ビジネスにおけるフィードバックとは 種類・方法・効果について解説

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ビジネスにおけるフィードバックとは、業務上の行動やその結果などについて、評価や改善点を伝えることです。人材育成やプロジェクトの軌道修正などを目的に実施され、近年は1on1制度などの取り組みが普及することにより、その重要性が高まっています。

今回は、フィードバックの目的や効果、種類、方法について解説していきます。

ビジネスにおけるフィードバック

ビジネスにおけるフィードバック(feedback)とは、業務上の行動やその結果などについて、評価や改善点を伝えることです。

フィードバックは本来、制御工学や通信工学で用いられる言葉であり、「動作によって生じた結果(出力)を原因側に戻し、原因側に調整を行うこと」という意味があります。ここから転じて、「行動の結果や反応から改良を行うこと」「顧客などの意見や評価から改善を図ること」といった意味で、広く用いられる言葉となっています。

ビジネスにおいては、フィードバックを行う「評価者」は上司、フィードバックを受ける「対象者」は部下と当てはめられることが多いですが、近年は「360度評価」のように同僚間でフィードバックを行う機会も増えています。

また、フィードバックに重きを置く企業では、フィードバック面談として制度化している場合もあります。なお、フィードバック面談については「フィードバック面談とは 目的と進め方を解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「フィードバック面談とは 目的と進め方を解説」

フィードバックが重要視される背景

これまでビジネス上のフィードバックは、年に数回の人事評価の場で行われることが一般的でした。しかし、近年の働き方や価値観の多様化を受けて様々な人事施策が導入され、フィードバックを行う機会が増えています。

1on1制度

1on1は人材育成・マネジメントの一環として行われる、上司と部下による定期的な個人面談です。1on1は短い間隔で定期的に行われるのが特徴で、1on1の普及によってフィードバックの重要性が高まっているといっても過言ではありません。

なお、1on1制度については「1on1の目的 話すべきことや効果を上げるポイントを解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「1on1の目的 話すべきことや効果を上げるポイントを解説」

メンター制度・エルダー制度

メンター制度は主に他部署の先輩社員がメンターとなり、後輩社員に対してサポートを行う取り組みです。エルダー制度はOJT教育の一環として、所属部署の先輩社員が指導を行う人材育成手法です。

いずれも直属の上司ではなく、入社5年目前後の若手社員が指導役を務めるという特徴があり、管理職以外の社員がフィードバックを行う機会が増えています。

なお、メンター制度については「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」

フィードバックの目的と効果

フィードバックを実施する際の目的や、どのような効果が得られるのかについて解説していきます。

人材育成

フィードバックの主要な目的として、人材育成が挙げられます。フィードバックによって自身の問題点(改善点)を自覚すれば、次回以降の業務ではその反省が活かされ、より高いレベルに到達できます。

また、効果的なフィードバックを行えば対象者の内省力や課題発見力が養われ、自律型の人材として成長していくことも期待されます。

生産性の向上

フィードバックによってアプローチの方法や改善策を伝授することにより、社内の生産性を効率的に向上させることができます。

ただし、生産性を優先するあまり1から10までやり方を指示してしまうと、対象者の成長を鈍化させる恐れがあります。長期的な視点では、フィードバックはヒントだけにとどめて、対象者に試行錯誤させるほうが生産性の向上につながる場合もあります。

目標達成のための軌道修正

フィードバックは、個人ないしチームが目標達成へ向けて進んでいけるよう、軌道修正を行う目的でも実施されます。

プロジェクトの進行中にアプローチや方向性の問題点などについてフィードバックを行うことで、目標達成の確度が高まります。

モチベーションの向上

フィードバックは社員のモチベーション向上にもつながります。単に改善点や評価を伝えるだけでなく、期待感を込めてフィードバックを行うことで自己肯定感が高まり、前向きに仕事に取り組めるようになります。

さらにフィードバックを通じて成功体験を得ることで、仕事に対してよりポジティブな感情を持ちやすくなることが期待されます。

逆にいえば、仕事の成果に対して評価や振り返りがないと、社員は不安や不信感を感じるものです。フィードバックはモチベーションの維持・向上に欠かせない取り組みといえるでしょう。

定着率の向上

モチベーションの向上の延長として、定着率の向上もフィードバックの効果のひとつとして挙げられます。

また、人事評価の際、どのような基準で評価が行われたかをフィードバックすることで妥当性や納得感が高まり、結果的に定着率の向上につながる側面もあります。

フィードバックの種類

フィードバックの種類は、大きく二つの方向性で分けられます。ここでは、それぞれの特徴について解説します。

ポジティブフィードバック

ポジティブフィードバックは、対象者の行動や成果について肯定的な意見を送るフィードバックです。いわゆる「誉めて伸ばす」育成手法で用いられ、自己肯定感を高めて、業務に対するモチベーションの向上を狙います。

