1on1の目的 話すべきことや効果を上げるポイントを解説
1on1は、人材育成・マネジメントの一環として行われる、上司と部下の定期的な個人面談です。
その目的は大きく「人材育成」「定着率の向上」「コミュニケーションの促進」に分けられ、社員の早期離職などに課題を持つ企業のあいだで導入が進んでいます。一方で「話すことがない」と、社員のあいだでは不評になりがちな制度でもあります。
今回は、1on1の目的やテーマ(話すべきこと)、効果を上げるためのポイントについて解説していきます。
1on1とは
1on1とは上司と部下による定期的な個人面談のことで、人材育成・マネジメントの一環として実施されます。
面談自体は、従来の日本企業でも人事評価などを目的として、1年に1回ほどのペースで実施されてきました。しかし1on1は「週に1回、月に1回」と、短い間隔で定期的に行われる特徴があります。
また、従来の面談は「人事考課」の意味合いが強いですが、1on1は「人材育成」が主な狙いとなる点も大きな違いといえるでしょう。
なお、1on1は必ずしも直属の上司が行うとは限らず、人事部やメンターが務める場合もあります。
1on1の目的
1on1の目的は、大きく3つに分けられます。それぞれ解説していきましょう。
人材育成
1on1の主たる目的は、人材育成です。部下が抱えている業務上の問題や人間関係の悩みなどをくみ取り、フィードバックすることで成長を促していきます。腰を据えて仕事の振り返りを行うことで、今まで気づかなかった部下の長所や改善点なども発見できるでしょう。
また、1on1は部下だけでなく、上司側の成長を促す意味合いもあります。定期的なフィードバックを行うことにより、マネジメント能力の向上が期待されるためです。
定着率の向上
1on1を通して部下の悩みや不満を解消し、上司と部下のあいだに信頼関係を構築することで人材の定着率を上げていくことも重要な目的となります。
1on1の内容は業務に限らず、プライベートなことを話題にする場合もあります。価値観を共有して相互理解を深めていけば、社員の満足度(エンゲージメント)も高まっていくでしょう。上司と部下の連携が強まることで、組織全体の生産性向上も期待できます。
コミュニケーションの促進
1on1には、社員間のコミュニケーションを促進する狙いもあります。この目的は新型コロナウイルスの感染拡大以降、重要度が増しています。
コロナ禍によってリモートワークが推進され、業務中のコミュニケーションが減少するだけでなく、飲み会などの業務外でのコミュニケーションも控えられるようになりました。業務として1on1を導入しないと、社員間のコミュニケーションがほとんど行われない職場(環境)が増えてきているわけです。
1on1はこうした状況を解消するために効果的で、情報共有や進捗確認の意味でも重要性が高まっています。
1on1のテーマ(話すこと)の例
1on1を導入すると、少なからず社員から「話すことがない」という意見が上がります。ただの雑談でもコミュニケーション促進の目的は果たせますが、会話が盛り上がらないままでは意味がありません。
ここでは、1on1の目標達成につながるテーマについて解説します。
業務で感じている不安や悩み
まず1on1のテーマとして取り扱うべきなのが、業務のなかで感じている不安や悩みです。とくに、急を要するものではないが「いつか言おう」と思っていた問題や要望などをくみ取る良い機会となります。
1on1中は「残業時間や業務量を負担に感じていないか」「モチベーションが下がるのはどんな仕事か」といった質問を振り、現在の業務状況について話しやすくなるよう配慮するとよいでしょう。
人間関係の悩み
1on1で仕事上の人間関係の悩みをくみ取ることは、定着率の改善を目指すうえで重要なポイントとなります。
ただ、人間関係の悩みを打ち明けるには、それなりの信頼関係が必要となります。ある程度1on1の回数を重ねたうえで、上司側からそれとなく切り出してみるとよいでしょう。
キャリアについて
1on1で部下のキャリアプランや、働くうえでの目標を確認するのもおすすめです。これらの情報は、仕事の割り振りや配置転換を行ううえで重要な情報になります。
また、部下のキャリアプランが漠然としている場合は、1on1を通じてキャリア形成について考えるきっかけを与えることも大切です。日々の仕事を漫然とこなすよりも、明確な目標に向かっていったほうがモチベーションも向上するからです。
業務改善・組織改善
1on1を通して、業務改善・組織改善のヒントを得ることも大切です。ただ、いきなり「業務改善・組織改善」と言っても難しく受け取られてしまいます。「うちの会社(部署)でここが変と思うところはある?」といった具合に、軽く水を向けるとよいでしょう。
