年上部下とは マネジメント・指導のポイントの解説

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年上部下とは、自分よりも年齢や在籍歴などが上の人材を部下として持つこと。少子高齢化の進行や年功序列制度の廃止などを背景に年上部下を持つ人が増えており、実際にコミュニケーション不和に頭を悩ませている方も多いでしょう。

年上部下へのマネジメントのポイントとしては「過干渉を避ける」や「意志決定の機会の共有」などが挙げられます。

今回は、年上部下が増える背景や、年上部下に対するマネジメント・指導のポイントについて解説していきます。

年上部下とは

年上部下とは、自分よりも年齢や在籍歴などが上の人材を部下として持つことです。

日本社会には儒教の教えが根付いており、長幼の序、つまり年少者は年長者を敬い、年長者は年少者を慈しむという考え方が広まっています。そうした背景もあり、日本企業の多くが長いあいだ年功序列制度を採用してきたため、「年上を部下とする」という構図は歪なものとして見られがちです。

その一方で、構造的・環境的な変化によって年上部下を持つ管理職は増えており、多くの人が年上部下に対するマネジメントや接し方に頭を悩ませています。

年上部下が増える背景

社会的な背景により、年上部下を持つ人は今後も増加していくと見込まれます。ここでは、その理由について解説していきます。

少子高齢化の進行

年上部下を持つ人が増える根本的な原因は、少子高齢化の進行です。年配者の割合が増えることで職場内の平均年齢が上昇し、必然的に「部下が年上」という状況も増えていきます。

「令和6年版高齢社会白書」によれば、2023年10月1日時点での日本の人口は1億2,435万人。そのうち65歳以上人口は3,623万人で、高齢化率は29.1%となっています。ここから高齢化と人口減少がさらに進み、「2030年問題」として注目されるように2031年には人口は1億2,000万人を下回るとされ、2037年には国民の3人に1人が65歳以上になると推計されています。

参考:内閣府「令和6年版高齢社会白書」

なお、2030年問題については「2030年問題とは 2040年問題との違いや企業が取るべき対策を解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「2030年問題とは 2040年問題との違いや企業が取るべき対策を解説」

年功序列から別の評価制度への移行

年功序列は勤続年数や年齢に応じて報酬や昇格が決定される人事評価制度で、日本型雇用システムのひとつとして長く運用されてきました。この制度があったからこそ、日本企業では年上部下がなかなか生まれない環境にあったといえます。

しかし、年功序列は少子高齢化の影響で構造的な限界を迎えつつあり、多くの企業が成果主義を始めとした、別の評価制度への移行を進めています。実際に「人事白書調査2023」によれば、現在運用している評価制度の方向性で最も多かったのが「能力主義」で76.7%(「当てはまる」23.4%、「どちらかといえば当てはまる」53.3%)、次いで「成果主義」が73.3%(「当てはまる」21.6%、「どちらかといえば当てはまる」51.7%)となっています。

参考:株式会社HRビジョン「人事白書調査レポート2023 制度・評価・賃金」

このように評価制度の変更が進むことによって、必然的に年上部下を持つ管理職も増えていくわけです。

なお、年功序列については「年功序列とは メリット・デメリットや廃止の現状を解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「年功序列とは メリット・デメリットや廃止の現状を解説」

働き方の多様化

働き方の多様化が進んでいることも、年上部下が増える理由のひとつです。年齢を重ねていけば、育児や介護といったライフステージの変化も起こります。以前までであれば、年功序列によって得た立場を優先する人が多かったですが、働き方の多様化によって昇進よりも生活を優先する人が増えてきました。

そのため、仕事を一義的に考えられる若い年代が先に昇進する例が増えているわけです。

年上部下とのコミュニケーション不和の原因

年上部下とのあいだには、コミュニケーション不和が生じがちです。ここでは、その原因について見ていきましょう。

年下の上司を軽んじる

年上部下とのコミュニケーション不和の原因として、年上部下が年下上司を軽んじることが挙げられます。

この場合、年上部下はそもそも会社の人事評価に納得しておらず、「年齢・経験ともに自分のほうが上だ」と年下上司のことを下に見ています。こうした年上部下は無理に従わせようとするよりも、働きぶりを示して「上司の資格がある」と認めてもらうほうがよいでしょう。

