人事が直面する6つの課題と求められる取り組み

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技術革新やコロナ禍、働き方改革などを背景として、人事には様々な課題が降り掛かっています。いずれの課題も社員の離職や生産性の低下といったリスクに直結するため、時間による解決を待つわけにはいきません。

今回は、人事がいま直面している主要な6つの課題を解説したうえで、課題解決に求められる4つの取り組みをご紹介していきます。

人事が直面している6つの課題

いま企業の人事部は、多くの課題に直面しています。ここでは、主要な6つの課題について解説していきます。

採用難と人材確保

人事が直面している大きな課題として、まず採用難と人材確保が挙げられます。

少子高齢化を背景として、日本の生産年齢人口(国内で労働に従事できる15歳から64歳の人口)は減少の一途を辿っており、2025年には7,170万人、2050年には5,275万人にまで減少すると予想されています。人材の採用は、年を追うごとに難しくなっていくでしょう。

参考:総務省「情報通信白書令和4年版」

実際に有効求人倍率は2013年以降、上昇が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大によって一時的に減少したものの、2022年には2015~2016年頃の水準まで回復しました。

直近10年の有効求人倍率(平均)の推移

2013年 0.93倍

2014年 1.09倍

2015年 1.20倍

2016年 1.36倍

2017年 1.50倍

2018年 1.61倍

2019年 1.60倍

2020年 1.18倍

2021年 1.16倍

2022年 1.28倍

参考:厚生労働省「一般職業紹介状況について」

定着率の低下

「採用難と人材確保」と重なる部分が多い課題として、社員の定着率の低下が挙げられます。求職者優位の「売り手市場」や終身雇用制度が形骸化したことよって転職に対する心理的障壁がなくなっており、どの企業においても人材流出のリスクが高まっています。

総務省の調査によれば、直近5年間の転職希望者は以下のように推移しています。

2018年 834万人

2019年 848万人

2020年 865万人

2021年 897万人

2022年 968万人

参考:総務省「労働力調査(詳細集計) 2022年(令和4年)平均結果」

転職希望者は毎年少しずつ増えていましたが、2021年から2022年にかけて70万人も増えて900万人台へ突入しました。

必ずしも転職希望者が転職に踏み切るわけではありませんが、多くの働き手が潜在的に転職の可能性を探っており、その数が年々増えていることは深刻な課題といえるでしょう。

人材育成

新たな人材を確保することが難しいのであれば、そのぶん人材育成の重要性が増していきます。

また、人材育成は社員のエンゲージメント向上につながる施策でもあるため、社員の定着率の観点からも重要な取り組みとなっています。しかし多くの企業にとって、人材育成はなかなか成果が出ない課題となっています。

各種調査では、人材育成について「指導する人材の不足」や「研修や教育を行う時間的余裕の不足」「ノウハウの不足」といった課題が挙がっています。なお、これら人材育成における課題については、「人材育成の課題とその解決策」で詳しく解説しています。

関連記事:「人材育成の課題とその解決策」

新しい働き方への対応

新型コロナウイルスの感染拡大を契機として働き方の多様化が進み、人事は急速な変化への対応を迫られています。

とくにリモートワーク下での社員の育成や管理などはノウハウ自体が存在しないため、手探り状態で対応する企業がほとんどでしょう。

また、政府による子育て支援の推進や、高齢化を背景とした介護問題などを考慮すると、フレックスタイムや時短勤務の導入も欠かせないものとなるでしょう。

これまで企業のルールは、オフィスで週5日8時間働くことを前提に定められてきましたが、この前提を覆して体制を整備していくことが今後の大きな課題となるでしょう。

人事評価

多様な働き方を受け入れることで新たに課題となっているのが、人事評価です。フレックス制度やリモートワークの導入によって普段の働き方が見えにくくなり、必ずしも社内に長くいる人材が会社に貢献しているとは限らなくなりました。

また、社員に合ったキャリアパスを提示する上でも、人事評価の見直しは欠かせません。とくに管理職への昇進・昇格のみを目標とせず、複数のキャリアを用意する「複線型人事制度」を運用する際は、抜本的な人事評価の修正が必要となります。

透明性に欠け、納得感が得られない人事評価ではモチベーションの低下や離職といったリスクが高まるため、早急な対応が求められる課題といえるでしょう。

労務管理

法改正やダイバーシティの推進などを契機として、労務管理の負担が増えることも人事の課題といえます。

例えば、労働施策総合推進法の改正(いわゆる「パワハラ防止法」)により、2022年4月から中小企業でもパワハラ防止措置が義務化され、ハラスメントの内容・防止にまつわる方針を周知し、相談窓口を設置するといった対応が求められています。