1on1から社員が不満に思っていることが改善されていけば、やがて定着率の向上にもつながっていきます。
プライベート
1on1では相互理解を深めるために、趣味や休日の過ごし方などプライベートな話題を取り上げることがあります。
ただ、「公私は分けたい」「プライベートなことは話したくない」という考えを持つ社員も少なくありません。話すことがないからと安易にプライベートの話題を振ると、逆に信頼を損ねる可能性もあるので注意しましょう。
効果的な1on1にするための3つのポイント
最後に、1on1をより効果的な取り組みにするために3つのポイントをお伝えします。
コーチング
1on1の基本は、コーチングです。コーチングとは、対象者の成長やモチベーションの向上を促しながら、目標達成に向けてサポートを行う育成手法のことです。
コーチングは「双方向」「個別対応」「現在進行」の3原則から成り立っており、これを実践することで育成対象者が「主体的な人材」として成長していくことが期待されます。1on1を導入する際は、上司側にコーチング研修を受講してもらうとよいでしょう。
コーチングの身につけ方や研修の内容については「コーチング研修とは 実施する目的とその内容」で詳しく解説しています。
関連記事:「コーチング研修とは 実施する目的とその内容」
アサーティブコミュニケーション
より良い1on1を実現させるためには、アサーティブコミュニケーションが欠かせません。アサーティブコミュニケーションとは、相手の意見や気持ちを尊重しつつ、自身の主張を伝える手法です。
1on1の主体は部下です。上司が一方的に話をするような1on1では、部下にとって苦痛な取り組みになる恐れがあります。アサーティブコミュニケーションの柱である「誠実・対等・率直・自己責任」を意識すれば、自然と1on1の質が上がっていくでしょう。
アサーティブコミュニケーションの実践については「アサーティブコミュニケーションとDESC法による実践」で詳しく解説しています。
関連記事:「アサーティブコミュニケーションとDESC法による実践」
メンター制度
1on1は直属の上司以外にも、メンターが担当する場合もあります。ここでのメンターとは、メンター制度における指導者のことです。
メンター制度では、他部署の先輩社員が若手社員のサポート役となり、メンタルケアやアドバイスなどを行います。とくに部署内の人間関係などは、直属の上司には打ち明けにくいものです。その点、他部署のメンターになら話せることもあるでしょう。
1on1とメンター制度は非常に相性の良い施策ですので、合わせて導入を検討してみるとよいでしょう。
メンター制度については「メンター制度とは メリットや導入の進め方を解説」でも詳しく解説しています。
関連記事:「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」
まとめ
1on1の目的は大きく「人材育成」「定着率の向上」「コミュニケーションの促進」に分けられます。いずれも、人材の流動化や働き方の変化が加速するなかで重要な対策となり得るので、1on1の導入が進むのは必然といえるでしょう。
一方で1on1制度を導入しても、「話すことがない」と活用されないこともしばしばです。1on1を目標達成につなげるためには、話すべきテーマについても考えていく必要があります。
また、より良い1on1を実現するためには、コーチングやアサーティブコミュニケーションが欠かせません。事前に、社員のコミュニケーション能力を見直しておくことも大切な準備となります。
1on1の質は「ビジネス数学研修」で上げる
1on1で部下との意思疎通がうまくいかないとお悩みでしたら、コミュニケーションのなかに数字やデータを用いてみましょう。数字を示すことで抽象的な表現が減り、共通認識が得られやすくなります。
例えば、部下の目標設定をサポートする際も、数的な根拠があれば納得感が増しますし、定量的な目標値を提示できればお互いの認識にズレがなくなります。
「ビジネス数学」というとテクニカルスキルが連想されがちですが、弊社オルデナール・コンサルティングでは、こうした「数字を用いたコミュニケーション」を身につけることに重きを置いています。 「なかなか1on1の成果が上がらない」とお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご検討ください。
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