タイパ(タイムパフォーマンス)とは Z世代への訴求やデメリットを解説
タイパ(タイムパフォーマンス)は時間対効果を意味し、費やした時間に対して得られた満足度や成果を比較する考え方です。
企業がタイパを正しく理解することは、製品開発・マーケティングを推進するうえでも重要であり、採用活動におけるZ世代への訴求を考える際にも欠かせません。
今回は、タイパの概要を踏まえたうえで、ビジネスシーンでタイパを高めるメリット・デメリットや、タイパを高めるための方法について解説していきます。
タイパ(タイムパフォーマンス)とは
タイパは「タイムパフォーマンス」の略で、時間対効果を意味します。コスパ(コストパフォーマンス:費用対効果)から転じて生まれた言葉とされており、費やした時間に対して得られた満足度や成果を比較する考え方です。単に時短や効率の良さだけを示すものではなく、満足度の高さが重んじられることがポイントでしょう。
タイパはZ世代が重要視することから一般的にも広まり始め、三省堂が主催する「辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2022』」では大賞に選ばれました。実際、タイパはZ世代のみが意識しているものではありません。全国の10代~60代を対象に調査された「セイコー時間白書2023」によれば、タイパを重視する時間の有無について尋ねたところ、87.4%が「ある」と回答しています。
参考:セイコーグループ株式会社「セイコー時間白書2023」
ビジネスにおいてもタイパは無関係ではありません。タイパという言葉こそ用いられてきませんでしたが、働き方改革や人手不足などを背景として、多くの企業が時短や業務効率化を推進してきました。「時は金なり」ということわざがあるように、タイパは近年になって生まれた新しい文化ではありません。拒絶反応を抱かず、正しくタイパを受け入れていくことが求められます。
Z世代なら誰でもタイパを重視するわけではない
Z世代のタイパ文化は「倍速視聴」や「切り抜き動画」などを代表として、先鋭的に扱われがちです。しかし、Z世代の多くは、しっかりとタイパの良し悪しを理解しています。
実際、マイナビの2025年3月卒業見込みの大学生・大学院生を対象とした調査によれば、「タイパを意識したインターンシップ参加、就職活動準備、就職活動についてどう考えるか」という問いに対し、55.5%が「メリットとデメリットが半分半分だと思う」と回答しています。
「デメリットのほうが多いと思う」を含めると6割以上がタイパのデメリットを把握していることになり、過半数はTPOに合わせたタイパを意識していることがわかります。
参考:株式会社マイナビ「マイナビ 2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(1月)」
企業がタイパを理解・重視するメリット
企業がタイパを理解・重視することで、業務効率化や生産性の向上につながることは言うまでもありません。ここでは、そのほかの見落とされがちなメリットについて解説していきます。
製品開発・マーケティングに欠かせない
タイパは今後の製品開発やマーケティングの前提となる価値観であるため、「理解できない」では通用しません。前述の調査のように、タイパを重視するのはZ世代に限らないからです。
例えば、完全栄養食やフードデリバリーが一般的となったのは、調理や食事のタイパを上げたいというニーズがあります。同様にマーケティングやプロモーションにおいては、動画の倍速視聴や「ながら見」のような並行消費を前提として施策を検討する必要があるでしょう。
企業においては、このような消費行動の変化を正しく理解し、顧客から選ばれるサービスや商品を提供していかなければいけません。
採用活動におけるZ世代への訴求
Z世代は2024年時点で14歳~29歳前後を指すといわれており、今度もしばらくは新卒・中途採用を問わず、採用活動のメインターゲットとなります。そのため、タイパを重んじるZ世代を獲得するためには、時間的な効率に配慮した取り組みが欠かせません。
例えば、web面接やオンライン説明会の継続です。企業側としては対面での面接に回帰し、しっかりと候補者を見極めたいという意向もあるでしょう。しかし求職者側からすれば、オフィスまで足を運ぶのはタイパがよくありません。
