ピープルマネジメントとは 得られる効果や必要なスキルを解説

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ピープルマネジメントとは、人材の成長・成功に重きを置くマネジメント手法です。

社員の定着率向上や自律型人材の育成につながり、VUCA時代に求められる管理手法として注目されています。

今回はピープルマネジメントの意味や効果、導入にあたって必要となるスキルや取り組みなどについて解説していきます。

ピープルマネジメントとは

ピープルマネジメントとは、社員のモチベーションやキャリア形成、価値観といった、社員自身の成長・成功に重きを置くマネジメント手法です。

これまでのマネジメントは、組織の目標達成から逆算する管理や、組織における役職・役割に基づいて管理するといった手法が一般的でした。

しかし、終身雇用制の崩壊によってひとつの会社でキャリアを終える時代ではなくなり、多様な働き方が広まったことによって、会社主体のマネジメント方式では社員をつなぎ止めることが難しくなってきています。

その点でピープルマネジメントは、社員一人ひとりと向き合い、最大限のパフォーマンスを発揮できるよう成長を促します。社員のパフォーマンスが高まれば、結果として組織としての最大化・目標達成につながっていくというわけです。

ピープルマネジメントで得られる効果

ピープルマネジメントを導入することによって、具体的にどのような効果が得られるのか解説していきます。

上司と部下の信頼関係の構築

ピープルマネジメントにおいて、上司は「部下の伴走者」を担います。行き先や方法を指示・命令するのではなく、部下を主体としてサポートすることが上司の役割となるのです。

これまでのマネジメント方式よりも上司と部下の距離感が近くなることから、信頼関係も深まっていくでしょう。逆に言えば、信頼関係を構築できないとピープルマネジメントは成り立ちません。

定着率の向上

ピープルマネジメントの導入によって、エンゲージメント向上による社員の定着率向上が期待されます。

ピープルマネジメントが実施される会社は、社員にとって自身の成長や自己実現につながる場となります。とくに給与面よりもワークライフバランスや働き方などを重視する社員にとっては、安心して働ける環境となるでしょう。

また、上司との信頼関係を構築することによって、職場内の人間関係も良好となります。ピープルマネジメントによって得られる様々な変化が、社員の定着率向上へとつながっていくのです。

自律型人材の育成

ピープルマネジメントが実施される体制は、自律型人材が育つ環境になります。従来の「統制」が軸にあるマネジメントとは異なり、ピープルマネジメント下では社員一人ひとりが主体的に物事を考えるからです。

上司の役割も「指示」ではなく「目標設定とフォロー」が重要になり、社員それぞれの自発性を尊重して成長を促していきます。

ただし「指示待ち型」の社員が多い組織では、ピープルマネジメントが定着するまで一時的にパフォーマンスが低下する恐れがあるので注意しましょう。

ピープルマネジメントに必要なスキル

ピープルマネジメントを実践するためには、具体的にどのようなスキルが必要になるのか解説していきます。

傾聴力

ピープルマネジメントの実践で最も大切なのは傾聴力でしょう。相手の伝えたいことや気持ちをくみ取ることが、ピープルマネジメントの前提条件となるためです。

フィードバックスキル

傾聴によって相手の意思を汲み取ったら、改善点や評価、提案などを適切にフィードバックすることが求められます。傾聴力とフィードバックスキルを身に着けて、初めてピープルマネジメントが成り立つといえます。

なお、傾聴力とフィードバックを内包する人材育成手法として「コーチング」が挙げられます。コーチングの身につけ方については「コーチング研修とは 実施する目的とその内容」で詳しく解説しています。

関連記事:「コーチング研修とは 実施する目的とその内容」

アサーティブコミュニケーション

アサーティブコミュニケーションとは、相手の意見や気持ちを尊重しつつ、自身の主張を伝える手法です。アサーティブコミュニケーションを身につけることで、傾聴力とフィードバックの質は大きく向上するでしょう。

