タイパ(タイムパフォーマンス)とは Z世代への訴求やデメリットを解説
 
タイパ(タイムパフォーマンス)は時間対効果を意味し、費やした時間に対して得られた満足度や成果を比較する考え方です。
企業がタイパを正しく理解することは、製品開発・マーケティングを推進するうえでも重要で、採用活動などでZ世代への訴求を考える際にも欠かせません。同時に、タイパのデメリットである「応用力が伸びない」「段取りが悪くなる」「人材育成時の弊害」などを把握しておくことも大切です。
今回は、タイパの意味や広まった背景などを踏まえたうえで、ビジネスシーンでタイパを高めるメリット・デメリットや、タイパを高めるための方法について解説していきます。
タイパとは
タイパは「タイムパフォーマンス」の略で、時間対効果を意味します。コスパ(コストパフォーマンス:費用対効果)から転じて生まれた言葉とされており、費やした時間に対して得られた満足度や成果を比較する考え方です。単に時短や効率の良さだけを示すものではなく、満足度の高さが重んじられていることがポイントでしょう。
タイパはZ世代が重要視することから一般的にも広まり始め、三省堂主催「辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2022』」では大賞に選ばれました。
ただ、タイパは必ずしもZ世代のみが意識しているものではありません。全国の10代~60代を対象に調査された「セイコー時間白書2025」によれば、「タイパを意識して行動している」という問いに対し、全体の60.4%があてはまる(あてはまる・ややあてはまるの合計)と回答しています。
各年代で見ても50代で56.5%、60代で52.0%がタイパを意識していると回答しており、高年齢層においても半数以上がタイパを意識しているという結果が出ています。
参考:セイコーグループ株式会社「セイコー時間白書2025」
ビジネスにおいてもタイパは無関係ではなく、働き方改革や人手不足などを背景として、多くの企業が時短や業務効率化に取り組んでいます。「時は金なり」ということわざがあるように、タイパは近年になって生まれた新しい概念とは言い切れません。拒絶反応を抱かず、正しくタイパを受け入れていくことが求められます。
Z世代なら誰でもタイパを重視するわけではない
Z世代のタイパ文化は「倍速視聴」や「切り抜き動画」などを代表として、先鋭的に扱われがちです。しかし、Z世代の多くは、しっかりとタイパの良し悪しを理解しています。
実際、マイナビの2025年3月卒業見込みの大学生・大学院生を対象とした調査によれば、「タイパを意識したインターンシップ参加、就職活動準備、就職活動についてどう考えるか」という問いに対し、55.5%が「メリットとデメリットが半分半分だと思う」と回答しています。「デメリットのほうが多いと思う」を含めると6割以上がタイパのデメリットを把握していることになり、過半数はTPOに合わせたタイパを意識していることがわかります。
参考:株式会社マイナビ「マイナビ 2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(1月)」

なぜタイパが重要視されるのか
なぜ近年になってタイパが重要視されるようになったのでしょうか。その背景について解説していきます。
情報(コンテンツ)の氾濫
タイパが重要視される最大の理由は、情報(コンテンツ)の氾濫です。インターネットを中心として日々大量の情報が発信されており、一説には「現代人が1日で受け取る情報量は江戸時代の1年分・平安時代の一生分に相当する」と言われています。
つまり、仕事や趣味、時事問題などの情報を追っていくだけでもキャパシティをオーバーしてしまう状況にあるわけです。大人であれば自分で取捨選択をすればいいですが、現代の子どもたちはそうもいきません、コミュニティのなかの流行についていくために様々なコンテンツを「履修」する必要があり、倍速視聴や切り抜き動画といったタイパ重視のスタイルが求められているわけです。
損をしたくないという心理
とくにZ世代がタイパを重要視する理由として「損をしたくない」という心理が強く働いていることが指摘されています。その最たる例がネタバレ消費です。
ネタバレとは「コンテンツの鑑賞前に結末を見る(知る)こと」で、本来は「ネタバレは避けるもの」として扱われてきました。しかし、マイナビキャリアリサーチLabの調査レポートによれば「本を読んだり映画を見る前に、事前にその内容や結末を把握するか」という質問に対し、20代前半だけ「あてはまる(非常にあてはまる+まああてはまる)」と回答した割合が顕著に高くなっています。
参考:マイナビキャリアリサーチLab「『ネタバレ消費』『失敗したくない』…Z世代の傾向を『ネガティブ・ケイパビリティ』を通して見る」
これは事前に結末を知っておくことで、つまらないコンテンツや嫌いなコンテンツを避ける……つまり時間の無駄を避ける(損をしたくない)心理から来ているわけです。

