2022年には流行語大賞にもノミネートされ、年々注目度が高まっているリスキリング。DX推進とセットで語られることが多いですが、この2つはどのように結びついているのでしょうか。
今回は、そもそものリスキリングとDXの意味、リスキリングによってDX推進をさせるためのポイントなどについて解説していきます。
リスキリングとは
リスキリングは、経済産業省が主催した検討会において以下のように定義されています。
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
引用:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」
2022年には「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされたリスキリングですが、この言葉が注目され始めたのは、2018年の世界経済会議(ダボス会議)で行われたセッション「リスキル革命」がきっかけといわれています。
リスキル革命では「2030年までに世界中の10億人に、より良い教育や仕事、スキルを提供する」と宣言されています。
一方で国内では、2017年度から経済産業省による「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」が創設され、IT・データ分野に重点化した人材育成が進められてきました。
2022年10月には、個人のリスキリング支援として、5年間で1兆円の予算を投じることが発表されています。
DXとは
DX(Digital Transformation)は、「デジタル技術を利用して、人々の生活に役立つ新しいサービスや製品を作り出し、競争に勝ち抜こう」といった意味合いです。経済産業省のレポートでは、IDC Japan株式会社の定義を以下のように引用しています。
「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」
引用:デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会「DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
リスキリングとDXが結びつく理由
上で引用した経済産業省の定義からもわかるように、リスキリングは必ずしもDXを指すものではありません。例えば欧州では、化石燃料を中心とした経済活動から脱却し、クリーンエネルギー分野への職務に就く「グリーン・リスキリング」が推進されています。
しかし、現状でリスキリングは、DXとセットで語られることが多いです。その背景としては、新しい職業に就くためのスキル、大幅な変化に対応するためのスキルがデジタル技術に他ならないことが挙げられます。
とくにAIを中心とした技術革新は、あらゆる業務に破壊的な変化を引き起こそうとしています。
また、企業がDX推進のためにIT人材を求める一方で、育成・採用ともに成果を出せていないことも大きな要因でしょう。
日本能率協会の調査によれば、「DX推進に関わる人材が不足している(育成が思うようにできていない)」と回答した企業は85.9%、「DX推進に関わる人材が不足している(採用が思うようにできていない)」と回答した企業は83.1%に上っています。
参考:一般社団法人日本能率協会「2022年度(第43回)当面する企業経営課題に関する調査」
企業のDX化を推進できる人材は非常に希少であり、その育成・採用についてほとんどの企業が成果を出せていません。そのため、リスキリングによるIT人材の育成が重要視されているわけです。
リスキリングによるDX推進の4つのポイント
リスキリングによってDX推進を成功させるためには、どんな準備や取り組みが必要となるのでしょうか。ここでは、4つのポイントを紹介していきます。
リスキリングするスキル・知識を明確にする
リスキリングによってDX推進を目指すにあたり、まずはリスキリングによって何を目指すか明確にしたうえで、社員に不足しているスキル・知識を洗い出していきましょう。なお、社員の能力を把握・管理する際には、スキルマップを活用すると効率的です。
※スキルマップについては「人材育成を加速させるスキルマップとは」で詳しく解説しています。
関連記事:「人材育成を加速させるスキルマップとは」
例えばリスキリングによって、AIを活用した新しいビジネスモデルの構築を目指すのであれば、どんな業務が必要で、職務遂行のためにはどのようなスキル・知識を身に着けさせなければいけないのかを明らかにします。
とはいえ、リスキリングによるDX推進は、AIエンジニアやデータサイエンティストといったスペシャリストを目指すものばかりではありません。社内にデータを活用するノウハウがないと課題を感じているのであれば、社員にデータリテラシーを学ばせて業務改善を図るのも立派なリスキリングによるDX推進です。
OFF-JTを導入する
リスキリングを進める際は、OFF-JTを導入しましょう。OJTやSD(自己啓発)では、十分な成果は望めないからです。
企業によるリスキリングは、将来的な変化を見据えて、今後の業務に必要となるスキルや知識を学び直させることが目的となります。これに対してOJTは、既存の業務によって人材を育成していく手法です。つまりOJTでは、将来的な変化を見越したリスキリングに対応できないのです。
その点で自発的なSD(自己啓発)は、リスキリングの効果が期待できます。しかし、会社から「将来的に必要となるスキルや知識を自発的に学べ」と指示を出しても、社員のモチベーションは向上せず、なかなか成果には繋がりません。
企業としては、研修やセミナーなどのOFF-JTによって学びの機会を提供し、あくまでも業務の一環としてリスキリングを推進する必要があります。
インセンティブ・昇給などの評価制度
DXに関するリスキリングを進めようとしても、IT分野の勉強に難色を示す社員もいるでしょう。社員のモチベーションを向上させるためには、インセンティブや昇給など、リスキリングを行ったことに対して人事評価を行うことが大切です。
実際に、パーソルイノベーションの調査によれば、リスキリングを実施した企業の33.1%がリスキリング後の昇給を実施しており、「未実施だが検討中」と回答した企業も37.5%に上っています。
参考:パーソルイノベーション株式会社『学びのコーチ』
社内制度として継続的な取り組みを
AIがあっという間に日常生活へ入り込んできたように、近年の技術革新のスピード感は著しいものがあります。そのため、リスキリングによるDXの推進は一度きりの施策で終わらせず、継続的な取り組みとする必要があります。
とくに技術面の学びは一度止めてしまうと、あっという間に知識が陳腐化してしまいます。希望者のみを対象とするのではなく、全社員を対象とする社内制度として、社員の継続的な学びを支援できる体制を整えておきましょう。
DX推進にはデータリテラシーのリスキリング
多くの企業が業務の効率化やビジネスの創出を目指して、DX推進に取り組んでいますが、DXの取り組みで十分な成果を実感している企業はわずか1割という調査結果もあります。多くの経営者や人事担当者は、課題や疑問を抱えているわけです。
参考:PwCコンサルティング「日本企業のDX推進実態調査2022」
そんなDX推進に悩む企業様におすすめしているのが、データリテラシーのリスキリングです。データリテラシーとは、入手したデータを理解して、ビジネスに活用可能な情報を選び取って解釈する能力です。
いま注目のAIにデータを処理させて「予測」や「自動化」を行うにしても、そのデータ処理の方向性は人間が決定しなければいけません。つまり、データを活用して、ビジネスのネタや自社の課題解決に役立てるのは、まだ人間の仕事なのです。
にも関わらず、ビジネスパーソンの多くは数字に対して苦手意識を持ち、細かい数字が並ぶデータや資料から目を背けがちです。これでは、DX化もうまくいきません。そこで必要となるのが、データリテラシーというわけです。
弊社オルデナール・コンサルティングが提供する「数的センス向上トレーニング」では、数字やデータの扱い方を「入門編」から「実践編」の4段階で学んでいき、受講者の数字力に合わせてデータリテラシーを育んでいきます。
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