「Z世代は仕事ができない」は本当か 育成と定着に必要な取り組みとは
世間ではZ世代の価値観を別の国の文化のように取り上げ、「Z世代は仕事ができない」という指摘もよく見かけます。しかし、それは事実なのでしょうか。
事実としてZ世代には「チャレンジ精神に欠ける」「PCスキルが低い人材がいる」といった傾向がある一方で、会社側のマネジメント体制に問題がある場合も少なくありません。
今回は「Z世代は仕事ができないのか」をテーマに、Z世代の育成と定着に必要な取り組みについても考えてみたいと思います。
Z世代とは
Z世代はアメリカを中心に広まった世代の括りで、厳密な定義はありませんが、1990年代半ばから2010年ころまでに生まれた世代を指すことが多いようです。年齢にすると、2024年時点でおおよそ14歳~29歳にあたります。
企業・人事担当者から見ると、この先10年近くはZ世代が新卒社員として入社してくる計算となり、すでに若手社員がZ世代のみで構成されているという企業も少なくないでしょう。
Z世代は「デジタルネイティブ」「SNSネイティブ」とも呼ばれ、以下のような特徴を持つといわれています。
・ネットリテラシーが高い
・SNSを起点として行動する
・保守的な傾向
・多様性を重んじて自分の価値観を大切にする
なぜZ世代は「仕事ができない」と言われるのか
なぜZ世代は「仕事ができない」と言われるのでしょうか。その多くは彼らが本当に仕事ができないのではなく、価値観のズレや上司側の環境変化への無理解に原因があるのではないでしょうか。
Z世代の特徴を踏まえて、本当に仕事ができないのかを考えてみましょう。
チャレンジ精神に欠ける
Z世代は「失われた30年」のなかで生まれ育ち、多感な時期に東日本大震災や新型コロナウイルスによるパンデミックなどを経験しています。こうした背景から、Z世代は保守的で堅実思考が多いといわれ、ビジネスにおいてはチャレンジ精神に欠ける部分があると指摘されます。
この傾向は、リクルートマネジメントソリューションズが実施した「2023年新入社員意識調査」でも顕著に表れています。「あなたが社会人として働いていくうえで大切にしたいことは何ですか?」という問いに対し、「何事も率先して真剣に取り組むこと」の選択率が過去最低を記録したのです。
参考:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「2023年新入社員意識調査」
とくにバブル景気を経験している世代とは、根本的に社会や会社に対する期待値が異なります。こうしたギャップを理解していないと、Z世代を単に「消極的な人材」と見なしてしまい、資質や能力を見誤ることにつながります。
残業をしない
Z世代はワークライフバランスを重んじる傾向にあります。「若いうちはバリバリ働け」と考える世代にとっては、残業をせずにさっさと帰宅するZ世代は「仕事ができない」と見なされがちです。
しかし、今やワークライフバランスを重んじるのは、Z世代に限った話ではありません。日本全体が働き方を見直すフェーズに入っており、長時間労働で生産性を担保する時代から、限られた人員・時間で効率的に生産性を上げることが求められています。
週休2日制が当たり前になったように、残業をしなくなったことは社会の過渡期であると受け止めるべきでしょう。
コスパ・タイパを重視する
Z世代はとくに消費活動の面で、コスパ・タイパを重視するといわれています。ビジネスにおいてもこの価値観は少なからず反映され、例えばZ世代は「メール・チャットで連絡を済ませる」といった指摘がよく挙がります。
「報告はしっかりと対面でするべき」と考えている世代からみれば、効率を重視してメールで済ませる対応に不満を感じるかもしれません。
ただ一方で、日本では諸外国と比較した際の労働生産性の低さが問題視されており、長いあいだ「業務の効率化」が課題となっています。実際、多くのビジネスパーソンが「慣習を重んじた生産性の低い業務」を一度は経験しているのではないしょうか。
もちろん、若手社員の育成においては、コスパ・タイパを優先する姿勢を正すことも必要となります。「正解」への最短ルートばかりを求めていると、正解がない課題に直面した際に対応する力が養えないからです。
「ルールだから、マナーだから」と頭ごなしにコスパ・タイパを否定せず、「これは貴方の成長につながることだよ」と示してあげることが大切です。
受け身・指示待ち型である
Z世代は「受け身・指示待ち型」であるという指摘をよく見かけます。言われたことしかできない人材は「仕事ができない」と判断されがちですので、この点でZ世代は仕事ができないと見なされてしまうのかもしれません。
しかし、「Z世代だから指示待ち型」という指摘には疑問が残ります。昔から多くの上司が「部下が自分から動いてくれない」という悩みを抱えていなかったでしょうか。この問題については、上司・管理職側の行動も見直すべきかもしれません。例えば、日頃から部下の前でこんな行動を取っていないでしょうか。
・部下からの提案に「忙しいから・規則だから」と取り合わない
・上司自身が経営層からの指示待ちで動いている
指示待ち型の問題については、Z世代の気質だけでなく、上司・管理職のマネジメント能力を疑う必要もあるでしょう。
PCスキルが低い人材がいる
実際に「Z世代は仕事ができない」と感じられてしまう部分として、PCスキルが低い人材が一定数いることが指摘されています。
