目標を数値化するメリットとその方法 企業の事例も解説

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目標の数値化は達成すべき目標を数字によって表すことであり、達成度の把握や行動計画の策定が行いやすくなるメリットがあります。

ただ、一概に目標を数字化すれば良いわけではなく、「プロセスの数値化」や「具体的なイメージ像と合致させる」といったポイントを押さえることも必要となります。

今回は、目標の数値化のメリットとその方法、数値化のポイントについて解説していきます。

目標の数値化とは

目標の数値化とは、達成すべき目標を数字によって表すことです。例えば「お客様から信頼される営業になる」という目標は良い心がけではありますが、ビジネスにおける達成目標としては「達成の基準が曖昧」「何をもって信頼される営業とするか」といった疑問点が浮かびます。

そこで必要となるのが、目標の数値化です。数字という誰の目にも公平な基準を設けることにより、「目標の達成度の把握が容易になる」「目標に向けた行動計画を策定しやすくなる」などの効果が得られ、納得感の高い目標を設定できるようになります。

目標の数値化によって得られるメリット

目標の数値化によって得られるメリットとして、「共通認識が得られる」「進捗・達成度の管理」「公平な評価」などが挙げられます。それぞれ解説していきましょう。

共通認識が得られる

目標を数値化することにより、社内での共通認識を得やすくなるというメリットがあります。

冒頭にも挙げたとおり、「お客様から信頼される営業になる」のような理念的・定性的な目標は達成基準が曖昧で、人によって捉え方が異なるという問題があります。同僚Aから見れば信頼される営業であっても、上司Bから見れば信頼には値しないといった状況が往々にして起こってしまうのです。

その点で、「リピート率◯%以上の成績で信頼される営業と認定する」といった数値化された目標を設定できれば、誰の目から見ても「信頼される営業」の認識がズレることはなくなるのです。

進捗・達成度を管理しやすくなる

目標の数値化によって得られるメリットとして、進捗や達成度を管理しやすくなることが挙げられます。

例えば、月間訪問数100件という目標値に対して、半月が経過した時点で40件しか訪問できていない場合、目標達成がやや厳しいことが浮き彫りとなります。これにより「訪問数が足りていない原因は何か」「残りの半月でどのように改善・修正するか」など、振り返りや計画の修正が行いやすくなるメリットもあります。

公平な評価を行いやすくなる

目標を数値化することにより、誰の目にも公平な基準・指標を設けることができ、評価に対する納得感が高まります。

「お客様から信頼される営業になる」のような定性的な目標について評価を行うと、何をもって信頼とするかの判断基準が人によって異なるため、評価者の価値観によって評価にばらつきが生まれてしまいます。

しかし、目標が数値化されていれば、誰の目から見ても目標を達成したか否かがわかります。公平・公正な評価制度を運用するためには、目標の数値化が必要不可欠なのです。

目標を数値化する方法

目標の数値化は職種や状況によって最適な方法が異なります。ここでは、目標を数値化するための方法について解説していきます。

達成度による数値化

社員一人ひとり性格や能力が異なるため、それぞれが「良い仕事ができた」と感じても、実際の内容・成果を比べてみると差が生じてしまうものです。こうした認識の相違を防ぐために必要なのが、達成度のランク設定です。ランクごとに数値目標を設定することで、自身がどの位置にいて、どの程度の成果を上げているかが一目瞭然でわかります。

なお、達成度のランク設定を行う際には、社員それぞれの状況や能力を考慮しましょう。例えば、新人に中堅社員と同じ数値目標を設定しても、ノルマが高すぎてモチベーションを落としかねません。達成度のランク設定は一律で運用するのではなく、社員の在籍年数や市場の状況などを鑑みて運用しましょう。

プロセス・アウトプットを数値化する

業務の性質によっては、成果を数値化しにくい場合があります。とくにクリエイティブ職やバックオフィスを担う部署などがこの問題に直面しがちです。

こうした職種の目標を数値化したい場合は、プロセスやアウトプットを数値化していきましょう。例えば人事部であれば「研修の企画回数・実施回数」、クリエイティブ職であれば「専門知識の社内への普及」などが挙げられます。

