面接官にトレーニングが必要な理由 面接官に求められるスキルと役割とは
採用面接官の対応や印象は、求職者の入社意欲に大きな影響を与えます。また「自社にマッチした人材を見極める」「コンプライアンス上のリスクを防ぐ」といった役割を全うするためにも、面接官にトレーニングは欠かせません。
今回は採用面接官にトレーニングが必要な理由や、トレーニングの目的、具体的に身につけるべき知識・スキルについて解説していきます。
採用面接官にトレーニングが求められる理由
採用面接官にトレーニングが求められる理由は、面接官の対応や印象が候補者の入社意欲に大きな影響を与えるからです。
エン・ジャパンの調査によれば、面接や企業の対応で「この会社には入社したくない」と思ったことがあると回答した人のうち、その原因として最も多かったのが「面接官の態度が不快だったため(49%)」でした。
参考:エン・ジャパン株式会社「『エン転職』1万人アンケート(2022年8月)「企業・面接官対応の応募者への影響」調査」
つまり、どれだけ会社として好条件を用意しても、面接官の応対ひとつで信用が失われてしまうため、機会損失を防ぐためにも面接官にはトレーニングが求められるわけです。また、そのほかにも面接官には様々な役割が求められ、それらを全うするためにもトレーニングが欠かせません。
面接官の役割とトレーニングの目的
少子高齢化と生産年齢人口の減少を背景に採用競争が激化するなかで、採用面接官には様々な役割が求められます。これらの役割を理解することで、面接官のトレーニングの目的も明確になっていくでしょう。
求職者の入社意欲を高める
優秀な人材に自社を選んでもらうためには、面接官が求職者の入社意欲を高めるための役割を果たさなければいけません。
実際、冒頭で紹介したエン・ジャパンの調査においても「面接や企業の対応で”この会社に入社したい”と思ったことはありますか?」という問いに対し、「ある」と回答した割合は80%に達しています。さらに「入社したい」と思った理由も「面接官の人柄・印象が良かったため(65%)」と「面接官が話しやすい雰囲気をつくってくれたため(46%)」と、面接官の応対がトップ1、2を占める結果となっています。
面接官の人柄や雰囲気が入社意欲を高めるわけですから、面接官のトレーニングは採用戦略の一環としても非常に重要な取り組みといえるでしょう。
自社にマッチした人材を見極める
面接官は面接を通して、候補者が自社にマッチした人材かを見極めなければいけません。どれだけ優秀なスキルや経歴を持った人材でも、自社の風土や経営方針とマッチしていなければ活躍は期待できないからです。
また、売り手市場の現在においては、面接官にはもう一歩踏み込んだ「将来性の見極め」が求められます。応募数自体が減って理想通りの人材の獲得が難しくなるなかで、面接官は候補者が入社後に成長できそうかを見極める必要があるのです。
これらの見極めを遂行するためには、候補者の本音や潜在能力を引き出す「質問力」の取得が欠かせません。
コンプライアンス上のリスクを防ぐ
面接官の態度ひとつで信用を失うと前述しましたが、これは単に優秀な候補者を一人逃してしまうだけでなく、さらに大きなコンプライアンス上のリスクにつながる可能性があります。
具体的には、就職差別につながる応対による悪評の流布や、SNS上での炎上などが挙げられます。こうした問題は先々の採用活動に悪影響を及ぼすだけでなく、企業としての信頼を失墜させ、売上の低下などを招く恐れもあります。面接官のトレーニングは、こうしたリスクを未然に防ぐ意味合いもあるのです。
面接官へのトレーニングで得られるメリット・効果
採用面接官がトレーニングを行うことにより、組織全体にどのようなメリット・効果が表れるのかについて解説していきます。
面接官ごとの評価の揺れを防止する
面接に関わるすべての社員に対してトレーニングを施すことにより、面接官ごとの評価の揺れを防止する効果があります。
会社として採用基準を定めていたとしても、人によって解釈が異なっていたり、主観・直感を優先されたりすると、面接ごとに評価の揺れが生じてしまいます。また、候補者が話しやすい雰囲気作りも、面接官に差がつきがちです。
これらを放置していると、本来獲得すべきだった人材を逃してしまったり、ミスマッチな人材を採用してしまったりと、大きな損失につながりかねません。そのためトレーニングを通じて、採用基準の見方や人材の評価方法の統一を図ることが大切なのです。
内定辞退率の低下
近年、多くの採用担当者を悩ませているのが、内定辞退率の上昇です。リクルートの調査によれば、2023年卒(3月卒業時点)の内定辞退率は63.6%に達しています。前年より2.2ポイント減少していますが、依然として高い数値となっています。
