人事に必要な8つのスキルと求められる役割

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少子高齢化による人口減や目まぐるしい技術革新などによって、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。そんななかで、人事にはどのようなスキルが必要となるのでしょうか。

今回は人事に求められる役割・業務を踏まえて、人事に必要となる8つのスキルとスキルアップが求められる背景について解説していきます。

人事に求められる役割・業務

人事に必要なスキルを把握するためには、まず人事に求められる役割を理解しておかなければいけません。

前提として、人事の役割や業務範囲は企業によって異なる部分が多く、近年になって「戦略人事」が広まったことにより、さらに複雑化しています。なお、戦略人事については「戦略人事とは 柱となる3ピラーモデルや企業の事例を解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「戦略人事とは 柱となる3ピラーモデルや企業の事例を解説」

ここでは、人事の基本的な業務内容について解説します。

労務管理

労務管理は、労働者が会社で働くにあたって必要となる様々な手続きや制度を取り扱うことです。その範囲は多岐にわたり、就業規則の作成や社会保険の手続き、福利厚生の整備、給与計算など、社員が入社から退職するまでのあらゆる事柄に関わってきます。健康診断の実施やメンタルヘルス対策なども、労務管理に含まれます。

労働法を始めとした各種法律の知識も求められるため、高い専門性が求められる業務です。以前までは人事の仕事といえば労務管理をイメージする人が多かったのではないでしょうか。

採用

企業理念や経営戦略に基づいて人材を雇い入れる採用活動も、人事の主要な業務のひとつです。中長期的な計画に基づいて若手人材を確保する新卒採用と、不足人員を補うことを目的に即戦力人材を確保する中途採用に分けられ、それぞれ活用する採用手法や求められるノウハウが異なります。

一口に採用といっても、採用計画の策定から候補者の選考、内定者フォローなど求められる業務は多く、人口減の現代においてはとくに会社の成長・存続に直結する重要な業務となっています。

人材育成・教育

人材育成は、経営目標の達成に向けて社員の成長を促す取り組み全般を指します。各種研修の実施や、社員の自己啓発を促進する制度作りなどが主な業務となります。

社員の階層ごとの問題点や現場の課題などをくみ取り、それらの解決につながる教育機会を企画・提供することが求められます。なお、人材育成のポイントについては「人材育成に大切な6つのこと」でも詳しく解説しています。

関連記事:「人材育成に大切な6つのこと」

人事企画(人事戦略)

会社の状況や経営戦略に基づいて組織編成や人員配置を考え、組織の在り方から見直していくのが人事企画(人事戦略)です。

評価制度やキャリアパスなどを構築して社員のモチベーションを向上させつつ、組織の最大化を目指すことが求められます。

採用や人材育成は人事企画に基づいて実施されるため、近年になってとくに重要視されている業務です。ときには経営者のパートナーとして組織全体に関わる、人事の新たな役割ともいえるでしょう。

人事に必要な8つのスキル

株式会社PR Tableとjinjer株式会社が実施した「採用広報に必要なスキル」にまつわる共同調査によれば、「採用広報に必要なスキルの重要度」には以下のような順位がつけられています。

1位 ステークホルダーを味方にするコミュニケーション力

2位 コンテンツの企画・構成力

3位 ブランド戦略の構築

4位 採用戦略に基づいた情報発信計画の策定

5位 ターゲット層の特定や市場・競合分析

参考:@DIME「人事担当者が考える採用広報に必要なスキル、3位ブランド戦略の構築、2位コンテンツの企画・構成力、1位は?」

この結果からもわかるように、現在の人事では労務管理にまつわる専門知識だけでなく、営業職や企画職で求められるようなスキルの必要性が高まっています。以下、スキルの具体的な内容やその必要性について解説していきます。