「売り手市場」の昨今においては、「オンラインで選考が進まないのなら他社の選考を受けよう」と避けられてしまう恐れもあるでしょう。少なくとも1次面接まではweb面接に対応するなど、タイパに配慮した環境を整えることが大切です。
なお、Z世代の特徴や価値観については「『Z世代は仕事ができない』は本当か 育成と定着に必要な取り組みとは」でも解説しています。
関連記事:「「Z世代は仕事ができない」は本当か 育成と定着に必要な取り組みとは」
タイパを推進することによるデメリット
ビジネスにおいてタイパを推進・重視し過ぎると、デメリットが生じる恐れがあります。ここでは、人材育成と組織力の低下について解説します。
人材育成時の弊害
若手社員のタイパを尊重し過ぎると、人材育成に弊害が生じる恐れがあります。
タイパは言い換えるなら、最適解へ最短でたどり着き、効率化を図る取り組みです。しかし、ビジネスシーンでは100%の正解がない場合も数多くあります。そんな正解がない課題に直面した際、効率を無視して納得いくまで考え抜いた経験がないと、「何が正しいのか」と思考停止に陥ってしまう恐れがあります。
とくにZ世代は、多感な時期に不況や災害の様子を見てきたことから、「堅実思考」が根付いていると言われています。あえてタイパを度外視した課題を与えて、成長を促していくことも重要になっていくのではないでしょうか。
組織としての応用力・選択力の低下
組織全体でタイパを重んじていると、応用力や選択力が低下していく恐れがあります。タイパにとって選択する時間や結果までの課程には「無駄」が多いため、表層的な情報から物事を判断しがちになります。
しかし、結果に至るまでのプロセスや仕組みを理解していないと応用力が身につきません。また、「なぜその選択をしたのか」という根拠まで理解しないと、選択力が養われないことも無視できない問題です。
情報を読み解いて選択肢を増やしたり、問題の根幹に踏み込んだりする機会が減っていけば、それだけ組織としての対応力や選択力が弱まっていくわけです。
正しくタイパを高めていく方法
タイパのメリット・デメリットを踏まえて、正しくタイパを高めていく方法について解説していきます。
業務の棚卸し
タイパを高めるために欠かせないのが、業務の棚卸しです。業務の棚卸しとは、社内の業務について洗い出しを行い、整理していく取り組みです。不要な業務や作業時間などを調査・改善することで、タイパが向上するのは言うまでもありません。
また、「タイパを推進することによるデメリット」でも解説したとおり、非効率な部分も社員の育成や組織力の維持につながる場合があります。目先の効率だけを重んじるのではなく、多角的な目線で棚卸しを行うことで、正しくタイパを高めることができるのです。
なお、業務の棚卸しについては「業務の棚卸しとは 4ステップに集約したやり方を解説」でも詳しく解説しています。
関連記事:「業務の棚卸しとは 4ステップに集約したやり方を解説」
ツールの活用やオンライン化
タイパを大きく高める方法として、ツールの活用や業務のオンライン化が挙げられます。近年でもweb会議ツールの普及は、社員の移動などの手間を省き、大きくタイパ向上に寄与しました。そのほかにも顧客管理システムや採用支援システムなど、タイパを高めるツールは枚挙に暇がありません。
ただし、タイパが良いものがコスパも良いとは限りません。設備投資のコストと、それに見合う成果が得られるのかまでを考えて、慎重に導入を検討しましょう。
ビジネスシーンでのタイパを高める「数字力」
普段の何気ないビジネスシーンでのタイパ向上につながるのが、データや数字の活用です。
例えば、指示や提案のなかに数字・データを用いれば、抽象的な表現が減ることで素早く共通認識を得ることができます。また何かを選択する場面でも、データからうまく情報を汲み取ることができれば、迅速かつ正確な判断を下せるようになるでしょう。
こうした「数字を把握する力」や「数字を用いて表現する力」を学ぶための研修が「ビジネス数学研修」なのです。
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