事業戦略とは、企業の各事業において、市場のなかで優位に立つために目標を設定し、その達成に向けた計画を実行することです。
事業戦略を立てるためには「現状の分析」「戦略のアイディア出し」「実現可能性の検証」などの取り組みが必要であり、それぞれ各種のフレームワークを活用することが効果的です。
今回は、事業戦略の概要と経営戦略との違いを解説したうえで、事業戦略の立て方と活用すべきフレームワークについて解説していきます。
事業戦略とは
事業戦略とは、企業が推進する各事業において、市場のなかで優位に立つために目標を設定し、その達成に向けた計画やアイディアを実行することです。
人手不足やニーズの多様化・細分化が進む現在、経営資源を適切かつ効率的に分配し、競合他社と差別化した戦略を実行しなければ、事業の成功は実現し得ないでしょう。そのために求められるのが事業戦略なのです。
事業戦略と経営戦略の違い
経営戦略とは、企業が経営目標や長期的なビジョンを達成するために策定する大局的な計画・方針のことです。
上の定義からもわかるとおり事業戦略と経営戦略の違いは、事業戦略の対象が事業のみであるのに対し、経営戦略は会社全体の活動を対象とします。事業戦略は、経営戦略の一部であると言い換えてもよいでしょう。

事業戦略の立て方
ここでは、事業戦略の立て方を流れに沿って解説していきます。
現状の分析
事業戦略を立てる際は、現状の分析から取りかかりましょう。具体的には、自社の市場における立ち位置や、競合他社と比較した際の強み・弱みを客観的に把握しておく必要があります。自社の立ち位置や強みなどによって、戦略は変わってくるからです。
また、市場のニーズや社会・経済の状況といった外部環境にも目を向けて、自社の事業にどのような影響を及ぼすのかについて検討することも大切です。
事業目標の設定
次に、現状分析の結果と経営戦略に基づき、事業目標を設定しましょう。ポイントとしては「計測可能な定量的目標であること」「市場や自社の現状を踏まえた達成可能性を考慮すること」が挙げられます。
また、事業目標は経営目標よりも現場に近いものですから、社員がその内容や必要性に納得するものでないといけません。
戦略のアイディア出し
事業目標を設定できたら、目標達成に向けて戦略のアイディア出しを進めていきます。現状分析の結果を踏まえ、自社の強みを活かしつつも外部環境の状況を考慮したアイディアが理想となります。なかでも他社との差別化や技術的な優位性は自社の利益に直結するため、積極的に取り入れていきましょう。
また現代はVUCA時代と呼ばれるように、ビジネス環境が複雑化し、将来の予測が困難な状態にあります。ですからひとつのアイディアに固執することなく、状況変化に応じてプランを変更できる柔軟性も求められます。
実現可能性の検証
アイディア出しが進んだら、実現可能性の検証に移ります。それぞれのアイディアについて、必要となる金銭的・人的コスト、予想されるリスクとリターン、法的な規制などから実現可能性を評価していきます。
この段階で潜在的な問題まで検証できると、実際に戦略を実行した際の成功確率をより高めることができるでしょう。
計画の立案と実行
実現可能性を踏まえて実行すべき戦略が定まったら、人員配置やスケジュール、アクションプランなどをまとめて実行計画として策定し、社員へ周知しましょう。
また、想定した成果が出ているか評価するために進捗確認を怠らず、必要に応じて調整や修正を行うことも大切です。

