交渉力とは、利害関係が一致しない相手に対し、双方が納得できる結論を導き出す力のことです。
交渉力がある人には「Noと言える」「自分の主張ばかりを押しつけない」「感情のコントロールが上手い」などの特徴があり、交渉力を高めるためには「交渉のゴールを定める」「交渉のテクニックを学ぶ」などの取り組みが求められます。
今回は交渉力とは何かを解説したうえで、折衝力との違いや交渉力がある人の特徴、交渉力を高めるためのトレーニングについて解説していきます。
交渉力とは
ビジネスにおいて交渉力とは、状況や立場が異なる利害関係が一致しない相手に対し、双方が納得できる結論を導き出す力のことです。
よく交渉力は「自分が得・有利になるような条件を引き出す力」と勘違いされますが、これは正しくありません。
交渉力の本質は、一方的に自分の要求を通すのではなく、相手の状況や要望を理解し、双方にとって実現可能で納得感のある合意点を見つけることにあるのです。
交渉力と折衝力の違い
交渉力によく似た言葉として、折衝力が挙げられます。
折衝を辞書でひくと「利害関係が一致しない相手と問題を解決するために、駆け引きすること」とあります。対して、交渉を辞書でひくと「特定の問題について相手と話し合うこと」とあります。
つまり、ビジネスシーンにおいて交渉力は「折衝」の意味合いに寄っていることがわかります。
強いて違いを挙げるのなら、折衝力は駆け引きに重点が置かれており、自分の方に有利な条件を導き出すニュアンスがやや強いといえるでしょう。
交渉力とコミュニケーション力の違い
一般的に交渉力とコミュニケーション力は、イコールの関係で結ばれていると考えられています。
そもそもコミュニケーション力とは、他者と円滑な関係性を築く力であり、大きく「自分の意見や考えを伝える力」と「相手の考えや感情をくみ取る力」に分けられます。
この定義からもわかるとおり、交渉力はコミュニケーション力という大きな括りのなかに含まれているといえるでしょう。

交渉力がある人の特徴
交渉力がある人には、いくつかの共通する特徴があります。ここでは、その特徴についてそれぞれ解説していきます。
Noと言える
交渉力がある人は、必要に応じてはっきりと「No」と言えます。
昔から「日本人はNoと言えない」などと言われ、曖昧な表現で着地させることが多い文化があります。しかし、ビジネスにおいてそうした態度を取っていると、不利な立場や条件を押しつけられてしまいます。
なし崩し的に「Yes」と請け負ってしまっては、いつまでも交渉力が高まらないわけです。譲れないラインをしっかりと引いて「No」と言う勇気を持つことが大切です。
まずは、交渉において「No」は話し合いの打ち切りではなく、意思表示に過ぎないと理解しましょう。
自分の主張ばかりを押しつけない
「Noと言える」とセットの特徴といえるのが「自分の主張ばかりを押しつけない」です。自分の都合の悪い条件を「No」と突っぱねるばかりでは、交渉は進まないからです。
前述のとおり、交渉力とは双方が納得できる結論を導き出す力です。自分の主張ばかり押しつけていては、相手方の納得感を引き出せるわけがありませんよね。
ですから交渉力がある人は、自分の主張を示しつつも「相手のメリットや着地点」についても考えているのです。
客観的な視点を持っている
交渉力が高い人は共通して、客観的な視座を持っています。
上でも交渉力がある人は「相手のメリットや着地点について考える」と解説しましたが、これも客観的に相手側の視点に立たないとできないことです。
利害関係が一致しない相手と、双方が納得できる結論を探すわけですから、相手の要望や発言を表面的に捉えるのではなく「相手はなぜその要望を出したのか」まで考えを巡らせなければいけません。
同時に、自分の発言によって「相手がどう感じるか、何を考えるか」までイメージできる客観性を持てるようになれば、一気に合意形成へと近づくでしょう。
感情のコントロールが上手い
交渉力が高い人は、みな感情のコントロールが上手です。
交渉の場では、相手が挑発的な態度で接してきたり、人情に訴えかけてきたりすることがあります。それによって感情が波立ってしまうと、冷静な判断を下すことが難しくなり、相手にとって有利な条件に持ち込まれる可能性が高まります。
また逆に「ライバルを言い負かそうと張り切る」「好条件を提示されて高揚する」といったプラス側の感情でも、功を焦って判断力が低下する恐れがあります。
気持ちを常に一定にして、冷静な判断を下せる状態にキープすることが高い交渉力につながるのです。