WHITE株式会社が大学生を対象に実施した調査によれば、「パソコンスキルの習熟度(Word、Excel、Powerpointなど)」について、「あまりできない(34.3%)」「全くできない(3.9%)」との回答で約4割を占めています。
また「パソコン上のフォルダ・階層構造の理解度」という設問では、「質問の意味がよくわからない(12.9%)」「理解していない(34.9%)」で約5割を占めるという結果になっています。
参考:WHITE株式会社「ITリテラシー実態調査」
Z世代はスマートフォンでほとんどのことが出来てしまうがゆえに、パソコンに触れる機会が少ないともいわれています。デジタルネイティブとして期待した人材がパソコンの操作すら覚束ないようでは、「仕事ができない」と見なされても仕方がないでしょう。
Z世代の育成・定着に必要な取り組み
Z世代の育成や定着に必要となる取り組みを3つに厳選してお伝えします。
「世代」で決めつけない
今までの話をひっくり返すようですが、「世代」で決めつける考え方では適切なマネジメントはできません。Z世代のなかにも「バリバリ働いて人の上に立ちたい」「飲み会を通じて仲を深めたい」と考える人はいます。世代として共通する行動様式や考え方が存在するのは事実ですが、それらがすべての人に当てはまるわけではないのです。
逆に言えば、多様性社会のなかで育ってきた人たちを「Z世代」と一括りにすることこそ、信頼を損ねる直接的な原因になります。重要なのは、個性を尊重することなのです。
業務の目的・意図を伝える
すぐにでもできる取り組みとして、指示を出す際に業務の目的や意図を伝えることが挙げられます。
終身雇用制度の形骸化や、人手不足による「売り手市場」が進む現在、Z世代のあいだでは「会社の言うことは絶対」という価値観は消えつつあります。業務には納得感が求められ、この傾向はとくにコスパ・タイパを重んじる人材ほど強いといえるでしょう。
ただ一方で、指示を出す際に1から10までを説明してしまうと、部下の考える余地がなくなり、指示待ち型に陥りやすくなります。Z世代に指示を出す際は、納得感と成長がポイントになるといえるでしょう。
なお、指示の出し方については「良い指示を出すための6つの条件 指示出しを学ぶ重要性とは」でも詳しく解説しています。
関連記事:「良い指示を出すための6つの条件 指示出しを学ぶ重要性とは」
個人としての成長・成功を重んじる
終身雇用制度が形骸化しつつある現在、働き手にとって「会社の成長」や「社内での昇進」は、価値を失いつつあります。会社が絶対ではないZ世代のキャリアプランでは、個人として成長が鍵となるのです。
実際にリクルートマネジメントソリューションズ「2023年新入社員意識調査」によれば、「あなたが社会人として働いていくうえで大切にしたいことは何ですか?」という問いに対し、「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が48.5%で1位だった一方で、「仕事で高い成果を出すこと」は15.1%に過ぎません。
また、同調査の「あなたが仕事をする上で重視することは何ですか?」という問いでも「成長(自分が成長できる)」が28.8%で1位となっています。
参考:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「2023年新入社員意識調査」
こうした背景から、社員が意欲的に働けるようにモチベーションの改善を図る「モチベーションマネジメント」や、社員自身の成長・成功に重きを置く「ピープルマネジメント」を導入する企業が増えてきています。
なお、ピープルマネジメントについては、「ピープルマネジメントとは 得られる効果や必要なスキルを解説」でも詳しく解説しています。
関連記事:「ピープルマネジメントとは 得られる効果や必要なスキルを解説」
Z世代の育成にも効果的な「ビジネス数学研修」
Z世代には「正しい答えに固執する」という特徴があるといわれています。一見すると正解を追い求めるのは悪いことではないように思えますが、ビジネスシーンにおいては「仕事ができない人」と見なされてしまう場合があります。ビジネスで直面する課題には「正解」があるとは限らないからです。
そもそもの話をすると、正しい答えを追い求めてしまうのはZ世代に限ったことではなく、時代を問わず新卒・若手社員に共通する特徴といえます。その原因は、学校教育における答えの求め方が抜けていないことにあります。
学校で出される問題には必ず答えがあり、その答えを導き出すことで評価を得ることができました。しかし、ビジネスで扱う課題は正解があるものばかりではないため、ざっくりと素早く結論を導き出すことが求められます。
例えば「昨年の売上データとスタッフの営業成績から、来月の○△支店の売上予測値を出しておいて」という指示に対し、数学の問題のように正解を追い求めても100%正しい予測値は計算できません。求められるのは、与えられたデータからざっくりと予測を立てることなのです。
さらに予測値やデータから仮説を立てて、具体的なアクションプランを練ることができれば「仕事ができる人」として活躍できるでしょう。
この一連の流れは、弊社がご提供している「ビジネス数学研修」を端的に表したものです。「ビジネス数学」と聞くとテクニカルスキルを連想されるかもしれませんが、実は実務に直結したビジネス力を磨く、人材育成プログラムなのです。 Z世代の育成や若手社員に適した研修プログラムをお探しでしたら、ぜひ弊社の「ビジネス数学研修」をご検討ください。
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