人員配置は、組織の目標達成のために社員を適材適所のポジションに配置するマネジメントです。異動や雇用形態の変更など、いくつかの種類に分けられますが、その目標は大きく「経営目標の達成」または「人材育成」に分けられます。
今回は人員配置とは何かを解説したうえで、最適な人員配置を実現するためのステップやポイントをお伝えしていきます。
人員配置とは
人員配置とは、組織の目標達成のために社員を適材適所のポジションに配置するマネジメントのことです。社員の適性やスキル、経験などを考慮したうえで適切なポジションに配置することで、事業計画の達成や人材育成などを目指す取り組みです。
まず人員配置が検討されるのは、新卒採用では入社時または研修後、中途採用では内定時のタイミングです。また終身雇用制度が運用されていた時代は、ジョブローテーションによって定期的に人員配置を繰り返すことで管理職への道を歩んでいくのが一般的でした。
ジョブ型雇用が進む昨今では、社員の意思を無視するような人員配置は離職リスクを高めるため、より繊細な運用が求められるようになっています。
人員配置の目的
人員配置は、大きく以下の2つの目的のために実行されます。
企業の経営(事業)目標の達成
人員配置を行う一番の目的は、経営(事業)目標の達成です。社員の適性やスキル、経験などを踏まえて、最もパフォーマンスを発揮できるポジションに配置することで、生産性の向上や課題解決を目指すわけです。
また、なんらかの事情によって組織の体制を変更せざる得ないときにも、人員配置は実行されます。人員が不足しているプロジェクト・部署への配置や、事業縮小による人員の削減など、主に組織側の問題解決のために実行されます。
人材育成
人員配置は、ジェネラリスト・幹部候補の人材育成を目的として実施される場合もあります。異なる環境に身を置くことで、視野を広めたり、今まで経験のなかった知識・スキルの取得を図ったりするわけです。
経営的な視座を手に入れるために、ジョブローテーションによって各事業について知見を深める意味合いもあります。
人員配置の考え方と種類
人員配置にはいくつかの種類があり、それぞれ行うべき理由(背景)が異なります。自社の状況からどのような人員配置が必要か考えるために、人員配置の種類について確認しておきましょう。
異動
異動はもっとも身近な人員配置といえるでしょう。異動という言葉自体は「職場での地位が変わること。転任・退任などの人事上の動き」といった意味になります。
戦略的な人員配置の多くは、異動によって実現されます。とくに終身雇用制度を前提としていた時代は、総合職として入社した後、ジョブローテーションによってジェネラリスト・幹部候補としての成長を促すのが一般的でした。
また、昇進・降格を行うことでも、組織にとって理想的な人員配置を目指す場合があります。期待する職務を果たせていない場合は、当該人物を降格させて別の人材をそのポジションに配置することも必要となるでしょう。
雇用形態の変更
今後の人員配置でとりわけ重要になってくるのが、雇用形態の変更です。その最たる例は、嘱託社員としての再雇用でしょう。
これは「高年齢者雇用安定法」の改正によって求められている定年延長に関する対応のひとつで、加齢によるパフォーマンスの低下を考慮して、正社員から嘱託社員へと雇用形態の変更を行うものです。
嘱託社員としての働き方は会社によって異なりますが、培ってきたスキルや経験を活かしたサポート役や人材育成などを担う場合が多いようです。
また、介護や育児のため、フルタイムでは働けなくなってしまった社員をパートタイム契約に切り替え、現場に残ってもらうといった配置転換も、今後は必要となってくるでしょう。
ほかにも、優秀なアルバイトを正社員として登用するといった対応も、盛んに行われる人員配置のひとつです。
採用
新たな人材を「配置する」と考えれば、採用も人員配置のひとつに数えられます。経営戦略・事業計画の推進に欠けている人材を新たに採用することで、組織としての目標達成を目指すわけです。
新卒採用では数年~数十年先を見据えて、中途採用では現状で不足しているポジションを埋めるための即戦力として、目的に合わせた適切な採用方式による人員配置が求められます。
リストラ・配置転換
厳密には「配置」しているわけではありませんが、リストラも人員配置に含まれます。また、事業縮小などによる配置転換も、ネガティブな人員配置として挙げられます。
組織の目標達成、あるいは組織の存続のために、リストラや配置転換という選択を選ばざる得ない状況もあるでしょう。ただしこれらは会社側からの一方的な人員配置となるため、事前に希望退職などの選択肢も合わせて提示すべきです。
人員配置を最適化するためのステップ
最適な人員配置を実現するための流れを5つのステップに分けて解説していきます。
組織の目標を確認する
まずは、経営目標や各部署の目標などを確認していきましょう。人員配置は、ここで確認した組織の目標を達成するために実行されるものだからです。
