傾聴し、承認することで信頼関係が深まり、成長効率が高まっていきます。

・質問

コーチングでは、対象者のなかから答えを引き出すために1ランク上の質問スキルが必要となります。

対象者の話を傾聴し、承認するだけでは成長のきっかけが得られません。ポイントは質問によって対象者に「気づき」を与え、考えるきっかけを作ることにあります。良質な質問の仕方を学ぶことは、コーチング研修の取り組みのなかでも大きなウエイトを占めます。

・フィードバック

指導者からのフィードバックによって対象者は現状の問題点や改善点に気づき、アクションの質が向上していきます。

一方で、フィードバックは「決めつけ・押しつけ」になりやすく、意外と取得が難しいスキルでもあります。誰しも一度は「君は○○と考えているよね」と的外れな指摘をされて、反感を覚えた経験があるでしょう。対象者の成長につながるフィードバック方法を学ぶことも、コーチング研修の重要な目的のひとつです。

・提案(リクエスト)

提案(リクエスト)は、対象者に具体的な行動を促すスキルです。コーチングでは傾聴や承認などが重要視されることから、相手を受け止めるだけの取り組みと認識される傾向があります。

しかし、対象者の成長を促すためには、潜在能力を引き出すような1ランク上のアクションを提案する必要があるのです。

ロールプレイング

コーチングの3原則や5つの基本スキルも、ビジネスシーンで実践できなければ意味がありません。そのため多くのコーチング研修では、ロールプレイングの反復に重きが置かれています。

とくにコーチングは、対象者の性格や抱えている課題によって、臨機応変に行う必要があります。実際のコーチング場面を想定してロールプレイングを重ねていき、実践的にスキルを高めていくことが重要となるのです。

コーチング研修の基本「GROWモデル」

コーチングにはいくつかの手法・流派が存在しますが、そのなかでもコーチング研修の主流となっているのが「GROWモデル」です。

GROWモデルは、対象者に自発的な思考を促し、目標達成や課題解決に向けた主体的な行動を促す手法です。G(Goal)、R(Reality)、O(Options)、W(Will)の頭文字によって成り立ち、「目標設定、現状把握、検討、意思確認」のプロセスによって進行していきます。

Goal(目標設定)

まずは、対象者が求めている結果や目標を明確にします。

「どのような状態で目標達成と判断するか」「プロジェクトの達成可能性は?」「目標達成で何が得られるのか」などを質問することで、対象者の目標の理解度やゴールのイメージを具体的にしていきます。

Reality(現状把握)

次に、いま置かれている状況や状態を把握して、障害物や課題を明らかにします。

「プロジェクトに関わる人、影響を受ける人は誰ですか」「成果を出すまでに障害物はありますか」などを質問することで、目標達成に向けて必要となる情報を引き出していきます。

Options(検討)

現状把握のあとは、対象者が本来持っているはずの選択肢を引き出していきます。

「今まで実現できなかった手法はありますか」「あなたの一番優秀な友人なら、どんなやり方を取るでしょう」といった質問によって、対象者に普段なら考えないような選択肢について検討してもらいます。

Will(意思確認)

最後に、目標達成へ向かう意志を指し、具体的な行動に移すための計画と責任感を明確にします。

「行動計画の確度を高めるために何が必要ですか」「長期の目標に向けて、今月の目標はどこに設定しますか」などを質問することで、行動計画をより具体的にして、目標達成に向けてのモチベーションを高めていきます。

コーチングの納得感を高めたいなら「数字力」

コーチングを行うなかで「部下と共通認識が持てない」「納得感を引き出せない」といった悩みをお持ちではないでしょうか。そんなときは、質問や提案のなかに数字・データを用いてみましょう。

例えば、提案を行う際、定量的な目標値を提示できれば、お互いの認識にズレがなくなります。数字を用いることで抽象的な表現が減り、共通認識が得られやすくなるのです。さらに提案の根拠となるデータを提示できれば、納得感も向上するでしょう。

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