早期離職の理由と必要な対策

#おすすめ記事#採用担当者向け#教育担当者向け#新人向け#若手向け

早期離職とは、社員が入社から3年以内に退職してしまうことです。早期離職は採用・育成コストの損失を招くだけでなく、採用力の低下や既存社員のモチベーション低下などにつながる恐れもあります。

早期離職の理由は「労働環境・条件」「給与水準」「人間関係」など様々ですが、とくに近年は「働き方の実現」が重要な要素となっています。

今回は最新の「就職後3年以内の離職率」や、早期離職の理由についての調査を参考にしつつ、早期離職を防止するための対策について解説していきます。

早期離職とは

早期離職とは、一般的に社員が入社から3年以内に退職してしまうことを意味します。仕事を一通り覚えて、戦力として活躍し始める段階で社員が離職してしまうと、それまでにかかった採用コストや育成コストが水の泡となってしまいます。

また、早期離職が多い職場は、採用力も低下します。「離職者が多いということはブラック企業」といったイメージがつき、求職者からの応募が減少してしまうからです。

ほかにも事業計画への影響や業務のしわ寄せが生じるせいで、既存社員のモチベーションが低下する点も無視できない問題です。

2024年時点の就職後3年以内の離職率

2024年3月時点の厚生労働省の発表によれば、新規学卒就職者(令和2年3月卒業)の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.0%(前年度から1.1ポイント上昇)、新規大学卒就職者が32.3%(前年度から0.8ポイント上昇)となっています。

令和2年(2020年)3月といえば、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が色濃くなる時期であり、この世代の就職後3年間はコロナ禍の真っ只中でした。今後数年間の離職率は、企業におけるコロナ対策の成否を問う数字と言えるかもしれません。

なお、令和3年3月卒業の新規学卒就職者の離職率を追ってみると、すでに1年目、2年目ともに前年の数値を上回っているため、今後も離職率の上昇は続くと思われます。

参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」

早期離職につながる理由・原因

早期離職はどのような理由・原因から起こってしまうのでしょうか。

2023年にリクルートマネジメントソリューションズが入社1~3年目(大学・大学院卒のみ)の正社員・正職員を対象に実施した調査によれば、「過去3年以内に自己都合で退職をしたことがある」と回答した人の退職理由は以下のようになっています。

「退職理由で影響の大きかったもの」の上位5つ

・労働環境・条件がよくない(労働時間、休日のとりやすさなど) 25.0%

・給与水準に満足できない 18.4%

・職場の人間関係がよくない、合わない 14.5%

・上司と合わない 14.5%

・希望する働き方ができない(場所、時間、副業など) 14.5%

参考:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「新人・若手の早期離職に関する実態調査」

労働環境・条件がよくない

「労働環境・条件」は多くの人にとって譲れない条件となっています。同調査では「仕事とライフ・プライベートの理想的なバランス(ワーク・ライフバランス)について」も質問されており、「新人・若手」「上司・育成担当者」ともに最も多い回答となったのは「(仕事)5:5(ライフ・プライベート)」でした。

「新人・若手」ではよりプライベートを尊重する傾向があり、SNSなどを通じて会社以外にもコミュニティを持ち、それらを大切にするという世代的な特徴が表れていると思われます。

給与水準に満足できない

「給与水準に満足できない」は、深刻な意味合いを含んだ早期離職の理由になりつつあります。以前までの「給与水準に満足できない」は、純粋に「もっとお金持ちになりたい」といった上昇志向から来るものが多く、インセンティブの見直しなどの対策も可能でした。

しかし近年は物価高騰に給与増が追いついておらず、2023年の「働く人1人あたりの実質賃金」は前年比で2.5%も減少しており、2年連続のマイナスとなっています。

参考:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年分結果速報」

つまり現状、以前よりも「給与水準に満足できない」と感じる人が増えると予想され、これに企業側が対応しないと「生活苦」といった切実な理由から人材が流出してしまう恐れがあるわけです。

職場の人間関係がよくない・上司と合わない

職場における人間関係は、離職理由として必ず挙がる問題です。どれだけ仕事にやりがいを感じ、給与水準が高くても、人間関係のストレスは離職に踏み切らせるのに十分な理由となります。

希望する働き方ができない

近年の早期離職の原因として注目すべきなのが、この「希望する働き方ができない」でしょう。フレックスタイムや副業の解禁など働き方は年々多様化しており、とくにコロナ禍以降はテレワークが広まったことで多くの人が新しい働き方を体感しました。

