アンケートの設問は誰にでも作れるように見えて、実は奥が深いものです。質問文の表現ひとつで求めている回答が得られなかったり、回答率が低下してしまったりするのです。
今回は、アンケートの設問の種類(回答方式)から、設問を作る際の流れとコツについて解説していきます。
アンケートの設問の種類と例文
アンケートの設問は、回答方式によっていくつかの種類に分けることができます。例文を交えて解説していきます。
単一回答方式
単一回答方式は、選択肢のなかから一つの回答を選んでもらう方式です。SA(シングルアンサー)と呼ばれることもあります。回答者への負担が少ないため、最も回答率が高まる回答方式です。
【例】
自社を知ったきっかけについて、以下の選択肢からお選びください。
転職サイト・合同説明会・インターネット広告・フリーペーパー・知人の紹介・その他
複数回答方式
複数回答方式は、選択肢のなかから、あてはまるものを複数回答してもらう方式です。MA(マルチアンサー)と呼ばれることもあります。
回答は「あてはまるものを3つまで」といった具合に選択数を決める場合と、あてはまるもの全てを選択する場合があります。
【例】
商品を購入する際に参考にしたものを以下の選択肢から「3つまで」お選びください。
テレビ・雑誌・インターネット広告・YouTube・Instagram・ブログ・知人の紹介・その他
マトリクス
マトリクスは、ひとつの設問で複数の事柄について回答を得たい場合に用いる方式です。回答は縦軸に項目、横軸に尺度の表で作成され、それぞれ当てはまるものにチェックいれていきます。
【例】
以下のSNSについて、それぞれ1日の使用時間を教えてください。
Instagram 使わない・~1時間・1~3時間・3~5時間・5時間~
YouTube 使わない・~1時間・1~3時間・3~5時間・5時間~
LINE 使わない・~1時間・1~3時間・3~5時間・5時間~
自由記述回答
自由記述回答は、選択肢を用意せず、文章記述によって回答してもらう方式です。FA(フリーアンサー)と呼ばれることもあります。
選択肢から回答する方式では、アンケート作成者の想定以上の情報を得ることができません。例えば「会社への不満はなんですか」という設問で、選択肢を「給与・福利厚生・人間関係」と用意したとします。
しかし、多くの社員が「リモートワークができないこと」に不満を持っていたとしたら、上の選択肢では汲み取ることができず、欲しかった情報を見落としたことになります。その点で自由記述回答は、アンケート作成者が想像しなかった「会社への不満」を見つけだすきっかけになるわけです。
ただ、自由記述回答は回答者の負担・手間が増える方式であるため、回答を飛ばされる可能性が高いというデメリットもあります。
アンケートの設問の作り方
アンケートの設問を作る際に行うべきことを流れに沿って解説していきます。
調査の目的を明確にする
アンケートの設問を作るためには、まず調査の目的を明確にしなければいけません。社内の課題解決や提供サービスの改善など、調査には必ず目的、つまり最終的なゴールがあるはずです。
よくあるアンケートの失敗として、「改善策を探るための調査なのに、満足度にまつわる設問ばかりで、具体的な不満や問題点がわからなかった」といった例が挙げられます。
調査の目的に合わせて設問を用意しないと、せっかくのアンケートも成果につながらないので注意しましょう。
調査対象の設定
調査の目的を明確にすると、自ずと調査対象も定まってくるはずです。アンケートを実施するときは「全員に回答を求めたほうがいい」と考えがちですが、調査の目的によっては調査対象を絞ることで、より正確な結果が得られます。
調査対象の絞り方としては「年齢」「性別」「職業」などが挙げられます。また、調査対象の絞る際は、サンプル数(回答者数)を十分に確保できるかも忘れずに確認しましょう。
仮説設定
次に、調査目的と調査対象を踏まえて、仮説を設定します。仮説設定では、回答者の心理や行動について想像を巡らせることが大切です。
例えば、自社で提供しているサービスの満足度を調査する際、以下のように顧客が不満を感じている部分について仮説を立てていきます。
・利用料金に不満を感じているかもしれない
・webサイトのユーザビリティが低いのではないか
・提供サービスのバリエーションが不足しているかも
こうした仮説が実際に「webサイトでのご契約時、わかりにくい部分はありましたか?」といった設問へとつながっていきます。
思いついたことを並べるだけでは、アンケートの設問とは呼べません。しっかりと仮説を立て、それを検証するような設問を作っていきましょう。
質問文作成と回答方式の決定
仮説設定までが済んで、ようやく設問作りが始まります。質問の内容に適した回答方式を選び、設問を完成させましょう。設問を作る際のコツは、次の章で解説します。
アンケートの設問を作成する際の6つのコツ
アンケートの設問を作る際は、回答率を上げるために回答者の手間に配慮しつつ、集計作業までを見据えておきましょう。ここでは、アンケートの設問を作る際に押さえておきたい6つのコツをお伝えします。
