人事が知るべき配属ガチャ 甘えとはいえない背景と6つの対策

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配属ガチャは新卒での入社時、自分の意志とは関係なく配属先や勤務地を決定されてしまうことを「ガチャ」になぞらえた言葉です。

日本型雇用システムが崩れつつある現在、こうした価値観の変化は「甘え」とは言い切れず、企業側は新卒者の不安を解消するための対策を講じていく必要があります。

今回は、配属ガチャの「ハズレ」とされる状況や、配属ガチャが話題となる背景、企業側が講じるべき対策などについて解説していきます。

配属ガチャとは

配属ガチャとは、新卒での入社時、自分の意志とは関係なく配属先や勤務地を決められてしまう状況を「ガチャ」になぞらえた言葉です。

ガチャは「ガチャガチャ」とも呼ばれるカプセル自動販売機が発祥で、ソーシャルゲームのシステムとして活用されて以降は、インターネットミームとして「自分の意思や努力では決定できないランダム性」をガチャと表現し、広く用いられるようになりました。「親ガチャ」が新語・流行語大賞にノミネートされたことも、記憶に新しいのではないでしょうか。

配属ガチャのハズレとは

配属ガチャのハズレとされるのは、一般的に以下のような状況を指します。

・自身の希望とは異なる職種、仕事内容に配属された

・生活環境が大きく変わってしまうような勤務地に飛ばされた

・残業が多い、ノルマが厳しいといった部署に配属された

・人間関係に恵まれない

とくに「残業・ノルマ」「人間関係」は、他部署との比較によってハズレと感じやすくなります。同期がホワイトな部署に配属されれば、相対的に「自分はハズレだ」と感じやすくなるわけです。

配属ガチャは「希望とは異なる部署に配属されること」と安易に考えられがちですが、実は企業側の環境整備に原因がある場合もあるのです。

配属ガチャが甘えとはいえない背景

新卒採用において企業側が配属先を決める仕組みは、日本型雇用システムを下地とした「メンバーシップ型雇用」がもとになっています。

企業は学生を総合職として採用した後、本人の適性や希望などを踏まえつつも、人員計画に基づいて配属先を決定します。日本の働き方は就職ではなく「就社」といわれるのは、このシステムが長らく主流だったためです。

この仕組みが現在になって「配属ガチャ」として話題に挙がるようになったのは、終身雇用制度の崩壊や働き方の多様化を受けて、働き手側の価値観が変化したことの表れでしょう。つまり、「自分が希望する仕事に就けないことや、働く場所を選べないことはおかしい」という考え方が一般化してきているわけです。

実際にこうした傾向は、データとしても表れています。マイナビの調査によれば「入社後の配属先(勤務地・職種)に関する考え方として、一番近いもの」という問いに対し、「勤務地・職種ともに自分で適性を判断して、選びたい」が54.9%と最も多い回答となりました。

ただ一方で、「勤務地は自分で選びたいが、職種は適性をみて会社に判断してほしい」が30.8%で二番目に多い回答となっており、約3割の学生は「会社に配属先を決めてほしい」と考えていることは、記憶に留めておくべきでしょう。

参考:株式会社マイナビ「2024年卒大学生活動実態調査 (6月)」

配属ガチャへの対応を怠るリスク

配属ガチャでハズレと判断された場合の最大のリスクは、早期離職です。「自分のやりたい仕事ができない」「勤務地が遠くてライフスタイルが変化してしまう」といった不満を感じれば、離職・転職を選択する可能性が高まります。

新入社員が早期離職してしまえば、それまでにかかった採用・育成コストが無駄となり、新たに人員を補充するための採用コストも発生するため、大きな損失を生みます。

また、離職まで至らなくても、モチベーションの低下による生産性や成長効率の低下も懸念すべき問題となります。

配属ガチャを解消するための6つの対策

新卒社員の配属ガチャへの不安を解消するためには、どのような取り組みが必要となるのでしょうか。ここでは、6つの対策について解説していきます。

ジョブ型雇用の導入

配属ガチャの抜本的な解決策となるのが、ジョブ型雇用の導入です。ジョブ型雇用とは、職務内容や役割をもとにして、それに適した人材を採用する方法です。

これまでの新卒採用は、人材を確保してから職務を割り振る「メンバーシップ型雇用」が主流でした。しかしマイナビの調査によれば、24年卒の採用活動ではすでに6割以上の企業が「職種別コース」(一部対応を含む)を用意していることが明らかとなっています。

参考:株式会社マイナビ「2024年卒企業新卒採用活動調査」

応募の段階から職務内容が定まっているジョブ型であれば、配属によるギャップは生じません。ただ前述のとおり、「職種は適性をみて会社に判断してほしい」と考える学生も一定数いるため、柔軟かつ慎重な採用計画の立案が求められます。

