採用コストの削減に必要な4つの取り組み 一人当たりの平均値や相場を解説

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採用コストは、採用活動にかかる金銭的な負担と、社員にかかる負担を合わせた経費です。おおよそ採用一名あたり100万円前後が相場となっていますが、年々増加傾向にあり、採用コスト削減を目指す企業も多いでしょう。

今回は、各種調査から一人当たりの採用コストの平均・相場を明らかにしたうえで、採用コストを削減するために必要な取り組みについて解説していきます。

採用コストとは

採用コストとは、採用活動にかかる金銭的な負担と社員にかかる人的負担を合わせた経費のことです。求人広告の掲載料や人材紹介会社への手数料といった金銭的コストのみが採用コストと考えられがちですが、人的コストまで考えることが大切です。

とくに採用担当者の負担(人件費)は、採用計画の立案から内定者が実際に入社するまで発生しているので、採用コストは採用活動のすべての場面で発生していると言えます。そのため、採用コストの削減を考える際は、採用活動全体を見直していく必要があります。

また、採用コストには「外部コスト」と「内部コスト」という分け方もあります。

外部コスト

採用コストにおける外部コストは、採用活動にかかる費用のなかで「外へ向けて支払うもの」を指します。

具体的には、求人媒体へ支払う掲載料や会社案内の制作料、説明会の会場費、採用コンサルタントへの依頼料などが挙げられます。基本的に金銭的コストが中心となるため、「採用活動にかかる費用を削減したい」と考える場合、外部コストの削減から着手するとよいでしょう。

内部コスト

採用コストにおける内部コストは、採用活動のなかで社内で発生する費用や人的負担を指します。

具体的には、人事部の人件費や経営層が面接に割く時間、内定者懇親会で参加者に渡す交通費などが挙げられ、リファラル採用のインセンティブも内部コストに含まれます。

内部コストの多くはいわゆる社内リソースであり、「見えにくい費用」です。削減に取り組んでも定量的な成果が示しにくいことが難点ですが、社内の負担を軽減するためには欠かせない取り組みです。

採用単価の算出方法

採用単価は、内部コストと外部コストの総額を採用人数(入社人数)で割ることによって算出できます。

ただ、内部コストを定量的に計算しにくい場合は、採用手法・媒体ごとの外部コストから採用単価を計算して、その手法・媒体の評価を行うのもよいでしょう。例えば、採用サイトAの掲載に50万円かかり、2名を採用できた場合は採用単価25万円となります。

採用コストの相場

採用コストの削減を目指す際はおおよその相場(平均費用)を把握しておき、自社が相場に対してどの程度の位置づけにあるかを確認しておきましょう。

一人あたりの採用コスト(採用単価)

まずは新卒採用・中途採用で、一人を採用するのに平均してどれくらいの採用コストが必要となるのか確認にします。

リクルートの就職みらい研究所が発表した「就職白書2020」によれば、2019年度の新卒採用(2020年卒)および中途採用にかかった平均採用単価は、以下のとおりです。

・新卒採用 93.6万円(前年 71.5万円)

・中途採用 103.3万円(前年 83.0万円)

参考:リクルート就職みらい研究所「就職白書2020」

新卒採用・中途採用ともに、前年の数値から大きく増加していることがポイントです。なお、残念ながらこの年の調査以降、具体的な金額は調査されていません。

ただ、「就職白書2023」の「2024年卒採用の見通し[採用活動に費やす総費用]」という設問では、「増える」が31.3%(前年22.9%)、「同じ」が62.1%(前年67.1%)、「減る」が6.6%(前年10.0%)という結果が出ており、前年度の見通しと比較しても顕著な増加傾向が見て取れます。

参考:リクルート就職みらい研究所「就職白書2023」

採用媒体・採用手法ごとの採用コスト

採用コストの相場は、活用する採用媒体・採用手法によっても大きな差が生じます。2022年に厚生労働省が公表した調査では、以下のように採用媒体・採用手法ごとの平均採用コスト(正社員)が算出されました。

・スカウトサービス 91.4万円

・民間職業紹介事業者(紹介会社) 85.1万円

・インターネットの求人情報サイト 28.5万円

・求人情報誌・チラシ 11.3万円

・知り合い・社員等からの紹介(縁故) 4.4万円

・自社HP等からの直接応募 2.8万円

※回答数50件以上の手段のみ抽出

参考:厚生労働省「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査報告書」

「スカウトサービス」と「紹介会社」を活用した場合で顕著に採用コストが高くなっていますが、この2つは「管理的職業従事者」や「専門的・技術的職業従事者」といったハイクラス人材の採用を目指す際に活用される傾向が明らかとなっています(同調査「過去1年間に求人を出したことのある手段(正社員・職種別)」参照)。

いずれも採用市場に現れにくい人材であるため、採用コストが高額になったと考えられます。

一方で、「知り合い・社員等からの紹介」「自社HP等からの直接応募」のように、自社内のリソースのみで採用活動を完結できる場合、ほとんど採用コストがかからないことが鮮明となっています。

