メンター制度の失敗例を解説 成功につながる育成のポイントとは
メンター制度とは、他部署の先輩社員が新人社員のサポート役を担い、メンタルケアなどを目的としたメンタリングを行う取り組みです。導入が容易であるため、メンター制度を検討する企業は多いですが、その一方で導入間もなく失敗する例が後を絶ちません。
今回は、どのようなときにメンター制度が失敗に終わるのかを紹介するとともに、失敗を防ぐためのポイントやメンター育成時のポイントについて解説していきます。
メンター制度とは
メンター制度とは、他部署の先輩社員が新人社員のサポート役を担い、メンタルケアやキャリア形成などを目的としたメンタリング(対話やアドバイスなど)を行う取り組みです。
メンター制度における指導側をメンター(mentor)と呼び、多くの場合は新人社員と年齢の近い入社5年目前後の社員がその役割を担います。対して、指導を受ける側はメンティー(mentee)と呼びます。
メンター制度の最大の特徴は、「他部署の先輩」がメンターを務めることにあります。上下関係とは異なる「斜めの関係性」を構築することにより、利害関係に捕らわれずコミュニケーションを取れるのです。
また、メンター制度は業務にまつわる指導ではなく、メンタルケアを中心としたサポートに重点を置くこともポイントです。
ちなみに厚生労働省の資料では、メンター制度を以下のように定義しています。
「メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して行う個別支援活動です。キャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決をサポートする役割を果たします」
引用:厚生労働省「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」
なお、メンター制度のメリットや進め方については「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」で詳しく解説しています。
関連記事:「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」
メンター制度の失敗例
多くの企業がメンター制度の導入を検討する一方で、失敗に終わってしまう事例が後を絶ちません。メンター制度は具体的にどのようなときに失敗するのかを解説していきます。
上層部が投げっぱなしにしている
メンター制度の導入だけ決めて、上層部が投げっぱなしにしていると取り組みはほぼ確実に失敗します。
メンター制度の実施に特別な設備や資格は必要ないため、見切り発車で簡単に導入することができます。メンターを指名して定期的に面談を行うよう指示すれば、かたちだけはメンター制度を導入したといえるわけです。
しかし、こうした投げっぱなしの体制では、制度の目的や意義が社員に伝わらず、すぐに取り組みは形骸化してしまいます。
制度を費用対効果で捉えてしまう
メンター制度を費用対効果で捉えてしまうと、多くの場合で失敗につながります。
まず前提として、メンター制度を導入したからといって「離職率が○%減少した」といった明確な成果が出るとは限りません。そもそも離職の原因は「労働条件」や「仕事内容のミスマッチ」など様々であり、メンター制度で人間関係を改善できたとしても離職を完全に防げるわけではないからです。
そんなメンター制度で短・中期的な成果を求めると、じっくりと続けていれば組織風土の変化が起こったかもしれないのに、失敗例として扱われてしまいます。
メンターを育成できていない
人材育成の一環としても運用されるメンター制度ですが、そもそも指導側であるメンターを育成できていないと、メンター制度は失敗に終わります。メンター側に後輩を導けるだけの知見や心構えがなければ、適切なアドバイスを送れないからです。
メンターとメンティーの相性を配慮してない
メンターとメンティーの相性を配慮してないことも、メンター制度の失敗につながる原因のひとつです。
どれだけメンターが優秀な人材であっても、人間関係である以上、どうしても相性が存在します。メンターとメンティーのあいだで価値観や仕事の方法論が大きく異なれば、アドバイスが無意味になるだけでなく、面談自体にストレスを感じてしまうでしょう。
メンター制度の失敗を防ぐための4つのポイント
ここからは、メンター制度の失敗を防ぐために必要な4つのポイントについて解説していきます。
心理的安全性の構築
メンター制度を成功させるための第一歩は、心理的安全性の構築です。心理的安全性とは、組織のなかで自分の意見やアイディアを誰に対しても発信でき、拒絶や罰則を受けることのない状態のことです。
相談は相手を信用・信頼していないとできないものであり、「メンターだから」とすぐに本音を話せるわけではありません。これはアドバイスを送るメンター側も同様であり、関係性が構築されていないと「偉そうにアドバイスなんてしていいのか」と躊躇いが生じてしまいます。
