年収の壁とその一覧 「支援強化パッケージ」とともに解説
年収の壁とは、税金や社会保険料の負担が重くならないように、年収を抑えようと働き控えを検討する金額のボーダーラインです。現在、「103万円の壁」「130万円の壁」などの計6つの壁が存在しています。
今回は、年収の壁の概要を踏まえたうえで、年収の壁の一覧と厚生労働省の「年収の壁・支援強化パッケージ」の内容について解説していきます。
年収の壁とは
年収の壁とは、税金や社会保険料の負担が重くならないように、年収を抑えようと働き控えを検討する金額のボーダーラインのことです。
年収の壁は計6つあり、それぞれのボーダーラインを超えることで手取り金額が減ってしまう恐れがあります。そのため、パートタイマー・時短労働者が「働き控え」を検討する基準になっています。
年収の壁が注目される背景
年収の壁が改めて注目される背景として、最低賃金の上昇と就労時間の減少が挙げられます。
もともと年収の壁の存在はパートタイマーの労働意欲の低下、ひいては社会的な労働力の低下の原因として問題視されていました。そうしたなかで最低賃金が上昇したことにより、パートタイマーの就労時間が減少するという事態につながっています。
実際、労働政策研究・研修機構が公表するデータによれば、2002年度663円だった最低賃金(時給額)は、2023年度では1,004円にまで上昇しています。
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「 早わかり グラフでみる長期労働統計 Ⅳ 賃金 図3最低賃金」
大まかに計算しても、2002年では1時間半働かないと得られなかった賃金が、2023年には1時間で得られるわけです。これは企業にとって労働力低下、働き手にとって保育園の利用基準である就労時間を下回る恐れといったデメリットを招いており、改めて年収の壁への関心が高まっています。
年収の壁の一覧
年収の壁には、税制上の壁と社会保険上の壁があり、計6つのボーダーラインが存在します。それぞれ解説していきましょう。
100万円の壁
年収100万円の壁は、一般的に住民税が発生するボーダーラインとなります。年収100万円を若干超過した場合、おおよそ1万円前後(住民税額は自治体によって異なります)の住民税が発生してしまうため、ほとんど手取り額が増えない状態になってしまうわけです。
103万円の壁
年収103万円の壁は、一般的に所得税が発生するボーダーラインとなります。なぜ103万円という半端な額かと言うと、給与所得者は基礎控除と給与所得控除という控除が適用されており、この控除の範囲が103万円だからです。
そのため、別の控除(医療控除など)が適用されている場合は、年収103万以上であっても所得税がかからないこともあります。
106万円の壁
年収106万円の壁は、社会保険への加入義務が生じるボーダーラインとなります。なぜ106万円という半端な額かと言うと、社会保険への加入の要件として「給与が月額88,000円以上(交通費や残業代を含めず)」があり、これの12ヶ月分が106万円だからです。
130万円の壁
年収130万円の壁は、家族の扶養から外れるボーダーラインとなります。月収換算で10万8,333円が目安として広く認知されていますが、一ヶ月だけこの月収を超えたからといって、ただちに扶養から外れてしまうわけではありません。
106万円の壁とは異なり、年収130万円の壁では交通費も含まれますので、計算時は注意しましょう。
150万円の壁
年収150万円の壁は、配偶者特別控除額が減少し始めるボーダーラインであり、これを超えることで配偶者の所得税や住民税が増加します。
ただし、配偶者の所得が900万円以上の場合は、配偶者控除・配偶者特別控除が減額または控除されない状態ですので、よく確認しておきましょう。
201万円の壁
年収201万円の壁は、配偶者特別控除額が0になるボーダーラインとなります。上の「年収150万円の壁」から控除額が減少していき、年収201万円に達すると控除を受けることができなくなります。
「年収の壁・支援強化パッケージ」とは
前述のとおり、年収の壁による労働者の働き控えは、人手不足(労働力不足)の問題に直結しています。その対策として、厚生労働省は2023年に「年収の壁・支援強化パッケージ」を公表しました。以下、それぞれの概要を見ていきましょう。
106万円の壁への対応
106万円の壁への対応は、「企業への支援(キャリアアップ助成金)」と「社会保険適用促進手当」の二つがあります。
企業への支援(キャリアアップ助成金)は「手当支給メニュー」「労働時間延長メニュー」「併用メニュー」の3種類のコースが用意されており、パートタイマーの厚生年金・健康保険への加入に合わせて手当の支給や賃上げなどを行う企業に対し、一人当たり最大50万円の助成金が支給されるというものです。
・手当支給メニューの要件
①賃金の15%以上追加支給
1人当たり助成額 1年目20万円
②賃金の15%以上追加支給 3年目以降、③の取組を行う
1人当たり助成額 2年目20万円
③賃金の18%以上増額
1人当たり助成額 3年目10万円
このように各コースごとに要件が定められており、これらを満たすことで定められた助成金が支給されます。
「社会保険適用促進手当」については、事業主がパートタイマーの保険適用に際して手取りが減らないように手当を支給した場合、社会保険料の算定対象としないというものです(上限あり)。
なお、要件や助成額などの詳細については、厚生労働省の「年収の壁・支援強化パッケージ」をご確認ください。
130万円の壁への対応
130万円の壁への対応として、事業主の証明による被扶養者認定の円滑化が行われました。
前述のとおり、130万円の壁を超えると家族の扶養から外れてしまうため、働き控えが生じています。そこで「年収の壁・支援強化パッケージ」では、事業主が一時的に年収130万円を超えてしまったことを証明すれば、そのまま被扶養者のままでいられるという制度が用意されました。
「一時的な上昇」とは、「他の従業員の休職により、労働時間が急遽増えてしまった」「一時的に受注が急増し、従業員全員で急遽対応しなければいけなかった」といった状況を指し、基本給で恒常的に130万円を超えている場合は対象外となります。
配偶者手当への対応
配偶者手当への対応については、上の2つのように助成金などの直接的な支援が実施されるわけではなく、配偶者手当を見直すための資料が公表されました。
配偶者手当はその名のとおり、配偶者がいる従業員を対象に支給される手当であり、多くの場合で収入基準が設けられています。そのため、支給の収入基準を上回らないよう、年収の壁と同様に働き控えが生じる原因となっています。
そこで「年収の壁・支援強化パッケージ」で配偶者手当の見直しを行うためのフローチャートが公開され、企業に対応を求めているわけです。
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年収の壁はパートタイマーとして働く本人のみならず、家族を含めて世帯単位で考えなければならない、「お金」に直結する問題です。
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