少子高齢化による人口減や目まぐるしい技術革新などによって、会社を取り巻く環境は激変しています。そんななかで、人事にはどのようなスキルが必要となるのでしょうか。
今回は人事に求められる業務・役割を踏まえて、人事に必要なスキルと、スキルアップが求められる背景について解説していきます。
人事に求められる業務・役割
人事に必要なスキルを把握するためには、まず人事に求められる役割を理解しておかなければいけません。
前提として、人事の役割や業務範囲は企業によって異なる部分が多く、近年になって「戦略人事」が広まったことにより、さらに複雑化しています。
※戦略人事については「戦略人事とは 推進に必要な人材要件やポイントを解説」で詳しく解説しています
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そのためここでは、人事の基本的な業務内容について解説していきます。
労務管理
労務管理は、労働者が会社で働くにあたって必要となる様々な手続きや制度を取り扱うことです。その範囲は多岐にわたり、就業規則の作成や社会保険の手続き、福利厚生の整備、給与計算など、社員が入社から退職するまでのあらゆる事柄に関わってきます。健康診断の実施やメンタルヘルス対策なども、労務管理に含まれます。
労働法を始めとした各種法律の知識も求められるため、高い専門性が求められる業務です。以前までは人事の仕事といえば労務管理をイメージする人が多かったのではないでしょうか。
採用
企業理念や経営戦略に基づいて人材を雇い入れる採用活動も、人事の主要な業務のひとつです。中長期的な計画に基づいて若手人材を確保する新卒採用と、不足人員を補うために即戦力人材を確保する中途採用に分けられ、それぞれ活用する採用手法や求められるノウハウが異なります。
一口に採用といっても、採用計画の策定から候補者の選考、内定者フォローなど求められる業務は多く、人口減の現代においてはとくに会社の成長・存続に直結する重要な業務となっています。
人材育成・教育
人材育成は、経営目標の達成に向けて、社員の成長を促す取り組み全般を指します。各種研修の実施や、社員の自己啓発を促進する制度作りなどが主な業務となります。
社員の階層ごとの問題点や現場の課題などをくみ取り、それらの解決につながる教育機会を企画・提供することが求められます。
※人材育成については「人材育成に大切な6つのこと」で詳しく解説しています
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人事企画(人事戦略)
会社の状況や経営戦略に基づいて組織編成や人員配置を考え、組織の在り方から見直していくのが人事企画(人事戦略)です。
評価制度やキャリアパスなどを構築して社員のモチベーションを向上させつつ、組織の最大化を目指すことが求められます。
採用や人材育成は人事企画に基づいて実施されるため、近年になってとくに重要視されている業務です。ときには経営者のパートナーとして組織全体に関わる、人事の新たな役割ともいえるでしょう。
人事に必要な7つのスキル
人事の役割・業務を見直したうえで、具体的にどのようなスキルが必要になるのかを解説していきます。
コミュニケーションスキル
人事は採用活動を担うことから、高いコミュニケーションスキルが求められます。やり取りをする相手の年齢層ひとつをとっても、新卒採用ならば年下の学生、中途採用では自分よりも倍以上の年上とコミュニケーションを取る可能性があります。
採用活動において人事は「会社の顔」と呼ばれ、応対の態度が悪いとすぐにSNSや口コミサイトなどで悪評が拡散されてしまうので、責任も重大です。
また、社内で1on1などの面談を務める機会も増えてきており、総じてコミュニケーションスキルを求められる場面は多いといえるでしょう。
※コミュニケーションスキルについては「コミュニケーション研修とは 実施目的とその内容」で詳しく解説しています
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マルチタスクスキル
人事は給与計算や採用面接、研修の準備など、複数の全く異なる業務を並行して進めることが多い部署です。そのため、マルチタスクスキルが欠かせません。
加えて人事の業務は、社員からの書類提出や採用候補者からの返信など、他人のアクションがないと仕事を進行できない場合が多々あります。リマインドや督促などをマメに行える「進行管理」も重要になるでしょう。
情報収集力
人事の業務を遂行するために欠かせないのが、情報収集スキルです。法改正や求職者の動きなどについて幅広くアンテナを張り巡らせて、人事企画や各種施策などに反映していかなければいけません。
また情報収集は、社内に対しても行う必要があります。社員の要望や不満をくみ取り、人員配置や福利厚生のアップデートを続けることが大切です。ハラスメント対策を含めた人間関係の改善も同様で、様々な角度から情報を集めて、社内の状況を把握することが求められます。
プレゼンテーションスキル
