アルムナイ採用とは デメリットやネットワークの構築について解説

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アルムナイ採用は、退職した人材をコミュニティ化して管理することにより、出戻りでの採用を活性化させる取り組みです。

入社後のミスマッチの防止や採用・育成コスト削減のメリットがあり、採用難・人手不足が深刻化するなかで関心が高まっている採用手法です。

今回は、アルムナイ採用のメリット・デメリット、アルムナイ・ネットワーク構築の流れなどを解説していきます。

アルムナイとは

アルムナイ(alumni)は「卒業生、 同窓生」といった意味の言葉で、ビジネス上では「離職した人材」という意味で用いられています。

転じてアルムナイ採用(制度)は、離職する人材をコミュニティ化して管理することにより、出戻りでの採用を活性化させる取り組みのことです。なおアルムナイは、転職や育児・介護などの事情によって離職した人たちを指し、定年退職した人材は含みません。

アルムナイ採用とカムバック採用の違い

アルムナイ採用に似た言葉として「カムバック採用」「出戻り採用」などがありますが、大きな違いはありません。

ただ、アルムナイ採用の場合、離職する人材をコミュニティ化して管理する「アルムナイ・ネットワーク」を構築することが特徴として挙げられます。

アルムナイ採用の導入で得られるメリット

アルムナイ採用を導入することにより、具体的にどのようなメリットが得られるのか解説していきます。

入社後のミスマッチの防止

アルムナイ採用ならば、採用活動の大きな課題であるミスマッチがほとんど起きません。実際に自社で働いた人材であるため、働きぶりや性格などをよく把握できているためです。

また、アルムナイ側も自社の課題などをよく理解したうえで再入社するので、入社後の「こんなはずでは」がほとんど起こりません。

採用・育成コストを抑える

アルムナイ採用は、採用コストや人材育成にかかるコストを抑えるメリットがあります。まず採用面では、採用コストの大部分を占める求人広告の掲載料や人材紹介会社の利用料がかかりません。また、実際の働きぶりを知っていることから選考も簡略化できるため、面接等に必要な人的コストも軽くできます。

もともと自社の社員なわけですから、業界知識や社内ルールなどの研修を行う必要もありません。ブランクが長い場合は多少のサポートも必要となるでしょうが、他の採用方式と比べてコストを抑えられるのは間違いないでしょう。

自社の課題・弱点を浮き彫りにできる

転職者をアルムナイ採用することにより、他社での経験を踏まえた自社の課題・弱点を浮き彫りにすることができます。

転職者は自社の良い点・悪い点を把握したうえで離職し、他社での経験を積んでいます。率直に社内制度の不足点を指摘してもらったり、自社にない知見を提供してもらったりすれば、通常の中途採用以上の価値が生み出されるでしょう。

ビジネスの拡大

アルムナイ制度は、正社員での再登用だけを目指す取り組みではありません。起業やフリーランスを目指す離職者と業務委託や業務提携などの新しい関係を結ぶきっかけとなり、ビジネスの拡大チャンスになります。

例えば何らかの業務をアウトソーシングする際、ゼロから信頼できる外注先を探すのは時間と労力がかかります。その点、元社員であれば仕事ぶりもわかっている分、安心して依頼ができるでしょう。

副業などの新しい働き方が促進されている今だからこそ、アルムナイ制度で離職者との結びつきを強くしていくことが重要になっていきます。

アルムナイ採用のデメリット

アルムナイ採用を導入することにより、いくつかのデメリットも生じます。

「離職者」に対するイメージを変えなければいけない

アルムナイ採用で最も手間がかかるのは、「離職者」に対するイメージを変えることかもしれません。

アルムナイ採用は採用コストを抑えられ、高額なツールの導入なども必要ないため、実施のハードルが低い取り組みといえます。そんななかで最も変革が求められるのが、社員の意識です。

日本は終身雇用制度を背景として、長く一つの企業に勤めることが当然の文化が根付いてきました。そのため、いまだに「転職は裏切り」とネガティブに捉える人も少なくありません。こうした意識は出戻り人材の活躍を祖害する原因となります。

