研修講師とは 社内講師として失敗しないコツや外部講師への依頼について解説
研修の成功を左右する重要な要素として、講師の質が挙げられます。どれだけ優れたカリキュラムが用意されていても、それを伝える講師の質が伴わなければ受講者の糧にはならないからです。
研修講師は大きく「社内講師」と「外部講師」に分けられますが、「研修やセミナーを通じてビジネスパーソンの育成を図る」という役割に違いはありません。
今回は、研修講師の仕事や講師に向いている人を確認した上で、社内講師を任されたときに失敗しないコツや、外部講師に研修を依頼すべき状況とその依頼方法などについて解説していきます。
研修講師の仕事とは
研修講師の仕事は、研修やセミナーを通じてビジネスパーソンの育成を図ることです。この点は社内講師・外部講師ともに変わりありません。
とくに研修講師に求められるのは、実際のビジネスシーンで活用できるような知識やスキルを伝授することです。そのため研修講師はただ講義を行うだけでなく、テーマに合った研修の種類(手法)を選定する必要があります。なお、研修にどのような種類があるかについては「人材育成における研修の方法・種類」でも詳しく解説しています。
関連記事:「人材育成における研修の方法・種類」
研修講師に向いている人の特徴
まずは、社内で講師を擁立する際のポイントとして、研修講師に向いている人の特徴について解説していきます。なお、後半の「優秀な研修講師が持っているスキル」「外部講師の見極め方」でも優秀な研修講師の特徴について解説していますので、合わせて確認してみてください。
人の成長に喜びを感じられる
社内で研修講師を擁立するのであれば、最初の条件は「人の成長に喜びを感じられること」でしょう。
社内講師の仕事は、通常業務外の仕事となります。事前の準備や当日の講義など負担も決して軽くはないため、講師としての役割に魅力や喜びを感じられる人でないと大きなストレスとなってしまいます。そのため、人の成長に喜びを感じたり、人の手伝いをすることが好きだったりする人が適任といえるでしょう。
人前で話すことを苦にしない
研修講師を務めるのであれば、人前に立って話すことは避けられません。いくら優れた知識や経験を持っていても、注目されることにストレスを感じるのであれば、研修講師に向いているとは言えません。
研修講師として失敗しないための3つのコツ
実際に社内で研修講師を務めるときに、どんな準備や心がけが必要になるのでしょうか。ここでは、研修講師として失敗しないための3つのコツをお伝えします。
意識して事前準備の時間を設ける
社内講師を務める人の多くは、本業務の傍らで講師を務めることになるはずです。そのため、意識して「研修のための準備の時間」を確保することから始めましょう。日々の業務を優先していると「気がついたら明日が研修本番」ということが往々にして起こり得るからです。
具体的な準備としては、まず当日の原稿を作成するとよいでしょう。研修の目的(ゴール)から逆算して、伝えるべき内容を整理しておくことで当日の不安も軽減されます。また、原稿をまとめていくなかで、どの部分で資料(スライド)が必要になるのかもわかってきます。
構成と時間配分に気を配る
事前準備のなかでもとりわけ重要なのが、当日の構成と時間配分です。研修の準備を進めてみるとわかりますが、「想像以上に予定時間を埋められない」「声に出して読み上げてみると時間をオーバーしてしまった」といった問題に行き当たるはずです。
そのため、事前にしっかりと構成を組み立てておき、原稿を声に出して読み上げながら、合計でどれくらいの時間がかかるかを確認しておく必要があります。当日は緊張の影響や受講者からの質問によって時間配分が狂ってしまうものなので、バッファを持たせておくことがポイントです。
わかりやすい表現で事例を交える
社内講師を務める際、他部署に対して自身の得意分野について講義を行うという場面が多々あります。このとき気をつけなければいけないのが、専門用語です。社内で日々当たり前に使っている言葉も、他部署の人からすると初めて聞く言葉の可能性があるからです。
こうした専門用語については、わかりやすい事例を交えて解説すると伝わりやすくなります。部署こそ違えど、同じ企業で働く同僚なわけですから、身近な事例も挙げやすいでしょう。
外部講師に研修を依頼すべき状況
「社内に研修講師の適任者がいない」「社内にはないノウハウを獲得したい」というときは、外部講師に研修を依頼すべきです。具体的に、外部講師に研修を依頼すべき状況について見ていきましょう。
社内にノウハウ・知見がない
外部講師に研修を依頼すべき状況として、社内にノウハウがないスキル・知識について学びたいときです。業界知識に関する研修や簡単なマナー研修であれば、自社の社員でも講師を担うことができますが、社内にノウハウ・知見がないのなら外部の専門家に頼るのがもっとも効率的です。
例えば、ITに疎い企業におけるDX研修や、社員の成長が芳しくない状況でのマネジメント研修など、自社内で解決できない課題を抱えている場合は、外部の講師に依頼すべきです。
社内の人的リソースが不足している
社内の人的リソースが不足している場合も、外部講師に研修を依頼すべきでしょう。
研修は当日だけの仕事ではなく、準備から振り返りまで数週間に渡ってリソースを割く必要があります。現場の人間が研修講師に時間を取られれば、そのぶん通常業務が遅延してしまいます。外部講師へ依頼する金銭的コストと、社員が講師を務めた際の生産性の低下を天秤にかけて、効率的な方法を選択しましょう。
社内からの声では解決に至らない状況
「経営層・管理職から指摘しているのになかなか課題を解決できない」「当事者・現場に気を遣ってしまい、指摘しにくい」など、社内からの声だけでは解決に至らない状況に陥っている場合、外部講師を頼ってみるのも良いでしょう。
