市場分析とは、自社が属している、または参入予定の業界について調査・分析する取り組みであり、経営戦略やマーケティングの方針を検討する際に役立ちます。市場分析を行う際はフレームワークを活用することで、効率的に必要な情報を分析することができます。
今回は社内で市場分析を行いたい方に向けて、市場分析で押さえるべき情報や代表的なフレームワークなどについて解説していきます。
市場分析とは
市場分析とは、自社が属している、または参入予定の業界について、その特性や動向を調査・分析する取り組みのことです。市場分析の主な狙いは、分析結果をもとに経営戦略やマーケティングの方針を検討することにあります。
市場分析のやり方
市場分析のやり方は、「自社で行う」「リサーチ会社に依頼する」の2つに分けられます。以前までは調査や分析は専門のリサーチ会社に依頼するしかありませんでしたが、webサービスや専用ツールの発達・普及によって、近年では自社で行う市場分析でも十分な成果を上げられる環境が整っています。
この記事では、自社で市場分析を行うことを想定して解説していきます。
市場分析と市場調査の違い
市場調査は「マーケティング活動全般について、企業の意志決定に役立てるために市場や製品、広告、販売経路などに関する情報を収集・分析すること」といった意味であり、基本的には市場分析と同じ意味と考えても差し支えありません。
ただ厳密には、市場分析は市場調査という大きな括りのなかの一部と扱われることがあるので「◯◯業界を市場調査せよ」と指示を受けたときは、分析まで含むのか確認しておくべきでしょう。
市場分析の対象となる3つの情報
市場分析を行う際は、「市場規模」「(顧客の)ニーズや課題」「競合他社」の3つを押さえる必要があります。
市場規模
市場規模は、売り手・買い手の総数や取引総額から計算される「市場における経済活動の規模」です。市場規模からは、売上の予測や市場の動向、自社の目指すべきポジションなどを把握できます。
市場規模は大きければ良いという単純なものではなく、ブランドの価値やターゲット層の嗜好といった市場全体の特徴を踏まえて評価する必要があります。
競合他社
市場分析では、競合他社の製品・サービスのブランドコンセプトやシェア率(売上高)、強み・弱みといった、様々な情報を収集する必要があります。
競合他社を知ることで初めて差別化を図ることができ、自社の強みを確立できるようになります。また、他社の動向からは、業界全体の方向性やトレンドも掴むことができます。
ただ、必ずしも他社の動きが正解とは限らないため、あくまでも自社が業界のなかで勝ち残るための情報として分析することが大切です。
ニーズや課題
業界のなかで顧客(ユーザ)がどのようなニーズや課題を抱えているかを把握できれば、プロダクトの開発やマーケティング戦略がニーズに合致したものとなります。また、事業の方向性が明確になることで、社内のリソース配分も最適化できます。
ユーザのニーズや課題に対して自社ならではの商品・サービスを提供すれば、資本的に劣る状況であっても市場のなかで確固たる地位を確立することができるでしょう。
市場分析の代表的なフレームワーク5選
市場分析を行うための方法として、様々なフレームワークが開発されています。今回は「環境分析」「現状分析」「顧客分析」の代表的な手法を取り上げて解説していきます。
なお、顧客分析については「顧客分析とは フレームワークとペルソナ設定等のポイントを解説」でも詳しく解説しています。
関連記事:「顧客分析とは フレームワークとペルソナ設定等のポイントを解説」
PEST分析【環境分析】
PEST分析はマクロ環境を分析する手法のひとつで、外部環境が自社に対してどのような影響を及ぼすか把握するために実施します。PESTは「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の頭文字で構成されており、これらは基本的にコントロールのできない事柄です。
・Politics(政治的環境要因):法規制や税制、政府・諸外国の動向など
・Economy(経済的環境要因):為替や金利の動き、経済成長率など
・Society(社会的環境要因):人口動態や世論、ライフスタイルなど
・Technology(技術的環境要因):技術革新や特許など
PEST分析は非常に規模の大きい分析であるため、事業戦略といった大きな方針を決定する際に活用しましょう。逆に言えば、短期的な戦略への活用には向かない手法です。
5F(ファイブフォース)分析【環境分析】
5F(ファイブフォース)分析は、競争要因となる5つの驚異を分析する手法で、得られた情報は主に経営判断に役立てられます。5つの驚異には「競合」「代替品」「新規参入」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」が挙げられています。
・業界内の競合の驚異:競合他社との競争。自社の市場シェア率が高いほど影響は少なくなる。競争が激しいほど価格競争が厳しくなり、差別化も難しくなるため、利益を上げにくくなる。
