SNS採用とは メリット・デメリットや導入の流れを解説
SNS採用はSNSを活用した採用活動全般を指す言葉で、選考開始の案内や母集団形成、スカウトなど多くの場面で用いられています。
近年、求職者の情報収集でもSNSを重視する傾向が高まっており、採用活動におけるSNSの重要性は年々高まっています。企業にとっても「多くの人の目に触れる可能性がある」「自社の雰囲気を伝えやすい」などのメリットがあるため、SNSを活用しない手はありません。
今回は、SNS採用の概要を踏まえたうえで、メリット・デメリットや導入の流れについて解説していきます。
SNS採用とは
SNS採用は、SNSを活用した採用活動全般を指す言葉です。その内容は多岐にわたり、選考開始の案内や母集団形成、スカウトなど、採用活動のあらゆるフェーズでSNSの活用が進んでいます。
当初は、採用にコストを割けないベンチャー企業を中心に用いられた採用手法でしたが、近年の求職者の動向の変化を受けて、SNS採用に取り組む企業が増えています。
実際にマイナビが転職者を対象に実施した調査では、転職活動における「転職サイト離れ」と「SNS活用の増加」がデータとして表れ始めています。
「直近の転職で、あなたが利用したサービス・手法をすべてお選びください」という設問では、「転職サイト」が全体で最多の回答を得る一方で、2019年の55.5%から2022年には48.3%まで低下しています。対して「SNS」の回答率は、7.8%(2021年)から9.4%(2022年)へと増加しています。※同設問で「SNS」の選択肢が追加されたのは2021年から
参考:株式会社マイナビ「転職動向調査 2023年版(2022年実績)」
また、大学生(新卒)の活動においては、より顕著なSNSの活用が見て取れます。マイナビの調査によれば、「SNSをインターンシップ・仕事体験や就活準備の情報収集に使っているか」という質問に対し、25年卒大学生の68.7%が「活用している」と回答しています。
これは前年より1.5%の増加、前々年からだと6%の増加となっており、顕著な増加傾向が示されています。
参考:株式会社マイナビ「2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(10月)」
これらデータが示すように、採用活動におけるSNSの活用は今後も増えていくことが予想され、SNS採用の重要性はより高まっていくでしょう。
SNS採用のメリット
SNS採用には、従来の採用手法とは異なるメリットが数多くあります。それぞれ解説していきましょう。
多くの人の目に触れる可能性がある
SNS採用の大きなメリットとして、多くの人の目に触れる可能性があることが挙げられます。
従来の採用媒体はいずれも「求職者側が積極的に情報収集をしないと目に触れない」という点で共通しています。現在の主要な採用媒体である求人サイトも、求職者がwebサイトへアクセスすることで、初めて求人広告を目にする可能性が生まれます。
対してSNS採用は、趣味や暇つぶしなど求職活動とは異なる目的でSNSを利用しているときにでも、自社の求人を目にする可能性があります。その高い拡散力で、従来の採用媒体では届き得ない層までリーチできるのが強みです。
また、この特徴は「潜在層」へのアプローチとしても、大きな効果を発揮します。まだ具体的な求職活動を行っていない「潜在層」に自社のアピールが届けば、他社との競争を行うことなく人材を獲得できるチャンスが生まれます。人口減による「売り手市場」が続く現在、このメリットは非常に大きいといえるでしょう。
自社の雰囲気や現場の様子などを伝えやすい
SNSは写真や動画などを掲載しやすく、自社の雰囲気や現場の様子などを伝えやすい媒体です。求人広告だけでは自社の魅力や特徴は伝わらないため、SNSの活用はミスマッチの防止にも役立つわけです。
ホームページでの情報発信との違いは、アカウント運用者の人柄を滲ませることで、親近感を高めることができる点です。ホームページのコンテンツはしっかりとプロの手で作り込まれることがほとんどですが、SNSではアカウント運用者がスマートフォンなどで撮影した写真や動画なども上げていきます。
こうしたハンドメイド感が逆に親近感やリアリティを生み出すわけです。とくに採用ブランディングの構築を目指す場合、SNSは欠かせない存在になっています。
候補者とのコミュニケーション
X(旧Twitter)のようなテキストベースのSNSであれば、候補者からの質問を受け付けてコミュニケーションを取ることもできます。メールや電話で問い合わせるまでもないような疑問などを解消できるので、ミスマッチの解消にも役立ちます。また、寄せられたメッセージは自社の改善点としても今後に活かせるでしょう。
ただし、企業によっては労力の問題やリスクマネジメントを考慮して、個別の質問を受け付けない場合もあります。
低コストで推進できる
SNSは基本的に無料で始められるので、採用コストを支払わずに人材獲得につながる可能性もあります。また、求人広告の掲載やダイレクトリクルーティングをメインとして、それらを補完するようなかたちでSNSを運用するのであれば、ほとんどコストはかからないでしょう。
ただし、SNS採用を本格的に推進しようとすれば、各SNSの有料プランや広告などの活用、コンテンツ制作などで、それなりのコストが必要となります。
SNS採用のデメリット
他の採用手法とは根本的に異なるSNS採用には、独特のデメリットも存在します。それぞれ解説していきましょう。
