2030年問題とは 2040年問題との違いや企業が取るべき対策を解説

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2030年問題とは、少子高齢化に伴う人口減によって、2030年ころに発生すると予測される社会問題の総称です。企業においては「採用難」「人件費の高騰」「業績の低迷」といった課題に直面すると見られており、今すぐにでも対策を立てておく必要があります。

今回は2030年問題について、2040年問題との違いや人口減少の推移、企業が取るべき対策などについて解説していきます。

2030年問題とは

2030年問題とは、少子高齢化に伴う人口減によって、2030年ころに発生するとみられている様々な社会問題の総称です。2030年を境として問題が発生するのではなく、現在もすでにその問題の一端は表れています。

ビジネスにおいては、生産年齢人口の不足によって、人件費の高騰や採用難の問題がより深刻化すると見られています。

2030年問題と実際の人口の推移

「令和6年版高齢社会白書」によれば、2023年10月1日時点での日本の人口は1億2,435万人で、そのうち65歳以上人口は3,623万人であり、高齢化率は29.1%となっています。

問題の2030年には、人口は1億2,012万人まで減少し、2031年には1億2,000万人を下回るとされています。その後も人口減少は続き、2056年に1億人を割って9,965万人まで減少すると推計されています。

また、高齢化率も上昇が続き、2037年に33.3%となって国民の3人に1人が65歳以上という状況になると見込まれています。

参考:内閣府「令和6年版高齢社会白書」

2030年問題と2040年問題

2040年問題は、2030年問題の延長で発生するとみられている様々な社会問題を指します。その内容については、2030年問題とほとんど同じと考えて差し支えありません。

なぜ「2040年問題」として別個に取り沙汰されるかというと、2040年前後はいわゆる「団塊ジュニア世代」が65歳を超える時期であり、全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が35%に達すると予測されているからです。これにより、とくに社会保障制度の維持が不安視されています。

2030年問題で企業が直面する課題・影響

2030年問題は少子高齢化に伴う人口減を原因とする諸問題ですので、「深刻な人手不足によって、どのような影響・課題に直面するのか」と言い換えることができます。ここでは、企業が直面する影響・課題を具体的に見ていきます。

採用難

企業が2030年問題で直面する課題として、深刻な採用難が挙げられます。少子化によって次世代の担い手の奪い合いが激化し、採用活動の難度は今後もますます上がっていくでしょう。

そもそも求職者の数自体が減少するわけですから、求人広告を中心とした従来の「待ちの採用」では成果を上げることが難しくなります。「攻めの採用」といわれるダイレクトリクルーティングによって、能動的に優秀な人材を獲得していく体制が必須となるでしょう。

人件費の高騰

採用難とともに課題となるのが、人件費の高騰です。人材の獲得と流出防止のために、給与や福利厚生の充実が欠かせないからです。

現在も最低賃金の引き上げと人手不足の両面から人件費の上昇圧力が高まっていますが、この傾向は解消されることなく、むしろ拍車がかかることでしょう。

業績の低迷

人手不足は直接的に業績の低迷につながります。人手不足によってサービスの質の低下や納品の遅れなどが起これば、顧客満足度は低下します。顧客が離れて業績が低迷すればさらに従業員が流出し、いずれは倒産という最悪の結果を迎えるでしょう。

こうした悪循環はすでに起こっており、2023年度の人手不足倒産は過去最多を大幅に更新しています。さらに、2024年度も2023年度の倒産数を上回るペースで推移しており、実際に2030年問題が進行していることを感じさせます。

参考:株式会社帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)」

企業が準備すべき2030年問題の対策

すでに2030年問題の一端が感じられる今からでも、企業が準備すべき対策について解説していきます。

多様な働き方の推進

2030年問題の対策としてすぐにでも取り組むべきなのが、多様な働き方の推進です。時間と場所にとらわれない働き方を推進すれば、育児・介護を抱える人材や地方人材などを登用しやすくなるからです。これは今まで採用できなかった人材の獲得につながるだけでなく、これまで退職せざるえなかった従業員の流出を防ぐことにもつながります。

具体的な施策としては、テレワークやフレックスタイム、リフレッシュ休暇の導入が挙げられます。こうした取り組みは働きやすい環境作りにもつながり、モチベーションの向上などの効果を生み出すことも期待されます。

シニア人材の登用

少子高齢化によって生産年齢人口(15歳から64歳の人口)が減少してしまう以上、シニア人材の登用が最も直接的に人手不足への対策となります。

また2025年4月からは、高年齢者雇用安定法の改正によって「65歳までの雇用確保」がすべての企業に義務化されることも決定しています。企業においては、継続雇用制度の導入や定年廃止などの対応以外にも、「体力の低下に配慮した就業体制の整備」「早期からのリスキリング」といったシニア人材が活躍できる環境作りが求められます。

デジタル化

デジタル化も2030年問題の対策として欠かすことのできない取り組みです。手間のかかる書類をデジタル処理したり、web上でのやり取りを完結させることで人の移動を省略したりと、デジタル化によって業務の短縮・効率化が一気に進みます。

ペーパーレス化やクラウドサービスの活用、オンライン会議の導入といったデジタル化の取り組みは、労働力の不足を補うために不可欠といえるでしょう。

AI活用

デジタル化の延長線上として、AI活用による自動化にも取り組みたいところです。現在のところAIといえば生成AIによるチャットボットが代表的で、文書作成や画像生成などが一般的となっています。

しかしAI活用の目指すところは、いま人間が担っている仕事を自動化することにあります。AIによる自動化を推進できれば、少ない人員でも生産性を劇的に向上させることができます。2030年問題の対策のなかでも、いまからの準備によって最も差がつく取り組みといえるでしょう。

リスキリングの推進

「シニア人材の登用」「デジタル化」「AI活用」とも関連する対策として、リスキリングの推進が挙げられます。リスキリングは、単なる学び直しを指すわけではありません。経済産業省では、以下のように定義されています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

引用:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」

企業にとっては、新たな人材の獲得が難しくなるなかで、従業員に長く活躍してもらうために不可欠な取り組みといえます。

その一方で、リスキリングは働き手にとっても大きなメリットがあります。重要な意味合いがあります。AIの進化を受けて、よく「AIに奪われる仕事」が話題となりますが、リスキリングはまさに「将来も活躍するためのスキル」を身につける取り組みだからです。とくに今後は、シニア世代の活躍まで見据えた能力開発が求められるでしょう。

デジタル化の推進はデータ・数字に慣れることから

2030年問題に向けて業務効率化や生産性の向上を目指し、デジタル化の推進を計画する企業は多いと思います。しかし「令和6年版情報通信白書」によれば、デジタル化に関連する取り組みは未実施(「実施していない、今後実施を検討(10.6%)」、「実施していない、今後も予定なし(39.7%)」)と回答した企業が半数に達しており、これは諸外国と比較しても非常に劣った数値となっています。

参考:総務省「令和6年版情報通信白書 第11節デジタル活用の動向」

また、デジタル化の「現在認識している、もしくは今後想定される課題や障壁」については「人材不足」が最も多い回答(42.1%)となっており、人手不足対策としてデジタル化を推進しているのに人材が足りないという皮肉な結果が出ています。

つまり、いま企業が2030年問題の対策として行うべきなのは「既存社員のスキルアップ」であり、そのうえでデジタル化に取り組むべきなのです。とはいえ、いきなりAI活用や統計学といった専門的な研修を実施しても成果はでません。まずは、数字やデータの扱いに慣れて、段階的にステップアップしていくことが求められます。

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