人材育成には、適切な目標設定や目標管理が必要不可欠です。人材の育成が上手くいかない企業は、多くの場合、目標が曖昧になっていたり、形骸化していたりします。
今回は人材育成の目標を定めるべき理由から、具体的な設定手順、職種別の具体例までを解説していきます。
人材育成の目標とは?
人材育成・教育の目的を考える場合、企業視点と個人視点の2つが考えられます。企業視点で考える人材育成とは「企業の発展・業績向上に貢献できる人材を育成する」ことです。
一方、個人視点で考える人材育成とは「自身の成長に向けたスキルアップを行う」ことではないでしょうか?本記事では企業視点の人材育成について考えています。
そのため、人材育成の目的は社員のスキルアップではなく企業業績の向上と捉えています。企業が実施する人材育成研修などは企業側が費用を支払うことが大半です。営業時間内に行うことも多いでしょう。
即ち、企業は社員へ給与を支払いつつ人材育成研修費用も負担しています。なので、企業で実施された研修を受講した社員の皆様は研修を通じてスキルアップを図りつつ、企業業績への貢献が求められます。
人材育成の目標を定めるべき4つの理由
なぜ人材育成を成功させるためには、目標設定が重要なのでしょうか。その理由を4つのポイントから解説していきます。
モチベーションの向上
目標設定は、社員のモチベーションの向上に繋がります。日々の業務や研修などをルーティンで行っているだけでは、なかなか成長に繋がりません。個々に目標を設定することで目的意識が高まり、さらに目標をクリアすることで達成感が得られ、成長を促進させるのです。
また、設定された目標が社員自身のキャリアプランにマッチしていれば、よりモチベーションを向上させることができるでしょう。
現状把握とスキルアップ
目標を設定することは社員自身の現状把握に繋がり、そこからスキルアップの機会を創出できます。目標を設定してその達成度を確認することで、社員の能力を測定できます。達成度が低い場合は、スキル不足や業務のミスマッチなどの課題を浮き彫りにしていきましょう。
浮かび上がった課題は、一つずつ解決を目指します。この解決までの行程自体が人材育成のための施策となり、社員のスキルアップに結びつきます。目標は達成することだけに意味があるのではなく、達成に至るまでの課程も糧とすることで成長を促進させるのです。
自律型になりやすくなる
目標がはっきりと提示されることで、社員それぞれが「自分は目標に対して何をすればよいか」と考えやすくなります。
逆に言えば、目標がはっきりと定まっていないと、社員は自ずと「指示待ち」状態になってしまいます。目標を設定することで社員は「自律型」に近づき、生産性も向上していくでしょう。
管理職の役割が明確になる
人材育成の目標設定は社員本人だけでなく、管理職の役割を明確にする効果があります。例えば、部下の目標に対する進捗度を把握することで問題点を見つけやすくなり、指導(サポート)も明確となります。
加えて、人事評価の面でも目標の達成度は定量的な指標となり、適正な評価を行いやすくなるメリットもあります。
人材育成の目標を設定する流れ・手順
人材育成の目標は、具体的にどのようにして設定すればよいのでしょうか。順を追って解説していきます。
経営目標からフォーカスする
社員の目標を設定するには、企業としての経営目標からフォーカスしていく必要があります。経営目標を達成するにはどのような施策が必要で、その施策を実行するにはどのような人材が必要なのかと、焦点を絞っていくのです。
つまり、自社はどのような人材を求めているのか明確にすることが、そのまま育成の目標になるわけです。
目標の方向性を明確にする
人材育成のための目標には、大きく4つの方向性があります。企業全体の目標達成のために、どの方向性で育成すべきか検討しましょう。
・問題点の改善
現状で抱えている問題点を改善・解消することで成長に繋げる。
・新たな価値の創出
新しい事業の立ち上げなど、社内にはない価値の創出を目指す。
・能力の向上
能力や技術を向上させることで生産性を向上させる。
・現状維持
業界全体に逆風が吹いているときなどに、縮小せずに現状維持を目指す。また、クレーム0件など現状維持が価値となる場合にも設定される。
具体的な目標と達成期限を設定する
目標は具体的かつ客観的に判断できるものでなければいけません。最もわかりやすいのは、定量的な数字です。これに加えて、いつまでに達成するかの期限を設定しましょう。
例えば、「日に電話営業を20件行う」「次月までにホームページのPV(閲覧数)を1000上昇させる」といった、具体的かつ現実的に達成可能な範囲で数値目標を設定するとよいでしょう。
目標達成までの行動をまとめる(達成計画)
目標を達成するためには、日々のタスクとして「何を」「どのように」「どれくらい」実行していくかを計画として設定することが大切です。
このような達成計画があることで、行動が迷いやズレがなくなります。目標設定シートなどのツールを用いて、可視化することも効果的です。
効果的な目標を設定するためのポイント
