クラッシャー上司とは 特徴や組織として取るべき対策を解説

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クラッシャー上司とは、部下を精神的に追いつめて潰しつつ、自身は出世していく人を指します。その特徴として、承認欲求の高さやメタ認知の欠如、自己愛の強さなどが挙げられます。

クラッシャー上司はプレイヤーとしては優秀な反面、人材育成の停滞や離職率の上昇といったリスクをもたらすため、しっかりと対策を練って増長を防がなければいけません。

今回は、クラッシャー上司の特徴や、組織に及ぼす影響・リスク、組織として取るべき対策などについて解説していきます。

クラッシャー上司とは

クラッシャー上司とは、部下を精神的に追いつめて潰してしまう人を指します。筑波大学の松崎一葉教授の著書で提唱されたことにより注目され、本書ではクラッシャー上司を「部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人」と定義しています。

引用:松崎一葉(2017).『クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち』PHP出版

クラッシャー上司は、近年になって突然現れたわけではありません。以前から同様の問題は存在していましたが、昔はその原因を上司側でなく、部下側の甘えや精神的な弱さのせいにすることで見過ごされてきました。しかし近年になり、メンタルヘルスやコンプライアンスへの意識が高まることで、クラッシャー上司として問題視されるようになったわけです。

クラッシャー上司の6つの特徴

クラッシャー上司の行動や性格には、大きく分けて6つの特徴があります。必ずしもこの全ての特徴が当てはまるとは限りませんが、クラッシャー上司のチェックリストにもなりますので、それぞれ確認していきましょう。

自己中心的

クラッシャー上司は自己中心的な考え方を持ち、自分と異なる考え方や意見を排除する傾向があります。部下に対しても自身の方法論を押しつけ、価値観が合わない場合は攻撃的に接します。

また、部下に対して理不尽な命令を出すときも、「成長につながっている」と自分の非を認めないため、非常に厄介です。

承認欲求が高い

クラッシャー上司の特徴のひとつとして、承認欲求の高さが挙げられます。プレイヤーとしては成功への原動力にもなりますが、部下の指導という面では様々な弊害を生み出します。

まず、承認欲求の高さは他人の成功を認められない傾向につながります。部下が成果を上げたとしても「自分の指導のおかげ」「自分に比べればまだまだ」などと判断し、褒めることをしません。また、そもそも部下の存在を「自分の成功に役立つ駒」としか見ていない場合もあり、部下を潰す原因にもつながっています。

メタ認知に欠ける(客観視ができない)

メタ認知とは、自分の行動や性格などを俯瞰して認識することです。クラッシャー上司はこのメタ認知に欠ける……つまり、自分を客観視することが苦手といわれています。

自身の言動がどう受け取られるかにあまり意識を回さないため、感情のままに叱責し、部下を追い込みます。しかもその結果、部下が精神的な不調を来しても「部下の忍耐力がない」と、自分の行動を反省しません。悪意があるわけではなく、無自覚的にこうした振る舞いをしてしまうため、改善が難しい問題といえるでしょう。

自己愛・自己防衛本能が強い

クラッシャー上司の多くは、強い自己愛・自己防衛本能を持っています。部下の失敗を必要以上に叱責する際も、「自分に迷惑をかけるな」「自分の成績に影響があったらどうする」といった自己愛が背景にある場合が少なくありません。

部下の成長機会よりも自身の成果に重きを置くため、部下に仕事を回さず自分で処理してしまうことも少なくありません。この傾向が強くなると部下は放置・無視されてしまい、組織のなかで居場所がなくなってしまいます。

他人に自分と同じ水準を求める

クラッシャー上司には、他人に自分と同じ水準の成果や仕事ぶりを求める特徴があります。これは部下の成長を促すためではなく、「これくらいやってくれないと困る」といった自分本位な考えに基づいています。

指導を行う際も「新人だから」「経験不足だから」といった配慮に欠けるため、ただ部下を追いつめるかたちとなってしまいます。

業務面では有能

クラッシャー上司には、業務面では有能という特徴があります。部下を潰してしまうのも、仕事の進め方や利益の追求に妥協を許さないことに原因の一端があり、こうした姿勢はクライアントや上司からの信頼を勝ち取りやすく、自然と組織内での昇進も進んでいきます。