しかし、2023年に実施されたパーソル総合研究所の調査によれば、正社員のテレワーク実施率は22.2%と、2020年4月以降で最低の数値になっています。一方、テレワーク実施者のテレワーク継続意向は81.9%と過去最高となっており、企業側の意向と社員側の希望に乖離が生じていることがわかります。

参考:株式会社パーソル総合研究所「第八回・テレワークに関する調査/就業時マスク調査」

早期離職を防ぐための対策

早期離職を防ぐためには、具体的にどのような対策が必要となるのか解説していきます。

従業員満足度調査

早期離職を防ぐためにまず取り組むべきなのが、従業員満足度調査です。従業員満足度調査とは、社員が福利厚生や人間関係、経営方針などに満足しているかを確認するための調査であり、不満の可視化や各種施策の効果測定を目的に実施されます。

早期離職を防ぐための取り組みも、的を射た内容でなければ効果を発揮しません。例えば、安直に「給与水準を上げれば満足度も上がるだろう」と考えても、多くの社員が人間関係に不満を感じていれば離職を引き止めることはできません。

まずは、自社の社員がどんな不満・課題を感じているのかを調査によって明らかにしていきましょう。なお、従業員満足度調査については「従業員満足度調査とは 目的や分析方法を解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:「従業員満足度調査とは 調査の目的や分析方法を解説」

福利厚生の充実や多様な働き方への対応

働きやすい環境作りは、早期離職を防ぐための基礎となります。居心地の良さやワークライフバランスの充実を感じていれば、まず離職を検討することはなくなるでしょう。

ただ、多様な働き方に合わせて評価制度や就業規則などを改定していくことは、時間のかかる取り組みとなります。取り組みの進捗状況は社員にも共有し、改善は口先だけではないと示すことも重要になるでしょう。

オンボーディング

オンボーディングとは新入社員がいち早く職場に馴染み、戦力として活躍できるように行う各種の取り組みです。新入社員研修や歓迎会などもオンボーディングの一環であり、その全てが早期離職の防止につながるといっても過言ではありません。

とくにオンボーディングで重要になるのは「リアリティショックの防止」や「目標の細分化による成功体験」などで、新入社員にギャップを抱かせず、日々成長を実感できる環境を作ることがポイントとなります。

なお、オンボーディングについては「オンボーディングとは 目的や施策例について解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:「オンボーディングとは 目的や施策例について解説」

メンター制度

人間関係、とくに上司との相性などの問題に効果的な取り組みとして、メンター制度があります。メンター制度とは、他部署の先輩社員が新入社員のサポート役を務めて、主にメンタル面のケアを行う取り組みです。

メンターは「斜めの関係性」とも言われ、上司との上下関係や同期との横の競争といった利害関係に捕らわれないコミュニケーションを実現します。「相談しやすい先輩」を作りやすくする取り組みと考えればわかりやすいでしょう。

なお、メンター制度については「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」でも詳しく解説しています。

関連記事:「メンター制度とは 導入のメリットや進め方を解説」

早期離職の理由を探るために必要な「数字力」

早期離職の理由を探るためには、データを正しく読み取る「数字力」が求められます。例えば早期離職の理由は、必ずしも従業員満足度調査で評価が低かった項目と直結するわけではありません。実際に離職につながっている理由を見抜くためには、データの相関に目を向ける必要があります。

前述の「新人・若手の早期離職に関する実態調査」では、離職経験はないが「会社を辞めたいと思ったことがある」と回答した人を対象に、「会社を辞めたいと思った理由」について尋ねています。最多の回答は「仕事にやりがい・意義を感じない(27.0%)」で、このデータだけを見ると「仕事に意義を感じられるような取り組みを推進すれば、早期離職の防止につながる」と読み取れます。

しかし、実際に「過去3年以内に自己都合で退職をしたことがある」と回答した人の退職理由を確認してみると、「仕事にやりがい・意義を感じない(13.2%)」は6位タイに過ぎず、「やりがい」はさほど退職理由に直結しているわけではないことがわかります。

このようにデータの見方を間違えてしまうと、誤った結論を導き出してしまう恐れがあるため、人事担当者にはデータを正しく把握・分析するための数字力が求められるのです。

こうしたビジネスシーンで役立つ数字力を磨くために最適なのが、弊社オルデナール・コンサルティングの「ビジネス数学研修」です。

当研修は「ビジネスシーンで役立つ数字力の向上」をテーマに、数字・データの扱い方を実践形式で学んでいきます。プログラムは受講者のレベルに合わせて「入門編」から「実践編」の4段階をご用意しておりますので、「データを見るのも嫌……」といった苦手意識を持つ方でも安心してステップアップしていくことができます。

「データを正しく読み取り、効果的な施策を推進したい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご活用ください。

お問い合わせはこちらから