企業がリカレント教育を促進するメリットと導入事例

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リカレント教育は「社会人の学び直し」と呼ばれる、ビジネスで必要となる知識・スキルを学んでいく取り組みです。

本来は個人を主体とする取り組みでしたが、政府による推進もあり、企業においても労働者の学び直しを促進するための環境整備が求められています。

今回は、企業がリカレント教育を促進するメリットや導入の方法、実際の導入事例などをお伝えしていきます。

リカレント教育とは

一般的にリカレント教育は「社会人の学び直し」と呼ばれますが、「政府公報オンライン」では以下のように表現されています。

「リカレント教育とは、学校教育からいったん離れて社会に出た後も、それぞれの人の必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返すことです」

引用:政府公報オンライン「「学び」に遅すぎはない!社会人の学び直し「リカレント教育」」

現在、リカレント教育は厚生労働省、経済産業省、文部科学省の連携によって推進されており、企業においても労働者の学び直しを促進する環境整備が求められています。

企業にとっても急速に進む技術革新によって社員のスキルアップが不可欠になっており、優秀な人材確保を目指すうえでもリカレント教育推進のメリットは大きいといえます。

生涯学習との違い

リカレント教育と生涯学習は同義として扱われることがありますが、厳密には違いがあります。まず、文部科学白書では、生涯学習を以下のように表現しています。

「生涯学習とは、一般には人々が生涯に行うあらゆる学習、すなわち、学校教育、家庭教育、社会教育、文化活動、スポーツ活動、レクリエーション活動、ボランティア活動、企業内教育、趣味など様々な場や機会において行う学習の意味で用いられます」

引用:文部科学省「平成30年度文部科学白書 第3章 生涯学習社会の実現」

この定義からもわかるように、生涯学習は対象を限定しておらず、学習内容も文化活動やスポーツ、ボランティアなど、日々の生活を豊かにするあらゆる事柄が対象となっています。

対してリカレント教育は、社会人が就業上で必要なスキルを取得することに重点が置かれています。

リスキリングとの違い

リカレント教育とリスキリングの違いは、リカレント教育が「個人」を主体とするものであるのに対し、リスキリングは「企業主導」で経営戦略の実現のために実施されるという点で区別されることが多いようです。

しかし、企業主導のリスキリングといっても社員に対して強制するものではなく、学習は個人の自発性に任せられています。対してリカレント教育も企業が推進する場合は、生産性の向上や競争力の強化などが目的となります。現状、両者の境界は曖昧になっているといえるでしょう。

どちらかというと、リカレント教育とリスキリングは「学習の内容」によって区別するほうが明快でしょう。経済産業省では、リスキリングを以下のように定義しています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

引用:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」

リスキリングは、今後大きく変化する職務に対応するためにスキル・知識の獲得を目指す取り組みであり、IT・デジタル分野に主眼が置かれることが多くなっています。

対してリカレント教育は、教育内容を限定していません。実際、経済産業省がリカレント教育について公表している調査によれば「企業が従業員に求める知識・スキル」の上位はデジタル分野を押さえて、マネジメント(94.6%)、ソフトスキル(92.4%)に回答が集まっています。

参考:三菱総合研究所・経済産業省「令和3年度産業経済研究委託事業(「イノベーション創出」のためのリカレント教育に関する調査」

企業がリカレント教育を促進するメリット

企業が社員のリカレント教育を促進することにより、どのようなメリットが得られるのか解説します。

優秀な人材の育成・確保

企業がリカレント教育を促進する最大のメリットは、高い専門性を持つ優秀な人材の育成と確保でしょう。

AIやIoTによる技術革新を受けて、ビジネスの世界でも目まぐるしく新しいスキルが求められ、各業務の専門性も高まっています。そのため、従来の研修制度ではスキルのアップデートが追いつかなくなっているのが、多くの企業の現状ではないでしょうか。

高度なスキル・経験を持つ人材を確保しようとしても、なかなか新規採用はできません。ハイクラス人材は採用市場でも希少である上、「売り手市場」によって採用競争が激化しているからです。