人事が身につけておきたいスキルとして、プレゼンテーションスキルが挙げられます。とくに必要となる場面は、求職者に対する会社説明会でしょう。「売り手市場」の現在においては、求職者の応募意欲を高めるためのプレゼン力が求められます。
また戦略人事を推進する場合は、社員や経営層に対してプレゼンを行う機会が増えていきます。プレゼンテーションスキルは新しい人事の役割を全うするための重要な能力といえるでしょう。
※プレゼンテーションスキルについては「プレゼンテーション研修 実施目的と学ぶべき内容」で詳しく解説しています
関連記事:「プレゼンテーション研修 実施目的と学ぶべき内容」
コンプライアンスへの意識と知識
企業活動には様々な法律やモラルが関わるため、人事にはコンプライアンスへの意識と知識が求められます。今までであれば隠蔽されたであろう企業の不祥事も、スマートフォンとSNSがあれば容易に告発できるようになりました。不祥事は爆発的な勢いで拡散され、一瞬にして企業の社会的信用を失墜させます。
人事がコンプライアンスの知識を身につけるのは当然ながら、コンプライアンス意識を社内の隅々まで行き渡らせる役割を担わなければいけません。
マーケティング思考
近年、人事領域における「マーケティング思考」が注目されています。価値観や働き方が多様化するなかで、社員や求職者が何を求めているかを把握することが重要になっているためです。
世間のニーズを無視した画一的な社内制度では、厳しい採用競争に勝ち抜けないだけでなく、社員の流出リスクが高まります。多様な価値観に対応できる社内制度を整え、社内外の人材へアピールするマーケティング発想が求められているのです。
※人事マーケティングについては「採用と組織力向上に欠かせない人事におけるマーケティング」で詳しく解説しています。
関連記事:「採用と組織力向上に欠かせない人事におけるマーケティング」
データ分析力
人事の業務をより高いレベルで遂行するために取得しておきたいのが、データ分析力です。社員の勤怠情報や人事評価、健康情報といった様々なHRデータを収集・分析することにより、人材育成や人員配置などの施策が成果につながりやすくなります。
デバイスの進化とデータ分析用のツールが身近になったことで、現在は業者に依頼せずとも社内でデータ分析を実施できるようになっています。
※人事データ分析については「人事データ分析とは 分析の進め方や事例を解説」で詳しく解説しています。
関連記事:人事データ分析とは 分析の進め方や事例を解説
人事のスキルアップが重要な理由
なぜ近年になって人事のスキルアップが重要視されているのでしょうか。ここでは主な2つの理由について解説します。
人事の成長が会社の成長に直結するから
「人事の主な仕事は労務管理」と考えられていた時代は、人事の成長が成果として見えにくい環境でした。
しかし、人手不足と採用難に直面する現代においては、人事の手腕によって採用充足率や離職率などの数値に差が表れます。また、人口減によって社員一人ひとりの生産性が問われるなかで人材育成の重要性も高まっており、人事の仕事が会社の成長に直結すると言っても過言ではありません。
近年では、人事の成長が会社の成長に直結することを踏まえて、経営戦略の立案に携わりつつ人事業務を統括する「CHRO(最高人事責任者)」を設ける企業も増えています。
多様な働き方が広まっているから
働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大などを契機として、多様な価値観と働き方が一気に広まっています。
社員の管理や評価は従来の方法だけでは通用しなくなっており、「言われたことだけやればいい」と考える消極的な人事では、環境変化に対応するのは難しいでしょう。
今後の人事には、将来の予測が困難な状態でも組織改革を主導できる行動力や提案力などが求められています。
まとめ
人事の役割・業務は大きく「労務管理」「採用」「人材育成・教育」「人事企画(人事戦略)」の4つに分けられます。
これらを遂行するために必要となるのが、コミュニケーションスキル、マルチタスクスキル、情報収集力、プレゼンテーションスキル、コンプライアンスへの意識と知識、マーケティング思考、データ分析力の7つのスキルです。
少子高齢化による人口減や目まぐるしい技術革新、新型コロナウイルスの感染拡大など、企業を取り巻く環境は激変しています。そんななかで人事は高いスキルを持って、「経営者と現場のパートナー」として組織を支えていく役割が求められます。
「ビジネス数学研修」で人事に必要なスキルを身につける
人事に必要なスキルについて解説してきましたが、実はご紹介したスキルの多くは「ビジネス数学研修」で身につけることができます。
一見すると関係なさそうなコミュニケーションスキルも、実は数字・データを活用することで提案や報告がわかりやすく具体的となり、コミュニケーションの改善へとつながっていくのです。
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