コミュニケーションスキル

人事部は社内のあらゆる階層とやり取りするだけでなく、採用活動においては「会社の顔」として求職者と密に関わるため、高いコミュニケーションスキルが求められます。

とくに近年は採用担当者の応対が悪いと、すぐにSNSや口コミサイトなどを通じて悪評が拡散されてしまうため、責任も重大です。上の調査でも「ステークホルダーを味方にするコミュニケーション力」が1位となっているように、「相手に好感を持ってもらうこと」が人事業務を円滑に進める鍵となります。

企画・構成力

少子高齢化に伴う人手不足や売り手市場を背景として、採用活動では求職者の関心を集めるための企画・構成力が求められています。

以前までは、求人票に仕事の概要や自社の特徴をまとめるライティングスキルがあれば十分でしたが、現在の採用活動では動画やSNSなど、様々な媒体を通じて自社の魅力を発信していかなければいけません。

コンテンツの制作自体は専門のクリエイターに任せるとしても、自社の魅力を伝えるためには人事部自体が企画・構成を行う力を身につけることが大切です。

マーケティング思考

近年、人事領域における「マーケティング思考」が注目されています。価値観や働き方が多様化するなかで、社員や求職者が何を求めているかを把握することが重要になっているためです。

上の調査でも「ブランド戦略の構築」が3位になっているとおり、採用ブランディングを構築するためにはマーケティング思考が欠かせません。マーケティングと聞くと縁遠い話に思えるかもしれませんが、言い方を変えれば「働き手のことを考える」ことが求められているのです。

例えば、多くの働き手がテレワークを求めるなかで、100%出社の社内制度を頑なに維持していると、採用競争に勝ち抜けなくなり、既存社員の流出リスクも高まります。

社内外の人材の心を掴むためには、いま人々が何を求めているかを考えるマーケティング発想が求められているのです。なお、人事マーケティングについて深く知りたい方は「採用と組織力向上に欠かせない人事におけるマーケティング」も合わせてご確認ください。

関連記事:「採用と組織力向上に欠かせない人事におけるマーケティング」

情報収集力

「企画・構成力」「マーケティング思考」と密接に関わり、人事の業務を遂行するためにも欠かせないのが情報収集スキルです。人事は法改正や求職者の動きなどについて幅広くアンテナを張り巡らせて、人事企画や各種施策などに反映していかなければいけません。

また情報収集は、社内に対しても行う必要があります。社員の要望や不満をくみ取り、人員配置や福利厚生のアップデートを続けることが大切です。ハラスメント対策を含めた人間関係の改善も同様で、様々な角度から情報を集めて、社内の状況を把握することが求められます。

プレゼンテーションスキル

人事が身につけておきたいスキルとして、プレゼンテーションスキルも忘れてはいけません。上の調査でも「採用戦略に基づいた情報発信計画の策定」が重要視されていたとおり、優れた採用戦略を策定できても、それを魅力的かつわかりやすく発信するスキルがなければ、形骸化してしまうからです。

とくにプレゼンテーションスキルが必要となる場面は、求職者向けの会社説明会でしょう。また、戦略人事を推進する場合、社員や経営層に対してプレゼンを行う機会が増えていきます。このようにプレゼンテーションスキルは、新しい人事の役割を全うするために欠かせない能力なのです。

データ分析力

人事の業務をより高いレベルで遂行するために取得しておきたいのが、データ分析力です。社員の勤怠情報や人事評価、健康情報といった様々なHRデータを収集・分析することにより、人材育成や人員配置などの施策が成果につながりやすくなります。

また、上の調査でも「ターゲット層の特定や市場・競合分析」が挙げられていたように、採用活動においてもデータ分析は欠かせない業務となっています。例えば「ターゲットと親和性の高い採用媒体」「競合他社が提示する待遇の相場」などはデータの収集・分析が欠かせない要素です。

デバイスの進化や、分析用のツールが身近になったことで、現在は業者に依頼せずとも社内でデータ分析を実施できるようになっています。人事部が高度な分析手法を身につける必要はありませんが、データを読み解き、具体的な施策に落とし込む能力は最低限求められるでしょう。

