サクセッションプランとは 実施の目的や計画の作り方を解説

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サクセッションプランは、経営戦略上で将来的に必要となる人材を早期から管理・育成するための施策です。その目的として「組織の混乱の回避」「人的資本開示への対応」「経営戦略上の課題の解決策」などが挙げられ、多くの企業で導入が進んでいます。

今回は、サクセッションプランの必要性が高まる背景や実施状況、実施の目的や具体的な計画の作り方について解説していきます。

サクセッションプランとは

サクセッションプランとは、経営戦略上で将来的に必要となる人材を早期から管理・育成するための施策です。古くより欧米で広まっていた取り組みであり、もともとは事業継承者を計画的に育成する施策(後継者育成計画)のことを指す言葉でした。

現在の日本においては、後継者だけでなく管理職を含めた幅広いポジションの管理・育成を行うための施策として認知されており、導入を進める企業が増えています。

サクセッションプランの必要性が叫ばれる背景

サクセッションプランの必要性が叫ばれる背景には、企業が直面している深刻な後継者不足があります。東京商工リサーチの調査によれば、2023年度の「後継者難」による倒産は過去最多を更新して456件に達しており、これで6年連続の増加となりました。

参考:株式会社東京商工リサーチ「深刻な「後継者難」倒産、2023年度は過去最多の456件 代表者の「死亡」「体調不良」が約8割、承継準備が急務」

実際に後継者たり得る人材の不足は、多くの企業が感じています。日本経営協会「人材白書2023」によれば、「人材開発において直面している問題」として、1位が「次世代リーダー層の人材不足」(49.5%)、2位が「管理職の人材不足」(37.2%)と、組織の中心を担うべき人材の不足が浮き彫りとなっています。

参考:一般社団法人日本経営協会「人材白書2023」

後継者不足は将来的に起こり得るリスクではなく喫緊の課題であり、サクセッションプランの必要性が年々高まっているわけです。

サクセッションプランの実施状況

多くの企業が後継者不足による危機に直面していながら、サクセッションプランの実施状況は、より具体的な施策になるほど実施率が低下する傾向にあります。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のプライム市場上場会社を対象とした調査によれば、「後継者候補の選出」については8割以上の企業が実施済または実施予定であると回答し、「後継者候補に対する育成」についても7割以上の企業が実施済または実施予定であると回答しています。

一方で、より具体的な取り組みに目を向けると実施率は低下しており、「後継者候補に対する登用判断のための評価の実施」は40.8%、「後継者計画のロードマップの立案」は35.5%、「人材要件の設定」は31.6%が「実施の予定はない」と回答しています。

参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「『サクセッションプラン』に関するサーベイ結果【2023年度】」

サクセッションプランを実施する目的

サクセッションプランは主に「組織の混乱の回避」「人的資本開示への対応」「経営戦略上の課題の解決策」などを目的として、導入・実施されています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

組織の混乱の回避

サクセッションプランを実施する最大の目的は、組織の混乱の回避です。後継者難による倒産という最悪の結末を防ぐことは言うまでもなく、経営戦略上で必要となる人材を欠いた状態は、組織全体に大きな混乱を招きます。

サクセッションプランはこうした事態を防ぎ、組織の安定的な発展を実現するために実施されるわけです。

人的資本開示への対応

企業には社会的な要請として、後継者育成計画の情報開示が求められています。

その根拠の一つ目として挙げられるのが、コーポレートガバナンス・コードです。コーポレートガバナンス・コードとは、上場企業に求められる企業統治において、ガイドラインとして参照される原則・指針のことです。2015年に金融庁と東京証券取引所が共同で「コーポレートガバナンス・コード原案」を公表、2018年に改訂が行われ、サクセッションプランの必要性に関する記述が追加されました。

もう一つが、ISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)です。ISO30414とは、社内外のステークホルダーに対して、人的資本に関する情報開示を報告するための指針であり、2018年に国際標準化機構(ISO)が定めました。

こちらでも計11項目の指標のひとつとして、「後継者育成計画」が含まれています。なお、ISO30414は事業規模や業種にかかわらず、すべての組織にとっての指針となるガイドラインとなっています。

経営戦略上の課題の解決策になる

サクセッションプランを導入・実施する目的として、経営戦略上の課題を解決する具体的な施策になることが挙げられます。

サクセッションプランは、課題の発見(ポジションの不足)と解決(必要となる人材の育成)をセットで考えられる施策です。人材育成の計画としても必要性・有効性を証明しやすく、社内の理解を得やすいというメリットがあります。