ただ一方で、労務管理がきちんと整備されて社員のエンゲージメントが高まれば、採用や人材育成など様々な面でプラスに働くことが期待されます。

人事にまつわる課題を解決するための4つの取り組み

人事にまつわる課題は多岐にわたりますが、解決方法は共通する部分があります。ここでは、課題解決に必要な4つの取り組みについて解説していきます。

マーケティング思考の導入

人材のニーズや働き方が多様化している現在、人事においてもマーケティング思考が求められます。人事におけるマーケティングは、社内外の人材が何を求めているか把握して、ニーズに合わせて社内制度を整えて、人材の獲得・定着を狙う取り組みです。

採用活動においては求職者が何を求めているかを把握し、労務管理においては自社の社員が求めていることを把握していきます。ニーズを正確に掴めれば取るべき施策も明確となり、課題の解決への道筋が明確となるでしょう。

なお、人事におけるマーケティングについては「採用と組織力向上に欠かせない人事マーケティング」で詳しく解説しています。

関連記事:採用と組織力向上に欠かせない人事におけるマーケティング

人事データ分析

マーケティングと合わせて取り入れたいのが、人事データ分析です。人事データ分析は、勤怠情報や人事評価といった人事領域で扱うデータを収集・分析することです。

データを根拠とすることで、効果的な人材育成や適材適所の異動・配置などが可能となり、様々な人事における課題の解決が期待されます。解析ツールやデータ処理に耐えうるデバイスが身近となったことで、導入が進んでいる取り組みです。

なお、人事データ分析については「人事データ分析とは 分析の進め方や事例を解説」で詳しく解説しています。

関連記事:人事データ分析とは 分析の進め方や事例を解説

リスキリング

これからの人事にまつわる課題を解決するために欠かせないのが、リスキリングです。

リスキリングとは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されています。

引用:経済産業省・リクルートワークス研究所「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」

この定義からもわかるように、リスキリングは各企業の経営戦略としても重要な位置づけとなっており、DX推進を始めとした様々な施策とも関連します。人事においては、マーケティングやデータ分析の手法(スキル)を新たに身につけるリスキリングも重要となっていくでしょう。

※リスキリングについては「リスキリングとDX推進」でも詳しく解説しています。

関連記事:「リスキリングとDX推進」

ITツールの導入

リソース不足の課題を埋めるのに役立つのが、ITツールの導入です。ITツールによって業務の短縮化や自動化を図ることにより、別の課題へ取り組む時間を捻出できるようになります。

ITツールの種類は、採用管理や人事評価など様々なサービスがあり、自社の状況に見合ったものを選定するとよいでしょう。

ただ、ITツールを導入すれば劇的に課題が解決するわけではなく、適切に運用して使いこなす必要があります。費用対効果も含めて、導入を検討しましょう。

まとめ

人事が直面している課題の多くは、環境や価値観の変化といった大きな背景によって引き起こされています。そのため、根本的な解決は難しく、常に改善を続けていかなければいけません。

とくに近年は組織のあり方を含めて、抜本的な改革を迫られる課題が増えています。人事にはリスキリングやデータ分析といったこれまでになかった手法を取り入れ、戦略的に課題に取り組む姿勢が求められるといえそうです。

人事の課題解決に役立つデータリテラシーと数字力

人事が直面する課題を解決するためには、マーケティング思考やデータ分析、ITツールの導入などが有効であると解説しましたが、いきなり統計研修やDX研修を行ってもなかなか成果は上がりません。

人事担当者のなかには理系分野や数字に対して苦手意識を持つ方も少なくないため、いきなり専門的な研修を実施しても拒絶反応が深まるだけだからです。

まずは、担当者のレベルに合わせて数字やデータの扱いを学んでいくことが大切です。弊社オルデナール・コンサルティングが提供する「数的センス向上トレーニング」は、数字やデータの扱い方を「入門編」から「実践編」の4段階で学んでいき、受講者のレベルに合わせて、データリテラシーを育んでいきます。

「リスキリングに取り組みたいけれど、何から学べば良いかわからない」「ITツールを導入したはいいが、肝心のデータ分析のノウハウがない」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご活用ください。

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