アサーティブコミュニケーションについては「アサーティブコミュニケーションとDESC法による実践」で詳しく解説しています。

関連記事:「アサーティブコミュニケーションとDESC法による実践」

ピープルマネジメントに必要な制度・取り組み

ピープルマネジメントを導入することにより、社員を管理する方法が大きく変化します。そのため、ピープルマネジメントを進めるためには、社内制度の見直しが必要となります。

ここでは、ピープルマネジメントの導入・実践の際に整備しなければならない制度や取り組みについて解説します。

上司・リーダーの役割を見直す

まずはピープルマネジメントを実践するために、社内における上司・リーダーの役割や在り方を見直しましょう。

一口にリーダーといっても様々なタイプ・定義がありますが、ピープルマネジメントでは「コーチ型」「民主型」といった、部下(社員)を主体として考えるタイプが求められます。

逆に、強力なリーダーからの指示・命令で牽引される「専制型」や「ビジョン型」の組織体制の場合、ピープルマネジメントはうまく機能しません。

組織の成長段階によっても求められるリーダー像は異なりますので、ピープルマネジメントが自社の体制や状況と合致しているのかを含めて見直してみましょう。

1on1制度の導入

ピープルマネジメントの実践に欠かせないのが、1on1制度です。1on1とは、上司と部下で行う定期的な個人面談のことです。

1on1は上司と部下のあいだで信頼関係を構築する手段となり、部下の業務上の悩みやキャリアプランなどの本音を引き出す場にもなります。1on1制度の運用なしに、ピープルマネジメントの実現はあり得ないといっても過言ではありません。

なお、1on1については「1on1の目的 話すべきことや効果を上げるポイントを解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「1on1の目的 話すべきことや効果を上げるポイントを解説」

複線型人事制度の導入

複線型人事制度とは、社内に複数のキャリアコースを用意する組織体制のことです。

従来の単線型の人事管理制度は、基本的に昇進・昇格が唯一のキャリアパスとなるため、多様な働き方に見合ったキャリア形成を実現できません。ピープルマネジメントで社員のキャリア観を尊重しようとしても、それを実現できる体制が整っていなければ意味がないのです。

その点で複線型人事制度ならば、昇進よりも現場にこだわる社員や、介護や育児を優先したい社員でも、自分に合った職務・ポジションに就くことができます。

評価制度の改革

ピープルマネジメントでは、社員のスキルや職位を絶対的な指標とせずに評価を行うため、人事評価制度の抜本的な改革が求められます。

ピープルマネジメントにおける評価制度として有名なのが、Adobe社の「Check-in」制度です。その特徴として「1年を通じた継続的な対話(面談)」が挙げられます。

マネージャーは部下の昇給に対して予算を持っており、日々の面談(1on1)で設定する目標とその達成度合いから、部下に対して予算を報酬として分配していきます。つまり、面談によって働きぶりを定期的にチェックし、その評価が報酬に直結するのです。

ただし、この制度の運用にはフィードバックスキルやジョブアサインメントスキルが不可欠です。導入にあたっては、マネージャー(管理職)に対して研修を実施するなど、十分な準備を整える必要があるでしょう。

まとめ

ピープルマネジメントは、雇用の流動化や働き方の多様化といった環境変化を背景に関心が高まっている管理手法です。社員の定着率向上や自律型人材の育成といった効果が得られ、VUCA時代に即したマネジメントといえるでしょう。

一方で、ピープルマネジメントの実施には、「1on1制度」や「複線型人事制度」などの導入が求められ、評価制度も抜本的に見直す必要があります。また、管理職(上司)のスキルアップも欠かせません。

ピープルマネジメント導入の際は、十分な準備を整えたうえで推進していきましょう。

ピープルマネジメントで求められる「数字力」

ピープルマネジメントはその性質上、ヒューマンスキルの向上が重要になると考えられがちです。しかし、人材の目に見えない部分を尊重するからこそ、目標や改善点などを定量化して示す力が重要になります。

例えば、1on1でキャリア形成や業務における目標を設定する際も、「データや数字に基づいた根拠」があれば、納得感が高まります。

ピープルマネジメントでは「数字から離れることが正解」と考える人が多いですが、むしろ数字を用いたコミュニケーションで、誤解なく意思疎通を行うことが重要になるのです。

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