社員教育計画の立て方とその注意点

#おすすめ記事#伝え方#教育担当者向け#研修運営

社員教育は、経営目標や事業計画の達成を目的に実施されます。その重要性は言うまでもありませんが、実際には社員教育計画を立てている企業は少なく、多くの企業にとって計画の立案自体が課題となっています。

今回は社員教育の目的や効果を確認したうえで、社員教育計画の立て方とその注意点について解説していきます。

社員教育の目的

社員教育の目的は、企業として経営目標や事業計画を達成することにあります。社員を教育することによって「スキルアップによる生産性向上」「コンプライアンス意識の向上」といった成長を促すことによって、より確実に経営目標や事業計画を達成できるわけです。

社員教育の計画を整備できている企業は2割

社員教育の重要性は言うまでもありませんが、実はしっかりと社員教育計画を整備できている企業は少数に過ぎません。東京商工会議所の調査によれば、「研修・教育訓練の年間計画や人材育成に関する中長期的な方針・計画をともに定めている」と回答した企業は20.1%にとどまっています。

また、30.5%の企業が「研修・教育訓練の方針や計画が無く、体系的に行われていない」と回答しており、社員教育計画を立案すること自体が大きな課題となっていることがわかります。

同調査で「計画的・体系的に研修・教育訓練、人材育成が行われるようにするためには、方針や計画の策定を促進していくことが重要であることがうかがえる」と指摘しているとおり、まず取り組むべきは社員教育の計画・方針を整備することなのです。

参考:東京商工会議所「研修・教育訓練、人材育成に関するアンケート」

社員教育にかかる費用の相場

社員教育計画を立てるにあたり、各社がどの程度のコストを投下しているかも把握しておきたいところではないでしょうか。

従業員1人あたりの教育研修費用は、産労総合研究所が実施した調査によれば32,412円(2022年度)、東洋経済オンラインが実施した調査によれば56,627円(2021年度)となっています。

企業の教育研修費用は新型コロナウイルスの感染拡大によって大きく減少しましたが、2023年度にはおおよそコロナ禍前の水準まで戻ってきています。加えて、産労総合研究所の調査では、「教育研修費用を増加させる見込み」と回答した企業が6割強に達していることも明らかとなっています。

また、教育研修費用は、企業によって大きな差があることも着目すべきでしょう。東洋経済オンラインが作成したランキングでは、上位8社が一人あたり年間30万円以上の教育研修費用をかけていることが明らかとなりました。1位の三井物産にいたっては年間46万円と、全体平均の約8倍以上の費用をかけています。

参考:産労総合研究所「2023年度(第47回) 教育研修費用の実態調査」

参考:東洋経済オンライン「『社員教育にお金をかける企業』ランキング100」

社員教育によって得られる効果とその必要性

社員教育によって得られる効果は、大きく「社員一人ひとりのスキルアップ」「コンプライアンスとリスク管理」「企業としての方針・理念の共有」の3つに大別できます。ここでは、それぞれの必要性を含めて解説していきます。

社員一人ひとりのスキルアップ

社員教育は、社員一人ひとりをスキルアップさせるための取り組みです。社員のスキルが向上すれば組織全体の生産性が高まり、より多くの利益が生み出されます。生産年齢人口の減少に直面する現代において、一人あたりの生産性を高める意義はますます高まっています。

また、会社の教育制度によって自身の成長を実感できれば、社員の帰属意識・エンゲージメントも自ずと向上していくでしょう。

コンプライアンスとリスク管理

社員教育は、組織全体のコンプライアンスとリスク管理を考えるうえでも重要な取り組みとなります。

情報漏洩やハラスメント、SNSでの不適切な言動など、企業活動のあらゆる場面にリスクの種は潜んでいます。これらリスクは社員の軽率な行動によって引き起こされ、インターネットを通じて一瞬で企業の社会的信用を失墜させます。

