エンゲージメント向上の課題と必要な施策とは 企業事例も紹介

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エンゲージメントの向上のためには「経営者のビジョンの共有」や「社員が育つ環境の整備」、「適材適所の人員配置」など、多岐にわたる施策が必要となります。実際、ある調査によれば、エンゲージメント向上に課題を感じている企業は7割を超えており、その難しさが窺えます。

今回はエンゲージメント向上時の課題や必要となる施策、実際に成果を上げている企業の事例について解説していきます。

エンゲージメントとは

経済産業省の資料によれば、エンゲージメントとは「個人と組織の成長の方向性が連動していて、たがいに貢献し合える関係」と定義されています。

参考:経済産業省「未来人材ビジョン」

さらに細かく言うのであれば、従業員が企業から期待される役割を果たすことを約束し、企業は従業員の貢献に対して正当な対価を支払うことを約束している状態が「エンゲージメントが高い状態」といえます。

エンゲージメントが高い状態では、生産性の向上や離職率の低下、採用力の向上といったメリットが得られます。ただ、日本は世界的に見ても従業員のエンゲージメントがきわめて低い国であることが様々な調査から明らかになっており、エンゲージメントの向上は日本企業共通の課題といえるでしょう。

なお、エンゲージメントの詳細については「ビジネスにおけるエンゲージメント メリットと日本の指標が低い原因を解説」でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

関連記事:「ビジネスにおけるエンゲージメント メリットと日本の指標が低い原因を解説」

エンゲージメント向上にあたっての課題

パーソルホールディングスの調査によれば、「エンゲージメント向上に課題を感じている」と回答した企業は72.1%(「非常に感じている」17.2%、「ある程度感じている」54.9%)にのぼっており、大半の企業がエンゲージメント向上に課題感を持っている現状が窺えます。

また、同調査ではエンゲージメント向上にあたっての具体的な課題についても調査されており、以下のような結果が出ています。

・管理職層の課題認識が薄い 30.6%

・育成、キャリア面の課題が阻害となっている 27.7%

・評価、処遇面の課題が阻害となっている 26.2%

・職場環境、働き方の環境が阻害となっている 25.6%

・組織風土が阻害となっている 25.0%

※上位5つを抜粋

参考:パーソルホールディングス株式会社「人的資本経営調査レポート 04.エンゲージメント編」

エンゲージメント向上につながる施策

ここからは、エンゲージメント向上につながる施策とその内容について解説していきます。

自社の目標や経営者のビジョンを共有する

エンゲージメント向上に取り組むのであれば、まず土台として自社の目標や経営者のビジョンを共有することから始めましょう。これはとくに「管理職層の課題認識が薄い」「組織風土が阻害となっている」といった課題の解決に不可欠です。

ビジネスに限らず「どこに向かって進んでいるのかわからない」というシチュエーションは、不安や不満を感じやすいものです。経営層の口から会社の方向性や目標を伝えて、社内で誤解なく共有されているかを確認する必要があります。

具体的には勉強会や社内報の発行など、定期的かつ様々な方法で発信していくことが大切です。

社員が育つ・学べる環境を整える

終身雇用制度の崩壊や働き方の多様化を受けて、ビジネスパーソンはひとつの会社でのキャリアパスではなく、自身の成長や自分らしいキャリア形成に重きを置くようになっています。そのためエンゲージメント向上の施策のなかでも、社員が育つ・学べる環境を整えて、「育成、キャリア面」の課題を解消する必要性が飛躍的に高まっています。

具体的には、複線型人事制度や社内公募制度などでキャリア選択の幅を広げたり、資格取得費用を助成したりと、社内制度の整備に力を入れるとよいでしょう。

人事評価制度を現状に即した内容にする

エンゲージメントの向上には、人事評価制度の見直しも欠かせません。人材の流動化が進む現在、自身の活躍や努力が評価されなけば、社員はより良い環境を求めて転職してしまうからです。

また評価制度は、自社のビジョン共有や育成・キャリア形成とも密接に関わります。人事評価制度は自社の方向性や求める社員像に基づいて作成されるものであり、社員の評価向上と会社の目標達成が連動していなければ意味がないからです。

加えて、社員が長く安心して働けるように多様な働き方にも対応し、働く場所や時間が異なっても公正な評価を行える制度を整えることも大切です。

適材適所の人員配置を実現する

キャリア形成や人事評価とも深く関わるのが人員配置です。社員それぞれが最大のパフォーマンスを発揮できる居場所を用意すれば、自然とやりがいを感じられるようになり、会社としても生産性が向上していきます。

