逆算思考とは、達成したいゴールを明確に定めて、それを達成するためにどのようなプロセスが必要かを考えていく思考法です。
逆算思考を用いるメリットとしては「明確な判断基準になる」「リソースの最適化」「主体性が芽生える」などが挙げられ、VUCA時代への適応や目的と手段の乖離を防ぐために欠かせない取り組みといえます。
今回は逆算思考について、いまビジネスで求められる理由や用いるメリット、実践の5ステップ、定着のポイントなどを解説していきます。
逆算思考とは
逆算思考とは、達成したいゴール・目的を明確に定めて、それを達成するためにどのようなプロセスやビジョンが必要かを考えていく思考法です。
簡単にいえば「理想の未来に辿り着くためにいま何をすべきか」を考えるわけです。ビジネスにおいて逆算思考を取り入れることで、ゴールに到達するための最短距離を導き出すことができるようになり、効率的な目標達成が続くでしょう。
逆算思考と積み上げ思考の違い
逆算思考と似た言葉として、よく積み上げ思考が挙げられます。
積み上げ思考とは、現状のリソースや状況を起点として、その延長線上で計画を立てていく思考法です。簡単にいえば、いま持っている手札で何ができるのか考えるわけです。
つまり、逆算思考は「未来」から考え始めるのに対し、積み上げ思考は「今」から考え始めるということです。

いま逆算思考が求められる理由
なぜいまビジネスシーンで逆算思考が求められるのでしょうか。その理由は主に3つに集約されます。
目的と手段の乖離を防ぐため
逆算思考が求められる主要な理由として、目的と手段の乖離を防ぐことが挙げられます。
実際、多くの組織が「本来の目的が薄れ、手段の遂行自体が目的となってしまう」という課題を抱えています。例えば「現場で活躍する社員を育てる」という目的だったのに、いつの間にか「研修の実施回数を増やすこと」がゴールにすり替わっていたというケースは後を絶ちません。
そんなときに逆算思考を用いることで「何が研修の成功と言えるか」というゴールが明確となり、不必要な手段が取り除かれ、成果に直結するアクションを選択できるようになります。
VUCA時代への適応
逆算思考は、VUCA時代への適応にも欠かせません。現代のビジネスシーンでは、市場や企業を取り巻く環境が目まぐるしく、かつてないスピード感で変化しています。
こうした環境で積み上げ思考や経験則だけで戦おうとすれば、常に後手に回ることになるでしょう。ですからゴールから現在へ一本の道筋を通す逆算思考によって、「何を捨てて、何に集中すべきか」を判断する指針を立てる必要があるのです。

逆算思考がもたらすメリット
逆算思考がもたらすメリットとして「明確な判断基準」「リソースの最適化」「」が挙げられます。それぞれ解説していきましょう。
明確な判断基準となる
逆算思考のメリットは「目指すべき未来の姿」が明確な判断基準になることです。
理想とする未来へ至るために「何が重要で、何が不要か」という優先順位を精査することで、日々の業務における迷いが減って迅速な意思決定が実現できます。
リソースの最適化
逆算思考は、時間的コスト・金銭的コストといったリソースの最適化につながります。
逆算思考を用いることで、ゴールまでの最短ルートが可視化されます。今日取り組むべきタスクも明確になり、ムダやムラが省かれて最小限の労力で結果を出せるようになるでしょう。
なお、企業におけるムダやムラについては「ムリ・ムダ・ムラとは 発生の原因や「7つのムダ」について解説」で詳しく解説しています。
主体性が芽生える
逆算思考は主体性が芽生えるきっかけにもなります。最初に定めたゴールに向かってアクションを検討することで自然と仕事が「自分事」となり、やらされ感が減るからです。
ただし、組織・チーム単位の場合、リーダーだけが逆算思考を用いてメンバーにタスクを割り振る形式では「自分事」にならないので注意しましょう。
なお、やらされ感については「やらされ感とは 原因や解消方法を解説」で詳しく解説しています。
逆算思考を実践するための5ステップ
ここからは、逆算思考を実践するための取り組みを5つのステップに分けて解説していきます。
到達すべきゴールを具体的に定める
まずは、達成すべきゴールを具体的に定めましょう。ここでポイントなるのは、抽象的な目標を定量的なかたちで示すことです。
例えば「売上を伸ばす」ではなく「新規顧客を月間10社獲得し、既存顧客の離脱率を3パーセント以下に抑える」といった具体的な数値を設けてゴールとします。つまり「何をすることで売上を伸ばすか」を明確にしておくわけです。
この目標・ゴールが曖昧なままだと、その後の逆算が成り立たなくなってしまうため、最初にして最も重要なフェーズといえるでしょう。
目標と現状のあいだのギャップを洗い出す
ゴールを定めたら、目標と現状のあいだにどのようなギャップがあるのかを洗い出しましょう。ここで大切なのは、バイアスを排除してボトルネックを冷静に分析することです。
希望的観測や思い込みに左右されないよう、客観的なデータを参照することがポイントとなります。
なお、バイアスについては「ビジネスにおけるバイアスの種類とその対策」で詳しく解説しています。
目標達成に必要な要素を明らかにする
ギャップの洗い出しと並行して、目標達成のために必要な要素を明らかにしていきましょう。最終的なゴールに対し、クリアしなければならない中間目標を定めていくイメージです。
なお、細かい要素をすべて洗い出していくと時間がかかってしまいますので、目標達成に強いインパクトを与える要素を見極めることが大切です。
実行可能なアクションプランに落とし込む
必要な要素と現状のギャップの洗い出しが済んだら、いよいよ行動計画を作成します。
具体的には「誰が(担当者)、いつまでに(納期)、どのようなアクションで」などを明確にしていきましょう。
とくにこのフェーズでは、目標達成に強いインパクトを与える要素にリソースを割けるように調整し、実行の優先順位をつけることが大切です。
進捗を検証しプロセスを修正する
逆算思考を洗練させるためには、進捗の検証と改善が欠かせません。市場の変化や組織内の状況などによって、逆算が想定通りにならないことが多々あるからです。
大切なのはあらかじめ決めた計画に固執せず、ゴールがブレない範囲で柔軟に軌道修正を続けていくことです。これによって最終的な目標達成率が高まっていき、次回以降の逆算の精度も高まっていきます。