とくに回数を評価する際のポイントとしては、成功回数の評価の割合を上げることが挙げられます。上の人事部の例で言えば、企画回数よりも実施回数の評価を高めてみましょう。これにより、単に企画回数のノルマをこなすだけで終わらず、企画を通すための「質」に意識が向かうようになります。

このように、日々の業務への取り組みや組織への貢献を数値化することで、自ずと目標の数値化へとつながっていきます。

目標の数値化を行う際の5つのポイント

目標の数値化を行う際に押さえておきたい5つのポイントをご紹介します。

経営方針と社員の目標をリンクさせる

目標の数値化を行う場合は、社員個人の目標と会社の経営方針をリンクさせて、目標達成に向けたマネジメントを行いましょう。これにより「社員の主体性が高まる」「人事評価の透明化につながる」といったメリットが得られます。この手法は目標管理制度と呼ばれ、年功序列から成果主義に移り変わるなかで広く導入が進んでいます。

目標管理制度については「目標管理制度(MBO)とは 運用方法やデメリットを解説」で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

関連記事:「目標管理制度(MBO)とは 運用方法やデメリットを解説」

プロセスの数値化を行う

目標となる数値を設定できたら、目標達成のために必要なプロセス・アクションを洗い出して、それぞれ数値化していきましょう。

例えば、採用活動において「○名の採用」という目標を設定したあとは、採用(入社)までのプロセスとして「応募数、書類通過数、一次面接通過数、二次面接通過数、最終面接通過数(内定数)」といった歩留まりを挙げていきます。

※採用における歩留まりについては「採用における歩留まりとは」で詳しく解説しています。

関連記事:採用における歩留まりとは

各フェーズに目標数値を設定することで、詳細な進捗管理と、振り返り時の問題発見につながります。内定辞退数が増加しているのであれば、それに対して「内定者フォローを手厚くする」「内定辞退を想定して各フェーズの通過数を多くしておく」といった改善策を講じることができるわけです。

数値の再現性を大切にする

ビジネスにおける目標は、一度達成して終わりではありません。目標は継続的に達成し、さらに向上していくことが求められます。一発屋ではなく、息の長い安定した活躍が必要となるわけです。

安定した活躍を支えるのが、数値の再現性です。例えば、目標を達成した際、その成功要因はどこにあったのかを把握することで、次の機会でも目標を達成できる可能性が上がります。

仮に「○名の採用」を達成できたとして、その成功要因を「内定辞退の増加を見越して逆算を行い、各フェーズで通過者を多めに見積もった」と分析できれば、次回以降も再現性が高まります。これは失敗してしまった場合でも重要な考え方であり、目標未達に終わった際には原因の把握と改善を行うことで、先々での目標達成の可能性が向上します。

数値目標と具体的なイメージ像を合致させる

数値目標はやる気につながりにくいという問題があります。その原因は、数字だけではイメージが湧きにくい点にあります。入社早々に「新規契約を○件」と目標を提示されても、ほとんどの人はノルマを押しつけられたとしか感じないでしょう。

一方、「お客様から信頼される営業になる」といった理念的な目標は、自身がどのような姿になっているかをイメージしやすいはずです。つまり必要となるのは、数値目標と具体的なイメージ像を合致させることなのです。

ただ数値化した目標を押し付けるのではなく、その目標が社員自身のキャリア形成に結びつくことを示してあげましょう。

定性的な目標と使い分ける

目標の数値化はメリットばかりでなく、デメリットも存在します。そのひとつが、数字から感じるストレスやプレッシャーです。

例として、何も知らない新人社員に目標を伝える場面をイメージしてみましょう。仮に、部署内の平均売り上げ額が100万円だとして、新人社員に「今月は部署の平均売り上げ額を達成しよう」と伝えた場合と、「今月は売り上げ100万円を達成しよう」と伝えた場合、どちらがプレッシャーとなるでしょうか。多くの人は、後者の「100万円」という数字の大きさにプレッシャーを感じるはずです。

