AI人材とは、AIに関連する技術(機械学習やデータ解析など)について知識・スキルを持ち、AIを広くビジネスシーンで活用できる人です。
人手不足などを背景にAI人材への関心が高まる一方、日本は諸外国と比べてAIの利活用が遅れており、AI人材不足が指摘されています。
今回はAI人材について、人材不足の現状や仕事の種類(職種)、育成のポイント・注意点などを解説していきます。
AI人材とは
AI人材とは、AIに関連する技術(機械学習やデータ解析など)について知識・スキルを持ち、AIを広くビジネスシーンで活用できる人のことです。
AIは爆発的な勢いで進化を続けており、あっという間に私たちの身の回りにも浸透しました。企業においてはAI事業の創出のみならず、深刻な人手不足への対応策として、AI人材への関心を高めています。
AI人材不足の現状
AIの進歩と普及の一方で、日本はAI活用において諸外国と比較して大きく遅れをとっています。総務省「令和5年版情報通信白書」によれば、生成AIを利用した経験がある人の割合は9.1%にとどまっており、これは中国(56.3%)やアメリカ(46.3%)、イギリス(39.8%)などと比較しても大きく差をつけられています。
参考:総務省「令和5年版情報通信白書」
個人の使用経験がこれだけ低いわけですから、当然ながら企業もAI人材の充足について課題を感じています。「日本の人事部 人事白書2024」によれば、AI人材の充足状況について「足りていない」が59.6%と最も多い回答となっています。
さらに従業員規模別に見ると、企業規模が大きくなるほどAI人材の不足を感じており、「5001名以上」の企業では69.0%が「足りていない」と回答しています。
参考:株式会社HRビジョン「日本の人事部 人事白書2024」
AI人材の種類・職種
近年注目されるようになったAI人材ではありますが、すでに様々な職種が誕生し、細分化が進んでいます。ここでは、企業のなかで活躍することが多い代表的な職種をご紹介します。
なお、AIにまつわる職種は境界が曖昧であり呼び方も様々なので、ここでご紹介するのはほんの一例となります。
AIエンジニア
AIエンジニアとは、ディープラーニングなどの手法によってアルゴリズムを考えて、システムとして構築していくエンジニアのことです。ざっくりと言えば、AIを活用したツールやアプリケーションを開発する人です。
AIエンジニアに明確な定義があるわけではないので、クライアントからの要件を聞き取ったうえで開発設計を行うなど、包括的なビジネススキルが求められることもあります。また、後述するデータサイエンティストを広義のAIエンジニアに含める場合もあります。
AIプランナー
AIプランナーとは、AIを活用したサービス・製品を企画したり、課題に対するAI導入の有効性を確認したりする人材のことです。
直接的にAI開発の実務に携わるわけではありませんが、最新のAI技術に精通し、AIで出来ることとビジネス上の価値の創造を合わせて判断できる能力が求められます。また、場合によってはAIエンジニアとクライアントのあいだを取り持つなど、コミュニケーション能力が重要になる職種でもあります。
データサイエンティスト(データアナリスト)
データサイエンティストとは、データサイエンティスト協会によれば「高度に情報化された社会において、日々複雑化及び増大化(ビッグデータ化)するデータを、利用者の利用目的に応じて情報を収集・分析する技術を有し、ビジネスにおいて実行可能な情報を作ることができる者」と定義されています。一言で表すなら、データを活用してビジネス上の価値を生み出す人です。
引用:一般社団法人データサイエンティスト協会「定款」
データサイエンティストの仕事とAIは密接に関わっており、とくに膨大なデータを処理・分析する際にはAIの力が欠かせません。予測モデルの構築やソリューションの創出など、具体的なアウトプットを行う際にもAIは役立ちます。
データサイエンティストが担う業務のほとんどAIが関連することからも、代表的なAI人材と呼ぶことができるでしょう。
プロンプトデザイナー
プロンプトデザイナーは、生成AIを有効活用するために、最適化された指示(プロンプト)を入力する人材のことです。
画像生成やチャットポットへの質問を経験した人なら、一度は「イメージしたとおりの結果にならない」という体験をしているはずです。現状ではプロンプトを作成するにもスキルが必要であり、AIの癖や特徴に関する造詣も求められます。いわば、AIを最大限活用するための職種といえるでしょう。
AI人材育成の3つのポイント
AI人材は生まれたばかりの職種であるため、育成ノウハウは確立しきっていません。ここでは育成のポイントである「AI活用のゴールを明確にする」「外部研修を活用する」「自己啓発(SD)を推進・補助する」について解説します。
AI活用のゴールを明確にする
AI人材を育成するにあたって最初に行うべきなのが、AI活用のゴールを明確にすることです。AIを導入すれば、社内のあらゆる課題を解決してくれるわけではありません。
業務内容によってはAI活用の効果が薄い場合もあるため、事前に自社の目的とAIの相性を把握しておく必要があります。