「家庭では何を言われても改善しなかったのに、他人からの指摘でぱっと改善した」というのはよくある話です。組織においても同様で、外部の研修講師が指摘するからこそ効果を発揮することもありますし、研修を通じて他社の事例を知ることで我がふりを直すということもあるでしょう。
研修を外部へ依頼する方法
研修を外部へ依頼する場合、大きく2つの方法があります。それぞれの特徴やメリットについて解説します。
事業として研修を行う会社への依頼
1つ目は、事業として研修を行う会社への依頼です。「新入社員マナー研修」「マネジメント研修」といった具合に研修がパッケージ化されており、その会社に在籍している講師が研修を受け持ちます。提供する研修が固定されているため、どの講師が派遣されてきても内容は同じであり、一定の質が担保されます。
このタイプは、基本的にプランとして提供されている研修にしか対応できません。例えば、「マナー講座」しか提供していない企業に対して「マネジメント講座」を依頼しても、対応してもらえないことがほとんどです。
仲介会社への依頼
2つ目は、講師の仲介を行っている会社への依頼です。仲介会社には個人で活動している研修講師や小規模の会社が登録しており、希望を出すことで自社に合った講師が派遣されてきます。
「提案営業に特化したスキルアップ講座」といった細かいニーズにも対応してくれるため、自社で講師を探す手間が省けます。ただ、講師の質は千差万別で、求めていた研修内容と違ったといったミスマッチも起こりがちです。
優秀な研修講師が持っているスキル
外部講師に依頼するのであれば、優秀な研修講師に任せたいところです。しかし、研修講師は何を持って「優秀」と呼べるのでしょうか。ここでは、依頼が集まる外部講師が共通して持っているスキルについて解説していきます。
インストラクションスキル
インストラクション(instruction)は「教示、指示」といった意味を持つ言葉です。ビジネスシーンでは「業務の仕組みや流れを教えること」といった意味で用いられます。簡単に言ってしまえば、インストラクションスキルは「わかりやすく伝える力」です。
誰もが学校で「この先生の授業はわかりやすい・わかりにくい」と思った経験があると思います。学習指導要領に沿って授業をしているはずなのに、教師によって差が生じるのはインストラクションスキルが関係しています。
外部講師のインストラクションスキルを見極めるポイントとしては、事前の打ち合わせや研修中に専門用語ばかりで話す講師は要注意です。研修で求められるのは、難解な内容を誰にでもわかりやすく伝える力だからです。
ファシリテーションスキル
ファシリテーション(facilitation)は、「人々の活動が円滑に進むよう、舵取りをすること」という意味を持つ言葉です。ビジネスの場では、会議やプレゼンテーションなどの場を円滑に進行させる力として、よく活用される言葉です。
研修というと、講義形式で一方的に知識やスキルを伝えるというイメージを持つかもしれません。しかし、優秀な講師は受講者に「考えること」を促し、答えを掴み取るプロセスを重視します。
例えば、受講者のリアクションから関心の度合いや内容の理解度を探ることができる講師は、ファシリテーションスキルを持つ研修講師といえるでしょう。
フィードバックスキル
フィードバックは「相手の考えや行動に対して、評価または改善点を伝えること」で、簡潔に言えば「振り返り」です。
研修の受講者は、それぞれが不足している部分を持っていたり、課題に直面していたりします。その問題を解決するための知見をわかりやすく、受講者に見合ったかたちで提供できるのが、優秀な研修講師です。
外部講師の見極め方
最後に、優秀な研修講師が持っているスキルを踏まえて、外部講師を見極めるポイントを解説していきます。これは社内講師が目指すべき姿でもありますので、ぜひ参考にしてみてください。
ケーススタディでリアルな事例を提示できる
研修ではその内容を問わず、ケーススタディで理解を深めていくのが定番です。受講者が研修に集中するのは「自分が抱えている課題を解決できそうだ」と感じた瞬間だからです。その一方で、状況設定にリアリティがないと実務に結びつかないため、研修の価値が低下してしまいます。
ですから、事前の打ち合わせで「現場にどのような問題があり、なぜその問題を解決できないのか」をきちんとヒアリングする講師であれば、信頼できる講師といえるでしょう。
広く組織・ビジネスについて理解している
研修の講師を務めるためには、広くビジネスや組織について理解している必要があります。
例えば、新入社員向けのビジネスマナー研修を行う場合でも、講師が現場のリアルな状況を把握していなければ、現実とかけ離れたマナーを指導してしまうでしょう。逆に「新入社員が失敗しやすいビジネスマナー」を把握している講師ならば、研修内容もより実践的となります。
とくに業界や職種ごとに起きている変化や、ビジネスパーソンが年齢や職位ごとに抱える悩みなどを理解していることが求められます。
研修内容の柔軟性
企業の抱える課題に合わせて、研修内容を柔軟にカスタマイズできるのが優秀な研修講師です。
研修内容の変更は単純なようですが、企業の希望や課題をしっかりと汲み取れるヒアリング力と、カスタマイズを行えるだけの広い知見が求められます。
受講者の行動や意識を変えられる
これは研修後にしかわからないことですが、良い研修講師は受講者の行動や意識を変えることができます。
研修を実施したからといって、すぐに売上や生産性が上がるわけではありません。研修の効果は、受講者の行動や意識がどれだけ変化したかで探ってみましょう。自覚的な行動・意識の変化が起きていれば、それは後々の業務にも良い影響を及ぼすはずです。
受講者の行動や意識の変化は、継続して研修を依頼するかどうかの指標として参考にしてみるとよいでしょう。
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