こうした背景から、社員をリカレント教育によって育成し、経営戦略上で必要となる人材を社内で生み出す動きが活発化しているのです。

生産性向上・競争力の強化

「優秀な人材の育成・確保」に連なるメリットとして、企業全体での生産性向上と競争力の強化が挙げられます。

リカレント教育を通じて社員が専門的知識や最新スキルを身につけることで、自社のサービス・製品がアップデートされ、競争力の維持・強化へとつながることが期待されます。

また、社員それぞれの能率が向上することでも、企業全体での生産性向上につながるでしょう。働き方改革によって一人あたりの労働時間が減少する現状、社員の生産性を向上させる意義は大きいといえます。

ブランディング効果と採用力向上

リカレント教育の促進によって人材育成に力を入れていることを示せば、企業としてのブランディング効果が期待されます。

実際、リクルートが大学生(新卒)を対象に行なった調査でも、「就職先を確定する際に決め手となった項目」として、「自らの成長が期待できる」がここ数年トップとなっています。

参考:就職みらい研究所(株式会社リクルート)「就職プロセス調査(2023年卒)「2022年12月1日時点 内定状況」」

リカレント教育によって社内の人材を育てることは、結果的に採用力・定着率の向上にもつながることが期待されるのです。

企業がリカレント教育を促進する際に必要なこと

実際に企業がリカレント教育を促進する場合、どのような準備や取り組みが必要になるのか解説していきます。

就業規則の整備

企業がリカレント教育を促進するためには、まず働き方にまつわる就業規則の整備が必要となります。具体的には、時短勤務や休職制度などの導入が挙げられます。

欧米のリカレント教育は、仕事を休職するなどしてフルタイムで勉強に集中する取り組みですが、日本では長期休暇の取得が全く浸透していません。厚生労働省の調査によれば、教育訓練休暇の導入率はわずか4%にとどまっています。

参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」

日本の現状を鑑みれば、時短勤務制度などで働きながらリカレント教育を行うのが落としどころとなるでしょう。自社の状況や目的に合わせて、リカレント教育を実現できる環境を整えていきましょう。

金銭的な援助

リカレント教育を促進するためには時間を捻出するだけでなく、金銭的な援助を行うことも重要です。

金額は資格や内容にもよりますが、やはり講座・研修の受講には決して少なくない費用が必要となります。こうした負担を社員に押し付けてリカレント教育を促しても、当然二の足を踏んでしまいます。

なお、金銭的な援助については、厚生労働省の「人材開発支援助成金制度」のような補助金もあるため、必ずしも企業が全額を負担するわけではありません。

企業内研修制度の刷新

企業内の研修・人材育成制度を刷新して、リカレント教育を研修制度として組み込むことも方法のひとつです。

例えば、外部企業が提供する学習サービスを導入して、eラーニングで自由に受講できる仕組みを整えるといった方法が考えられます。推奨する講座などをキャリアパスとして示せば、よりリカレント教育が活発化するでしょう。

企業によるリカレント教育の導入事例

ここからは、各企業が実際に導入しているリカレント教育の事例と具体的な施策をご紹介します。

三菱地所株式会社

三菱地所株式会社では、以下のような研修・育成制度を導入しています。

・業務に直結するDX研修

三菱地所株式会社ではDX推進の一環として、デジタルマーケティング研修を実施しています。対象となるのは日々の業務からデジタルと関連の深い社員で、デジタルマーケティングの考え方や活用について学んでいきます。また、実施した講義は録画して全社に公開し、全社員を対象として展開する予定となっているそうです。

・グローバル人財の育成

三菱地所株式会社では「グローバル人財」の育成を目的に語学力向上支援制度を整えており、外部スクールでの語学学習を支援しています。また、語学力の向上・異文化理解を目的とする「海外語学研修」なども行っています。

株式会社メルカリ

株式会社メルカリは研究開発組織「メルカリR4D」を運営しており、多くの博士取得者が勤務しています。また、他部署でも博士が活躍することを期待し、博士課程進学の学費支援や業務時間調整を行う「mercari R4D PhD Support Program」も導入されています。

具体的な支援内容は、博士課程進学時の年間200万円までの学費支援や、研究と両立可能な業務時間を選択できるなど、非常に手厚いものになっています。

まとめ

急速な技術革新や人材の流動化、価値観の多様化などを背景にして、企業にもリカレント教育を促進するための環境整備が求められています。

とくに企業側には、時短勤務や休職制度といった就業規則の整備、金銭的な援助、研修制度の刷新などの対応が必要となります。こうした対応は企業側にも優秀な人材の確保や生産性・競争力の向上などのメリットをもたらすため、積極的に推進していきましょう。

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