採用コストの削減に必要な4つの取り組み

ここからは、採用コストを削減するために必要な取り組みを4つに厳選して解説していきます。

ミスマッチの防止

採用コストの削減に取り組むうえで、ミスマッチの防止は最も重要な施策のひとつです。ミスマッチにより早期離職されてしまうと、採用までにかかったコストが水の泡になるだけでなく、また新たな人員を雇うための採用コストが発生してしまうためです。

具体的には「求人要項に誤解を与える内容がないか確認する」「面接で自社の社風だけでなく、抱えている課題も伝える」などの取り組みが挙げられます。入社後に「想像していた会社(仕事)と違った」と思われないよう、候補者に自社について深く知ってもらうことが大切です。

求人媒体・手法の見直し

採用コストを削減する方法として最も成果につながりやすいのが、求人媒体・手法の見直しです。前述の「採用媒体・採用手法ごとの採用コスト」のとおり、求人媒体・手法によって発生するコストは大きく異なります。

とはいえ、すべての企業が最も費用を抑えられる「自社HP等からの直接応募」で人材を確保できるわけではありません。この手法は知名度が何よりも重要であり、多くの企業はまず「求職者に自社を認知してもらうための取り組み」が必要となります。

求人媒体の見直しはコストだけでなく、自社の置かれている状況や採用ターゲットの行動特性などを勘案したうえで検討しましょう。

選考プロセスの見直し

採用コストの内部コストを削減するためには、選考プロセスの見直しも欠かせません。

具体的な取り組み例として、面接選考における内部コストの削減を考えてみましょう。まず面接を行う際には面接担当者と候補者のスケジュール調整が必要となりますが、とくに中途採用の場合は候補者が就業中の場合が多いため、調整が難航することも少なくありません。

こうした調整をスムーズにするために効果的なのが、オンライン面接の導入です。オンラインであれば場所を選ばずに実施でき、移動時間も省略できるため、面接担当者と候補者の日程が合いやすくなります。

また、面接の回数を3回から2回に減らすなど、どうしても省略できないフロー以外は積極的に見直しを行うことも大切です。このように採用活動にかかる負担を軽くすることで、結果的に選考期間の短縮にもなり、内定出しを早めることにもつながっていきます。

内定辞退の防止

近年、少子高齢化による「売り手市場」を背景として大幅に増加しているのが、内定辞退です。内定辞退は早期離職と同様、内定までにかかった採用コストが水の泡となってしまうため、採用コストを大きく膨らませる問題です。

リクルートの調査によれば、2023年卒(3月卒業時点)の内定辞退率は65.8%となっており、2022年卒の61.1%、2021年卒の57.5%と比較しても顕著な増加傾向が見て取れます。

参考:リクルート(就職みらい研究所)「就職プロセス調査(2023年卒)2023年3月度(卒業時点)内定状況」

※内定辞退率については「内定辞退率とは 2023年までの推移や辞退を招く原因を解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:「内定辞退率とは 2023年までの推移や辞退を招く原因を解説」

優秀な人材は多くの企業から内定を獲得するため、自社を選んでもらうための施策が欠かせません。内定者懇親会や内定者研修など、内定から入社までの期間に計画的な内定者フォローを実施しましょう。

※内定者フォローについては「内定者フォローとは 実施の目的と具体的な内容」でも詳しく解説しています。

関連記事:「内定者フォローとは 実施の目的と具体的な内容」

まとめ

生産年齢人口の減少と「売り手市場」などを背景として、各企業は採用活動にかけるコストを増加させる傾向にあります。

その一方で、SNS採用やリファラル採用といった外部コストを抑える新たな採用手法が登場しており、選考のオンライン化を進めれば内部コストを削減することも可能です。

こうした状況を鑑みれば、担当者の働き次第で採用コストに大きな差がつくことは明白です。担当者には採用活動のトレンドを捉えて、採用フローの様々な無駄を減らすといった積極的な取り組みが求められます。

採用コストの削減に必要な「数字力」

採用コストの削減を推進するためには、データを細かく読み取り、仮説立てと検証を正しく行う力が求められます。例えば「どの求人サイトを継続して活用するか」と検討する場合、採用単価だけでなく、様々な数値にも目を向ける必要があります。少し具体的に考えてみましょう。

「求人サイトM」では50万円の外部コストがかかり、応募数100件、内定者4名、入社人数1名という結果でした。対して「求人サイトE」では60万円の外部コストがかかり、応募数50件、内定者6名、入社人数0名という結果だったとします。

一見すると、応募数が多くてコストも安く、採用に成功した「求人サイトM」を評価したくなります。しかし、応募数に対する内定者の比率を見ると「求人サイトE」のほうが自社にマッチした人材の応募が多い傾向が見て取れます。むしろ問題は「求人サイトE」ではなく、自社の内定者フォローの質にある可能性が浮かび上がってきます。

このように、成果だけに目を向けるのではなく、採用フローにおける数字にまで目を向けることで、より効果的な採用コストの削減につながっていくのです。

ただ、人事部や採用担当者のなかには「数字を扱うのが苦手」「データから情報を読み取れない」といった、数字に対する苦手意識を持つ方が少なくありません。そんな苦手意識を払拭するためにおすすめしたいのが、弊社オルデナール・コンサルティングの「ビジネス数学研修」です。

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