実践知とは 暗黙知との違いやSECIモデルについて解説
実践知とは、実践的な場面において、適切な判断や状況に合わせた行動を取るために必要な知性のこと。これに対して、客観的で言語化・視覚化できる知識を形式知といいます。
実践知と形式知を組織的に生み出していくサイクルを「SECIモデル」と呼び、組織力の向上に欠かせない取り組みとなっています。
今回は実践知、暗黙知、形式知について確認したうえで、実践知を形式知に変換する意味やSECIモデルについて解説していきます。
実践知とは
実践知とは、仕事などの実践的な場面において、適切な判断や状況に合わせた行動を取るために必要な知性のことです。
ギリシャ哲学の「プロネーシス」が由来となりますが、こちらは大まかに「善悪の行為に関して適切な判断を下す力」といった哲学的な意味合いとなり、現代のビジネスシーンなどでは噛み砕いた意味合いで用いられています。
実践知は経験を積み重ねることで形成される、暗黙知の一種とされます。暗黙知とは、長年の経験や勘に基づく、主観的で言語化できない知識のこと。
暗黙知のわかりやすい例としては、よく「自転車の乗り方」や「知人の顔の見分け方」が挙げられます。いずれも自分では当たり前にできていることですが、それを言葉にして他人に説明するのはとても難しいですよね。これが「主観的で言語化できない知識」です。
そして実践知は、そこからもう少し踏み込んだ実践的な知性となります。例えば、自転車に乗っている際に「あの角から子どもが飛び出すかも」「雪で滑るかもしれないから、スピードを落とそう」といった状況判断が実践知です。
この例からもわかるとおり、実践知は言語化できる場合もあることが大きな特徴といえます。
形式知とは
実践知・暗黙知とセットで語られるのが形式知です。形式知とは、客観的で言語化・視覚化できる知識のこと。わかりやすい例を挙げるなら、マニュアルに載っている知識はすべて形式知ということになります。
組織運営や人材育成においては、暗黙知・実践知をいかにして形式知に落とし込むかが課題となります。
実践知の特徴
実践知の特徴として「土着性」と「時代性」が挙げられます。
実践知は地域に根付く文化と深く結びついています。例えば、日本人であれば誰でも箸を使うことができ、「日常で合わせ箸は禁忌である」と状況に合わせた判断ができます。
また、実践知は時代によっても変化します。例えば、昔であれば自転車の二人乗りは黙認されていましたが、現在では交通違反として厳格に処罰されるようになりました。このように、同じ土地であっても時代によって実践知の内容は変化します。
ビジネスにおいて実践知を扱うのであれば、こうした性質を理解しておくことも大切です。

実践知を形式知に変換する意味
ビジネスにおいて実践知を形式知に変換することには、「組織力の向上」「属人化の防止」といった重要な意味があります。それぞれ解説していきましょう。
組織力の向上
実践知を形式知に変換する意味として最も重要なのが、組織力の向上です。
例えば、車の運転において「あの角から子どもが飛び出してくるかも」という個々の実践知に頼っていては、初心者ドライバーの事故を防ぐことができません。そこで必要となるのが「標識」という形式知です。
これはビジネスにおいても共通します。「トラブルが起こりやすいシチュエーションとその対応」という実践知を言語化し、組織内で共有するができれば、他の社員でもそのトラブルに対応できるようになります。
こうしたノウハウが積み重なっていくことによって、組織力は大きく向上するでしょう。
属人化の防止
実践知を形式知に変換する取り組みは、属人化を防ぐ意味合いもあります。属人化とは、業務が組織ではなく個人に属してしまうことで、簡単にいえば「その人がいないと仕事が回らない状態」のことです。
とくに熟練の職人の実践知は属人化しやすく、本人が離職することでそのまま失われてしまう可能性があります。こうしたノウハウをできるだけ言語化・視覚化し、広く共有していくことが組織の継続的な発展へとつながります。

