ビジネスにおいて問いかけは「相手の考えるきっかけとなる問い」「相手のことを掘り下げて理解するための質問」などの意味を持った、コミュニケーションを促進させる手法です。
その効果としては「内省を促す」「新たな視点の獲得」「信頼関係の構築」などが挙げられます。
今回は、ビジネスにおける問いかけの意味や効果、手法、ポイントなどを解説していきます。
ビジネスにおける問いかけとは
問いかけの意味を辞書でひくと「問うこと、質問すること」とあります。ただ、ビジネスシーンにおいては「相手の考えるきっかけとなる問い」「相手のことを掘り下げて理解するための質問」といった意味合いで拡大解釈されており、コミュニケーションを促進させる手法として用いられています。単に「Yes・No」を確認する質問とは大きく異なるわけです。
とくに問いかけは対象に対して様々な効果をもたらすことから、人材育成に欠かせないテクニックとなっています。

問いかけの効果
問いかけをすることで、対象に様々な変化をもたらすことができます。問いかけの効果として、それぞれ解説していきましょう。
内省を促す
まず問いかけの効果として挙げられるのが、内省を促すことです。プロジェクトや研修の終わりなどに問いかけを行うことで、相手のなかで「振り返り」が始まります。
これによって新たに教訓を得られたり、修正点に気付くことができたりするので、成長が加速するきっかけとなるでしょう。
とくに他人から指摘されるのではなく、問いかけを通じて「自分で気付く」ことで納得感が生まれやすくなります。納得感があれば責任感も芽生え、その後の改善などにも自発的に取り組むことが期待されます。
新たな視点の獲得
問いかけは、対象に新たな視点を獲得させる効果もあります。対象が課題に直面して行き詰まっているときなどに問いかけることで、視点を変えるきっかけとなるでしょう。
例えば、なかなか営業成績が上がらず新たな方法論ばかりを模索する部下に対し、「クライアントから見て、不満を感じている部分はどこだろう」と問いかけることで、「買い手側に目線で考える」という新たな視点を与えることができるわけです。
物事に行き詰まっているときほど視野が狭くなっているものですから、問いかけを通じて物事の捉え方を変える「リフレーミング」を促してあげましょう。なお、リフレーミングについては「リフレーミングとは やり方や効果を具体例で解説」でも詳しく解説しています。
思考の交通整理
問いかけの重要な効果として、思考の交通整理が挙げられます。ビジネスシーンではときに原因不明の問題や、何から着手すればいいのかわからないほどの課題に直面することがあります。
ただ、そうした場面で「○○をやりなさい」と指示してしまうと、問題は解決できても「なぜそれを行うべきなのか」がわからず、成長につながりません。
その点、問いかけはキャパオーバーの渋滞を交通整理するような役割を果たし、思考の流れをスムーズにしてあげる効果があるわけです。「当初の目的へ立ち返る」「現状で打てる施策を精査する」など、客観的な視点で道筋を示してあげることで次に取るべきアクションも明確になり、問題解決へ近づくでしょう。
信頼関係の構築
対象と信頼関係を構築したいと考える際も、問いかけは有効な手段となります。
近年、1on1を導入する企業が増えていますが、関係性が構築されていないうちは表面的な受け答えが繰り返されるばかりで、本音を引き出すことができません。そんな場面で必要となるのが問いかけです。
相手の考えていることや、ふと漏れた本音を拾い上げて問いかけることにより、話を広げて深堀りすることができます。ただし、相手の話に関心を持って傾聴していることが伝わらないと、問いかけても本心を引き出すことはできません。
とくに「最近気になっていることはある?」といった雑な質問は「問いかけ」にはならないので注意しましょう。

