アンケートは集計・分析まで行わなければ、有益な情報をくみ取ることができません。集計のミスはアンケート全体の失敗につながることからも、集計作業こそアンケートの成否を分けるといっても過言ではないでしょう。
今回はアンケート集計の手段やまとめ方、スムーズに実施するためのコツについて解説していきます。
アンケート集計の必要性・重要性
顧客満足度の向上や社内研修の効果を確認するために、アンケートを実施している企業は多いでしょう。
しかし、アンケートは集計・分析までしっかり行わなければ、有益な情報をくみ取ることができません。集計に誤りがあれば、アンケートのすべての行程が水の泡となってしまいます。
それどころか、集計のミスに気づかず、誤った調査結果から事業計画などを立案してしまうと、根底から誤った事業となってしまいます。こうなると、会社に甚大な被害を与えかねません。
担当者の効率面で見ても、アンケート集計の知識を深めることは大切です。アンケートの回答方式に合っていない集計を行うと、無駄に時間がかかってしまうからです。
逆にいえば、最初から集計まで見据えておくことで、より効率的なアンケートを作成することができるようになるのです。このように、集計作業こそアンケートの成否を分けるといっても過言ではないのです。
アンケート集計の手段
まずは、アンケート集計の手段について、ツールなどを含めた選択肢をご紹介していきます。
Excel
社内でアンケートを集計するのなら、Excelでまとめるのが第一選択となるでしょう。Excelの関数はアンケート集計にも向いており、とくに範囲と条件を指定してカウントできる「COUNTIFS関数」は、集計に必須といえます。
また、Excelなら集計結果をグラフ化することも容易です。割合を示す場合は円グラフ、数値の推移を示す場合は折れ線グラフなど、目的によって使い分けることがポイントです。
デメリットとしては、アンケートの結果を手入力する場合、数が多いほど労力とミスが増えていくので注意が必要です。また、担当者の関数のスキルによっては集計作業が大きな負担になる可能性もあります。
小規模なアンケートで、社内にリソースがあるならば、導入コストもかからないExcelで集計を行うのがよいでしょう。
※弊社で実施している「ビジネスで活用するエクセル:基礎編」研修も参考にしてください。
紹介紹介動画:「ビジネスで活用するエクセル:基礎編」
専用のソフトウェア・ツール
アンケート専用のソフトウェア・ツールを活用するのも、方法のひとつです。
専用ソフトと聞くと「操作が難しそう」と思うかもしれませんが、実はこうしたソフト・ツールはアイコンによる操作が可能で、自動でアンケートを集計できるようにもなっているので、Excelが苦手な人にこそおすすめです。
デメリットとしては、やはりコストでしょう。ただ、Excelで何時間もかかっていた作業がツールによって一気に短縮されることもあり、人的コストまで考えるとコストカットにつながる可能性もあります。
機能を限定した無料版が配布されている場合も多いので、操作性や機能を含めて、自社にマッチしたツールを探してみるとよいでしょう。
外部委託
「社内のリソースが足りない」「大規模な調査を行う」といった場合は、専門業者へ委託することも検討したほうがよいでしょう。専門業者のなかには、単にアンケートの集計・分析を行うだけでなく、コンサルティングまで含めて実施してくれる企業もあります。
プロが集計・分析を行うことで、自社の担当者では見つけられなかった改善策や新規事業案などが見つかることもあります。投資した以上の成果が期待できるのも、外部委託のメリットといえます。
デメリットとしてはコスト面だけでなく、社内にアンケート集計のノウハウが蓄積されないことにも注意しましょう。
アンケート集計のまとめ方
実際に社内でアンケートを集計する際、どのようなまとめ方があるのかについて解説していきます。
単純集計
まず基本となるのが単純集計です。設問ごとの合計数と回答の割合を出すだけのシンプルな集計で、アンケートの全体像とおおよその回答傾向なら、この手法だけでもわかります。
単純な「はい・いいえ」の設問のみで、その傾向のみを把握できればよいのであれば、単純集計を用いるとよいでしょう。
クロス集計
統計的な調査で必ずといっていいほど用いられるのが、クロス集計です。2つ以上の項目をかけ合わせて集計する方法で、回答者の属性による傾向の違いを探るときなどに用いられます。
例えば「今の仕事に満足しているか」という設問に対してクロス集計を用いることで、年齢や役職ごとに回答傾向の違いがあるかを知ることができます。この項目のかけ合わせ方こそ、アンケートにおける「分析」の肝となります。
アフターコーディング
アフターコーディングは、自由記述式の回答を集計する際に用いる方法です。自由記述のなかから似た回答や共通する内容でグループ化することで、定量的に整理しやすくなる効果があります。
例えば「会社への要望」の自由記述について、集計を行うとしましょう。一見すると自由に書かれている回答も、よく確認すると「福利厚生」「残業時間」などのテーマで書かれていることがわかります。このテーマによって回答を分類していくのが、アフターコーディングの手法です。
他にも「会社への要望」なら、会社に対しての「ポジティブな意見」「ネガティブな意見」という分け方をして、グループ化することもできるでしょう。
