インポスター症候群とは 特徴と対処法を解説

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インポスター症候群とは、大きな成功や周囲からの賞賛を得ているのにもかかわらず、自身を過小評価してしまう心理です。「詐欺師症候群」「ペテン師症候群」と呼ばれることもあります。

インポスター症候群の特徴として「チャレンジができない」「キャリアアップへの不安」「完璧主義」などが挙げられ、女性活躍を阻む要因としても注目されています。

今回はインポスター症候群について、その特徴や対処法などについて解説していきます。

インポスター症候群とは

インポスター症候群とは、大きな成功や周囲からの賞賛を得ているのにもかかわらず、自身を過小評価してしまう心理のことです。インポスター(imposter)は「詐欺師・身分を詐称している人」「偽物」といった意味を持ち、「詐欺師症候群」「ペテン師症候群」と呼ばれることもあります。なお、症候群という名称ではありますが精神疾患ではなく、誰もが多かれ少なかれ持っている心理的な傾向です。

インポスター症候群が初めて報告されたのは、1978年にポーリン・R・クランスとスザンヌ・A・アイムスが実施した研究といわれており、このなかで社会的に成功した女性に共通する傾向を指してインポスター症候群と名付けられました。

近年では、映画『ハリー・ポッター』シリーズでハーマイオニーを演じたエマ・ワトソンがインポスター症候群であることを告白したことからも関心が高まっています。

女性活躍を阻む要因としてのインポスター症候群

現在ではインポスター症候群は男女ともに陥る心理傾向であることがわかってきていますが、当初は女性に多いといわれていました。そのため、日本においては女性管理職が増えない原因のひとつとして着目されており、実際に福井県鯖江市では、女性活躍を阻む要因の一つとしてインポスター症候群の解決に向けた活動を進めています。

参考:福井県鯖江市「TALSE(テルズ)『インポスター症候群ゼロ運動』スタートアップ合同記者会見開催」

インポスター症候群の特徴

インポスター症候群の人には、「チャレンジができない」「キャリアアップへの不安」「理想主義・完璧主義」などの特徴があります。それぞれ解説していきます。

チャレンジができない

インポスター症候群の人には、チャレンジができないという特徴があります。自分の能力を過小評価しているため、「挑戦しても失敗する」と考えてなかなかチャレンジに踏み切れないのです。

成功体験を積めば自信がつくと思われるかもしれませんが、そもそもインポスター症候群の人は自分の成功を「運が良かっただけ」「周りのサポートのおかげ」と捉えるため、成功を重ねたからといって解決には至りにくいのが厄介な点といえるでしょう。

キャリアアップへの不安

インポスター症候群の人は、キャリアアップに対して強い不安を感じます。

自己不信感から、そもそも現在のキャリアすら偽物だと感じているため、「キャリアアップをしても、自分の力では上手くいくはずがない」「上の立場に就いたら、自分が本当は無能であることがバレてしまう」といった不安感に襲われてしまうわけです。

理想主義・完璧主義

インポスター症候群の人には、理想主義・完璧主義の側面があります。高すぎる理想を掲げる一方で、それを完璧にこなせないがゆえに自分を過小評価してしまうわけです。

実際は自分のなかの理想が高すぎるだけで周囲から見れば十分な成果を上げているため、客観的な評価は上がっていきます。その一方で、完璧主義であるがゆえに「自分はなぜこんなこともできないんだ」と自己評価が下がっていきます。このように客観的評価と主観的評価のあいだで乖離が生じることで、「偽物である」という心理が強まってしまうわけです。

インポスター症候群への対処法

最後に、個人で心がけるべきインポスター症候群への対処法と、組織に求められるインポスター症候群への対処法をお伝えします。

インポスター症候群であることを自覚する

インポスター症候群への対処の第一歩は、インポスター症候群であることの自覚です。「自分は自己評価が低い傾向にあるかもしれない」と気付かないことには、対処のしようがありません。

とくに自分が想定していたよりも大きな評価・賞賛が得られたときは、客観的に成果を捉え直して、自分を再評価することが大切です。どういった部分が周囲から評価されていたのかがわかれば、自分の理想との乖離がわかり、理想主義・完璧主義を見直すきっかけにもなるでしょう。