回答者が負担を感じないシンプルさ
設問作りの基本となるのが、回答者が負担を感じないシンプルさです。「質問文が長い」「複数の質問を含んでいる」といった一目で理解できない設問は、適当に回答されてしまう恐れがあります。
とくに、一つの設問で二つの事柄を質問していないかを確認しましょう。「製品の梱包と配達の早さはいかがでしたか」といった具合に、二つの事柄について質問してしまっている設問は少なくありません。
こうした設問は「梱包は満足だけど、配達が遅くて不満」と回答が2つに分かれてしまい、正しく回答できません。回答方式を「マトリクス」型にするか、設問自体を2つに分けることを検討しましょう。
設問数を厳選する
設問数についても、回答者が負担を感じない程度に厳選する必要があります。設問数が多くて回答に時間がかかると、途中で回答をやめてしまったり、適当な回答になったりする恐れがあるからです。
設問の種類によっても異なるので「設問数は具体的に◯つが良い」とは断定できません。ただ時間でいえば、10~15分程度で回答が終わる設問数が理想となります。また自由記述方式の設問は、多くとも2つまでにしておきましょう。
設問数を多くしたい場合は「アンケートにご回答いただいた方に商品券をプレゼント」のように、有償のアンケートにすることを検討しましょう。
作成者の常識を排除する
設問の内容を考える際は、作成者の常識を排除することが大切です。そのため「仮説設定」から設問の作成まで、複数名で行うことが理想です。
例えば「朝食はパン派・ご飯派のどちらですか」という設問は、すべての人が必ず朝食をとるとは限らず、他のものを食べる人もいるため、一定数回答できない人が出てきます。作成者が「朝食はパンかご飯に決まっている」と思い込むことによって生まれる失敗例です。
この場合は、ひとつ前に「あなたは朝食をとりますか」といった設問を置き、対象となる回答者を絞っておく必要があるでしょう。
誘導尋問のような質問文にしない
設問の文章を作る際、作成者のなかで期待する回答が決まっていると、つい回答者を誘導するような文面にしてしまう場合があります。
例えば「A社は先日○円の値上げを行いましたが、A社とB社のどちらの商品を購入し続けたいですか」という質問文は、明らかにB社へ回答が集まるような意図が感じられます。こうした誘導尋問めいた設問は作成者のバイアスがかかっているため、正しい調査とは言えません。
簡単な設問を前半に持ってくる
ちょっとしたテクニックですが、簡単な設問を前半に持ってくるとアンケートの回答率を上げることができます。
逆に、前半に自由記述式の設問を持ってくると、回答者に「このあとも面倒な設問が続くかも」と警戒されてしまい、回答を中断される可能性が高まります。
集計まで見据えて設問を作る
設問を作る段階から集計まで見据えておくと、後々の集計・分析作業がスムーズになります。
集計が最も簡単なのは単一回答方式ですが、単一回答はアンケート作成者が用意した選択肢以上の情報がくみ取れません。一方で自由記述方式は想定していなかった情報を汲み取れる可能性がありますが、定量的な集計に向かないため、分析にも手間がかかります。
設問を作る際は、自社のアンケートの集計・分析のリソース(ノウハウ)を踏まえて設計することも、重要なポイントとなるのです。アンケートの集計については「アンケート集計のまとめ方」で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてみてください。
関連記事:「アンケート集計のまとめ方」
まとめ
アンケートの設問を作る際は、まず調査の目的を明確にして、調査対象を定めたうえで仮説設定を行う必要があります。
また、質問文と回答方式を決める段階では、回答者の負担を第一に考えましょう。意味がわかりにくい質問文や、質問内容と合っていない回答方式を設定してしまうと、回答率が低下する原因となります。
アンケートの設問は誰にでも作れるように見えますが、ストレスなく回答できる設問を作るには知識とテクニックが必要です。しっかりとコツを押さえて、成果につながるアンケートを実施しましょう。
アンケートの集計・分析に欠かせない「数字力」
アンケートを実施したあとは、集計と分析を行う必要があります。しかし、数字やデータの扱いに対して苦手意識を持つ社員が多く、せっかくのアンケートがうまく集計・分析されず、持ち腐れになってしまうというのはよくある話です。
データはただ集めるだけでは意味がなく、データをもとにしたアクションプランまで考えなければ、ビジネス上の価値を創出できません。実際、社員に「数字やデータを根拠にアクションプランを立てる力」を求める企業が増えてきています。
そんなスキルアップを検討する企業様にお試しいただきたいのが、弊社オルデナール・コンサルティングがご提供する「数的センス向上トレーニング」です。研修では数字やデータの扱い方を「入門編」から「実践編」の4段階で学んでいき、受講者のレベルに合わせてデータリテラシーを育んでいきます。
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