年下上司の遠慮

年上部下とのコミュニケーション不和は、年下上司の遠慮にも原因があります。

「年上だから」といつも下手に出ていると、年上部下のほうも歩み寄るのが難しくなります。リーダーとしての役割を果たす際は、毅然とした態度を取ることも必要となるでしょう。

年上部下に対するマネジメント・指導の5つのポイント

ここからは、具体的に年上部下をマネジメント・指導する際のポイントをお伝えしていきます。年上部下の性格や能力に合わせて、使い分けてみましょう。

年長者への敬意を示す

まず前提となるのが、年長者への敬意を示すことです。前述のとおり、日本社会には長幼の序の価値観が深く根付いています。そのため、周囲にリーダーとしての威厳を示そうとして、年上部下に強い言葉を用いたり、高圧的な態度を取ったりすると、当人だけでなく周囲からも反感を買う恐れがあります。

具体的な心がけとしては、他の同僚がいる前で注意をしないことも大切になるでしょう。たとえ当人同士が納得していても、周囲から「年上なのに注意されている」と軽んじられてしまう恐れもあるからです。

「会社での立場は上だけれど、人生においては先輩」という姿勢を崩さないことで、互いにリスペクトを持った人間関係を構築できます。

過干渉を避ける

マネジメント面のポイントとしては、過干渉(マイクロマネジメント)を避けることが挙げられます。年下部下からすると「こんなに細かく指示されるなんて、信用されていないのでは」と、不満を感じる原因となるからです。

年齢を重ねた人材は、多かれ少なかれ自分なりの方法論を確立しています。裁量権を与えて一任するほうが信頼関係を築けるでしょう。

属人化を避ける

「過干渉を避ける」の注意点でもありますが、年上部下の業務が属人化しないように気を配りましょう。

経験と知識を持つ年上部下に仕事を一任し続けていると、その業務が「年上部下にしかできない仕事」になってしまい、業務についてイニシアティブを取るかたちになってしまいます。

とくに年下上司を軽んじているタイプは、その業務を楯にして自分の要求を通そうとする可能性があるため、注意が必要です。

意志決定の機会を共有する

年上部下と業務を進めるうえでは、意志決定の機会を共有することもポイントになるでしょう。とくに年上部下のほうが経験が多い場面では、積極的に意見や提案を求めましょう。

「経験」という年上部下が勝っている部分を立てることによりモチベーションが向上するだけでなく、実際に業務がスムーズに進行することも多いでしょう。

年上部下側も「お節介になるから余計な口出しは控えよう」と遠慮している場合も少なくないため、上司のほうから積極的に働きかけることが大切です。

アシミレーションを導入する

「年上部下の真意を引き出せない」「お互いに遠慮してしまう」というときは、アシミレーションを導入してみるとよいでしょう。アシミレーションとは、上司と部下の相互理解を深めるための組織開発の手法です。

具体的なやり方としては、第三者のファシリテーターを立てたうえで、上司がいない場で部下たちに意見を出し合ってもらい、その結果を上司へフィードバックするという内容になります。本人に対しては言いにくい改善の要望や不満などを汲み取ることができ、世代間のギャップを解消するうえでも有効な手法といえます。

なお、アシミレーションについては「アシミレーションとは やり方とメリットを解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「アシミレーションとは やり方とメリットを解説」

年上部下への指示に悩むなら「数字力」を磨こう

年上部下への指示出しに悩んでいるのであれば、コミュニケーションに「数字」を用いる習慣を取り入れてみましょう。数字を用いることで曖昧さがなくなり、認識の齟齬が防がれるからです。

例えば、年上部下に対して遠慮していると「できたら、会議の資料を用意してもらえますか」といった抽象的な指示になりがちです。これでは年上部下からも「頼りないリーダーだ」と下に見られてしまいます。実際にこの指示では、いつまでに、どれくらいの資料を用意すればいいかもわかりません。

こうした曖昧な指示にこそ、意識して数字を用いてみましょう。すると、「来週の『◯日』までに、会議の資料を『A4用紙2枚以内』でまとめてもらえますか」といった具合に、誤解なく伝わる指示になります。

実はこうした「数字を用いたコミュニケーション」は、弊社がご提供する「ビジネス数学研修」のプログラムのひとつ。ビジネス数学というとテクニカルスキルの向上を目指すと思われがちですが、実は日々のビジネスシーンで活きる実践的なスキルを磨いていく研修なのです。

「年上部下とのやり取りがどうも上手くいかない」「チーム内に実践的なコミュニケーションを浸透させたい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修をご活用ください。

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