関連記事:「転職は裏切り? 裏切り扱いされない対策と企業文化を変えるポイント」

また、これは離職者本人にも言えることで、離職によって後ろめたさを感じていると自社との関係性は途切れてしまいます。

社員の考え方や意識を変えるためには研修等の働きかけが必要となるため、これらのコスト・労力は少なからずデメリットといえるでしょう。

離職率を上げてしまう恐れがある

アルムナイ制度があることによって離職へのハードルが下がり、離職率を上げてしまう恐れがあります。

「いつでも戻ってこれる」といった安直な離職を防ぐためには、「アルムナイ制度の利用は在籍○年以上の社員が対象」といった条件を設けることも有効な対策となります。

評価制度の見直し

アルムナイ採用によって戻ってきた社員の評価をどのように扱うかも、注意すべきポイントになります。例えば、年功序列型の評価制度を運用している場合、在籍年数を離職時から再加算するのか、1年目から換算し直すのかを決めなければいけません。

アルムナイ本人からすると、1から換算し直されるとこれまでの経験を蔑ろにされるように感じますし、周囲の社員からすれば「退職せずに頑張ってきた自分たちの評価はどうなるのか」と不満の種になりかねません。評価面で不和の可能性があることは、デメリットといえるでしょう。

アルムナイ・ネットワーク構築の流れ

アルムナイ・ネットワークとは、社員が退職後も自社との関係性を保つための関係性やシステムのことです。アルムナイ採用の導入にあたっては、アルムナイ・ネットワークを構築する必要があります。

社員のエンゲージメントを高める

アルムナイ制度の前提として、日頃から社員のエンゲージメントを高めておくことが求められます。そもそも「またこの会社に戻りたい」と思えるような環境が整っていなければ、アルムナイ制度は誰にも利用されずに形骸化してしまうでしょう。

また、アルムナイ制度が離職率を上げてしまう可能性についても、エンゲージメントを高めておくことが一番の対策となります。

アルムナイ制度の周知

まず取り組むべきなのが、アルムナイ制度の周知です。ここでの周知はただ制度の存在を知らせるだけでなく、社員の「出戻り」に対する印象を変えることがポイントとなります。

多くのビジネスパーソンは「離職=会社との縁が切れる」と考えているはずです。これは会社の問題というよりも、社会全体で「出戻り」という文化があまり浸透していないためです。

アルムナイ制度の有用性や目的まで解説したうえで、自社の方針として離職後も友好的な関係性を築いていきたいことを強調しましょう。これは、アルムナイを迎え入れる環境を作るうえでも大切な取り組みとなります。

アルムナイを管理するためのシステムの準備

次に、実際にアルムナイに登録してもらい、管理するためのツール・システムを準備しましょう。最初のうちは専用のツールなどを用意する必要はなく、SNSやチャットツールなどで専用のグループ・コミュニティを作成するだけでも十分に機能します。

とくに独立する人材にとっては、アルムナイ同士の交流がビジネスチャンスにつながる可能性があるので、その有用性をアピールして登録を促すとよいでしょう。

ポイントは「中途採用を行う際にはアルムナイ・ネットワークでも告知する」「業務委託の募集をかける」など、継続的に門戸を開くことです。

担当者がアルムナイ・ネットワークを放置していると、すぐにコミュニティは形骸化してしまいます。リマインドを兼ねて、定期的にアクションを起こさなければいけません。

なお、退職時の義務のようにアルムナイとしての登録を促すと、逆に印象が悪くなる恐れもあるので注意しましょう。

幅広い働き方(雇用形態)を取り入れる

アルムナイ採用を活性化させるためには、雇用形態を見直して、幅広い働き方で自社と関われるような制度を整える必要があります。

例えば、介護・育児などで離職した人材も、業務委託で日に1、2時間程度なら働き続けることができるかもしれません。こうした繋がりを維持しておけば、復職にあたっての心理的障壁も減り、アルムナイ採用がスムーズに行われるでしょう。

イベントの実施

アルムナイ採用の運用が順調に進んだら、さらにアルムナイとの結びつきを強める施策を実施してみましょう。その代表例がアルムナイパーティーです。

アルムナイパーティーは元社員と現社員の交流会のことで、出戻りを歓迎する雰囲気を作るだけでなく、ビジネス上の情報交換の機会にもなります。

まとめ

株式会社マイナビの調査によれば、2022年の正社員転職率は7.6%と2016年以降でもっとも高い水準になりました。「売り手市場」が続く以上、この傾向は今後も続いていくことが予想されます。

参考:株式会社マイナビ「転職動向調査2023年版(2022年実績)」

企業側の転職を防ぐ取り組みにも限界があります。今後は、アルムナイ採用のような発想を変えた手法が人材確保の鍵となっていくでしょう。

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