ホーソン効果とは 具体例やピグマリオン効果との違いを解説

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ホーソン効果とは、人から注目されることで「期待に答えよう」と、行動に変化が生じる現象です。

1920年代に提唱されたものではありますが、現代のビジネスにおいても「パブリックコミントメント」や「表彰制度」など、ホーソン効果を活かした生産性向上のための施策が数多く存在します。

今回は、ホーソン効果の概要を解説したうえで、ピグマリオン効果やプラセボ効果との違い、ホーソン効果を活かすための施策の例などをお伝えしていきます。

ホーソン効果とは

ホーソン効果とは、人から注目されることで「期待に答えよう」と意気込み、行動に変化が生じる現象のことです。1924年にアメリカのウェスタン・エレクトリック社が、ホーソン工場で行なった実験から明らかとなりました。

この実験はもともと照明と生産性の関係性を調べるというものでしたが、不思議なことに照明や休憩時間などの要因を問わず「生産性が上がる」という結果が出ました。

その後研究を進めると、「実験に選ばれて注目されている」という状況から心理的な変化が生じ、賢明に働くようになった結果として生産性が向上していたことが明らかになったのです。

ホーソン効果とピグマリオン効果の違い

ピグマリオン効果とは、他者からの期待を受けることで、その期待通りの成長・成果につながる現象のことです。提唱者であるアメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールの名前から「ローゼンタール効果」と呼ばれることもあります。

この概要からも、ホーソン効果とピグマリオン効果が非常に似た心理効果だということがわかります。両者の違いを挙げるのならば、ピグマリオン効果が「期待」によって成果が上がるのに対し、ホーソン効果は「注目」だけで生産性が上がるということです。

また、ピグマリオン効果は「教師から生徒」「上司から部下」といった上下関係のもとで発揮されます。一方、ホーソン効果は関係性を問わず発揮されるというのも大きな違いといえるでしょう。

ホーソン効果とプラセボ効果の違い

プラセボ効果とは、何の有効成分もない薬(偽薬)を服用したにも関わらず、症状の改善や副作用が生じる現象のことです。これは医学的にも確認されており、実際に新薬の有効性を明らかにするための試験(二重盲検試験)では、新薬と偽薬で比較が行われ、その効果が検証されています。

転じて、一般的にも「思い込みで身体的・精神的な変化が生じること」といった意味で広まっています。

この意味合いからわかるように、ホーソン効果とプラセボ効果は「思い込みによる作用」という点で共通しており、しばしば混同されます。

ただ、プラセボ効果は偽薬という実体がきっかけにあり、身体的な変化をも伴う現象です。一方、ホーソン効果は「他者からの注目」という実体がないものによる心理作用であり、着目されるのもモチベーションなどの精神的な変化についてであることが大きな違いといえるでしょう。

ホーソン効果を活かすための施策例

ホーソン効果は、「他者からの注目」という単純な要因によって生産性が向上することを示します。そのためビジネスにおいても、ホーソン効果を活かした様々な施策が存在します。ここでは、その一例を紹介していきます。

パブリックコミットメント

パブリックコミットメントとは、大勢の人の前で目標や約束を宣言することです。ホーソン効果を活かすための代表的な取り組み例であり、体育会系の部活や営業部に所属していた人は「パブリックコミットメントの経験がある」という人も少なくないでしょう。

パブリックコミットメントを行うと、心理学における「一貫性の法則」も働くため、目標達成に向けて努力する意識が高まります。

表彰制度

ホーソン効果を活かした取り組みとして、表彰制度を連想する方は多いと思います。

しかし、実は表彰制度におけるホーソン効果は限定的なものに過ぎません。表彰を受けた優秀者だけしか注目を浴びないからです。確かに優秀な人材がホーソン効果によって、さらに成果を上げていくという意味では効果的です。

ただ、「表彰を目指して努力する」という意味ではホーソン効果は働かないため、ホーソン効果によって不特定多数の人材の生産性を上げたいのであれば、別の取り組みを推進すべきでしょう。

社内報

社内報は、表彰制度よりもカジュアルにホーソン効果を活かすことができる施策です。優秀者のみならず、新入社員やチーム単位での活躍など様々な角度から社員の働きを取り上げることができるため、広くホーソン効果を狙うことができます。

従業員数がある程度多くないと取り組みにくい施策ではありますが、電子媒体での発行であれば紙媒体ほど手間やコストはかからないため、以前よりも導入のハードルは下がっているといえるでしょう。

360度評価

360度評価は、上司だけでなく、同僚や部下といった複数の視点から評価を行う手法です。リモートワークや時短勤務が広まり、一人の評価者だけでは働きぶりを追いきれなくなっていることからも、導入が進んでいます。

360度評価を導入することで「あらゆるところから、仕事ぶりが観察されている」という意識が芽生えるため、自然とホーソン効果が働くようになります。

ただ、一般的な評価制度よりも評価にかかる工数(手間)が増えるため、通常業務の生産性が低下しないよう注意しましょう。

選抜チームでのプロジェクト

選抜チームを結成して大きなプロジェクトに取り組むことは、ホーソン効果を狙う意味でも効果的です。

重要度の高いプロジェクトであるほど社内でも注目され、チームメンバーにも「期待されている」という意識が芽生えて生産性が向上するでしょう。

社内インフルエンサー

社内インフルエンサーの擁立は、ホーソン効果を狙う取り組みのなかでも最も新しい施策といえるでしょう。

社内インフルエンサーとは、SNSを中心としたweb上で、自社や商品のPRを行う社員のことです。一般的なインフルエンサーとは異なり、自社に所属していることがポイントです。

社内のみならず世界中から注目される可能性があるため、ホーソン効果は絶大です。ただ、炎上リスクやメンタルケアなどの課題も多い施策となります。

ホーソン効果を活かす際の注意点

ホーソン効果を活かそうとするあまり、社員が不満を感じてしまう事例は少なくありません。最後に、ホーソン効果を活かす際の注意点について解説します。

注目されたくない人もいる

ホーソン効果にまつわる施策を推進する際は、注目されたくない人もいることを念頭に置いておきましょう。

注目が過度なプレッシャーとなり、生産性を落としては本末転倒です。なかには「表彰制度や社内報で注目されたくない」と、あえてパフォーマンスを落とす人もいるでしょう。

社内報への出演は任意制にするなど、個人の意志を尊重した心理的安全性が確保される取り組みが求められます。

公平性を意識する

ホーソン効果にまつわる施策で注意しなければいけないのが、公平性です。例えば、選抜チームでのプロジェクトにリソースを割きすぎると、選抜外になった社員のモチベーションが低下する恐れがあります。

「どうせ自分は注目されない」といった諦めは、最悪の場合、離職につながります。上で解説した「注目されたくない人もいる」とのバランスを考えつつ、自然と誰しもが注目される環境を目指していきましょう。

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