人材育成ができる人とは その特徴や組織内での増やし方を解説
人材育成ができる人とは、育成対象者の適性・資質を見極め、適切な指導を行うことができる人材です。その特徴として「共感力」や「忍耐力」、「部下に考える時間を与える」などが挙げられ、「仕事ができる人」が「人材育成ができる人」とは限りません。
今回は、人材育成ができる人の特徴や、「仕事ができる人」との違いについて解説し、人材育成ができる人を増やす方法についてもお伝えしていきます。
人材育成ができる人とは
人材育成ができる人とは、育成対象者の適性・資質を見極め、適切な指導を行うことができる人材のことです。人材育成ができる人が増えれば、多くの従業員の生産性が向上し、組織の発展につながるでしょう。
また、人材育成ができる人を増やすことは、人材確保の面でも非常に重要です。リクルートマネジメントソリューションズが実施した「新入社員意識調査2024」によれば、仕事をするうえで重視したいことのトップは「成長(32.2%)」となっており、自身の価値を上げてくれる職場が重視される傾向が見て取れます。
参考:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査2024」
人手不足を背景に、採用難や生産性向上が喫緊の課題となる現在、人材育成ができる人材の重要性はますます高まっています。
「仕事ができる人」は「人材育成ができる人」とは限らない
ほとんどの企業は、「仕事ができる人」に人材育成を任せるという人事制度を取り入れていると思います。しかし残念ながら、「仕事ができる人」は「人材育成ができる人」とは限りません。
その理由として、仕事ができる人ほど仕事ができない人への共感が低いことが挙げられます。下の「人材育成ができる人の特徴」で詳述しますが、育成対象者への共感がないと、なかなか適切な指導は行えません。
また、日本企業ではプレイングマネージャーの割合が非常に多いため、仕事ができる人ほど「できない部下にやらせるくらいなら、自分でやったほうが早い」と、成長機会を奪いやすい構造があるのも無視できない問題です。
つまり、プレイヤーとしての能力が高いほど、人材育成ができる人から遠ざかる側面があるわけです。こうした傾向が行き過ぎると、部下を潰してしまう「クラッシャー上司」と呼ばれる存在になってしまい、人材育成の停滞や離職率の上昇といった悪影響が広がります。
なお、クラッシャー上司については「クラッシャー上司とは 特徴や組織として取るべき対策を解説」で詳しく解説しています。
関連記事:「クラッシャー上司とは 特徴や組織として取るべき対策を解説」
人材育成ができる人の特徴
「人材育成ができる人」が共通して持っている特徴について、解説していきます。
「人」に関心を持っている
人材育成ができる人が必ず持っている特徴として、「人」に関心を持っていることが挙げられます。
人材育成は長期的な取り組みであり、将来を見据えたキャリアパスに基づいて指導し続ける必要があります。その日々のなかでは、育成対象者の悩みや不安に寄り添うことも求められるでしょう。こうした役割は、「人」に関心を持っていないと全うできません。
また、人への関心は後述する「共感力」や「観察力」にも直結するため、人材育成を担う人に求められる絶対条件といっても過言ではないでしょう。
共感力が高い
人材育成ができる人は、総じて共感力が高いという特徴があります。育成対象者の悩みや将来の展望を理解することで、より適切な指導や提案が可能になるからです。
また、育成対象者が上司に対して「自分のことを理解して導いてくれる」と感じれば、深い信頼関係のもとで育成効率も一気に向上するでしょう。
忍耐力がある
忍耐力があることも、人材育成ができる人の特徴のひとつです。人材育成に失敗は付き物であり、時間もかかる取り組みです。育成対象者がなかなか成果を出せず、計画や目標到達の遅れにやきもきすることもあるでしょう。
そんななかでも育成対象者の能力や都合を理解し、公平な指導を続けるためには忍耐力が不可欠です。
観察力がある
人材育成ができる人は観察力があります。言い換えるなら、人や物事をよく見ている人ほど人材育成に向いています。人材育成においては、育成対象者の適性や嗜好、行動特性などを把握することが大切だからです。
また、周囲の状況や物事を観察する力は、育成対象者へのフォローにも効果を発揮します。例えば、育成対象者に指示を出す際、状況を把握していれば「この業務ではミスが起きやすいから二重チェックをしよう」「あのクライアントは気難しいから事前にアドバイスが必要だ」といった先回りでのフォローが可能となります。
部下に考える機会・時間を与える
人材育成ができる人は、部下に考える機会や時間を与えています。例えば業務を割り振る際は、仕事の目的や締め切りは明確にしておきつつ、方法論についてはあえて指定しません。これによって創意工夫を凝らす余地が生まれ、育成対象者にとって業務が「自分ごと」になるのでモチベーションも向上します。