交渉力を伸ばすためのトレーニング
交渉力を伸ばすためには、交渉時に求められるスキルを効率よく伸ばしていく取り組みが求められます。そのためのトレーニング方法について解説していきましょう。
交渉のゴールを定める
まず交渉力を伸ばすための基礎として、交渉のゴールを定めることが挙げられます。
ただし、交渉におけるゴールはひとつではなく、相手側の要望・条件との折り合いによってグラデーションが生まれます。
ですから、事前に交渉のゴールを定めるためには「MUST:絶対に譲れない条件」「WANT:譲歩できる条件」を明確にしておく必要があるのです。前述の「Noと言える」が、まさにMUST条件にあたります。
この譲れないラインと妥協できるラインが定まることにより、相手側の意見・要望に対するシミュレーションがしやすくなります。こうした事前の準備を習慣化することで、交渉における予測力や状況判断能力が高まっていくでしょう。
交渉のテクニックを学ぶ
交渉力のトレーニングとして最も実践的な方法は、交渉のテクニックを学ぶことです。とくに人間の心理・脳の働きを逆手に取った方法を取り入れることで、交渉を有利に進められるようになります。
ここでは、アンカリング効果とハロー効果を例に挙げてみましょう。
・アンカリング効果
アンカリング効果とは、先に得た情報や数値によって、後の意志決定が歪められてしまう心理作用のことです。
例えば、レストランで「30分ほどお待ちいただきます」と言われ、20分で席に案内されたら「得をした」と感じるのではないでしょうか。しかし、実際に20分待っているわけですから、得をしているわけではないですよね。これがまさにアンカリング効果の作用です。
また、「松・竹・梅」の価格設定もアンカリング効果を活用したもので、「松」の価格を印象付けることで「竹」の購買を促す狙いなどがあります。当然ながら、相手側もアンカリング効果を活用する場合もあるわけですから、交渉時には必ず知識として身につけておくべきといえるでしょう。
なお、アンカリング効果については「アンカリング効果とは 具体例やフレーミング効果との違いを解説」で詳しく解説しています。
・ハロー効果(後光効果)
ハロー効果とは、人物や物事を評価する際、特徴的な部分に目を奪われ、評価が現実と乖離してしまう傾向のことです。
例えば、交渉の相手が「ハーバード流交渉術を学んでいる」と聞いたら「手強い相手だ」と思い込んでしまうはず。しかし、実際はハーバード流交渉術を学んだだけで、実務に携わるのは初めてかもしれません。これが典型的なハロー効果の影響です。
ハロー効果も冷静な判断力を削ぐ原因となるため、しっかりと知識を身につけて「印象や情報に惑わされていないか」と自問することが求められます。
なお、そのほかの交渉時に気を配るべき先入観や偏見については「ビジネスにおけるバイアスの種類とその対策」でも詳しく解説しています。
プレゼン力を高める
プレゼン力を鍛えることも、効果的な交渉力のトレーニングになります。交渉の場では、自分の提案を魅力的に見せるスキルが欠かせないからです。
例えば、プレゼンに限らず物事をわかりやすく伝えるためには、構成に気を配る必要があります。有名な構成の組み立て方が「SDS法」で、これはSummary(話の要点・結論)→Details(詳細)→Summary(話の要点・結論)の順に伝えるという手法です。よくビジネスシーンでも「結論から伝えよう」と言われますが、このSDS法から来ています。
こうしたテクニックで自分の意見・主張を誤解なく伝えることが、交渉成立への近道となるのです。
なお、プレゼンテーションが苦手という方は「プレゼンテーションに苦手意識を感じる原因とその克服方法」も合わせてご覧ください。
交渉力の向上に欠かせない「数字力」
交渉力を成功させるための工夫として欠かせないのが、数字・データの活用です。
例えば、交渉相手から「御社にとっても得のある話です」といくら熱烈に伝えられても、納得感に欠けますよね。そこで求められるのが数字やデータです。
「データとしてこれだけの成果が期待されます」と根拠が示されれば、腰を据えて話を進めてみようという気持ちになるはずです。とくに利害関係が異なる相手だからこそ、公平に事実を示すデータが説得力を生みます。
弊社オルデナール・コンサルティングがご提供する「ビジネス数学研修」は、まさにこうした数字・データを活用したコミュニケーションを学ぶ研修となっております。
ではここで簡単に、交渉を担う機会が増えてくる中堅社員~管理職向けの研修プログラムの内容をご紹介しましょう。弊社では実践形式で、実際のビジネスシーンに基づいた以下のような課題をご用意しております。

このようなシチュエーションを設定し、自分とは異なる立場でデータを把握・分析・活用していくことで客観的な視点が広がっていきますよ。
そしてこの課題の最大のポイントとなるのが、成果物の作成です。データ活用初心者の多くがデータをExcelなどにまとめるだけで満足してしまいがちですが、ビジネスにおいては分析結果をわかりやすく上司やクライアントなどの交渉相手に伝える必要があります。

上のようなフォーマットに沿って報告書を作成し、「結論として何を伝えたいのか」「その根拠となるデータはどれなのか」をまとめて、わかりやすく伝える力を伸ばしていきます。
このように、実際に想定されるビジネスシーンに基づいて、数字・データの扱い方を繰り返し実践していくことで、自然と交渉力が高まっていきます。 弊社の「ビジネス数学研修」について、少し興味を持っていただけたのではないでしょうか。「もっと詳しく知りたい!」と思っていただけましたら、ぜひお気軽に以下のリンクからお問い合わせください。