このように同じノルマであっても、数値化した目標と定性化した目標では、受け取る側の印象が大きく異なります。そのため、時と場合を考えて、あえて目標を数値化しないこともマネジメントにおいては重要なのです。

なお、定量的な考え方と定性的な考え方の使い分けについては「定量的・定性的の意味 ビジネスにおける使い分けのポイントを解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:「定量的・定性的の意味 ビジネスにおける使い分けのポイントを解説」

目標の数値化にまつわる企業事例

最後に具体的な企業の事例を取り上げて、目標の数値化をどのように活かしていけばいいかを考えていきます。

星野リゾート

ホテル業界のなかで急成長を続ける星野リゾートでは、2016年まで「リゾート運営の達人になる」という経営ビジョンを掲げ、これを数値目標として示そうとした時期があったそうです。しかし、現在では経営ビジョンと数値目標の設定は切り離されています。

その理由は、「達人」という言葉に幅広い意味を持たせておきたかったからだそうです。達人に対して具体的な数値目標を示してしまうと、どうしても業績や利益といったお金の話に焦点が定まってしまいます。

しかし、代表の星野氏は「達人」の定義はその時々で変わっていいものであり、業績やお客様満足度、社員のやりがいなどを集約した言葉として捉えたいと考え、あえてビジョンと数値を切り離したというわけです。

参考:ダイヤモンド・オンライン「星野リゾート代表に聞く。ビジョンと数値目標が「混ぜるな危険」である理由」

識学

組織コンサルティングを手がける識学は、2023年に「経営者のための数値化マネジメント解説」というセミナーを実施し、様々な観点から数値化の重要性を伝えました。

そのなかで、目標の数値化に欠かせない取り組みとして挙げられたのが「変数」に注力させることです。変数とは、自らの力で変えることができて、結果に影響を与える数字のことです。

例えば営業に赴く際、プレゼン資料の枚数と営業トークの長さは自らの力で変えることができますが、どちらも変数になるわけではありません。このとき、プレゼン資料の枚数を変えても営業成績に差はなかったが、営業トークの長さを変えたら営業成績が上がったという結果が出た場合、営業トークの長さが「変数」となるわけです。

対して、自らの地位や権限では変えることができない数字を「定数」といい、目標の数値化にあたっては「定数」に意識を向けさせないことがポイントとなります。

例えば、競合商品の知名度の高さは個人ではどうしようもない数字であり、「競合の知名度が高くて、自社の商材が売れない」と嘆いていても成果は上がりません。競合の知名度が高い市場であることを受け入れたうえで、自身の成功につながる「変数」を見つけることが大切なのです。

参考:ログミーBiz「メンバーが語る「商材が弱くて」「競合が強くて」への納得はNG 部下の成長を促す、「定数」と「変数」を認識したマネジメント」

目標の数値化を行うために必要なのは「数字力」

目標の数値化は公平な評価や円滑な進捗管理などにつながり、ビジネスシーンに欠かせない取り組みです。

しかしその一方で、残念ながらすべてのビジネスパーソンがうまく目標を数値化できるわけではありません。例えば、数字を扱うことが苦手な人ほど正確な数字にこだわり過ぎてしまい、目標設定が遅々として進まないという失敗を犯しがちです。未来を完璧に予想することは不可能なわけですから、ビジネスシーンではざっくりと素早く数字を導き出すことも大切なのです。

こうした「ビジネスシーンで役立つ数字力」を磨くのが、弊社オルデナール・コンサルティング合同会社が提供する「ビジネス数学研修」です。数字力が上がれば、納得感の高い目標値を素早く設定できるようになり、目標の数値化がスムーズに進むでしょう。 「部下が納得感する目標値を設定できない」「いつも行動計画に修正が入る」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご検討ください。

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