またこの段階で、目標達成のためにどのような人材が必要なのかを「人材要件」としてまとめておきましょう。
人員の情報を確認する
次に、現時点での人員の配置や情報を確認していきます。単に事業所ごとの人数を確認するだけでなく、人員配置を検討する際に必要となるデータを合わせて収集していきます。
具体的には、業務内容や経歴、保有資格、在籍年数などの情報をまとめていきます。また、学生時代の専攻や研修の受講経験など、別の職務での活躍につながりそうな情報も確認していきましょう。
目標とのギャップ・課題の洗い出し
社員の情報を収集・整理したら、組織の目標と照らし合わせます。そのうえで目標達成に欠けているポジションや、余剰が生じている部署などのギャップを洗い出していきます。
社員の能力と組織の課題をマッチングさせて、課題解決につながる人員配置のパターンをリスト化していきましょう。
社員へのヒアリング
社員の能力と組織の課題解決がマッチングしたからといって、すぐに人員配置を行えるわけではありません。人員配置は本人の意志・希望が重要であるため、キャリアプランや異動希望についてヒアリングを行う必要があります。
ただし、本人の適性にそぐわない異動希望が挙がる場合もあり、これに折り合いをつけるのも人員配置を推進するうえで重要な取り組みとなります。
社員本人が描くキャリアプランとマッチするようなら、配置転換のプランを提案してみましょう。
効果の検証
人員配置を実行したあとは、効果検証を行いましょう。とくにそれまでの職務内容とは大きく異なるポジションに就いた場合、本人のモチベーションも含めて効果を検証する必要があります。
また、本人の満足度のみならず、上司や同僚、部下にも実行した人員配置について、評価をしてもらいましょう。本人の満足度が高くても「指揮系統に乱れが生じている」「指導に割く時間が他の業務を圧迫した」といった問題が生じている場合もあります。
人員配置を成功に導く3つのポイント
上で紹介したステップに加えて、人員配置を成功に導くための3つのポイントをお伝えします。
人員配置図を作成する
社員のデータを取りまとめて、人事部内や経営層とも共有しやすいかたちで人員配置図を作成しましょう。有料のツールを活用する方法もありますが、Excelでも作成可能です。
人員がどこに配置されており、どのような業務になっているか一目でわかるのが理想です。上のステップで解説した「人員の情報を確認する」について図表化することで、人員配置を効率的に進めることができます。
社内公募制度の導入
人員配置を進めるうえで合わせて導入したいのが、社内公募制度です。社内公募制度は、人員を増やしたい部署(プロジェクト)について、異動希望者を募集する仕組みです。
人員配置は基本的に会社主導で辞令が出されるものですが、社内公募制度による異動は社員からの立候補であり、自発的な意志によって実行されます。
モチベーションが高い状態で異動が実現し、自律的なキャリア形成にもつながるメリットがあるため、人員配置の成功に欠かせない仕組みとなります。
タレントマネジメントの導入
人員配置と切っても切り離せないのが、タレントマネジメントです。タレントマネジメントは、社員が持つ才能・資質などを情報化して人事管理に活かすことで、人員配置や人材育成を戦略的に推進するマネジメント手法です。
言葉の意味のとおり、タレントマネジメントは効果的な人員配置のために実施するものであり、戦略的な人員配置にはタレントマネジメントが欠かせません。
タレントマネジメントについては「タレントマネジメントとは 進め方や管理すべき項目を解説」で詳しく解説しています。
関連記事:「タレントマネジメントとは 進め方や管理すべき項目を解説」
まとめ
人員配置は、社員を適材適所のポジションに配置することで、経営目標の達成や人材育成を目指すマネジメント手法です。人員配置を行うべき理由などによって、異動や雇用形態の変更などいくつかの種類に分けられます。
最適な人員配置を実現するためには、組織の目標達成を目的に据えて、人員の情報確認やヒアリング、課題の洗い出しを丁寧に行っていくことが大切です。
また合わせて、社内公募制度やタレントマネジメントを導入して、人員配置を推進しやすい環境を整備していくことも成功の秘訣となります。
「ビジネス数学研修」で人員配置に不可欠なデータリテラシーを身につけよう
人員配置の推進には、社員の様々なデータが必要となります。このデータを分析することで効果的な人員配置を検討し、経営目標の達成や課題解決へとつなげていくわけです。
そのため、人員配置の担当者はデータの収集法や分析方法を身につけなければいけないわけですが、社内に適任の人材はいるでしょうか。
「ツールを導入すればデータの管理や処理は自動でできる」と考える方は多いですが、ツールは具体的な施策までは提示してくれません。人員配置を推進するためには、データを読み解いてアクションにつなげる「データリテラシー」が不可欠なのです。
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