業務効率を考えるなら、細かく指示を出すほうが効率的でしょう。しかし、1から10までやり方を指示してしまうと業務が単調な「作業」になり、指示待ち型の人材が生まれる原因にもなってしまいます。
1ランク上の目標設定ができる
人材育成ができる人は目標設定が上手く、1ランク上の目標を設定することができます。
「適切な目標設定」の見極めは難しく、育成対象者の性格や能力を深く理解していないと実現できません。その点で人材育成ができる人は、育成対象者が背伸びをすれば達成できる絶妙なラインを見極めることができます。
こうした実力以上の仕事や役職を任せて成長を促す手法を「ストレッチアサインメント」と呼び、とくに次世代リーダーの育成手法として注目されています。なお、ストレッチアサインメントについては「ストレッチアサインメントとは 導入方法とメリット・デメリットを解説」で詳しく解説しています。
関連記事:「ストレッチアサインメントとは 導入方法とメリット・デメリットを解説」
組織として「人材育成ができる人」を増やす方法
組織として「人材育成ができる人」を増やすために、どのような取り組みを推進すべきなのかについて解説していきます。
評価制度の改善
人材育成ができる人を増やすためには、評価制度の改善が欠かせません。具体的には「育成対象者(部下)から見た上司の評価」「育成対象者の目標達成度合い」などを上司側の人事評価に組み込むことが挙げられます。
つまり、組織として「人材育成ができる人=仕事ができる人」という評価をくだす仕組みを作るわけです。
1on1の導入
「評価制度の改善」とともに必要となるのが、1on1の導入です。リモートワークの普及や飲み会文化の衰退によって、上司と部下が対話をする機会は減少しています。そのため、業務として育成対象者との対話の機会を設けることが、より重要になっています。
とはいえ、ただ1on1を導入しても社員の多くは「話すことがない」と感じ、お飾りの取り組みになってしまいます。導入にあたっては、その意図と重要性をしっかりと周知しましょう。なお、1on1の目的や導入の流れについては「1on1の目的 話すべきことや導入の流れを解説」でも詳しく解説しています。
関連記事:「1on1の目的 話すべきことや効果を上げるポイントを解説」
研修の実施
学校の先生を務めるためには教員免許が必要なように、人を育てるためには専門的な訓練が必要となります。ですから育成を担う人材に対しては、会社側から研修をはじめとした学習機会を提供することが大切です。具体的な研修内容としては、コーチングスキルや傾聴力、フィードバックスキル、ハラスメントに関する知識などが挙げられます。
またこうした研修の実施は、会社として人材育成を重んじていくというメッセージにもなるでしょう。
挑戦を奨励する組織風土を整える
挑戦を奨励する組織風土が整っていないと、人材育成ができる人は増えていきません。いくら上司側が部下に挑戦の機会を与えても、組織に後ろ向きな雰囲気が漂っていると尻込みをしてしまうからです。
仕組みやルール作りだけでなく、人材育成ができる人の働きぶりが活きる組織風土を整えていくことも忘れないようにしましょう。なお、組織風土の改革については「組織風土とは 構成要素や改革の手順を解説」で詳しく解説しています。
関連記事:「組織風土とは 構成要素や改革の手順を解説」
「人材育成ができる人」が実践する数字を用いたコミュニケーション
人材育成ができる人は皆、育成対象者と誤解なくコミュニケーションを取れています。これを実現するためには高い共感力が必要と思われがちですが、誰もが共感だけで意思疎通を図っているわけではありません。実は「コミュニケーションのなかに数字を用いる」という誰でもできるテクニックひとつで、誤解を防ぎやすくなるのです。
例えば「もう少し案件の獲得を増やせるように方法を考えてみよう」と指導しても、「どれくらい獲得を増やせばいいのかな?」と疑問符が浮かびます。これを定量的に「月間の獲得件数を20件まで増やせるよう、方法を考えてみよう」と言い換えれば、その数字に見合ったアクションを検討しやすくなります。
目標を設定する際も、定量的な目標値を提示することでお互いの認識にズレがなくなります。「1ランク上の目標設定」も定量的な基準を設けることで、育成対象者がぎりぎりで達成できる絶妙なラインを設定しやすくなるでしょう。
実はこうした「数字を用いたコミュニケーション」こそ、弊社がご提供する「ビジネス数学研修」で大切にしていることのひとつ。「ビジネス数学」というとテクニカルスキルの取得を目指すものと思われがちですが、どんなビジネスシーンにも通じるスキルを身につけることに重きを置いています。
人材育成にあたって「部下が納得感する目標値を設定できない」「フィードバックが相手に響いていない」などの課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご検討ください。
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