内定者研修とは 内容や違法になる例を解説
内定者研修は、内定通知後の入社前の段階で実施する研修です。昨今の内定辞退率の上昇を受けて、注目度が高まっている研修のひとつです。その一方で実施例はまだ少なく、ノウハウがあまり蓄積されていないため、具体的にどのような内容で行うべきか悩んでいる人事担当者も多いことでしょう。
今回は、内定者研修の目的や内容、違法となってしまう例、効果的な研修にするためのポイントなどを解説していきます。
内定者研修とは
内定者研修とは、内定通知後の入社前の段階で、内定者に対して実施する研修のことです。主に新卒採用で、学生を対象として行われる研修となります。
内定者研修はいつから行うべきか
内定者研修を実施するタイミングは明確に決まっていませんが、一般的には内定式以降にスケジュールを組み、学生の負担を考えて長期休暇期間中に行う企業が多いようです。
実施回数についても特に基準はなく、「1ヶ月に1回」「入社までに数回」など企業によって異なります。
内定者研修は違法なのか
内定者研修は違法なのかという指摘がありますが、内定者研修への参加を義務としつつ賃金を支払わなかった場合、違法となる可能性があります。
ポイントは、内定者研修が労働時間と見なされるかです。会社からの指示で強制参加であり、一定時間拘束されるのであれば、一般的に労働時間であると認められるため賃金を支払う必要があります。
そのため内定者研修においては、参加を義務とするかが焦点となります。参加を義務とする場合、初任給をベースとして時給を定めて、賃金として支払うなどの対応が求められるでしょう。
内定者研修の目的
新入社員研修とは別に、なぜ内定段階で研修を行う企業が増えているのでしょうか。内定者研修の目的について解説します。
内定者の不安解消
内定者研修の主要な目的のひとつに、内定者の不安解消が挙げられます。
内定者は初めて本格的に社会人として働く不安だけでなく、「この会社を選んで正解だったか」という葛藤、いわゆる「内定者ブルー」に陥ることがあります。こうした不安を払拭し、安心して入社日を迎えられるようサポートするのが内定者研修なのです。
即戦力になるよう成長を促す
内定者研修は、本来であれば新入社員研修で実施するビジネスマナー研修やOAスキル研修を内定段階で済ませて、即戦力に近づける意図もあります。
内定者にとっても入社後に研修を詰め込まれるより、入社前の余裕のある段階から学んでいくことで負担が軽くなるでしょう。一方で、即戦力を目指す意図での内定者研修は、学生としての最後の時間を過ごす内定者の意欲を減退させる恐れもあります。
内定辞退の防止
近年、採用担当者の頭を悩ませているのが、内定辞退です。少子高齢化による人口減を背景に、優秀な学生は多くの内定を獲得しています。リクルート(就職みらい研究所)の調査によれば、2023年卒の大学生の内定取得数は平均2.5社となっており、内定辞退率は65.8%と非常に高い数値となっています。
※就職内定辞退率=就職内定辞退人数÷就職内定取得人数
参考:株式会社リクルート(就職みらい研究所)「就職プロセス調査(2023年卒)」
内定者研修は内定承諾後に実施するものではありますが、この段階でも内定辞退は十分に起こりえます。内定者研修は内定者のエンゲージメントを高めて、内定辞退による人材流出を食い止める「内定者フォロー」の意味合いもあるのです。
なお、内定辞退率については「内定辞退率とは 2023年までの推移や辞退を招く原因を解説」で詳しく解説しております。
関連記事:「内定辞退率とは 2023年までの推移や辞退を招く原因を解説」
内定者研修の内容
入社前の段階から研修を詰め込みすぎると、内定者の不安を助長させてしまいます。内定者研修は目的に合わせて厳選した内容で実施しなければいけません。ここでは、よく実施される内定者研修の内容(プログラム)をご紹介します。
会社説明やレクリエーション
初回の内定者研修では、事業の説明や内定者同士のレクリエーションなど、内定者の安心感を高める取り組みを実施しましょう。
とくに内定者同士の交友関係の構築を促すことで、同期としての連帯感が高まり、内定辞退の防止にもつながります。簡単なチームビルディング研修のプログラムを組み込むのも効果的でしょう。
ビジネスマナーと心構え
内定者研修の代表的な内容として、ビジネスマナー研修や社会人としての心構えを学ぶ取り組みが挙げられます。入社前にあいさつや言葉遣いなどを学び、社会人として求められる意識や心構えを身につけておけば、内定者も安心して入社日を迎えられます。
OAスキル研修
近年の内定者研修で重要度が高まっているのが、OAスキルの研修です。
少し前の世代であれば、日常生活からパソコンを使うことが当たり前だったため、多くの学生が最低限のOAスキルを身につけていました。しかし現在はスマートフォンで全て事足りてしまうため、OAスキルをほとんど身につけていない学生が増えています。
