ビジネスにおける伴走とは 取り組みのポイントや必要なスキルを解説
ビジネスにおける伴走とは、当事者が自立や変革を達成できるよう、継続的に支援することです。なお、組織を対象とする場合はコンサルティング、社員を対象とする場合はマネジメントの文脈となり、その内容は若干異なります。
伴走のポイントとしては「当事者の目線に立つ」「信頼関係の構築」「自発的な変化の支援」などが挙げられます。
今回は、ビジネスにおける伴走の意味やニーズが高まる背景を解説したうえで、伴走を行う際のポイントや必要となるスキルについて解説していきます。
ビジネスにおける伴走とは
ビジネスにおける伴走とは「当事者が自立や変革を達成できるよう、継続的に支援すること」です。
伴走を辞書で引くと「マラソンや自転車競技などで、競技者のそばについて走ること」という意味しかありませんが、ビジネスにおいてはより拡大した意味合いで用いられていることがわかります。
また、当事者の部分が「組織」であればコンサルティングの文脈となり、「社員」であればマネジメントの文脈となります。一口に伴走といっても、伴走する対象によって意味合いが大きく異なる点も注意が必要です。
「組織」の例でいえば、2022年3月に中小企業庁が「経営力再構築伴走支援」を打ち出し、翌年には「経営力再構築伴走支援ガイドライン」が策定され、近年のビジネスシーンにおいても注目度の高い取り組みとなっています。

伴走が求められる背景
なぜビジネス界で伴走という支援形態が広まっているのでしょうか。その背景について解説していきます。
VUCA時代の到来
伴走支援が求められる主たる背景がVUCA時代の到来です。「先行きが不透明で予測が困難な状況」が続く現在のビジネスシーンのなかで自立するのは、決して簡単なことではありません。
また変革という面でも、どこにゴールを設定すればいいのかが非常にわかりにくい状況にあります。とくに中小企業の経営者は、自身も現場での業務に携わりながら経営を行うことも少なくないため、社内の潜在的な問題の発見および改善に取り組む余裕もありません。
そうしたなかで、幅広い知見と専門性を持った外部機関による伴走支援のニーズが高まっているわけです。
問題の専門化
ビジネスにおける諸問題が専門化していることも、伴走が求められる背景のひとつです。
以前までの課題は多くの場合、自社の事業に関する事柄を押さえていれば解決することができました。しかし現代は、DX化やSDGsのように自社の事業とは関係のない事柄までケアしないと、問題解決に臨めない課題が増えています。そのため、専門家による伴走支援のニーズが高まっているわけです。
人材育成ニーズの高まり
伴走による支援は、人材育成においても強く求められています。
これまで日本企業は、終身雇用を前提としたメンバーシップ型で人材育成を進めてきましたが、現在はジョブ型雇用が主流となり、育成の方向性が大きく変わりました。そのため、まだ多くの企業は、今のビジネスシーンに即した育成ノウハウを持っていない状況にあります。
加えて、人手不足によって採用の難度が上がったこともあり、人材一人ひとりを育成する重要性が大きく高まっています。こうした状況下で人材育成を成功させるために、伴走支援が求められているわけです。

ビジネスにおける伴走の4大ポイント
ここでは、ビジネスにおける伴走の4大ポイントをお伝えしてきます。
当事者の目線に立つ
伴走を成功させるための最大のポイントは、当事者の目線に立つことです。
とくにビジネスにおいては、同じ課題に直面していても立場が異なれば捉え方も変化します。例えば、上司にとっては昇進のかかった重大なプロジェクトであっても、部下からすれば面倒なだけの仕事に過ぎないかもしれません。
これが他の企業の伴走となれば、経営者や現場の人々など様々な立場の目線を考える必要があります。財務諸表などの数字だけでなく、その組織の沿革と理念、組織風土、いま実際に働いている人たちの現場などを理解してようやく当事者の目線に立つことができ、スタートラインに着けるのです。
信頼関係の構築
伴走を成功させるためには、信頼関係の構築が不可欠です。ビジネスにおける伴走は、ただ隣を走るだけでなく、相手が自立や変革を達成できるように行動改善を促す取り組みです。深い信頼関係がなければ、いくら行動改善を提案しても聞く耳を持ってもらえません。
さらにコンサルティングにおける伴走支援の場合、信頼関係を築く相手は一人だけではなく、経営層や現場など様々な立場の人と関係を構築する必要があります。そのため、より高いコミュニケーション能力が求められるでしょう。
自発的な変化を支援する
伴走の重要なポイントとして、自発的な変化を支援することが挙げられます。解決策を押しつけてしまうと従来のマネジメントやコンサルティングと同じになってしまい、せっかくの伴走支援の意味がなくなってしまいます。
もちろん、提示された解決策が上手くマッチする場合もあるでしょう。しかし多くの場合は、表面的かつ短期的な変化で終わってしまい、当事者の心に深く根付くほどの変革には至りません。実際、上司に「もっと行動量を増やせ」と言われても、「うるさいな」と反発心が生まれるだけでなかなか素直には受け取れませんよね。
個人であれ組織であれ、自分で悩み抜いて気付いたことのほうが定着しやすいものです。伴走は、そうした自発的な変化を支援するための取り組みなのです。
ときには厳しい言葉をかける
伴走というと、励ましの言葉で相手を盛り立てるイメージを持つかもしれません。しかしビジネスの伴走においては、ときには厳しい言葉を投げかけることも必要です。
自立や変革を達成するためには、やりたくないことや苦手なことに取り組まなければいけないときもあります。変化を嫌う人は少なくありませんし、自分のやり方にプライドを持っている人もいるでしょうが、そうした姿勢に寄り添うだけでは伴走支援は成り立ちません。
とはいえ「自発的な変化を支援する」で解説したとおり、解決策の押しつけになってしまうのもいけません。あくまでも自発的な変化を支援するように厳しい声をかけるのが、伴走の大きなポイントといえるでしょう。

