人材育成で活用すべき7つのフレームワークと導入の流れ

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フレームワークとは、経営や業務などにおいて、共通して活用できる考え方や枠組みのことです。人材育成にフレームワークを活用すれば、効率的かつ効果的に社員の育成を進めることができます。

今回は、人材育成におけるフレームワークの重要性や、代表的なモデル(理論)、導入の流れなどについて解説していきます。

フレームワークとは

フレームワーク(frame work)は、「枠組み」「骨格」「構造」といった意味を持つ言葉で、システムやアプリケーション開発においては共通して土台となるソフトウェアを指します。

転じてビジネスにおいては、経営や業務などにおいて、共通して活用できる考え方やツール、枠組みのことをフレームワークと呼びます。

業務や採用のフレームワークはあっても、人材育成の手法が体系化されていないという企業は少なくありません。OJTが伝統的な日本型雇用の育成手法として、長く浸透していたためです。

※人材育成におけるOJTについては「OJTとは?(人材育成手法)」でも詳しく解説しています。

関連記事:「OJTとは?(人材育成手法)」

人材育成におけるフレームワークの重要性

少子高齢化を背景に生産年齢人口は減少の一途を辿っているため、企業は限られた人員で最大限の成果を目指さなければいけません。そのためには、社員を効率的に育成し、自社の理想とする人材へと成長させる必要があります。

そこで重要になるのが、フレームワークです。フレームワークは調査や研究に基づいて構築された理論であり、目的や職務に見合った手法を選定することで高い効果を発揮します。とくに「育成ノウハウが乏しい」「ロールモデルがいない」といった企業にとっては、欠かせない取り組みとなるでしょう。

逆にいえば、共通の指針を持たず現場のOJTに頼りきりだと、育成の成果にばらつきが出てしまいます。指導者によっても成果に差がつき、企業として望む人物像から遠ざかってしまう恐れもあります。

人材育成に効果的なフレームワーク7選

ここでは、人材育成に効果的とさせる代表的なフレームワークについて解説していきます。

カッツ理論

「カッツ理論」は、1955年にハーバード大学のロバート・カッツ教授が発表した理論で、マネジメント層に必要なスキルがまとめられています。

カッツはマネージャーには「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の3つが必要としています。

コンセプチュアルスキル:概念化のスキル。出来事や現象を的確に捉えて、解決までの道筋を考える力。

ヒューマンスキル:人間関係にまつわるスキル。交渉力や説得力など、広義の意味でコミュニケーション能力と言い換えてもよいでしょう。

テクニカルスキル:業務にまつわるスキル。経理であれば簿記、SEであればシステム設計など、業務遂行に必要となる能力を指します。

さらに「カッツ理論」では、企業内のポジションを「トップマネジメント(経営層)」「ミドルマネジメント(管理職)」「ロワーマネジメント(一般)」の3階層に分け、各階層ごとに重要視されるスキルが異なることを示しています。

例えば、トップマネジメントであればコンセプチュアルスキルの重要度が増し、テクニカルスキルの重要度が下がります。

フレームワークとしては、一般社員からマネージャーに至るまでの育成に対応しており、各段階ごとにどのスキルを重点的に伸ばせば良いかの指標となります。

70:20:10の法則(ロミンガーの法則)

「70:20:10の法則」は別名「ロミンガーの法則」と呼ばれ、アメリカのロミンガー社の調査をもとに提唱されました。

経営者に対してリーダーとしての成長に必要なものを調査した結果、「仕事の経験」が70%、「他者からの感化(薫陶)」が20%、「学習・研修」が10%という結果だったことから「70:20:10の法則」と呼ばれています。

このフレームワークは、研修よりも実務経験によって成長が促されることがポイントになっています。加えて、上司などからの指導が効果的に行われることで、成長に必要な要素をほとんど満たせることになります。