企業側がタイパを理解・重視するメリット
企業側がタイパを理解・重視することで、業務効率化や生産性の向上につながることは言うまでもありません。ここでは、そのほかの見落とされがちなメリットについて解説していきます。
製品開発・マーケティングに欠かせない
タイパは今後の製品開発やマーケティングの前提となる価値観であるため、「理解できない」では通用しません。前述の調査のように、タイパを重視するのはZ世代に限らないからです。
例えば、完全栄養食やフードデリバリーが一般的となったのは、調理や食事のタイパを上げたいというニーズがあります。同様にマーケティングやプロモーションにおいては、動画の倍速視聴や「ながら見」のような並行消費を前提として施策を検討する必要があるでしょう。
企業においては、このような消費行動の変化を正しく理解し、顧客から選ばれるサービスや商品を提供していかなければいけません。
採用活動におけるZ世代への訴求
Z世代は2025年時点で15歳~30歳前後を指すといわれており、今度もしばらくは新卒・中途採用を問わず、採用活動のメインターゲットとなります。そのため、タイパを重んじるZ世代を獲得するためには、時間的な効率に配慮した取り組みが欠かせません。
例えば、web面接やオンライン説明会の継続です。企業側としては対面での面接に回帰し、しっかりと候補者を見極めたいという意向もあるでしょう。しかし求職者側からすれば、オフィスまで足を運ぶのはタイパがよくありません。「売り手市場」の昨今においては、「オンラインで選考が進まないのなら他社の選考を受けよう」と避けられてしまう恐れもあります。
少なくとも1次面接まではweb面接に対応するなど、タイパに配慮した環境を整えることが大切です。
なお、Z世代の特徴や価値観については「『Z世代は仕事ができない』は本当か 育成と定着に必要な取り組みとは」でも解説しています。
タイパを重要視し過ぎることによるデメリット
ビジネスにおいてタイパを推進・重視し過ぎると、デメリットが生じる恐れがあります。ここでは、個人における弊害と組織における弊害の両方から見ていきましょう。
情報を受け止めるだけになる
まず、タイパを重要視し過ぎるデメリットとして、情報を受け止めるだけになりやすいことが挙げられます。
「情報(コンテンツ)の氾濫」に対応するためのタイパですが、そこに明確な目的意識がないとただ情報を受け止めるだけで、考える隙がなくなってしまいます。
「情報を受け止めること」自体が目的にすり替わらないよう、明確な目的意識を持ったうえで、自分なりに解釈する時間を設けるようにしましょう。
応用力が伸びない
タイパを重要視した取り組みに傾倒していると、応用力が伸びないというデメリットに直面します。
人は物事を関連付けて考える能力を持っており、何らかの課題に直面した際も過去の経験との関連性を見出して問題解決を行います。
一方でタイパは「途中式を省略して、答えだけを得る」ことになりがちで、プロセスを理解できません。つまり、結果とプロセスが結びつかないため、物事を関連付ける能力(応用力)が伸びにくいのです。
タイパは一つの課題を解決するための最短距離になる一方、経験値が溜まりにくくなります。「ウサギとカメ」の童話のように、将来的にはタイパを重視したことで後続に追い抜かれてしまう……なんて結果になりかねないわけです。
段取りが悪くなる
これは個人・組織に共通するデメリットですが、タイパを重んじていると逆に段取りが悪くなる恐れがあります。
仕事を円滑に進めるためには、事前の丁寧な周知やケア……いわゆる根回しも必要です。しかし、タイパを重んじていると効率性に捕らわれてしまって人間関係の構築が疎かになり、周囲からの反応や協力が得にくい状況になります。
結果的に、自分では効率的に仕事を進めたつもりなのに周囲が動き出せる状況を作れず、余計に時間が掛かってしまうわけです。実際、「無駄に思える外回りが、実はステークホルダーからの協力を得るための最短距離だった」といった事例は珍しくありません。
様々な経験を積んだうえで不要な取り組みを省略するのは、タイパの面でも効果的でしょう。しかし、全体像が見えていないうちに安易にタイパを目指すと、逆に時間対効果が低下する恐れがあることを肝に銘じておきましょう。
人材育成時の弊害
組織のなかで若手社員のタイパを尊重し過ぎると、人材育成に弊害が生じる恐れがあります。
タイパは最適解へ最短でたどり着くことができますが、ビジネスでは最適解がないことも数多くあります。そんな正解がない課題に直面した際、効率を無視して納得いくまで考え抜いた経験がないと、「何が正しいのか」と思考停止に陥ってしまう恐れがあります。
とくにZ世代は、多感な時期に不況や大規模災害の様子を見てきたことから、「堅実思考」が根付いていると言われています。あえてタイパを度外視した課題を与えて、成長を促していくことも重要になっていくのではないでしょうか。

正しくタイパを高めていく方法
タイパのメリット・デメリットを踏まえて、正しくタイパを高めていく方法について解説していきます。
業務の棚卸し
タイパを高めるために欠かせないのが、業務の棚卸しです。業務の棚卸しとは、社内の業務について洗い出しを行い、整理していく取り組みです。不要な業務や作業時間などを調査・改善することで、タイパが向上するのは言うまでもありません。
また、「タイパを推進することによるデメリット」でも解説したとおり、非効率な部分も社員の育成や組織力の維持につながる場合があります。目先の効率だけを重んじるのではなく、多角的な目線で棚卸しを行うことで、正しくタイパを高めることができるのです。
なお、業務の棚卸しについては「業務の棚卸しとは 4ステップに集約したやり方を解説」でも詳しく解説しています。
ツールの活用やオンライン化
タイパを大きく高める方法として、ツールの活用や業務のオンライン化が挙げられます。近年でもweb会議ツールの普及は、社員の移動の手間などを省き、大きくタイパ向上に寄与しました。そのほかにも顧客管理システムや採用支援システムなど、タイパを高めるツールは枚挙に暇がありません。
ただし、タイパが良いものがコスパも良いとは限りません。設備投資のコストと、それに見合う成果が得られるのかまでを考えて、慎重に導入を検討しましょう。

ビジネスシーンでのタイパを高める「数字力」
普段の何気ないビジネスシーンでのタイパ向上につながるのが、データや数字の活用です。
例えば、指示や提案のなかに数字を用いることで抽象的な表現が減るので、素早く共通認識を得ることができます。また何かを選択する場面でも、データからうまく情報を汲み取ることができれば、迅速かつ正確な判断を下せるようになるでしょう。
こうした「数字を把握する力」や「数字を用いて表現する力」を学ぶための研修が「ビジネス数学研修」であり、なかでも弊社オルデナール・コンサルティングでは「ビジネスシーンで役立つ数字力の向上」をテーマとして、「データを根拠としたアクションプランの立て方」や「数字を用いた円滑なコミュニケーション」などを実践形式で学ぶプログラムをご提供しております。
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