近年では転勤を廃止して「地域限定型採用」を推進したり、社員の資質や職務経歴などを情報化して人事管理に活かす「タレントマネジメント」を導入したりと、適材適所の人員配置を実現するための取り組みが盛んになっています。

なお、タレントマネジメントの概要や進め方については「タレントマネジメントとは 進め方や管理すべき項目を解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「タレントマネジメントとは 進め方や管理すべき項目を解説」

心理的安全性の確保

近年、職場環境の改善を目的として、多くの企業が心理的安全性に注目しています。心理的安全性とは、組織のなかで自分の意見やアイディアを誰に対しても発信でき、拒絶や罰則を受けることのない状態のことで、Googleの研究によってその重要性が明らかとなったことから関心が高まっています。

エンゲージメントが高い職場では離職率が低下し、生産性が向上すると言われていることからも、エンゲージメントと心理的安全性は相互関係にあるといえるでしょう。

なお、心理的安全性の概要「職場における心理的安全性の高め方 メリットや低下を招く要素を解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「職場における心理的安全性の高め方 メリットや低下を招く要素を解説」

エンゲージメント向上に取り組む企業の事例

実際にエンゲージメント向上に取り組む企業は、どのような取り組みを進めているのでしょうか。ここでは、KDDIグループとLINEヤフーの事例をご紹介します。

KDDIグループ

KDDIグループは「全従業員の物心両面の幸福を追求」という企業理念を掲げており、2020年に策定した中期経営戦略のなかでも「社員エンゲージメントの向上」を重要視しています。

なかでも注目したいのが、2019年11月より四半期ごとに行われる全社的なエンゲージメントサーベイです。とくに調査結果を「スコアギャップシート」や「マネジメント・インサイト」などにまとめて各リーダーに伝達する取り組みは、現場の負荷を考慮した効果的な施策といえるでしょう。

また現場単位でも、気負わずに新しい技術にチャレンジするための「ラボ活動」、相談すべきプロをまとめた「有識者マップ」など、様々な施策が実施されているのも特徴です。これらはいずれも、「挑戦する風土の醸成」や「コミュニケーションの強化」といったエンゲージメントの各指標の向上を目的とした取り組みとなっています。

参考:KDDI株式会社「一人ひとりが生き生きと働ける企業へ、KDDIが目指す社員エンゲージメントの向上」

LINEヤフー

LINEは社員数が年率約30%の勢いで増加しており、めまぐるしく変化する組織運営を支えるため、2017年よりエンゲージメントサーベイを月ごとに実施。2019年からはその対象を全社に広げました。

エンゲージメントサーベイの結果、「エンゲージメントは入社直後をピークとして、一定水準まで減少する」「退職者の傾向は組織(部署)ごとに異なる」「入社時のオンボーディングがその後のエンゲージメントに大きく影響する」といった事実が判明したといいます。

とくにオンボーディングについては、入社前の話と入社後の業務内容に乖離があることでネガティブな印象が強まるため、より入社前のコミュニケーションを丁寧に行う方針を固めたとのことです。

また、ヤフーとの合併以降、双方のエンゲージメントスコアを比較することで、企業文化によってエンゲージメントにも差が表れることが明らかになりました。この事実から、エンゲージメント向上のためには、企業ごとの得意・不得意を自覚しておくことが重要といえるでしょう。

参考:Human Capital Online「データ活用でエンゲージメントとウェルビーイングを向上させる秘訣とは」

エンゲージメントサーベイの実施に欠かせない「数字力」

「エンゲージメントの向上に取り組む企業の事例」からもわかるように、エンゲージメント向上のためには、定量的に社員の状態や満足度を把握するための調査・分析が重要となります。

とくにエンゲージメントサーベイで汲み取れるデータは、社員が抱えている思いの一端に過ぎないため、データのなかから重要な情報を見つけ出す選択力や、データから得た情報をわかりやすく伝えるための表現力が欠かせません。

しかし、数字やデータの扱いに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは意外と多く、エンゲージメントサーベイを行なってもうまく集計・分析ができず、お蔵入りしてしまうというのはよくある話です。

そんな社員のデータリテラシーに課題を感じている企業様にお試しいただきたいのが、弊社オルデナール・コンサルティングがご提供する「ビジネス数学研修」です。

弊社では、数字力を「数字やデータから素早くポイントを見つけだし、相手にわかりやすく伝える力」と定義しており、研修を通じて「把握力、分析力、選択力、予測力、表現力」を伸ばしていくことで、ビジネスシーンで数字やデータを効果的に扱える人材を育成しています。

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