炎上・企業イメージ低下のリスクがある
SNS採用の最大のデメリットは、炎上と、それに伴う企業イメージ低下のリスクがあることです。
まず、アカウント運用者の不適切な投稿や個人的見解などが炎上につながる例は少なくありません。また、会社の不祥事やバイトテロといった問題から、SNSアカウントの炎上につながる例も頻発しています。こうした炎上は若手社員が発端となるイメージがあるかもしれませんが、経営層の軽率な発言が原因になることも多々あります。
即効性がない
基本的にSNS採用には即効性がなく、中長期的な運用が必要となります。ネームバリューのある大企業であれば別ですが、大半の企業はフォロワーの獲得が当面の目標となるでしょう。
また、採用手法の多くは直接的に人材を獲得することが目的ですが、SNS採用は間接的に採用活動の質を上げていく手法です。母集団形成やミスマッチの防止などが主たる目的となるため、支払ったコストに対して成果を証明しにくいのも問題になりがちです。
永続的な運用が必要
SNS採用は一度行えば終わりではなく、永続的な運用が必要となります。短期的にフォロワーを増やせたとしても、それを維持していくためにはアカウントを動かし続けなければいけません。SNSの世界は常に目まぐるしく動いており、発信が滞るとすぐにフォロワーの関心は薄れてしまいます。
一方で、動画やインタビュー記事といったコンテンツのみならず、日々の何気ない投稿ですら継続することは簡単ではありません。ネタ切れを起こさないように永続的な運用を続けるためには、専任の担当者・チームが不可欠です。
SNS採用のやり方・推進の流れ
SNS採用のやり方、推進の流れについて解説していきます。
SNS採用の目的を設定する
SNS採用と一口にいっても、その取り組みは採用活動の多くのフェーズに関わります。まずは社内で共通認識を持つために、具体的な目的を設定して、アカウント運用の方向性を定めておきましょう。
「求人広告への応募数を増やしたい」「マッチ度の高い人材からの応募を集めたい」「新規事業に際して、これまでとは異なる人材にアプローチする」といった目的を掲げることで、どのようなコンテンツを投稿していくかなどの方向性が定まっていきます。
なお、アカウントが発信力がよほど高まらない限り、SNS採用のみで人材を獲得するのは困難です。まずは、他の採用手法に欠けている部分を補うイメージで、取り組みをスタートさせましょう。
採用ターゲットとSNSの選定
SNS採用の目的を設定できたら、採用ターゲットを定めましょう。基本的にSNS採用のターゲットは「SNSを頻繁に活用する若手人材」となりますが、年齢層や属性によって活用するSNSは異なります。そのため、ペルソナを細かく設計していき、自社が求める人物が活用するであろうSNSを選定する必要があるのです。
自社のアピールポイントの洗い出し
次に、自社のアピールポイントを洗い出して、採用ターゲットに響くであろう部分を優先的にコンテンツ化していきます。
選定したSNSによっても、テキスト・写真(画像)・動画など制作すべきコンテンツの種類が異なりますので、コンテンツの性質を考慮しつつアピールしたい部分を推しだすことが大切です。例えば社内イベントを自社のアピールポイントにしているなら、その様子を写真や動画などにして投稿するとよいでしょう。
担当者の任命と社内周知
ここまでの骨組みが組み上がったら、実際にアカウントを運用する担当者またはチームを任命しましょう。SNSの影響力は年々上がっており、もはや片手間に運用するものではありません。SNS採用を推進するのであれば、必ず専任の担当者またはチームに一任しましょう。
また、SNS採用で作成するコンテンツの多くは、社内全体の協力が必要となります。事前にSNSを活用した採用活動の意義やメリットを周知し、社員インタビューや業務風景の撮影に協力してもらえるよう呼びかけておきましょう。
連絡フローやマニュアルの作成
最後に、万一の場合に備えて、連絡フローとマニュアルを作成しておきましょう。とくに炎上が起きたときの初期対応と意思決定者などは必ず明確にしておかなければいけません。
また、担当者の不在・変更に備えて、フォロワーへの対応やアカウント運用のルールもマニュアル化しておくと安心です。企業としてアカウントを運用する以上、誰が運用してもクオリティを低下させない体制が必要となります。担当者に任せきりでは属人化してしまうので、運用のコツはできるだけ言語化し、広く共有する仕組みを整えておきましょう。
SNS採用の推進に欠かせないデータリテラシーの向上
SNS採用の推進時、多くの企業は「データ活用」を怠りがちです。投稿にどれだけの反響があったかを表すのは「いいね」の数だけではありません。SNSのアカウントを効果的に運用するためには、インプレッション数やクリック率、コンバージョン率といったデータを読み取り、投稿の成果を分析する必要があるのです。
しかし、ビジネスパーソンの多くは数字やデータに対して苦手意識を持っており、表層的な「いいね」や「リポスト(リツイート)」の数だけで効果測定を行いがちです。SNS採用を成功させるためには、しっかりとデータに向き合い、SNS運用の効果を可視化できる人材が不可欠なのです。
とはいえ、SNS採用の推進に「データサイエンティスト」のような専門家は必要ありません。データから情報を読み解き、具体的なアクションを立案していくことは、普通のビジネスパーソンでも十分に可能です。
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