事実ベースの評価指標を持つ

インポスター症候群への対処法として、事実ベースの評価指標を持つことも効果的です。

インポスター症候群では、主観的な評価と、周囲からの客観的な評価の乖離が生じています。そのため、両者をつなぎあわせる事実ベースの評価が必要となるわけです。

具体的には、数値的な目標と評価が挙げられます。数値は主観・客観を問わず「事実」を示すからです。周りの人との比較やプロセスには意識を向けず「結果として○○万円の売上で、会社に大きな利益をもたらした」といった事実ベースの評価を行うことで、主観的評価と客観的評価の乖離が埋まっていくはずです。

物の見方を変える

物の見方を変えることも、インポスター症候群への有効な対処法です。例えば、自分では納得のいかない成果であっても「クライアントからはどう評価されただろう」と視点を変えることで、評価の軸が変化します。

同様に、失敗と感じることがあったら、意識して「この経験で次回の成功率が上がる」といったポジティブな捉え方を心がけることで、日頃の考え方が上向きになっていきます。

なお、こうした物の見方を変える方法については「物の見方とは 見方を変える7つの方法を解説」でも詳しく解説しています。

気持ちの共有ができる場を設ける

組織で取り組むべきインポスター症候群への対応策として、気持ちの共有ができる場を設けることが挙げられます。具体的には、メンター制度や1on1の導入が効果的でしょう。

とくに近年は、女性管理職の育成のためにクロスメンタリングを導入する企業が増えています。クロスメンタリングとは、他の企業で活躍する女性管理職にメンターを依頼する、組織横断型のメンター制度です。

これを導入することで、女性管理職の前例がない企業でもロールモデルを示すことができます。実際に他の会社で女性管理職として活躍する人にメンターを務めてもらえば、「自分に前例がないことが務まるわけがない」といった悩みも解消されるかもしれません。このようにメンター制度は、インポスター症候群の傾向がある人にとって有効な対処法となります。

なお、メンター制度については「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」でも詳しく解説しています。

フィードバックの文化を根付かせる

インポスター症候群への組織的な対処法として、フィードバックの文化を根付かせることも欠かせません。

周囲からの評価に対して懐疑的なインポスター症候群の人に対しては、建設的なフィードバックで「周囲からの評価は根拠に基づいたものである」と伝え続ける必要があります。こうしたフィードバックは、管理職それぞれの裁量に任せていると他の業務を優先されて疎かになる恐れがあるため、組織の文化・制度として定着させることが大切です。

またこのとき、対象者の自己肯定感が高まるよう、行動や成果について肯定的な意見を送る「ポジティブフィードバック」を行うことがポイントとなります。

なお、フィードバックの種類や方法については「ビジネスにおけるフィードバックとは 種類・方法・効果について解説」でも詳しく解説しています。

定量的な目標・評価を根付かせたいなら「ビジネス数学研修」

「事実ベースの評価指標を持つ」で解説したとおり、数値的な目標と評価という「事実」を示すことがインポスター症候群への対処法となります。さらに、データなどの明確な根拠に基づいてフィードバックできれば、主観的な評価のズレにも気づきやすくなるでしょう。

ただその一方で、すべてのビジネスパーソンが目標や評価を数値化できるわけではありません。数字やデータに苦手意識を持つ人は意外に多く、数字・データの活用ができる人は少数です。

そこで求められるのが、組織的な「数字力」の向上です。弊社では数字力を「数字やデータから素早くポイントを見つけだし、相手にわかりやすく伝える力」と定義しており、数字力を上げることで、納得感のある数値化した目標設定や評価などがスムーズに行えるようになります。

また、弊社の研修プログラムは受講者のレベルに合わせた4段階のコースをご用意しておりますので、「数字やデータが昔から苦手意識で……」という方でも安心してステップアップすることができます。

「定量的な目標といってもイメージが湧かない」「公平性が感じられる、定量的な成果を示したい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひオンラインサロン「社会人の数字力向上サロン」や、企業向け研修「ビジネス数学研修」をご検討ください。