社員教育によってリテラシーと規範意識を高めることは、企業にとって欠かせないリスクマネジメントになっているのです。なお、リスクマネジメントについては「企業におけるリスクマネジメント 必要性や進め方を解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:「企業におけるリスクマネジメント 必要性や進め方を解説」

企業としての方針・理念の共有

社員教育は、経営方針や企業理念を共有する機会でもあり、とくに新入社員研修や管理職研修で重要視されます。企業としての方針・理念を理解していれば、自ずと日々の業務の意図もわかり、所属意識の向上へとつながっていくでしょう。

社員教育計画の立て方

先ほど「企業の約3割は社員教育の計画を策定できていない」という調査結果を確認しましたが、計画の立案自体は決して難しいものではありません。

ここでは、社員教育計画の立て方を流れに沿って解説していきます。

現状把握

社員教育の計画を作成するためには、まず自社の現状を把握する必要があります。社内に存在する課題や、不足している人材・スキルなど、解決すべき事柄をピックアップしていきましょう。

なお、課題の性質によっては、アウトソーシングやITツールの導入といった別の解決方法も考えられるはずです。社員教育は成果が出るまでに時間がかかるため、社員教育の末にしか解決できない課題に絞って精査することをおすすめします。

対象と目標の設定

現状把握によって解決すべき課題が定まれば、自ずと教育を施す対象と目標が定まってくるはずです。

ここで重要になるのが、「何をもって目標達成とするか」を明確に定めることです。わかりやすい目標は、資格の取得や営業目標の達成などですが、目標は定量化できるものばかりではありません。具体的かつ納得感が得られる目標を設定しましょう。

なお、目標を数値化するメリットと方法については「目標を数値化するメリットとその方法」で詳しく解説しております。

関連記事:「目標を数値化するメリットとその方法」

実施時期とスケジュールの組み立て

次に、社員教育の実施時期を決めて、具体的なスケジュールとして組み立てます。社員教育を実施するタイミングは入社時や配属時(昇進時)が基本ですが、定期・不定期に実施するものもあります。

もっともわかりやすい例は、新人社員研修でしょう。実施のタイミングは入社時からで、配属に合わせて終了となります。

なお、研修スケジュールの組み立て方については「研修スケジュールの設定とその流れ」でも詳しく解説しています。

関連記事:「研修スケジュールの設定とその流れ」

教育方法(種類)の選定

スケジュールと並行して、教育方法(種類)を選定しましょう。具体的な方法としては、OJT、OFF-JT、eラーニング(オンライン研修)などが挙げられます。

教育方法は、社員教育の目標や社内の状況、達成期限など、様々な要素を踏まえて検討する必要があります。例えば、社内に知見がない分野については、OFF-JTで外部の研修・セミナーに参加するのが一般的です。逆に、社内のノウハウを学ぶのであれば、現場のスケジュールに合わせてOJTを実施していくことになります。

他にも「社内の教育担当者のリソースが足りないため、OFF-JTで外部に委託する」「対象者が管理職のため多忙なので、eラーニングを活用する」など、状況によって最適な教育方法を選択していきましょう。

なお、研修の方法や種類については「人材育成における研修の方法・種類」でも詳しく解説しています。

関連記事:「人材育成における研修の方法・種類」

効果測定

社員教育計画の立案時に見過ごされがちなのが、効果測定です。「対象者にとって価値ある教育となったか」「目標に対してどの程度の効果があったか」などを確認して、投資した金銭的・人的コストに見合うだけの効果を証明できなければ、経営層から不満の声が上がってきます。

ただ一方で、社員教育の効果測定は非常に難しい取り組みとなります。研修の種類によっては効果が表れるまでに時間がかかる場合も多く、実際に表れた成果が「研修の効果」だと証明するには、高度な分析が必要となるからです。