また前述の通り、AI人材といっても様々な種類があるため、自社の目的と職種ごとの特徴を合致させることも大切です。例えば、ビッグデータ分析と戦略策定を目的としているのに、「AI人材だから」と開発を得意とするエンジニアを採用してもミスマッチが生じてしまいます。
まずは以下のポイントを整理し、AI人材の育成によって何を成し遂げたいのか明確にしましょう。
・目標や課題に対し、AIの活用は効果的なのか
・AI人材のなかでどの職種が必要となるのか
・一過性ではなく、AI人材が継続的に担当する業務はあるのか
外部研修を活用する
AIの知見を持つ会社のほうが珍しい現状では、AI人材の育成に外部研修は欠かせません。
外部研修を選定するにあたって重要になるのは、実際のビジネスシーンを想定したロールプレイングです。AIにまつわる基礎的な知識ももちろん重要ですが、一般のビジネスパーソンにとっては耳慣れない用語も多いため、座学だけではなかなか頭に入ってきません。
実際に手を動かして、知識とスキルを連動させることが外部研修成功のポイントとなります。インプットだけでなく、アウトプットの方法を学ぶことがAI人材育成の鍵といえるでしょう。
自己啓発(SD)を推進・補助する
AIの活用にはあらゆる世代が関心を持っており、自発的にAI活用の勉強を進めるビジネスパーソンも少なくありません。
実際、前述の「令和5年版情報通信白書」によれば、個人の利用経験の低さに反して、今後の利用については6~7割の人が「ぜひ利用してみたい」「条件によっては利用を検討する」と回答しています。企業側は、こうした社員の学習意欲をサポートする仕組みを整備し、AI人材の育成につなげていくべきでしょう。
セミナーへの参加費用やeラーニング受講費用といった金銭面の補助を行うだけでなく、人事評価への加点や就業時間内での学習の許可など、全面的な後押しをすることが大切です。
AI人材を育成する際の注意点
最後に、AI人材を育成する際の注意点をお伝えします。
短期的な成果を求めない
既存の社員をAI人材として育成する場合、短期的な成果はほぼ得られません。AI人材として活躍するためには、統計学や機械学習に関する知識や、プログラミングスキルなど、高度かつ専門的な能力が求められるからです。
とくに基礎的な知識もない社員に、いきなりAIエンジニアやデータサイエンティストとしての役割を担わせるのは無理があります。AI活用による短期的な成果を求めるのであれば、採用活動に注力することも検討すべきでしょう。
本当にAI人材が必要なのかを確認する
漠然とAI人材を求めている企業の目的を掘り下げていくと、特定のAIの専門家を育成する必要はなく、一部の社員が生成AIの活用方法を学ぶだけで事足りるというケースも少なくありません。
業務の効率化やデータ活用といった目的に対し、「高度なスキルを持つAI人材が本当に必要なのか」「AI人材の育成・採用を行うのであればどの程度のレベルを求めるのか」などを掘り下げて検討することが大切です。
AIの活用を目指すなら数字やデータに慣れる必要がある
「AIの専門家と言わずとも、AIを活用できる人材を増やしたい」と考える企業は多いと思います。ただ、AIやITに馴染みの薄い社員に対して、いきなりAI活用の研修を実施してもあまり効果は得られません。実際の業務にAIを結びつける「習慣」がないからです。
例えば、社内に蓄積された営業データや人事データなどをAIに処理させるとします。ここで重要になるのは、どのような目的を持ってデータの処理を行うかです。つまり、AIを活用するにしても、人間が「AIに◯◯をさせたい」「AIに△△を解決させたい」といったデータ処理の方向性を指示する必要があるわけです。
また現状では、出力されたデータや情報が正しいかは、人の目で判断する必要があります。極端な例を挙げるなら、AIから「1+1は2」という情報が出力されたときに、チェックする側の人間が「この計算は正しい」と判断できるだけの知識が求められるわけです。
このように、AIを活用したデータ処理・分析を行うにもデータを活用するテクニックが求められるわけですが、数字やデータに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは少なくありません。AIを活用する際にデータへの苦手意識を持っていては、AIのポテンシャルを引き出すことはできません。ですからAI活用の文化を社内に浸透させたいのであれば、まずは社員に数字やデータに慣れてもらう必要があるわけです。
そこでご活用いただきたいのが、弊社オルデナール・コンサルティングが取り組む「数字に苦手意識を持つ普通の人」に向けた教育――「ビジネス数学研修」です。
弊社の研修では、数字やデータの扱い方を「入門編」から「実践編」の4段階で学んでいき、受講者のレベルに合わせてデータリテラシーを育んでいきます。 実際のビジネスシーンを想定して、実務で活きる数字・データの活用方法を学んでいきますので、どのような場面でAIが活きてくるかもイメージしやすくなるでしょう。
「社内にデータ活用のノウハウがない」「日々の業務にAIを取り入れられる人材を増やしたい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修をご検討ください。
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