基本的に短所を補うよりも長所を伸ばす方法ですが、改善点や課題を伝えたいときはポジティブな表現を選ぶことがポイントとなります。

ネガティブフィードバック

ネガティブフィードバックは、対象者の課題や問題点について、重点的に指摘するフィードバックです。自身の行動について反省を促すことで、課題の発見力や解決力の成長を促します。

ネガティブフィードバックの注意点としては、感情論で行わないことが挙げられます。対象の成長につながるよう、ロジカルで納得感のあるフィードバックを行いましょう。

フィードバックの方法・フレームワーク

効果的なフィードバックを実践したいのであれば、代表的な方法・フレームワークを踏襲して行うことがおすすめです。

サンドイッチ型

サンドイッチ型は「ポジティブ→ネガティブ→ポジティブ」という流れで、ポジティブなフィードバックのあいだにネガティブなフィードバックを挟む手法です。成果や働きぶりを誉めたうえで改善点を伝え、最後にまた誉めてフィードバックを終えるという構成になります。

ネガティブフィードバックを実施しても対象者のモチベーションを保つ効果がある一方で、改善点や課題が印象に残りにくいデメリットがあります。

非常にシンプルな方法なので、フィードバックに慣れていない場合はサンドイッチ型から始めてみるとよいでしょう。

SBI型

SBI型は「対象の状況」「具体的な行動」「その行動による影響」と順序立てたフィードバックを行う手法です。SBIは「situation」「behavior」「impact」の頭文字から成り立っています。

順序立ててフィードバックを行うことにより、対象者が内容を理解しやすいというメリットがあります。

また、評価者が「対象の置かれた状況」を踏まえてフィードバックが行うことから、評価に対する納得感が高まる効果も期待できます。

ただ、SBI型は対象者が「理屈で問い詰められている」と感じやすい部分があるため、ネガティブフィードバックで用いる際は言い回しや表現に注意しましょう。

ペンドルトンルール型

ペンドルトンルールは、対象者に自らの改善点や行動計画を考えるよう促す手法です。評価者と対象者のあいだで対話を重ねることが最大のポイントで「テーマの確認→良かった点→改善点→行動計画→まとめ」の流れで進めていきます。

いきなり評価者からフィードバックを与えるのではなく、まずは対象者に自身の感じた成果や成功要因などについて話してもらい、そのうえで評価者からフィードバックを与えます。これにより、対象者の主体性を引き出し、内省力を高める効果が得られます。

メリットとしては、自分で課題や改善点に気づくことで「他者から指摘を受ける」というストレスを感じずに済むことが挙げられます。また、対話を繰り返すことで評価者と対象者の関係性を深めるきっかけにもなるでしょう。

ただ、対象者から言葉を引き出すために対話を繰り返す必要があるため、他のフィードバックの方法よりも時間がかかることがデメリットとなります。

FEED型

FEED型は「実際に取った行動」「その行動についてフィードバックする理由」「その行動によって生じた影響」「代替案としての他の行動の提案」という構成でフィードバックを行う手法です。FEEDは「Fact」「Example」「Effect」「Different」の頭文字から成り立っています。

SBI型と似た構成ですが、こちらは最後に代替案(改善案)を提示することから、具体的に対象者の行動を改善させたいときに用いられるフィードバック手法となります。

まとめ

フィードバックはどの企業においても実施されていると思いますが、その目的や効果を理解し、正しい方法・フレームワークに基づいて実施していると断言できる方は少ないのではないでしょうか。

とくにフィードバックの方法は数多くあり、うまく活用することでフィードバックの効果を飛躍的に高めることができます。まずはフィードバックを行う目的を明確に定めて、それに見合った方法・フレームワークで内容や構成を精査していくことがポイントになります。

「数字」を活用してフィードバックの納得感を上げよう

フィードバックの効果や納得感を上げたいのなら、話のなかで積極的に数字やデータを用いてみましょう。数字を用いることで抽象的な表現が減り、共通認識が得られやすくなります。

例えば「もう少し案件獲得を増やせるよう、方法を考えてみよう」と伝えても、「具体的にどれくらい増やせばいいのかな?」と疑問符が浮かびます。本当に少し増やすだけならば行動数を増やせばいいですが、その数によっては抜本的な変更が必要となるでしょう。

このフィードバックを「まず月間のアポイント件数を20件に増やせるよう、方法を考えてみよう」と言い換えれば、その数字に見合った方法を検討しやすくなります。

「ビジネス数学」というとテクニカルスキルが連想されがちですが、実はこうした「数字を用いたコミュニケーション」を身につける研修でもあるのです。

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