問いかけの手法
問いかけの手法は大きく「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」に分けられます。それぞれ解説していきましょう。
オープンクエスチョン
オープンクエスチョンとは、回答範囲に制限を持たせず、自由に答えてもらえるような質問の方法です。「引き出せる情報の幅が広がる」「会話がつながりやすい」といったメリットがある一方、「選択肢が多いがゆえに回答者の心理的負担となる」「信頼関係がないと本音を隠される」といったデメリットもあります。
こうしたデメリットを打ち消すために、5W1Hを用いて答えの範囲をある程度制限することも効果的です。例えば「新たな視点の獲得」で解説した、買い手側に立って考えるという問いかけは、Who(誰)に焦点を絞ったオープンクエスチョンとなります。
なお、5W1Hについては「ビジネスシーンで役立つ5W1H 5W2Hや6W2Hとの違いとは」でも詳しく解説しています。
クローズドクエスチョン
クローズドクエスチョンとは、「はい・いいえ」の二者択一のように、質問者側が回答の範囲を限定する質問方法です。
クローズドクエスチョンによる問いかけは、質問者側で選択肢を絞ってあげるときに用います。これはとくに「思考の交通整理」の際に有効で、相手が選択肢すら見つけることができないときに「◯◯と△△ならどちらがいいかな?」と問いかけることで、相手をおおよその答えに誘導する……というテクニックが代表的です。
自分で一から答えを見つけたときほどの経験値は得られませんが、「自分で決断した」という納得感が得られます。オープンクエスチョンのほうが高い成長効率が期待できますが、必ずしも良い回答にたどり着けるわけではありません。クローズドクエスチョンによって相手を導いてあげることも、問いかけを成功させる秘訣といえるでしょう。

問いかけのポイント
最後に、問いかけを行う際のポイントをお伝えします。
まずは相手の話を聞く
問いかけの最大のポイントは、まず相手の話を聞くことです。相手の置かれている状況や考え、不安要素などを聞き取り、掘り下げるべきポイントを見極めましょう。
とくに、相手がすでに考えたことや試した方法について問いかけてしまうと、相手は「そんなことはもう考えた(試した)」と感じ、反感を買う恐れがあります。
また話を聞いていると、つい解決策を提示したり、自分の考えを押しつけたりしてしまいますが、これらをやってしまうと問いかけの意味がなくなるので気をつけましょう。
相手のこだわりを引き出す
問いかけの重要なポイントとして、相手のこだわりを引き出すことが挙げられます。問いかけは言葉遣いを間違えると、相手を萎縮させてしまう恐れがあるからです。
例えば「どうしてこの企画をやろうと思ったの?」と聞かれたら、人によっては詰問されているような感じがしますよね。ですから「この企画で、とくに大切にしているところはどこ?」といった問いかけをすることが大切です。
こだわりと固定観念を見極める
「相手のこだわりを引き出す」と合わせて重要なポイントとなるのが、こだわりと固定観念を見極めることです。
相手の考えや意見が様々な選択肢を考慮したうえで選ばれたものなら、できる限り尊重してあげるべきでしょう。しかし「流行の手法だから」「前回も成功したから」といった固定観念に捕らわれたものである場合、ストップをかけるべきです。
人間の意志決定には必ずバイアス(先入観・思い込み)がかかります。問いかけは、こうした無意識の偏見に気付かせてあげる意味もあるのです。なお、バイアスについては「ビジネスにおけるバイアスの種類とその対策」でも詳しく解説しています。
効果的な問いかけを身につけたいなら「ビジネス数学研修」
問いかけの本質は「正解のない場面で、相手が答えに辿り着けるよう支援すること」にあります。実はこれは、弊社の「ビジネス数学研修」とも深く共通する部分です。
例えば、下の表は弊社の「ビジネス数学研修」で出題している課題で「この5店舗のなかから優秀店をひとつ選び、報奨金を与えるとします。あなたはどの店舗を選びますか」というものです。

この課題の最大のポイントは「評価基準が変わると結果(選ぶ店舗)が変わる」ということです。「売上が一番高い店舗」「従業員が効率的に働いている店舗」など、評価基準をどこに置くかが重要となるわけです。
そしてこの問題の難しいところは、どの評価基準を選んでも決して間違いではないということです。当然、上司の立場であれば「どうしてその店舗を優秀店として選んだの?」と問いかけるでしょう。
このようにビジネスでは、明確な答えがないなかでも選択を迫られる場面が多々あり、選択の根拠を引き出すための問いかけが重要となります。弊社の「ビジネス数学研修」では、まさにそうした「選択力」を伸ばすプログラムをご用意しておりますので、効果的な問いかけを身につけるのに最適な内容となっております。
また、個人で「ビジネス数学を学びたい!」という方には、弊社が運営するオンラインサロン「社会人の数字力向上サロン」をおすすめしております。サロンでは時事ネタなどをテーマとして、楽しみながら数字やデータに触れてスキルアップできる環境が整っていますよ。
弊社の「ビジネス数学研修」や「社会人の数字力向上サロン」について、少し興味を持っていただけたのではないでしょうか。「もっと詳しく知りたい!」と思っていただけましたら、お気軽に以下のリンクからお問い合わせください。