人材育成にあたり、座学の研修の割合を決めかねている際に「70:20:10の法則」を参考にするとよいでしょう。

SMARTの法則

「SMARTの法則」は1981年にアメリカのジョージ・T・ドランによって提唱された、目標設定にまつわる法則です。

目標達成のためには設計・計画の段階で、5つの要素について掘り下げる必要があり、これによって成功の確率が高まっていくとされます。

Specific:具体性

Measurable:計測可能

Achievable:達成可能性

Relevant:関連性

Time-bound:明確な期限

「SMARTの法則」をフレームワークとして活用する場合、人材の育成計画を設定する際に取り入れてみましょう。目標の達成度合いはPDCAサイクルで検証・改善することで、より精度が上がっていきます。

思考の6段階モデル

思考の6段階モデルは、1956年にアメリカの教育心理学者ベンジャミン・ブルームが提唱したモデルです。ブルームは思考を6段階に分類して、それぞれの段階ごとに能力を高めることが必要とし、様々な教育現場で活用されてきました。

レベル1・知識:情報として、言葉や方法、事実などを想起できるか。

レベル2・理解:意味を理解して、言い換えや説明などを行えるか。

レベル3・応用:情報や知識を異なる場面でも活用できるか。

レベル4・分析:情報全体のなかから要素を分解し、個々について解説できるか。

レベル5・統合:異なる概念や情報を組み合わせて統合できるか。

レベル6・評価:情報や概念の価値について評価をくだせるか。

この6段階の分類は、人間が物事を理解して成長するプロセスを意味します。育成計画や研修の内容をこのプロセスに沿って構築することで、より効果的な人材育成を実現します。

カークパトリックモデル

「カークパトリックモデル」は、1959年にアメリカのウィスコンシン大学のカークパトリック教授が提唱した、教育の評価方法についての理論です。

カークパトリックモデルでは、教育・研修の効果を4段階で測定します。

1.反応:反応では、受講者へのアンケートなどから研修に対する評価を得て、「反応」を探る段階です。

2.学習:学習では、受講者が具体的に研修から何を得たかを確認します。後にテストや面接などを行い、研修内容の理解度を測定していきます。

3.行動:行動では、受講者が研修の内容を実際にどの程度活かしているかを確認します。期間は中長期的で、例えば半年後にヒアリングを行い、業務にどのくらい影響を与えているかを測定しています。

4.成果(成果では、教育・研修の結果、どのような成果が表れたかを検証します。人材育成においては、研修の結果として企業としての業績や部署単位での売り上げに効果が出ているかを検証します。

カークパトリックモデルは、人材育成の成果を確認するためのフレームワークといえるでしょう。

HPI

HPI(Human Performance improvement)は、組織の課題解決を人材の視座から捉えていく手法で、1990年代からアメリカを中心に研究が始まったとされます。特定の人物によって考案されたものではなく、行動心理学や組織開発など様々な理論から複合的に成り立っています。

HPIを実践するには、以下の4つの原理を理解する必要があります。

・結果重視

HPIの基本は結果重視であり、ここでいう結果とは「企業として達成すべき経営目標」を指します。目標達成までに欠けているものや、現状で生じているギャップを明確にすることから、アプローチを始めていきましょう。

・組織をシステムとして捉える

HPIでは、組織や環境をシステムとして捉えていきます。優れた成果は、個人の能力だけから生まれるのではありません。例えば営業成績は、製品の企画やマーケティング、品質管理、販路など、様々な要因がシステムとして機能することで向上していきます。つまり、組織や環境を改善することにより、結果として個人のパフォーマンスも向上するというわけです。

・幅広い手段を講じる

HPIは、特定の研修を実施することでパフォーマンス向上を目指すものではありません。むしろ、いくら良い研修を実施しても、会社の環境や仕組みが整っていなければ意味がないという考え方を持ちます。

科学的な理論と費用対効果のある幅広い手段を講じて、業務プロセスの改善や人事管理などに取り組むことがポイントとなります。

・現場との信頼関係を築く

HPIは組織全体に対してアプローチを行うため、経営層から管理職、現場に至るまでの連携が求められます。とくに人事・人材開発の担当部門と、改善の対象となる現場とのあいだに信頼関係を築くことが大切です。