これはメンター・メンティー同士の信頼関係だけに限った話ではなく、メンター制度を成功させるためには、組織全体として「お互いの意見やアイディアを尊重し合う風土」が求められるのです。
なお、心理的安全性の高め方については「職場における心理的安全性の高め方 メリットや低下を招く要素を解説」でも詳しく解説しています。
関連記事:「職場における心理的安全性の高め方 メリットや低下を招く要素を解説」
全社的に取り組む
メンター制度を成功させるためには、メンター・メンティーだけの問題にせず、全社的に取り組むことが欠かせません。
例えば、メンターはコーチングスキルを身につけているのに、管理職には傾聴力がないという状況では、新人社員の失望を招きます。コーチング研修などを実施するときは管理職や経営層も一緒になって参加し、全社的にメンター制度を文化として定着させる姿勢を見せることが大切です。
メンターの育成体制を整える
後輩を導けるメンターとなるためには、メンティーの本音を引き出し、適切なアドバイスを送る能力が欠かせません。そうしたスキルはなかなか実務のなかで身につくものではないため、会社側が学びの場を提供する必要があります。
なお、メンターに求められる具体的なスキルについては、下の「メンター育成時の3つのポイント」で解説していきます。
効果測定と改善
メンター制度の導入によって明確な成果が出るとは限りませんが、それが効果測定を行わない理由にはなりません。
メンター期間が終了したら、まずは短期的な効果測定としてメンター・メンティーの満足度や不満点をアンケートなどで確認し、改善策の検討を行いましょう。長期的な効果測定としては離職率などのデータを集計し、メンター制度の導入以降で数値の推移を確認するとよいでしょう。
なお、社員の満足度などの調べ方は「従業員満足度調査とは 目的や分析方法を解説」で詳しく解説しています。
関連記事:「従業員満足度調査とは 調査の目的や分析方法を解説」
メンター育成時の3つのポイント
メンター制度の失敗を防ぐためには、メンターの育成が欠かせません。ここでは、メンターとして活躍するためには何を学ぶべきなのかを解説していきます。
メンターの役割を理解する
まず前提として、メンターは自身の役割について学ぶ必要があります。メンター制度は業務面の指導を行うのではなく、メンティーのメンタルケアやモチベーション維持などが目的となることを認識しなければいけません。
ここを理解しておかないと、メンターとしての役割を果たせないだけでなく、メンティーの直属の上司と指導方針がバッティングしてしまう恐れがあります。
またこのとき、メンターとしての指導内容を会社のルール・方針として固めておくことで、メンターの負担を軽減するだけでなく、属人化を防ぐことにもつながります。
コーチングスキル
メンターにとって最も重要なスキルといえるのが、コーチングです。コーチングとは、対象者の成長や気力の向上を促しながら、目標達成に向けてサポートを行う手法です。具体的な改善策を指示するのではなく、自分自身のなかから答えを見つけ出せるようにサポートすることが特徴です。
また、コーチングを構成する要素である「傾聴力」もメンターに欠かせないスキルであるため、コーチングを身につけることでメンタリングの質は大きく向上するでしょう。
なお、コーチングの学び方については「コーチング研修とは 実施する目的とその内容を解説」でも解説しています。
関連記事:「コーチング研修とは 実施する目的とその内容」
フィードバックスキル
ビジネスにおけるフィードバックとは、業務上の行動やその結果などについて、評価や改善点を伝えることです。
一口にフィードバックと言っても「ポジティブフィードバック」と「ネガティブフィードバック」という2つの方向性があり、フィードバックの効果をより高めるためのフレームワークがいくつも存在しています。
日常会話でも伝え方ひとつで印象が全く変わってしまうように、フィードバックもスキルとして身につけることで、メンティーの納得感やその後の行動が大きく異なってきます。
なお、フィードバックスキルについては「ビジネスにおけるフィードバックとは 種類・方法・効果について解説」でも解説しています。
「関連記事:ビジネスにおけるフィードバックとは 種類・方法・効果について解説」
メンターの育成にも適した「ビジネス数学研修」
メンターの育成において、コミュニケーション能力が重要になることは言うまでもありません。実際に「メンティーから納得感を引き出せない」「メンティーと共通認識を持てない」といった悩みを持つメンターも多いのではないでしょうか。
そんな課題の解決におすすめなのが、コミュニケーションのなかに数字やデータを用いてみることです。数字を示すことで抽象的な表現が減り、共通認識が得られやすくなります。
弊社オルデナール・コンサルティングでは、こうした「数字を用いたコミュニケーション」の取得に重きを置いた「ビジネス数学研修」をご提供しております。
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