結果を出しているため、表立ってクラッシャー上司としての振る舞いを罰しにくいという問題にもつながってきます。

クラッシャー上司が組織に及ぼす影響・リスク

クラッシャー上司の行動は、組織に対してどのような影響やリスクを及ぼすのか解説していきます。

人材育成の停滞

クラッシャー上司が及ぼす最たるリスクとして、人材育成の停滞が挙げられます。

クラッシャー上司は自身の成果を優先し、部下に対して指導を行いません。それだけでなく、失敗に対して必要以上に叱責するため、部下は萎縮してしまい、自律性や積極性が伸びなくなってしまいます。

クラッシャー上司はプレイヤーとしては組織に貢献しますが、長い目で見れば人材育成を停滞させる不利益のほうが大きいといえるでしょう。

離職率の上昇

クラッシャー上司がもたらすリスクは「人材育成の停滞」に留まらず、離職率の上昇にもつながります。人手不足によって「売り手市場」が続く現在、「クラッシャー上司の下で働くくらいなら転職しよう」と考えるのは当然の心理です。

離職者が続けば組織全体の評判も悪くなり、先々の企業ブランディングにも悪影響を及ぼすでしょう。

職場の雰囲気の悪化・生産性の低下

クラッシャー上司の横暴な態度は、職場全体の雰囲気を悪化させます。「いつ自分に矛先が向くかわからない」という状況は直属の部下以外も萎縮させてしまい、日々の生産性にも影響を及ぼすでしょう。

また、「成果は上げているから」とクラッシャー上司を野放しにしていると、組織運営への失望感が広まり、エンゲージメントを低下させる結果につながるので注意が必要です。

クラッシャー上司への対策

クラッシャー上司による被害を減らすためには、組織的な対策が必要となります。ここでは、3つの主要な対策について解説していきます。

評価制度の見直し

クラッシャー上司への対策として欠かせないのが、評価制度の見直しです。

とくに管理職の評価項目として、人材育成や部下の離職率などを重視することがポイントとなります。クラッシャー上司の業務に対する真面目さや承認欲求を逆手に取り、部下の育成に力を入れるように方向付けるわけです。

部下を使い潰すような姿勢が改善されない場合は「管理職として能力不足」と評価基準を示し、クラッシャー上司の昇進を防ぐことが大切です。

コンプライアンス研修の実施

クラッシャー上司対策として必ず実施したいのが、コンプライアンス研修です。ポイントはクラッシャー上司本人ではなく、部下に対してコンプライアンス研修を行うことです。

前述のとおり、クラッシャー上司はメタ認知に欠けるため、研修を受けても「自分は問題ない」と判断し、あまり自身の言動を反省してくれない可能性があります。

その一方で、クラッシャー上司の問題が深刻化するのは、部下側が「自分の努力が足りていない」と抱え込んでしまうことにも原因があります。そのため、コンプライアンス研修を通して、部下側に「いま私が受けている指導には問題がある」と気づいてもらうことが重要になるわけです。

相談窓口の設置

クラッシャー上司の問題を解決するためには、被害を受けている社員が安心して相談できる窓口を設ける必要があります。

クラッシャー上司の被害に遭っている社員は、告げ口などを恐れてなかなか周囲に相談できないものです。プライバシーを遵守し、問題に対して必ず対応する窓口を設置することで、初めてクラッシャー上司の問題を顕在化させることができます。

場合によっては社外の機関とも連携して、相談者のプライバシーが完全に守られる体制を作ることが大切です。

数字に振り回されない評価体制でクラッシャー上司を防ぐ

クラッシャー上司を生み出さない・暴走させないためには、プレイヤーとしての成果を過度に評価しない体制が求められます。言い換えるなら、数字に振り回されない評価基準が必要になるわけです。

しかし、ビジネスパーソンのなかには少なからず「数字に弱い人」がおり、数字を額面通りに受け取ったり、数字の印象に惑わされたりする傾向があります。例えば、同僚から「今月の営業成績は先月比150%だった」と聞いたら、「すごい成果だ」と素直に受け取ってしまわないでしょうか。でも、他の社員全員の成績が「先月比200%」だったとしたら、相対的に「先月比150%」は成績の伸びが悪いことになりますよね。

このように、数字は事実を表す一方で、人の受け取り方によって印象が変化してしまう場合があります。ですから、定量的な評価であっても常にイメージを広げて受け止めることが大切です。

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