暗黙知・実践知を形式知に変えるSECIモデル
では、暗黙知・実践知を形式知に変えるにはどうすればいいのでしょうか。その方法として、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が提唱したSECI(セキ)モデルがあります。
SECIは共同化(Socialization)、表出化(Externalization)、連結化(Combination)、内面化(Internalization)の頭文字で、このプロセスを繰り返すことで組織内の知識の創造と普及につながるとされます。
共同化
共同化は、直接的に暗黙知を共有するプロセスです。いわゆる「やって見せて」のOJTが共同化の例としてイメージしやすいでしょう。共有の際は形式知に変換している必要はなく、感覚のままに伝えるケースも少なくありません。
表出化
表出化は、暗黙知を比喩や類推などによって可視化するプロセスです。知識創造のプロセスで最も重要な取り組みとされ、組織あるいはチームでの話し合いなどを通じて概念を形にしていきます。
具体的には、以下のような取り組みによって形式知への変換を進めていきます。
・比喩(メタファー):別の物事に例えることで新たな解釈を生み出す。
・類推(アナロジー):二つの物事の類似点に着目する。メタファーで例えたものの構造的な共通点を見つけて、理解を促進させる。
連結化
連結化は、既存の形式知から新しい形式知を生み出すプロセスです。チーム内外に点在する形式知を整理・加工することによって、体系的な形式知を目指していきます。
例えば、営業部内のノウハウとマーケティング部が持っているデータを組み合わせることで、新たな営業販路を確立するといった取り組みが挙げられます。
内面化
内面化は、形式知を暗黙知に落とし込むプロセスです。組織で構築した形式知を従業員が自分のものとして実践し、暗黙知として吸収していくわけです。
内面化された暗黙知は、それぞれの業務で実践されることで新たな知見へとつながり、再びSECIモデルに還元されて発展していきます。

実践知を生み出すためのポイント
最後に、実践知を生み出すためのポイントをお伝えします。
「場」を作り出す
野中郁次郎氏は、SECIモデルの4つのプロセスを機能させるためには「場」が必要であると提唱しています。知識は単体では成り立たない「形のないもの」であり、状況やシチュエーションと結びついて生み出されるからです。
なお、場にも4つのタイプが存在しており、共同化、表出化、連結化、内面化とそれぞれ結びついています。
・創発場:共同化
経験や感情といった暗黙知を共有するための場。例えば、OJTを行う現場などが挙げられます。
・対話場:表出化
雑談やディスカッションといった、暗黙知を言語化するための場。例えば、会議室やweb会議ツールなどが挙げられます。
・体系場:連結化
知識の整理・分析を行い、形式知を結びつけていくための場。例えば、クラウド化したデータベースなどが挙げられます。
・実践場:内面化
個人が形式知を暗黙知・実践知として取り込むための場。例えば、実際の業務や研修のロールプレイなどが挙げられます。
こうした場を整備しておかないと実践知・形式知の創造サイクルは機能しないため、優先して環境整備に取り組む必要があります。
新しいメディアの活用
近年の技術の進歩によって、実践知・形式知を創造するハードルはずいぶん下がったといえるでしょう。例えば、言語化しにくい熟練のスキルなども動画や音声メディアを活用することで、以前よりも簡単に「共同化」を実践できます。
また、場を作り出す際にも、オンラインミーティングやクラウド上のデータベースなどが重要な役割を果たします。このように新しいメディアを積極的に活用することで、実践知の獲得が広まっていくでしょう。

「ビジネス数学」はデータ活用の実践知を得る取り組み
弊社の「ビジネス数学研修」は、数字やデータを活用するための実践知を身につける取り組みといえます。
数字やデータに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多く、形式知を学んでも実践知として活用できない人材は後を絶ちません。運転免許で例えるのなら、学科教習を乗り越えても、多くの方が技能教習で躓いている状態です。本番で活かされなければ、知識はあってないようなものですよね。
その点で弊社の「ビジネス数学研修」は、現実のビジネスシーンを想定して実践的に数字やデータの扱い方を学んでいきます。例えば下のグラフは「入門編」で出題している課題で、企業別売上高から「読み取れる事実・仮説を10個以上を挙げる」という内容です。

データ活用等で実践知が身につきにくいのは、実際にデータを前にしたときに「見方・扱い方がわからない」というアプローチ段階に問題がある場合がほとんどです。ですから弊社の研修では、データ分析の基本である「現状把握→仮説立案→検証・実行」のプロセスを実践的に学んでいき、数字・データ活用に関する実践知の獲得を目指していきます。
なお、研修プログラムはポジションや難易度に合わせて全9種類をご用意しておりますので、それぞれの課題に合わせた数字・データ活用の方法を学ぶことができます。弊社の「ビジネス数学研修」について、少し興味を持っていただけたのではないでしょうか。「もっと詳しく知りたい!」と思っていただけましたら、お気軽に以下のリンクよりお問い合わせください。
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