効果的な研修を実施していくためには、研修後の報告書の作成が欠かせません。
研修報告書には、主催側が作成する「研修実施報告書」と、受講者側が作成する「研修受講報告書」があり、それぞれ目的や内容が異なります。
今回は人事担当者・研修主催者へ向けて研修報告書の目的や内容を解説したうえで、報告書のテンプレートをご紹介します。
研修報告書とは
研修報告書とは、実施または受講した研修について、目的や概要、得た学びなどをまとめた書類のことです。
研修報告書には2種類あり、研修の主催側が作成するものを「研修実施報告書」と呼び、受講者側が作成するものを「研修受講報告書」と呼びます。
「研修実施報告書」は人事担当者や講師などが作成し、管理部門や経営層へ向けて提出します。一方、「研修受講報告書」は受講者が作成し、人事部や上長へ提出します。
いずれも研修をより良いものにするために作成するものですが、その目的や内容については異なる部分もあります。
研修報告書を作成する目的
なぜ、研修後に報告書を作成する必要があるのでしょうか。研修実施報告書、研修受講報告書それぞれの目的を解説します。
研修実施報告書の目的
研修実施報告書を作成する目的は、主に研修の総括と効果測定です。
研修を行うためには多くの人的・金銭的コストが必要となるため、効果の低い研修は改善するか、廃止を決断する必要があります。この判断をくだすための材料として、研修を総括して成果や課題をまとめた報告書が必要になるわけです。
なお、研修の効果測定については「研修の効果測定 カークパトリックモデルやアンケートの活用法」で詳しく解説しています。
関連記事:「研修の効果測定 カークパトリックモデルやアンケートの活用法」
研修受講報告書の目的
研修受講報告書を作成する目的も、研修の改善に役立てることが主たる目的です。
ただこれに加えて、研修受講報告書には「研修内容を社内に共有する」という目的もあります。とくにノウハウの取得を目指して外部研修に参加した場合、報告書によって学びを広く社内で共有することで、社内全体のスキルアップを図る意味合いがあります。
また、受講者が研修の内容を報告書にまとめることによって、自身のなかで要点が整理されるため、理解度が深まるという効果も期待されます。
研修実施報告書に盛り込むべき内容・項目
研修実施報告書には、実施した研修の概要を始めとして、いくつか必ず盛り込むべき内容・項目があります。
研修の目的
まず実施報告書では、読み手に向けて研修の目的を共有しましょう。簡潔に「なぜ研修を行ったのか」を明確にしていきます。
具体的には「社内で抱えている課題」「研修によって何を習得し、どの課題解決を目指すか」などを明らかにしていきましょう。
また、受講者の研修後の状態を定量的に示しておくと、目的の達成度合いが計りやすくなります。わかりやすい例では、「TOEIC600点以上を目標とする」などが挙げられます。
研修の結果・効果
次に、受講後のアンケートやテストの結果などをまとめて、研修の結果・効果として記載します。テストであれば研修実施前の得点との比較、アンケートであれば受講者の行動や心境の変化などをまとめていきましょう。
ここで注意したいのは、アンケートやテストの結果は、ただ数字を並べるだけでは十分ではないということです。過去の社員の状態や同業他社の成績との比較などを行い、わかりやすい「成果」としてまとめなければいけません。
なお、研修後のアンケートの実施方法については「研修後のアンケートに必要な質問例や項目」で詳しく解説しています。
関連記事:「研修後のアンケートに必要な質問例や項目」
研修の改善案
研修の結果に基づいて、改善案を提示しましょう。全体的に受講者の理解度が低ければ、ヒアリングやアンケートからその原因を探り、講師や研修内容の見直しなどを行う必要があります。
結果次第では、研修自体の見直し・廃止についても検討する必要があるでしょう。なお、改善案の検討は効果が芳しくない場合だけでなく、成果が出た場合でも実施します。より良い研修とするために、コスト面や進行などを見直してみるとよいでしょう。
研修受講報告書に盛り込むべき内容・項目
人事側から受講者に研修受講報告書の作成を求める際は、盛り込むべき内容をあらかじめ指示しておくと、必要な情報を漏れなく入手できます。
ここでは、研修受講報告書に盛り込むべき内容や項目について解説します。
報告書としての基本項目
研修受講報告書も会社へ提出する書類ですので、まずは報告書として基本となる項目を記載する必要があります。
〈基本項目の例〉
・作成者
・タイトル(研修名)
・主催者
・開催日、場所
・参加者
・研修の内容
研修の概要
どのような研修が実施されたか、概要を記載します。とくにこの項目は、外部研修に参加した際に重要となります。社内で研修内容を共有できるよう、研修の概要を具体的かつ漏れのないよう、記載する必要があります。
報告者の気づき・感想
研修の改善には受講者側の視点が必要になるため、報告者が個人的に感じた気付きも重要な情報となります。とくに同僚が講師を務める社内研修の場合、報告者が気を遣って本音を書けない恐れがあるため、忌憚のない意見を書くよう徹底しておきましょう。
今後への活用
研修によって得た知見やスキルを今度、どのように活用していくか記載します。受講者が自身の携わる業務との乖離を感じたのであれば、それは実施側が対象者の選定を見誤った可能性があり、今後の改善点になります。
研修報告書を書く際の3つのポイント