どのような目標を設定すれば効果的になるのか、ポイントを解説していきます。
社員のキャリアと合致させる
設定した目標をより効果的にするためには、社員のキャリア観と合致させることが大切です。
例えば、web系での集客スキルに優れている人材に対して、実地での営業目標を設定してもミスマッチとなってしまい、生産性の低下や離職リスクを高めるといった結果を招きかねません。
社員のキャリアプランを聞き取り、会社側がキャリアパスとなるような目標を提示できれば、より意欲的に業務へ取り組んでくれることでしょう。
進捗確認とフォロー
中長期的な目標を設定した場合は、目標に対する進捗の確認と必要に応じたフォローが大切となります。とくに確認とフォローを管理職の裁量に任せてしまうと、通常業務が優先され、バックアップが疎かになる場合があります。
会社の制度として「1on1」を設定するなど、社員が孤立しないような体制作りを推進しましょう。
研修・教育プログラムの整備
目標達成に向けてスキルが不足している場合などに備えて、研修・教育プログラムを整備しておくと効果的です。具体的には、外部研修や資格取得の補助など、社員のスキルアップを促進するための制度を整えるとよいでしょう。
目標を管理するポイント
企業における人材育成の目標を「企業の発展・業績向上に貢献できる人材を育成する」とするのであれば、企業が求める人材育成が行われているのかを管理することが重要です。
人材育成の目標を設定し管理するための方法としていくつかのポイントが考えられます。
研修を実務に繋げる
1日の研修を通じて、「実りがあったな…」「学ぶことが多々あったな…」と、何となく良かったな…で終わらせてしまうことは意外にも多いです。これでは人材育成の目標を達成しているかの管理を行う以前に研修の意味をなしていません。
そのため、目標達成に向けた管理を行う前提として、研修を実務に繋げることで目標達成に向かう仕組みが重要です。
上司が責任を持って介在する
企業研修の課題として「やりっぱなし」で終わってしまう、と聞くことが多くあります。これは人材育成の目標を達成できず効果が表れなかったことを指しています。ではなぜそのようなことが起きるのか?
組織全体で人材区政をマネジメントする仕組みが不足しているのではないでしょうか?組織全体でマネジメントを行うには上司の介在が必要不可欠です。研修実施後、学びを実務で生かせているか?定期的に声がけをして確認することが求められます。
職種別の目標例
人材育成のための目標は、職種の特徴に合わせて設定していく必要があります。ここでは、いくつかの職種から具体例を挙げていきます。
営業職の場合
営業職は具体的な数値目標を設定しやすい職種といえます。ポイントとなるのは、現実的に達成可能な範囲で、社員の成長を促す目標を設定できるかです。
【具体例】
・年間の売上目標に加えて季節指数などを踏まえた月別の目標を設定
・新規訪問は一日に3件
・週末の達成率の進捗確認を徹底
・成約率を向上させるために部長とともに営業トークのロープレ
人事職の場合
人事の仕事は人材の確保と、社員が活躍できるための環境作りです。ただ採用活動に取り組むだけでなく、定着率の向上のための施策なども打ち出していく必要があります。
【具体例】
・事業拡大に向け、来春までに○名を新規採用
・離職率○%の維持に向けた働き方改革推進
・求人媒体で一日に2件スカウトメールを送信
・労務管理のためのDXツールの選定
企画・開発職の場合
企画・開発職は経営目標に沿って、新しい価値を創造する役割を担います。とくに開発は成果を上げるまでに時間が掛かることも多く、過程に細かく目標を設置して評価していくことが大切です。
【具体例】
・労働時間○%削減のための顧客データの自動管理ツールの開発
・既存商品のコストを○%カットする改善案を次月までに3案提出
・営業部と連携して、市場ニーズ把握のための勉強会を月1回以上開催
・プレゼン時、原料費等を踏まえた利益率の明確化を徹底
クリエイティブ職の場合
クリエイティブ職は定量的な目標が立てにくく、仕事の評価も難しいため、目標設定が困難な職種といえます。制作速度の向上や納期の遵守といった目に見えやすい目標を立てつつ、問い合わせ件数の増加などの成果を評価することが大切です。
【具体例】
・ホームページの修正依頼は○時間以内に対応する
・新規チラシのデザイン案は3パターン用意する
・問い合わせ件数を増加させるための改善施策の毎月1件提案
目標設定に欠かせない数字力を養う
人材育成の目標設定には、定量的な数値が欠かせません。その一方で、ビジネスマンの多くは数字に対して漠然とした苦手意識を持っています。
そこで必要となるのが、「ビジネスシーンで役立つ数字力」です。
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数字力を向上させれば、目標として設定した数字にも説得力が増し、効率的な人材育成に繋がっていきます。
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