参考:リクルート(就職みらい研究所)「就職プロセス調査(2024年卒) 2024年3月度(卒業時点) 内定状況」
前述のとおり、面接官の印象は入社意欲にも大きな影響を与えるため、内定辞退にも直結する要素といえます。仮に、候補者が自社と同条件の内定を獲得していた場合、面接時の印象が決定打になることは想像に難くないでしょう。
採用面接官に必要なトレーニングの例
ここからは、採用面接官に必要なトレーニングの具体例について解説していきます。
質問力の向上
面接官の基礎にして、面接の質の向上に欠かせないのが質問力です。限られた時間のなかで候補者の本質を探り、的確に情報をくみ取るためには、練り込まれた質問が必要となります。例えば「二つ以上の意味に受け取れる質問」「回答の範囲が広くなってしまう質問」などは、求めている情報を得にくくなるため避けなければいけません。
また、候補者が本来の実力を発揮できるような雰囲気作りも、質問力を構成する技術のひとつです。質問力が向上すれば、自ずとミスマッチの防止につながっていくでしょう。
表現力の向上
候補者に自社の魅力を伝えるためには、表現力が必要です。採用面接は企業側が一方的に候補者を見定める場ではありません。売り手市場の現在においては、候補者に自社を選んでもらうためのアピールの場とする意識が必要となるのです。
ポイントとなるのは、自社の取り組みの内容だけでなく、定量的な成果を伝えることです。例えば「働き方改革のために○○を導入し、残業時間を○%削減した」といった具合に伝えることで、口だけではなく実際にアクションに移す組織であることがアピールできます。
表現力というと経営理念や自社の魅力の言語化をイメージするかもしれませんが、残念ながら面接という限られた時間で美辞麗句を並べても、候補者の印象には残りません。短時間で候補者に訴求する方法を考えることも含めて「表現力」なのです。
バイアスについて学ぶ
採用面接に限らず、人物を評価する際にはバイアスが影響を与えます。バイアスは「先入観」や「偏見」と訳され、「ある特定の方向性・考え方に偏った傾向」という意味があります。
人間には経験則に基づいて意志決定を行う性質があるため、どうしてもバイアスを引き起こします。例えば、面接中に候補者が自分と同郷で、同じ小学校を卒業していたとわかったら好印象を抱かないでしょうか。これも「属性バイアス」という、評価を狂わせる原因のひとつです。
こうしたバイアスは、事前に対策しておくことで、ある程度回避することが可能です。そのため、面接官のトレーニングにも必ず組み込むべき内容といえます。なお、バイアスについては「ビジネスにおけるバイアスの種類とその対策」でも詳しく解説しています。
関連記事:「ビジネスにおけるバイアスの種類とその対策」
就職差別につながる事柄について学ぶ
面接官が最も気をつけなければいけないのが、就職差別につながる質問です。「本人に責任のない事項」「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握」について確認することは、就職差別につながるおそれがあります。
尊敬する人物や生活するうえでの信条など、何気なく質問してしまいそうなことも「本来自由であるべき事項」に含まれます。とくに近年はハラスメントや多様性に対して意識が高まっているため、事前に就職差別につながる質問について学んでおくことが大切です。
参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
面接官のトレーニングとしてもおすすめな「ビジネス数学研修」
面接官としての役割を果たす際に欠かせないのが、定量的な考え方です。
「表現力の向上」での解説のとおり、自社の魅力について綺麗な言葉を並べ立てても、候補者へのアピールにはなりません。定量的な表現を用いることで、社外の人から見ても短時間で納得感が得られるアピールとなるのです。また、バイアスに捕らわれない公平な評価を行ううえでも、定量的な評価方法が求められます。
こうした数字を用いて表現する力や、データを把握する力こそが「数字力」であり、これらを学ぶための研修が弊社がご提供する「ビジネス数学研修」です。
「ビジネス数学研修」というとテクニカルスキルが連想されがちですが、弊社の研修は「数字を用いたコミュニケーション」を身につけることに重きを置いています。研修プログラムは日々のビジネスシーンを想定して作成していますので、実践的な「数字力」が身につき、自然と数字を活用できるビジネスパーソンへと成長できます。
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