ここまでの解説に加えて、研修報告書を作成する際のポイントを3つお伝えします。
研修中にメモを取っておく
多くの研修は数時間にわたって実施されるため、どうしても研修終了後には失念してしまう点が出てきます。
研修中に逐一メモを取っておくと、スムーズに報告書を作成することができるでしょう。
受講者への効果・理解度の確認
研修実施報告書を作成するためには、受講者の理解度や研修効果を把握しなければいけません。具体的には、研修にまつわるアンケートやテストの実施、研修受講報告書を提出させるといった方法で、研修の効果や受講者の理解度を判断しましょう。
とくにアンケートは、漠然と満足度を確認するようなものでは不十分です。具体的な課題や効果を把握できるよう、質問を精査して有用なデータが取れるように取り組みましょう。
なお、アンケートの集計・分析については「アンケート集計のまとめ方」で詳しく解説しています。
関連記事:「アンケート集計のまとめ方」
無意味な情報を盛り込まないようにする
研修の内容を詳しく伝えようとすると、つい報告書としては無意味な情報を盛り込みがちになります。例えば「講師は国立大出身だけあって、講義の内容もわかりやすく……」という文章では、「国立大出身」という情報は報告書に必要ありません。
研修の効果や内容に関わることだけを盛り込むように心がけると、読みやすい報告書に仕上がります。
研修実施報告書のテンプレート
弊社が提供している研修を例として、研修実施報告書の本文部分のテンプレートを以下に記載いたします。実施報告書の作成の際に、参考にしてみてください。
研修名:数的センス向上トレーニング(入門編)
実施日程:2023年〇月△日
実施場所:本社 会議室A(オンライン)
講師:オルデナール・コンサルティング合同会社 長谷川正恒氏
参加者:営業部、経営企画部 計15名
【研修内容】
・ビジネス数学とは
・把握力の演習(グラフの把握)
・数字を根拠に考えるとは(現状把握、仮説立案、検証・実行)
・分析力の演習(割合の基本)
・実務への活かし方
・まとめ
【研修の目的】
ビジネスにおける数字の使い方を正しく理解する
【研修後の理想の状態(目標)】
営業活動時、数字を用いた提案を行えるようになる
【研修の結果・効果】
・事前のアンケートで、数字への苦手意識を抱えていた受講者10名全員が改善を実感。
・研修内容と実務への関連性を受講者全員が実感。
・研修後、受講者2名が不安を感じていた業務の能率が向上したと報告。
【研修の改善点】
・受講者15名中、4名が受講内容に物足りなさを感じていた。入門編ではなく、初級編から研修へ参加させるべきだった
→事前の参加確認時に能力を確認
・1名が研修中に顧客からの問い合わせで一時退出。
→研修の実施時間を検討すべきか
研修受講報告書のテンプレート
弊社が提供している研修を例として、研修受講報告書の本文部分のテンプレートを以下に記載いたします。受講報告書の作成の際に、参考にしてみてください。
研修名:数的センス向上トレーニング(基礎編)
日時:2023年□月○日
場所:東京本社 会議室
講師:オルデナール・コンサルティング合同会社 長谷川正恒氏
【研修の目的】
ビジネスシーンで必要な数字力を理解し、数字を用いたコミュニケーションを取得する
【目標】
・日報や報告書に数字を用いて、わかりやすいものにする
・営業時の提案力向上を目指す
【研修内容】
・ビジネス数学とは
・把握力の演習(グラフの把握)
・数字を根拠に考えるとは(現状把握、仮説立案、検証・実行)
・現状把握のポイント(実数と割合、縦と横の比較)
・数字をわかりやすく伝えるための表現力(グラフの活用)
・実務への活かし方(グループワーク)
【研修で得た学び】
今回の研修では、ビジネスにおける「把握力」「分析力」「選択力」「予測力」「表現力」について、演習形式で課題を解きながら学んでいくことができました。
日頃から提案や報告が独りよがりになっていることに課題を感じていましたが、自分はアウトプットの過程に問題があると気づくことができました。
【実務への活用】
作成中の提案資料について、グラフの選び方から見直し、よりわかりやすい仕上がりを目指していきたいです。
報告書は「数字力」を伸ばすことでわかりやすくなる
研修報告書をわかりやすくする方法として、数字を用いて抽象的な表現を減らすことが挙げられます。
例えば「研修に物足りなさを感じる人が多かった」という表現はやや抽象的で、読み手に「どれくらい?」と疑問を感じさせます。これに数字を用いてみると「受講者15名中、4名が受講内容に物足りなさを感じていた」となり、受講者の約30%が物足りなさを感じる研修だったことが伝わります。
ただ、ビジネスパーソンのなかには、数字に対して苦手意識を持つ人が少なくありません。日頃から数字を活用する習慣がないと、日々の報告や作成する書類も抽象的な表現になりがちです。
そんな「数字に対する苦手意識」の解消を目的としているのが、弊社オルデナール・コンサルティングの「ビジネス数学研修」です。受講者のレベルに合わせて「入門編」から「実践編」の4段階で「数的センス」の向上を目指し、実務で活きる数字力を身につけていきます。
「社内の報告書をわかりやすく正確にしたい」「データに基づいた研修の効果測定を行いたい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご活用ください。
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