・新規参入の驚異:新たな競合他社の参入。新規参入が容易な業界ほど高まる驚異で、競争が激化するリスクとなります。
・代替品の驚異:既存の商品・サービスのニーズを代替品によって満たされてしまう驚異。代替品の登場は市場シェア率を落とすリスクとなります。
・買い手の交渉力:消費者や顧客との力関係。「容易に他社サービスへ切り替えられる」「競合が多いため選択肢が広い」といった状況だと、買い手側の交渉力が高まる傾向にあり、収益性が低下します。
・売り手の交渉力:卸し先や仕入れ先との力関係。「原材料が貴重」といった理由で仕入れ先の影響力が高い状況だと、コストが高騰しやすくなり利益が低下します。
5F分析は、自社が抱えている課題の発見や予算計画の立案、新規参入の判断材料など様々な場面で役立ちます。
3C分析【現状分析】
3C分析は、自社を取り巻く環境を分析する手法で、事業戦略の決定などに役立ちます。3Cは「Company(自社)」「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」の頭文字で構成されており、これらの情報を調査・分析することによって具体的な方針や施策の考案に活かしていきます。
・Company(自社環境):自社の強み、社内のリソースの状況、獲得シェア率など
・Customer(市場・顧客環境):市場規模、顧客のニーズや課題など
・Competitor(競合環境):競合各社の特徴、買収・撤退の動向など
3C分析によって顧客のニーズや競合他社の動向、自社のリソースを整理することで、新規事業の立ち上げや事業戦略の再検討を行う際に妥当性が高まります。
SWOT分析【現状分析】
SWOT分析は、自社の現状や取り巻く環境を分析することによって、事業戦略を精査する手法です。SWOTは「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(驚異)」の頭文字で構成されています。
・Strength(強み):自社の得意分野、提供する商品・サービスの長所
・Weakness(弱み):自社の問題点、提供する商品・サービスの弱点
・Opportunity(機会):技術革新や法改正などにより、自社にとってチャンスとなる事柄
・Threat(驚異):法規制や金利の悪化など、自社に悪影響を及ぼす事柄
「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」を内部環境、「Opportunity(機会)」「Threat(驚異)」を外部環境と区分し、「Strength(強み)」「Opportunity(機会)」をプラス要因、「Weakness(弱み)」「Threat(驚異)」をマイナス要因と区分して、それぞれ分析を深めていきます。
SWOT分析は純粋に現状把握のために行われる場合もあり、漠然としている問題点を可視化する際にも役立ちます。
4P分析【顧客分析】
4P分析は、顧客へ商品・サービスを届けるためのマーケティング施策を立案するのに役立つ手法です。4Pは「Product(製品・サービス)」「Price(価格)」「Place(流通・提供方法)」「Promotion(販促活動)」の頭文字で構成されています。
・Product(製品・サービス):提供する製品・サービス
・Price(価格):製品・サービスをいくらで売るか
・Place(流通・提供方法):製品・サービスをどうやって届けるか(どこで売るか)
・Promotion(販促活動):製品・サービスをどうやって認知させるか
4つのPはそれぞれが関連した状態で、連動して機能することによって効果を発揮します。例えば、シニア向けのサービスなのに販促活動はSNSのみという状態では、いくら価格や提供方法について考えても効果が上がりません。
まとめ
市場分析の目的は、新規事業の立ち上げや事業戦略の立案など様々です。そのため市場分析を行う際は、目的に合致した手法・フレームワークを選定することがポイントとなります。フレームワークは「環境分析」や「顧客分析」といった具合に、特定の情報の分析に特化して構築されているからです。
また市場分析は一度きりで終わりではなく、定期的に行うことでデータが蓄積されて分析精度が向上します。市場分析を推進する場合は、人員と体制を整えて長期的に取り組んでいきましょう。
市場分析の推進体制を整えるなら「ビジネス数学研修」
市場分析の推進体制を整える際に課題となるのが、データ分析力です。社員にデータ分析を行わせようと思っても、そもそも数字に対して苦手意識を持つビジネスパーソンは少なくありません。
数字に苦手意識がある状態で統計研修やDX研修を受講させても、成果は上がりません。それどころか難解な研修のせいで、ますます数字やデータに対する拒絶反応が強まってしまうでしょう。
社内にデータ分析の体制を整えたいのであれば、社員のレベルに合った研修プログラムで、少しずつデータや数字に慣れていくことが大切です。
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