伴走者に必要なスキル
社内で伴走によるマネジメントを行う際、どのようなスキルが必要になるのか気になる人も多いと思います。ここでは伴走者に必要なスキルとして「忍耐力」「傾聴力」「納得感のある伝え方」を解説していきます。
忍耐力
伴走型のマネジメントを行う際に欠かせないのが、忍耐力です。
伴走中は部下に対して、ついあれこれと指示したくなるものです。しかし、そんな気持ちをぐっと堪えて、当人の個性や長所を伸ばせるように見守らなければ伴走になりません。
放任主義とはまた異なり、しっかりと部下の様子を見つつ自発的な変化を支援する必要があるため、高い忍耐力が要求されます。
傾聴力
伴走のポイントとして当事者の目線に立つことを挙げましたが、これを実現するためには傾聴力が必要となります。
本人の言葉や態度から「設定した目標は、部下からはどのように見えているか」「わからないこと、不満に感じていることはないか」などをくみ取ることがポイントとなります。言葉だけでなく、非言語コミュニケーションを含めて相手の真意を探ることが大切です。
これができていないと、自立や変革を促すような指示やフィードバックは実現できないでしょう。
納得感のある伝え方
伴走中はときとして、対象者の行動や考え方を根本から変えるような提案を行う必要があります。そこで求められるのが、納得感のある伝え方です。
ただ、納得感のある伝え方については「これをすれば納得してもらえる」という答えはありません。論理的に正しいことを伝えても反発される可能性はありますし、親身になって伝えても机上の空論では納得されません。
関係性を築いた上で同じ目線に立ち、根拠のある根拠を示す。この一連の積み重ねの先に、納得感が生まれるのです。
なお、ダメな伝え方や上手く伝えるための方法については「伝え方が下手な人の特徴 上手く伝えるためのコツとは」でも詳しく解説しています。
伴走者に求められる「数字力」
上で伴走者に必要なスキルとして「納得感のある伝え方」を挙げましたが、納得感を生み出すことは簡単ではありません。「あの人が言うと説得力がある」という立場になるには、長い時間が必要となるでしょう。しかし、そんな人材になれるまで待っていたのでは、いつまでも伴走者にはなれません。
そこで求められるのが「数字やデータを用いる習慣」です。勘や経験に頼るのではなく、公平な事実であるデータに基づいた伝え方を身につけることで、説得力をもって「なぜこの取り組みが必要なのか」を示すことができます。説得力のある人になることは難しいですが、その不足分をデータが補ってくれるわけです。
ただ残念ながら、ビジネスパーソンのなかには「数字を扱うのが苦手」「細かいデータを見ると頭が痛くなる」といった苦手意識を持つ方も少なくありません。
弊社オルデナール・コンサルティングがご提供する「ビジネス数学研修」は、そうした「数字・データに対する苦手意識」を持つビジネスパーソンを対象にした研修であり、ビジネスに欠かせない数字・データの活用方法を「入門編」から「実践編」の4段階で学んでいくプログラムをご用意しております。
とくに弊社の研修では、数字力を「数字やデータから素早くポイントを見つけだし、相手にわかりやすく伝える力」と定義し、コミュニケーション能力の向上に重きを置いておりますので、伴走支援においても効果を発揮するでしょう。 「いつもフィードバックが部下に響かない」「納得感のある提案方法を身につけたい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご活用ください。
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