研修の効果測定はカークパトリックモデルなどのフレームワークも活用して、肌感覚ではなくロジカルに推進していきましょう。なお、研修の効果測定については「研修の効果測定とは カークパトリックモデルやアンケート項目を解説」で詳しく解説していますので、合わせて参考にしてみてください。

関連記事:「研修の効果測定 カークパトリックモデルやアンケートの活用法」

社員教育の計画を立てる際の注意点

社員教育の計画を立てる際には、いくつか注意すべき点があります。ここでは4つのポイントに絞って解説していきます。

対象者に意図・目的を理解してもらう

社員教育を実施する際は、対象者に教育の意図・目的を理解してもらうことが大切です。勉強も仕事も「なぜこんなことをしているのだろう」と疑問を持ちながら取り組んでも成果は上がりません。

「対象者または企業が置かれている状況」「社員教育によって期待される成果」などを共有して、社員教育の重要性を理解して臨んでもらいましょう。

実務に直結する内容か確認する

社員教育を推進する際は、内容・プログラムが実務に直結しているか確認しましょう。どれだけ良い社員研修を実施しても、実務に結びつかなければ成果は上がらないからです。

とくに注意すべきなのが、外部研修のプログラムです。「理論ばかりの座学で実務に結びついていない」といった研修も少なくないため、事前にその内容を確認しておきましょう。

また、新入社員研修のように定例で実施している社員教育も、こまめに内容の見直しを行うことが大切です。ビジネスシーンの変化や技術革新などによって、研修内容が陳腐化している可能性があるため、現場の状況や課題と照らし合わせてアップデートを行いましょう。

継続して実施する

内容・種類にもよりますが、社員教育はすぐに見切りをつけずに継続して実施することも大切です。社員それぞれの成長速度も異なるため、長い目で見ることを心がけましょう。

一方で、効果測定の結果が芳しくないときなどは、すっぱりと方針転換を行うことも必要となります。データを根拠として、社員教育の質をしっかりと見極めていきましょう。

社員それぞれが必要としているスキルを取得させる

社員教育は、一律に実施しても効果は上がりません。職種や階層によって求められるスキルは異なるため、階層別研修や職種別研修といったかたちで、社員それぞれが最も必要としているスキル・経験を取得させなければいけません。

なお、階層ごとにどのような研修が必要になるかは「階層別研修とは 実施する目的やカリキュラムについて解説」でも解説しています。

関連記事:「階層別研修とは 実施する目的やカリキュラムについて解説」

社員教育計画を立案する際はデータを活用しよう

社員教育計画を立案する際は、まずデータを根拠とした現状把握を心がけましょう。例えば「最近の新人はコミュニケーションが下手らしい」といった偏見から計画を立案すると、社内の新人のコミュニケーションに問題がなかった場合、社員教育が意味をなさないものになってしまいます。こうした失敗は、事前にアンケートなどによって課題をデータ化しておくことで防止できます。

また、社員教育の効果を確認する際もデータの収集・分析は欠かせません。データがあることで施策の検証が可能となり、社員教育の質が向上していくのです。

ただ、ビジネスパーソンのなかには数字やデータに対して、苦手意識を持つ人が少なくありません。データを集めたのに分析が行われずお蔵入りする……というのはよくある話です。

そんなデータ活用や社員のデータリテラシー向上を課題とする企業様にお試しいただきたいのが、弊社オルデナール・コンサルティングがご提供する「ビジネス数学研修」です。

弊社の研修では、数字やデータの扱い方を「入門編」から「実践編」の4段階で学んでいき、受講者のレベルに合わせてデータリテラシーを育んでいきます。実際のビジネスシーンを想定したカリキュラムをご用意しておりますので、データとは無縁だったビジネスパーソンでも無理なく数字やデータを日々の業務へ活かせるようになります。

「明確な根拠に基づいた社員教育計画を立案したい」「社員教育の成果を分析したい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご活用ください。

お問い合わせはこちらから