なお、採用計画については「採用計画の立て方 5つのステップと3つのポイントから解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:「採用計画の立て方 5つのステップと3つのポイントから解説」

選考段階でのミスマッチの解消

選考段階でも、ミスマッチの解消を徹底しなければいけません。まずはホームページや会社説明会で「1日の仕事の流れ」「職種別のキャリアパス」などを発信し、面接時の質問も業務内容や経営方針を踏まえた内容で自社とのマッチ度を測っていく必要があります。

「売り手市場」のため、少しでも自社に良い印象を持ってもらいたいと考えがちですが、事前に包み隠さず情報を伝えておくことで、配属ガチャの不安や早期離職を防げるのです。

入社前に配属先・業務内容を告知する

入社前に配属先を告知することで、実際に配属ガチャの不安が解消されることが明らかとなっています。

マイナビの調査によれば、内定者フォローの一環として「面談で何を話したことで不安が軽減されたか」という問いに対し、「具体的な業務内容」を挙げた学生が55.1%と最も多く、これは2位の「待遇について」よりも20%以上も多い回答となっています。

参考:株式会社マイナビ「2023年卒大学生活動実態調査 (6月)」

しかし、マイナビの別の調査では、学生側の希望と企業側の対応にギャップが生じていることが判明しています。「入社後の配属先についてどの時点で知りたいと思うか」という問いに対し、学生側の86%が「入社前に配属先を知りたい」と希望している一方、入社前に「業務内容」を告知している企業は57.8%、「勤務地」を告知している企業は60.8%に留まっています。

参考:株式会社マイナビ「2023年卒大学生活動実態調査 (8月)」

企業側には、早期に配属先や業務内容を通達するための体制作りが求められているといえるでしょう。

内定者研修・内定者フォロー

入社前の段階で適性を見極めて配属先を決めるためには、内定者研修を通じて実際に行動や性格などを確かめる必要もあるでしょう。内定者研修は多くの場合、内定辞退の防止や学生の即戦力化を目的として実施されますが、そのなかでスキルや経験値などから適性を確認していくわけです。

また、内定者フォローの取り組みを通じて、各部署の業務内容や先輩社員の人柄などを伝えておくことで、内定者の不安解消につながります。疑問や不安が解消されれば配属への納得度も上がり、配属ガチャのハズレ感も薄らぐでしょう。

なお、内定者研修については「内定者研修とは 内容や違法になる例を解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:内定者研修とは 内容や違法になる例を解説

1on1による配属先決定の説明

1on1は、配属後の悩みや不安の解消に欠かせない取り組みとなります。1on1は、上司と部下によって定期的に実施される面談制度のことで、社員の意見を聞き取る場を設けないと、配属への不満を表に出さずに早期離職してしまう恐れがあります。

とくに必要となるのは、「当人のどこを評価して配属先を決定したのか」「どういったキャリアを進んでほしいと期待しているか」についての説明です。新卒社員に「経営戦略や人員計画に基づいた配属」と説明しても、「会社の都合を押しつけられている」と思うだけで納得感は得られません。

なお、1on1については「1on1の目的 話すべきことや導入の流れを解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:「1on1の目的 話すべきことや効果を上げるポイントを解説」

メンター制度の導入

メンター制度とは、他部署の先輩社員が新入社員のサポート役となり、メンタルケアなどを含めてアドバイスを送る取り組みです。メンター制度の特徴は「他部署の先輩がメンターを務めること」にあり、上下関係や利害関係などに捕らわれずコミュニケーションを取れる効果があります。

他部署の先輩と交流を持つことで自身の配属を多角的に捉えるきっかけとなり、キャリアプランも広がります。ハズレと感じていた配属ガチャも、受け取り方が変化することが期待されます。

なお、メンター制度については「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」

納得感のある配属を行うために必要な「データ活用」

人材を適性に合ったポジションに配置することは、経営目標の達成や課題解決へとつながります。では、適切な配属を行うために何が必要かといえば、社員の様々なデータを収集・分析することです。

「最近はツールを導入すれば、データの管理や処理は自動でできる」と考える方は多いですが、ツールは具体的な施策までは提示してくれません。

データを読み解いて具体的なアクションにつなげるためには、ツールだけでなく人間側の「データリテラシー」が不可欠なのです。つまり、人事担当者にはデータの収集力・分析力を含めた「データリテラシー」が求められるわけですが、社内に適任の人材はいるでしょうか。

データ活用人材の不足に悩む企業におすすめしたいのが、弊社の「ビジネス数学研修」です。数字に対する苦手意識の克服から、実務で活きるデータの具体的な活用方法まで、受講者のレベルに合わせた「数的センス向上トレーニング」で実践的なデータリテラシーを育みます。

「配属先を検討するためには、どんなデータが必要なのか」「新卒社員が納得するようなデータ(根拠)の示し方がわからない」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修をご検討ください。

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