事業戦略の策定に活用できるフレームワーク
「事業戦略の立て方」について解説しましたが、「実行するノウハウがない」という組織も多いかもしれません。そんなときはフレームワークを活用してみましょう。ここでは、事業戦略の策定に活用できる代表的なフレームワークについて解説していきます。
SMARTの法則
SMARTの法則は、目標設定のためのフレームワークです。SMARTは目標達成の可能性を上げる要素について示されており、以下の5つの頭文字によって構成されています。
Specific:具体的
Measurable:測定可能
Achievable:達成可能
Relevant:関連性
Time-bound:明確な期限
これらの要素を満たすことでより良い目標を設定できるので、事業目標の設定時に活用することをおすすめします。
なお、SMARTの法則については「SMARTの法則とは 具体例やメリットについて解説」で詳しく解説しています。
SWOT分析
SWOT分析は、事業の状態を内部・外部、プラス・マイナスの要因から分析するフレームワークです。SWOTはStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字であり、以下の軸によって分類されます。
内部環境:強み、弱み
外部環境:機会、脅威
プラス要因:強み、機会
マイナス要因:弱み、脅威
「現状の分析」の際にSWOT分析を活用すれば、自社の状況を客観的に把握できます。とくにチャンスとリスクの両面を検討できる点がSWOT分析の強みといえるでしょう。
なお、SWOT分析のやり方については「SWOT分析のやり方 実施の目的や得られるメリットを解説」で詳しく解説しています。
3C分析
3C分析は、環境分析のためのフレームワークです。3Cは「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の頭文字であり、これらを分析することで自社を取り巻く環境について網羅的に理解することができます。
例えば、市場と顧客を分析したうえで自社分析を行うことで、客観的に自社の強みと弱みを整理できます。また、顧客のニーズを理解し、競合他社に欠けているものを掴むことができれば、事業戦略の最適化につながるでしょう。
なお、3C分析のやり方については「3C分析のやり方 実施する目的やメリットを解説」で詳しく解説しています。
PEST分析
PEST分析は、自社を取り巻く外部環境をマクロな視点から分析するフレームワークです。
PESTは政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の頭文字であり、企業活動に影響を与える環境要因を網羅的に確認することがPEST分析の目的となります。
注意点として、PEST分析は長期的な計画の策定に用いられるものであり、短期的な行動計画の策定などには不向きです。
なお、PEST分析のやり方については「PEST分析のやり方をわかりやすく解説 実施の目的やメリットとは」で詳しく解説しています。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、市場分析に活用されるフレームワークです。具体的には、業界の構造や収益性を把握するために以下の5つの要素について分析を行います。
・業界内の競合の脅威
・新規参入の脅威
・売り手の交渉力
・買い手の交渉力
・代替品(サービス)の脅威
これらを分析することにより「経営資源・リソースの最適化」や「新規参入・事業撤退の判断」などの根拠となります。
なお、ファイブフォース分析のやり方については「ファイブフォース(5F)分析のやり方や目的をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
4P分析
4P分析はマーケティング戦略を検討・立案するためのフレームワークです。4PはProduct(製品・サービス)、Price(価格)、Place(流通・提供方法)、Promotion(販促活動)の頭文字で構成されています。
これらを分析することで市場において、どのような製品・サービスを、いくらで、どのようにして提供し、どうやって宣伝を行うかという一連の流れを検討できます。
なお、4P分析のやり方については「4P分析のやり方 3C分析との関係や7P分析について解説」で詳しく解説しています。
事業戦略の立案に欠かせない「数字力」を伸ばそう
事業戦略を立案する際に避けては通れないのが「数字」です。目標値や採算性、経営資源の配分などを客観的かつ公平なかたちで示すためには、数値化が欠かせません。「市場規模に見合った目標値か」「流通や広告でどの程度のコストが必要か」など、様々な角度から数字を確認して妥当性を検証する必要があります。
しかし、こうしたビジネスにおける数字について学ぶ機会は、そうあるものではありませんよね。弊社の「ビジネス数学」は、まさにこのようなビジネスにおける数字やデータの活用方法についてお伝えする人材育成プログラムとなっております。
ここで少しだけ弊社の研修内容をご紹介しましょう。下のグラフはある市場の企業別売上高を示すものであり、市場調査の際に似たデータを確認することがあると思います。

課題の内容は「グラフから読み取れる事実・仮説を10個以上を挙げる」というもので、狙いは「現状把握」「仮説立案」「検証・実行」のプロセスを学ぶことにあります。事業戦略の流れを実践的に学ぶことができる課題といえるでしょう。
このように弊社では、ビジネスシーンで求められる「把握力、分析力、選択力、予測力、表現力」をまとめて「数字力」として示し、データから将来を見通す力や、数字から情報を読み解く力などを学ぶプログラムをご用意しております。
また、弊社では企業向けの「ビジネス数学研修」だけでなく、個人向けのオンラインサロン「社会人の数字力向上サロン」も運営しております。
サロンでは「起業を目指しているので数字への苦手意識を克服したい!」「事業戦略を立案するために財務諸表の見方や、統計データの見方を学びたい!」といった方々が互いに高め合っていますので、「なかなか勉強が続かない……」という方でも励まし合いながら学習を継続できる環境が整っていますよ。
弊社の研修プログラムやビジネス数学について「もっと詳しく知りたい!」と思っていただけましたら、ぜひお気軽に以下のリンクからお問い合わせください。
オルデナール・コンサルティング合同会社は「ビジネスで活用する数字力向上」に特化した人材教育サービスをご提供します
続きを読む