注意点としては、テーマや共通点について判断するポイントが分析者によって異なることが挙げられます。
上の例のように、テーマごとにグループ化する人もいれば、ポジティブ・ネガティブで分類する人もいるわけです。もし複数名でアフターコーディングを行う場合は、事前に集計の方向性をすり合わせておく必要があるでしょう。
テキストマイニング
テキストマイニングも、自由記述式の回答を集計する際に用いる方法のひとつです。文章のなかから表に出にくいデータ(情報)を抽出する手法で、これによって文章を定量的に分析できるようになります。
身近でテキストマイニングが活用されているのが、迷惑メールのフィルター機能です。これはAIがメールの文章を学習することで、迷惑メールであろう内容を判別して振り分けています。
注意点としては、ツールによる分析は、ときとして自由記述の文章を正確にくみ取れない場合があることです。
例えば「この仕事は嫌いじゃありません」という言葉は、人が見ればどちらかというとポジティブな意味合いで捉えます。しかし機械的に振り分けを行うと、「嫌い」だけを抽出してネガティブに処理されてしまう可能性があります。
迷惑メールの例からもわかるように、基本的にテキストマイニングはツールを活用して実施する方法で、大規模なアンケート集計に向いています。
アンケート集計をスムーズにする3つのポイント
アンケート集計をスムーズに行うために必要な3つのポイントを解説していきます。
正確なデータ入力
当然のことですが、アンケートの回答(データ)の入力は正確に行わなければいけません。データ入力の段階から間違いが生じると、その後の集計・分析の行程まで誤ったものになってしまうからです。
アンケート集計時、データ入力を単発のアルバイトに任せる企業は少なくありませんが、外部の人材に任せる際は入力時のルールや作業後の確認をマニュアル化するなどして、誤りを防ぐための体制を整えておきましょう。
データクリーニング
アンケート集計に欠かせない作業のひとつに、データクリーニングが挙げられます。データクリーニングとは、誤った回答や無回答などを集計から外す作業のことです。
データクリーニングを行ううえで大切なのが、無効回答の定義を決めることです。例えば「設問を読まずに回答している」「男性向けの質問なのに女性が回答している」などが挙げられます。
誠実で有益な回答だったとしても、回答者の対象から外れていれば集計結果を乱す原因となってしまいます。こうした回答をどこまで許容し、どこから無回答とするかについて決めておくことがアンケート集計の重要なポイントとなります。
数値のグループ化に注意する
集計を行う際、数値のグループ化がアバウトだと、情報を見落としてしまう可能性があるので注意しましょう。
例えば年齢によるグループ化を行う際、「10代・20代・30代」とアバウトに分けてしまうと、「30代前半に顕著な購買行動が見られる」「20代後半の離職率が際立って高い」といった貴重な情報を見落としてしまう恐れがあります。
もちろん、細分化していくほど集計の手間は増えるため、アバウトに処理する部分も必要です。ただ、そうした取捨選択の判断は、アンケートの経験を重ねて身につけるしかありません。経験が浅いうちは、不要と感じても細かく集計するよう心がけましょう。
まとめ
アンケート集計のまとめ方は大きく、単純集計、クロス集計、自由記述に対する各種集計に分けられ、アンケートの回答方式や目的によって使い分けることがポイントとなります。
また同様に、アンケート集計の手段は担当者のスキルや社内リソース、アンケートの規模に合わせて選択することが大切です。
アンケートの集計に誤りがあると、アンケートのすべての行程が水の泡となってしまいます。集計作業こそがアンケートの成否を分けると肝に銘じて、効率的かつ正確に実施できるよう体制を整えましょう。
アンケートの集計前にデータリテラシーを身につけよう
アンケート集計時の失敗談としてありがちなのが「専用ソフトを導入したはいいけれど、得られたデータから具体的なアクションプランを策定できなかった」という話です。
ビジネスシーンでは単にデータを集めるだけでなく、得られた数字から次の一手を考えて、行動に移すことが求められます。しかし、ビジネスパーソンのなかには「数字に対する苦手意識」を持つ人が意外と多く、様々なデータを活用しないまま埋もれさせてしまう事例が後を絶ちません。
もちろん、アンケートの集計自体もデータリテラシーに含まれるのですが、その先の「数字を根拠としてアクションプランを立てる力」もデータリテラシーであり、この点が課題となっている企業様は非常に多いと感じます。
弊社オルデナール・コンサルティングが提供する「数的センス向上トレーニング」では、数字やデータの扱い方を「入門編」から「実践編」の4段階で学んでいき、受講者のレベルに合わせてデータリテラシーを育んでいきます。
「アンケートの集計から施策の検討まで学びたい」「アンケートがうまくアクションプランにつながっていかない」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご活用ください。
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