なお、人事データ分析については「人事データ分析とは 分析の進め方や企業の事例を解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:人事データ分析とは 分析の進め方や事例を解説

マルチタスクスキル

人事は給与計算や採用面接、研修の準備など、複数の全く異なる業務を並行して進めることが多い部署です。そのため、マルチタスクスキルが欠かせません。

加えて人事の業務は、社員からの書類提出や採用候補者からの返信など、他人のアクションがないと仕事を進行できない場合が多々あります。リマインドや督促などをマメに行える「進行管理」も重要になるでしょう。

コンプライアンスへの意識と知識

企業活動には様々な法律やモラルが関わるため、人事にはコンプライアンスへの意識と知識が求められます。今までであれば隠蔽されたであろう企業の不祥事も、スマートフォンとSNSがあれば容易に告発できるようになりました。

不祥事は爆発的な勢いで拡散され、一瞬にして企業の社会的信用を失墜させます。人事がコンプライアンスの知識を身につけるのは当然ながら、コンプライアンス意識を社内の隅々まで行き渡らせる役割を担うことも大切です。

人事に必要なスキルは会社規模によっても異なる

人事に必要なスキルの取得優先度は、その会社の規模やフェーズ(成長段階)によっても異なります。

会社規模が大きい場合

会社規模が大きい場合は、人事部のなかでも業務の細分化が行われることが多いため、採用や労務など与えられた役割に特化したスキルを伸ばしていくことが求められます。

また従業員数の多さから、DX化やデータ分析を導入した際の効果も大きくなるため、先端技術の情報収集や、それらの有効性を経営層などにプレゼンする力も求められるでしょう。プロジェクトの規模が大きくなる傾向にあるため、進行管理能力も身につけておきたいスキルです。

会社規模が小さい・成長段階の場合

会社規模が小さい、または成長段階の段階では、人事部は少人数であることがほとんどです。一人ひとりが労務管理や採用といったあらゆる業務に関わるため、コミュニケーションスキルやマルチタスク能力が重要となります。

また、OAスキルや労務関係の法律知識といった、従来的な人事業務を担うための基礎を鍛えていくことも求められるでしょう。

人事のスキルアップが重要な理由

なぜ近年になって人事のスキルアップが重要視されているのでしょうか。ここでは主要な2つの理由について解説します。

人事の成長が会社の成長に直結するから

「人事の主な仕事は労務管理」と考えられていた時代は、人事の成長が成果として見えにくい環境でした。

しかし、人手不足と採用難に直面する現代においては、人事の手腕によって採用充足率や離職率などの数値に差が表れます。また、人口減によって社員一人ひとりの生産性が問われるなかで人材育成の重要性も高まっており、人事の仕事が会社の成長に直結すると言っても過言ではありません。

近年では、人事の成長が会社の成長に直結することを踏まえて、経営戦略の立案に携わりつつ人事業務を統括する「CHRO(最高人事責任者)」を設ける企業も増えています。

多様な働き方が広まっているから

働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大などを契機として、多様な価値観と働き方が一気に広まっています。

社員の管理や評価は従来の方法だけでは通用しなくなっており、「言われたことだけやればいい」と考える消極的な人事では、環境変化に対応するのは難しいでしょう。

今後の人事には、将来の予測が困難な状態でも組織改革を主導できる行動力や提案力などが求められています。

「ビジネス数学研修」で人事に必要なスキルを身につける

人事に必要なスキルについて解説してきましたが、実はご紹介したスキルの多くは「ビジネス数学研修」で身につけることができます。

一見すると数字力と関係なさそうなコミュニケーションスキルも、実は数字・データを活用することで提案や報告がわかりやすく具体的となり、コミュニケーションの改善へとつながっていきます。

「数字への苦手意識」がなくなれば情報収集力の幅が広がり、集めたデータを読み取って分析する力があればマーケティング力やプレゼンテーションスキルが向上します。 「人事部の実務レベルを一つの研修で向上させたい」とお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご検討ください。

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