サクセッションプランの作り方

ここからは、サクセッションプランの作り方について順を追って解説していきます。

経営戦略の確認

サクセッションプランを作る際にまず行うべきは、経営戦略の確認です。自社がどのようなビジョンを持ち、経営目標の達成のためにどのような人材を育成すべきなのかを明確にしておく必要があります。

また合わせて、市場における自社の立ち位置などから、戦略の妥当性をチェックしておくことも大切です。この土台となる部分が現実と乖離していると、せっかくサクセッションプランによって育成した人材が、市場の実態とズレてしまうので注意しましょう。

ポジション(ポスト)の決定

次に、サクセッションプランの対象となるポジション(ポスト)を決定します。後継者となる代表取締役の育成を目指す場合もあれば、戦略上で重要となる事業部長を対象とする場合もあります。

この行程はサクセッションプランの内容によって異なるので、「経営戦略の確認」を踏まえて、育成の対象範囲や人数などを明確にしていきましょう。

人材要件の作成と対象者の選出

ここから、サクセッションプランの対象者の選定に入ります。「サクセッションプランの実施状況」でも触れたとおり、約3割の企業はこの段階でサクセッションプランが形骸化しています。

まずはそのポジションに就くにあたり、持っていてほしい能力や経験、本人のモチベーションといった条件を洗い出していきましょう。

その上で具体的に対象者を選出するわけですが、このときタレントマネジメントのような人事データの蓄積がない場合、部門長などが候補者を推薦し、その候補者についてアセスメントを行う方法がスムーズです。

また、将来の事業継承者や経営層などを育成する長期計画の場合、候補者は複数名を挙げておきましょう。

育成プランの立案と実行

対象者の選定が終わったら、いよいよ本格的な育成に入ります。育成プランの内容は、目標となるポジションだけでなく、現状の対象者の能力によっても異なります。そのため、育成プランについてはOJTや外部研修、出向・異動など、様々な方法から最適なものを実行しましょう。

このとき重要になるのが対象者本人の希望で、本人のキャリアプランに反する異動や転勤などを行うと、育成どころか離職リスクが高まってしまうので注意しましょう。

また近年、次世代のリーダーの育成方法として、ストレッチアサインメントが注目されています。前述の三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の調査でも、後継者候補への育成施策としてストレッチアサインメントを実施する企業が過半数を超えているという結果が出ています。

ストレッチアサインメントについては「ストレッチアサインメントとは 導入方法とメリット・デメリットを解説」でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

関連記事:「ストレッチアサインメントとは 導入方法とメリット・デメリットを解説」

進捗確認と改善

サクセッションプランは長期的な取り組みとなる上、ポジションによっては一度きりの施策になることも少なくありません。そのため、実施後の振り返りよりも、定期的な進捗確認と改善が重要になります。

対象者の成長状況を見守りつつ、育成プランの変更や、場合によっては対象者を選定し直すことも選択肢に入れておきましょう。また、技術革新や市場の変化によって、求められるスキルなどに変化が起きることも少なくありません。サクセッションプランはフレキシブルに運用し、常に計画の変更に対応できる体制で推進することが大切です。

サクセッションプランに組み込むべき「数字力」の向上

実際に後継者や管理職の候補者を育成する際、どのような育成手法を取り入れればよいのかとお悩みの方も多いのではないでしょうか。そんな方々にご一考いただきたいのが「数字力」の強化です。

企業では上の階層へいくほど「数字力」が重要になります。プロジェクトに責任を持つ立場となれば予算や利益率に目を向ける必要が出てきますし、さらに上の階層となれば財務諸表も避けては通れません。

一方で、こういった会社運営に関わる数字の見方や扱い方は、OJTではなかなか身につきません。自発的な学習に期待しても、そもそもビジネスパーソンのなかには数字への苦手意識を持つ人も多く、「数字が並ぶ資料を見るのも嫌」という人も少なくありません。

そこでおすすめしたいのが、弊社が提供する「ビジネス数学研修」です。弊社の研修プログラムは「ビジネスシーンで役立つ数字力の向上」を目的としており、各ポジションに応じた数字力を「入門」「基礎」「応用」「実践」の4段階で学ぶことができます。

そのほかにも「”ざっくり”学ぶ財務諸表」や「ビジネスで活用する統計」といったプログラムもご用意しておりますので、より高度な数字を扱うためのステップアップにもぴったりです。

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