基礎的なOAスキルがないと、OJTで業務を学ぶ際にも余計な時間がかかってしまいます。また、社内で活用しているツールなどの使用方法を学んでおくと、入社後の研修などがよりスムーズになるでしょう。
効果的な内定者研修にする4つのポイント
内定者研修をより効果的なものにするために、研修内容を考える際や、実際の進行時のポイントをお伝えしていきます。
研修の目的を明確にする
内定者研修を行う際は、その目的を明確にしておく必要があります。
内定者はまだ学生ですので、学業の妨げにならないよう配慮することが前提となります。必然的に内定者研修を実施できる日数は限られてくるため、短い時間のなかで何に比重を置いて研修を行うかが重要となるのです。
内定辞退を防ぎたいのであれば、内定者同士の交友を深めるようなレクリエーションを多く実施するといった具合に、目的に沿ったプログラムを構築しましょう。
内定者のスキル・経験を確認しておく
内定者の育成を目的にプログラムを組む場合、事前に内定者のスキル・経験を確認しておきましょう。
近年の学生は積極的に就職ガイダンスやインターンシップなどに参加しているため、入社前からビジネスパーソンとして一定のレベルに達している場合もあります。例えば「内定者全員が長期インターンシップの経験者」といった状況であれば、ビジネスマナー研修などは省略してもよいかもしれません。
逆に前述のとおり、一部の学生はパソコンの操作に慣れていない場合もあります。内定者のスキルと経験を確認したうえで、研修内容を検討するとよいでしょう。
無理のないスケジュールを組む
内定者はまだ入社前の学生であるため、会社主体でスケジュールを組むわけにはいきません。
ただ一方で、学生が都合を合わせやすい冬休みや春休みは企業にとっての繁忙期にあたることから、内定者研修はスケジュール調整が難航する場合もあります。都合を合わせやすいオンライン研修やeラーニングの導入なども検討すべきでしょう。
実施したい研修内容と実施時期・日数のバランスを見極めて、無理のないスケジュールを組むことが大切です。なお、研修のスケジュールの組み方については「研修スケジュールの設定とその流れ」で詳しく解説しています。
関連記事:「研修スケジュールの設定とその流れ」
振り返りと改善
内定者研修は成果が見えにくい研修であるがゆえに、実施後の振り返りと改善が重要になります。
とくに成果の確認として内定辞退率を分析する際は、慎重に行いましょう。近年は全体的に内定辞退率が増加傾向にあります。自社の内定辞退率が下がらないからといって、安易に「研修に効果がない」と判断してはいけません。「世間の内定辞退は増えているが、自社は増加を抑えている」と仮説を立てて検証してみるのもよいでしょう。
なお、研修の効果測定については「研修の効果測定 カークパトリックモデルやアンケートの活用法」で詳しく解説しています。
関連記事:「研修の効果測定 カークパトリックモデルやアンケートの活用法」
また、具体的な振り返り方法については、内定者が正式に入社した後にアンケートを行うのがおすすめです。内定研修の良かった点や、不足していた点などをくみ取り、翌年以降の内定者研修に反映していくことで研修の質も上がっていくでしょう。
研修後のアンケートについては「研修後のアンケートに必要な質問例や項目」で詳しく解説しています。
関連記事:「研修後のアンケートに必要な質問例や項目」
まとめ
内定者研修は、内定者の不安解消や即戦力化、内定辞退の防止などを目的に実施されています。研修の内容(プログラム)を検討する際は、これらの目的を達成するために厳選して実施しましょう。
また、内定者研修を効果的なものにするためには、内定者のスキル・経験の確認や、研修後の振り返りなども重要になってきます。
内定辞退率は上昇傾向にあるため、内定者研修の重要度は今後さらに増していくでしょう。ただ、内定者研修を行う際は、労働時間と見なされるかどうかに気を配り、違法な取り組みにならないよう徹底することも忘れてはいけません。
「ビジネス数学研修」でビジネスパーソンの基礎を学ぶ
「ビジネス数学研修」を通じて内定者にビジネスパーソンとして思考法を身に付けさせれば、早期から即戦力としての成長が期待できます。
内定者は学校数学を学んできていますので「数字を正確に集計すること・正解を導きだすこと」をベースにして、物事を考えます。数字やデータを正確に捉えることはもちろん大切なのですが、ビジネスシーンでは必ず正解があるとは限りません。
ビジネスで求められるのは、正解のない状況下で数字・データを根拠としてアクションプランを立てる力であり、この方法を学ぶのが「ビジネス数学研修」なのです。 「効果的な内定者研修を行いたい」「学生からビジネスパーソンへの切り替えを促したい」といった課題にお悩みであれば、ぜひ弊社の「ビジネス数学研修」をご検討ください。
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