部下育成で大切なこと 指導との違いやコーチングの重要性を解説
部下育成とは部下の成長を支援することであり、企業にとっては組織の存続に関わる重要な取り組みとなります。
厳密には部下育成と指導は異なり、「コーチングによる育成」「心理的安全性の構築」「ワンランク上の仕事を任せる」などを心がけることが大切です。
今回は部下育成について、指導との違いや育成時の課題、部下育成において大切なことについて解説していきます。
部下育成とは
部下育成とは、部下の成長を支援することです。もちろん支援のかたちはひとつではなく、「成長の方向性を指し示す」「責任ある仕事を任せる」「フィードバックを行う」といった様々な取り組みが求められます。
プレイングマネージャーにとって部下育成は後回しにされがちな業務ですが、企業にとっては非常に重要な取り組みとなります。将来的に組織の中核を担う人材が育たなければ成長力が損なわれ、衰退の一途を辿ることになるからです。部下育成は組織の存続にも関わる取り組みといえるでしょう。
部下育成と指導の違い
部下育成を「部下を指導すること」と考える人がいますが、「部下育成=指導」ではありません。指導には「勉強や研究などで、助言を与えて導くこと」という意味がありますが、部下育成において「助言(アドバイス)」は、時としてマイナスに働いてしまいます。
例えば、学校の先生などから指導されて、「自分は悪くない」「言われなくてもわかっている」と反感を覚えた経験はないでしょうか。指導者が良かれと思って送ったアドバイスも、受け手にとっては「否定」になっている場合があります。これは受け手の性格に難があるわけではなく、心理学における防衛機制という心の働きに原因があります。
防衛機制とは、受け入れがたい状況や困難に直面した際、自分の心を守るために無意識で働く防衛反応のことです。防衛機制には「否認」や「合理化」などの反応があり、ストレスを感じている場面で指導を受けることで、事実から目を逸らしたり、苦手意識を持ってしまったりと、逆効果に転じてしまう恐れがあるのです。
そのため、部下育成においては「指導」ではなく「支援」が求められるわけです。

部下育成時の悩みや課題
部下育成時には、様々な悩みや課題に直面することになります。ここでは、その代表例と原因を見ていきましょう。
責任やリスクのある仕事を任せられない
「部下に責任やリスクのある仕事を任せられない」という悩み・課題を抱える上司は非常に多いと思います。
しかし、難易度の低い仕事ばかりを任せていると部下が成長しないばかりでなく、「会社・上司から信用されていない」と感じてモチベーションが下がり、部下との関係が悪化する恐れもあります。最悪の場合、成長の機会を求めて転職してしまうでしょう。
仕事を任せられない原因は「部下の能力を見極めることができない」といった上司側のマネジメント能力の問題や、「失敗に対して厳しい雰囲気がある」といった組織の体質自体に問題がある場合もあります。
育成計画を立てることができない
部下育成時の悩み・課題としてよく挙がるのが「育成計画を立てることができない」です。計画が定まっていないと場当たり的な育成となり、成長の度合いなども可視化できません。
とはいえ育成計画は、経営戦略と求める人物像を把握したうえで、本人の適性などを踏まえて検討する必要があるため、上司一人だけで作成できるものでもありません。育成計画が立てられないのは、経営層や人事部にも責任があるといえるでしょう。
育成に割けるだけの時間がない
部下育成を担う立場にある人の多くは、育成に割けるだけの時間がないという悩み・課題に直面していると思います。日本企業ではほとんどの管理職がプレイングマネージャーとして働いているため、部下育成に時間を割くことが難しい状況にあるからです。
部下育成自体をあきらめる
様々な悩みや課題のせいで、最終的に部下育成をあきらめてしまう上司も一定数存在します。その原因としては、以下のような例が挙げられます。
・部下育成の時間的余裕がない
・部下の成長度合いが労力に見合わない
・部下を育成しても会社から評価されない
・指導スキルがない(スキルを学ぶ余裕や機会もない)
これらを見てもわかるように、部下育成を行うための余裕や誘因がないと、上司にとっての部下育成の優先順位はどんどん落ちてしまいます。部下育成は組織全体で体制を整えないと、推進できないのです。