このように、HPIは人材育成の見直しや、研修の効果が最大化するような環境改善につながるフレームワークといえるでしょう。

氷山モデル

「氷山モデル」はハーバード大学のデビット・マクレランド教授が提唱した、システム思考についてのフレームワークです。物事の全体像は目に見える表層より、目に見えない部分のほうが遙かに大きいという考え方で、様々な領域で活用される手法です。

人材育成における氷山モデルでは、課題・結果は表面に見える一部に過ぎないと考えます。重要なのは氷山の水面下(見えない部分)にあたる「パターン」であり、そのパターンを引き起こす「構造や意識」を改善することで、問題解決につながるのです。

例えば、ある部署で発生している「春季の販売成績の低下」という課題を解決するのであれば、その問題を生み出しているパターンを見つけます。仮に「新社会人へのリサーチ不足」というパターンがあった場合、その機会損失を解消するための調査手法などを学ぶことで問題解決へとつながります。

このように氷山モデルを通して、目に見えにくい構造や意識などに目を向ければ、人材育成の施策が具体化していくでしょう。

人材育成におけるフレームワーク導入の流れ

OJTが主体の企業では、フレームワークをどのように取り入れればよいかイメージが湧きにくいかもしれません。ここでは簡単にフレームワーク導入の流れを解説していきます。

経営目標にあったフレームワークを選ぶ

まず行うべきは、経営目標の確認と目標達成に必要な人物像の洗い出しです。企業としてどのような目標を掲げ、それを達成するにはどんな人材が必要なのかを明確にします。

「次世代のマネジメント層が必要」「売上を底上げする営業集団が必要」といった具合に、目標や対象となるポジションなどを明確にした上で、適切なフレームワークを選定しましょう。

フレームワークと育成計画

目標や求める人物像などに見合うフレームワークを選定したら、育成計画を作成していきます。フレームワークはあくまでも「骨組み」でしかないため、具体的な育成計画を立てて、肉付けしていく必要があるのです。数値目標や期日、外部研修の導入など、自社の状況に合わせて設定していきましょう。

また、計画を策定する際はマネジメント層だけで進めるのではなく、計画を実行する現場の声をくみ取ることも大切です。

PDCAサイクルで改善

育成計画を策定して実際に取り組みが動き出したら、PDCAサイクルで改善を図っていきましょう。

とくに目標設定は、一度で適切な設定になるとは限りません。個人の成長速度や適性によっても達成度にも差が出てくるため、適宜改善を図っていきましょう。

人材育成でフレームワークを活用する際のポイント

どんなに優れたフレームワークであっても、使い方を間違えると効果が発揮されません。人材育成にフレームワークを活用する際のポイントを解説します。

状況に応じて使い分ける

優れたフレームワークであっても、あらゆる場面で効力を発揮するわけではありません。期間や階層(ポジション)、業務内容などによって、適切なフレームワークを使い分けましょう。

ゴールから逆算する

育成計画を立てる際は、ゴールから逆算すると合理的です。ゴールへ到達するまでにどのようなスキルが必要か考え、そのスキルを得るには何を行えば良いか考えていくと、育成計画が明確になります。

フレームワークに依存し過ぎない

フレームワークに依存し過ぎず、従業員や業界の状況に合わせて変化していく姿勢が大切です。

フレームワークは基本的に普遍的な理論で構築されていますが、そのすべてが現代の価値観や技術レベルに即しているとは限りません。例えば、感染症対策で対面での指導が困難になる状況は、過去のフレームワークでは想定されていません。自社の状況や環境に合わせて、アレンジを加えていくことが大切なのです。

人材育成にフレームワークを活用しよう

フレームワークを活用すれば、自社に人材育成のノウハウが蓄積していなくても効率的かつ効果的な育成計画を構築できます。

ただし、フレームワークを効果的に活用するには、経営目標に見合ったモデル(理論)を選定する必要があります。自社に見合ったフレームワークを選び、環境や状況に応じてカスタマイズしていくことが大切です。

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