逆算思考を定着させるためのポイント
最後に、組織のなかで逆算思考を定着させるためのポイントをお伝えしていきます。
失敗に寛容な組織風土を整える
逆算思考を定着させるためには、失敗を「ゴールのために必要な学習機会」と捉える組織風土が求められます。
逆算思考を用いていると、想定外の事態に直面して迷走してしまうことが多々あります。そんなとき、計画通りにいかないことを叱責してまうと、逆算に自信が持てなくなってしまいます。
逆算思考を洗練させるためには、うまくいかなかった原因を分析し、次の逆算に活かすサイクルを回し続けることが何よりも大切なのです。
なお、組織風土については「組織風土とは 構成要素や改革の手順を解説」でも詳しく解説しています。
指示出しの質を高める
逆算思考は、日々の何気ないビジネスシーンでも取り入れることができます。
例えば、上司が部下に指示を出す際に「これをやっておいて」と投げっぱなしにするのではなく、「このゴールに向けて、どんなアクションが必要だと思う?」と逆算を促す指示出しをすることで、自律型人材として成長を促すことができます。
なお、指示の出し方については「良い指示を出すための6つの条件 指示出しを学ぶ重要性とは」でも詳しく解説しています。
逆算思考は「KPI思考」で磨いていこう
ここまでの解説でお気付きの方もいるかもしれませんが、逆算思考はKPI思考に非常に近い取り組みです。
KPI思考とは、目標を達成するためにKPIを活用して「どのような行動を取ればいいか」「組織のどこに問題があるか」などを明確にしていく方法です。
KPI(Key Performance Indicator)は、組織や個人などが目標達成に向かって順調に進んでいるかを確認するための中間目標を意味します。逆算思考におけるゴールがKGI(Key Goal Indicator)にあたり、ここから逆算してKPIを立てていくわけです。
ですから「組織に逆算思考を取り入れたい」と考える企業様は、ぜひ弊社がご提供する研修プログラム「実務に生かすKPI思考」をご検討いただければと思います。実際に、弊社の研修で出題している課題をご紹介しましょう。
人事部に所属するAさんは「新卒採用50名」の目標を達成するためにKPIを設計し、前年実績から以下のような目標値を設定しました。
・1次面接数:500名
・最終面接数:160名
しかしこのKPIを達成したにも関わらず、入社数は45名と目標には届きませんでした。設定したKPIにはどのような問題があったのでしょうか……という課題です。

KPI設定がうまくいかなかったときは上の表のように数字を並べて、プロセスを可視化することが大切です。
Aさんは前年並の歩留まりを想定して、「1次面接数」と「最終面接数」のKPIを設定しました。しかし、データを集めてみると最終面接から入社に至るまでの人数(割合)が大きく減少していたことがわかります。
問題点が判明したら、次は仮説を設定してみましょう。今回の例では、最終面接から入社に至るまでの人数が減少した原因について仮説を立ててみます。
仮説:「売り手市場」の影響で内定辞退者が増えた
仮説を立てることができたら、それを証明するための調査・検証を行います。仮説に基づいてさらにデータを集めてみると、実際に前年よりも内定承諾率が大きく減少していることがわかりました。

これにより、新卒採用50名を達成するためのKSF(Key Success Factor:重要成功要因)が判明し、より良いKPIとして「内定承諾数」を設定することができました。
このように弊社の研修では実際のビジネスシーンを想定して、実践的なプロセスで「KPI思考」について学んでいきます。 弊社の研修について、少し興味を持っていただけたのではないでしょうか。「もっと詳しく知りたい!」と思っていただけましたら、ぜひお気軽に以下のリンクよりお問い合わせください。