部下育成で大切なこと
部下育成で大切なこととして「心理的安全性の構築」「指示の出し方に気をつける」「成果だけで評価しない」「ワンランク上の仕事を任せる」「コーチングによる育成」などが挙げられます。それぞれ解説していきましょう。
心理的安全性の構築
部下育成で最初に取り組むこととして、心理的安全性の構築が挙げられます。心理的安全性とは、組織のなかで自分の意見やアイディアを自由に発信しても、拒絶や罰則を受けることがない状態です。
心理的安全性が構築されていないと、課題に直面した際に相談できなかったり、ミスを隠蔽してしまったりと、報連相にかかわるトラブルの発生リスクが高まります。
心理的安全性を高めるためには「面倒くさがらずに部下の話を傾聴する」「感謝と謝罪を忘れない」「感情的にならない(怒らない)」などの言動を徹底する必要があります。
なお、心理的安全性の高め方については「職場における心理的安全性の高め方 メリットや低下を招く要素を解説」でも詳しく解説しています。
指示の出し方に気をつける
部下育成に取り組む際は、指示の出し方に気をつけましょう。指示の出し方が悪いと業務の遅延や失敗を招き、結果的にそのツケは上司自身に戻ってくるからです。
具体的には「最初に目的や意図を伝える」「定量的な目標・基準を提示する」「一度にたくさんの指示を出さない」といったことを心がける必要があります。
なお、指示の出し方については「良い指示を出すための6つの条件 指示出しを学ぶ重要性とは」でも詳しく解説しています。
成果だけで評価しない
部下育成では、成果だけで評価しないことも大切です。とくに昨今のビジネスシーンは変化が著しく、あっという間に消費者のニーズが変化するなど、外的要因によって成果が出せないことも少なくありません。部下が未熟なうちはそうした変化に対応できず、なかなか成果を上げられない時期もあるでしょう。
ですから、アプローチの方法や取り組みの姿勢といった「プロセス」も評価し、適切なフィードバックを与えて成果を出せるよう導くことが大切になります。
ワンランク上の仕事を任せる
部下育成ではときに部下の実力よりもワンランク上の仕事を任せることで、成長を促すことが求められます。こうした人材育成手法はストレッチアサインメントと呼ばれ、部下のスキル向上につながるだけでなく、仕事に対する当事者意識が芽生えやすくなるため、モチベーションの向上も期待されます。
ただ、部下がぎりぎり達成できる業務・役割を見極めるためには、対象者の性格や能力を正確に把握する必要があり、高いマネジメント能力が求められます。
なお、ストレッチアサインメントについては「ストレッチアサインメントとは 導入方法とメリット・デメリットを解説」でも詳しく解説しています。
コーチングによる育成を心がける
部下育成では、コーチングによる育成を心がけましょう。コーチングとは、対象者の成長やモチベーションの向上を促し、自発的に目標達成に向けて行動できるようにサポートする人材育成手法です。
例えば、営業成績が低迷した部下に直接的なアドバイスを送るのではなく、成績が低迷した原因を考えてみるように促し、自発的に解決策や問題点について考えさせるのがコーチングの手法です。
「部下育成と指導の違い」で解説したとおり、アドバイスは必ずしも部下の成長につながるものではありません。コーチングには「成果が出るまで時間がかかる」「指導者のスキルに左右される」などのデメリットもありますが、自律型人材の育成に欠かせない重要な手法となります。

部下育成の目標設定時に求められる公平性と納得感
部下育成における目標を設定する際には、公平性と納得感が重要になります。目標達成の基準が曖昧であったり、指導者の主観によって評価が歪められたりすると、部下との信頼関係が大きく損なわれてしまうからです。
では、公平性と納得感を得るために何が必要かというと、目標の数値化です。数字ならば主観によって左右することもありませんし、誰にとっても明確な基準となるからです。例えば「いつまでに」「どれくらい」を数値として示すことで、必要となる作業量が明確となり、客観的にも誤解を生みにくい目標を設定できます。
ただ一方で、ビジネスパーソンのなかには数字に対して苦手意識を持つ方もいます。数字を扱うのが苦手な人ほど厳密な目標値にこだわり、目標設定がなかなか進まないという失敗を犯します。そもそも未来を完璧に予想することはできないわけですから、ビジネスにおいてはある程度の余白を持たせて素早く数字を導き出すことが必要となります。
こうした「ビジネスシーンで役立つ数字力」を磨くのが、弊社オルデナール・コンサルティング合同会社が提供する「ビジネス数学研修」です。数字力は「把握力、分析力、選択力、予測力、表現力」の5つの要素から構成される能力であり、数字力を向上させることで納得感のある目標・計画を素早く設定できるようになるでしょう。
部下育成にあたって「納得感のある適切な目標が設定できない」「部下の失敗の原因を分析できない」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご検討ください。
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