キャリア自律とは 支援によるメリット・デメリットを解説
キャリア自律とは、主体的に仕事や学習に取り組み、時代や環境の変化に合わせてキャリアを構築していくことです。
「改正職業能力開発促進法」の施行や日本型雇用制度の見直しなどを背景として、企業側にも従業員に対するキャリア支援が求められており、「生産性の向上」「定着率・採用力の向上」「企業価値の向上」といったメリットが得られます。
今回は、企業がキャリア自律を促すメリットや、取り組みによって直面するデメリット、支援の方法・ポイントなどについて解説していきます。
キャリア自律とは
キャリア自律とは、主体的に仕事や学習に取り組み、時代や環境の変化に合わせてキャリアを構築していくことです。
終身雇用や年功序列といった「日本型雇用制度」の見直しによって、ジョブ型雇用や多様な働き方が広まり、いま企業・働き手ともに自律的なキャリア形成への対応が求められています。
また、「人生100年時代」と形容されるように就労が長期化する一方、テクノロジーの目まぐるしい進歩によって数年先には現在のキャリアが通用しなくなる可能性があることも無視できません。こうした環境変化を背景として、主体的にキャリアを切り開く姿勢が不可欠となっているのです。

企業が社員のキャリア自律を促すメリット
パーソル総合研究所が実施した調査によれば、キャリア自律度が高い人はキャリア自律度が低い人と比べて、「個人パフォーマンス」「ワーク・エンゲイジメント」「学習意欲」「仕事充実感」「人生満足度」が総じて1.20倍前後高いことが明らかになっています。
参考:株式会社パーソル総合研究所「従業員のキャリア自律に関する定量調査」
こうした人材が増えることにより、企業側にも「生産性の向上」「定着率・採用力の向上」「企業価値の向上」といったメリットが期待されます。それぞれ解説していきましょう。
生産性の向上
キャリア自律を通じて社員それぞれのパフォーマンスやエンゲージメントが向上することで、組織全体の生産性が向上します。目標や理想とする働き方が明確になれば、目の前の業務にも意義を感じやすくなり、主体的に仕事へ取り組むようになるからです。そうなれば自然と学習意欲も高まり、スキルの向上によって業務効率も上がっていくでしょう。
定着率・採用力の向上
キャリア自律を通じて仕事に対する充実感や人生の満足度が高まることによって、定着率の向上、ひいては採用力の向上につながります。
「キャリア自律を促すと人材の流出につながるのでは」と危惧する声がありますが、社員が「自分が思い描くキャリアを歩めている」と会社に対して充実感や満足感を感じていれば、離職することはありません。
むしろ、キャリア自律を通して従業員満足度が高まることで対外的なアピール材料となり、採用力の向上が期待されるのです。
企業価値の向上
キャリア自律支援は人的資本経営の実現に直結する取り組みであり、企業価値の向上へとつながります。
すでに「有価証券報告書の提出義務がある企業」については人的資本の情報開示が義務づけられており、世界的に見てもESG投資の潮流が広まっています。企業として社員のキャリア自律を促すことは、ステークホルダーからの評価を高める意味でも重要な取り組みとなるわけです。

キャリア自律によって直面するデメリット・課題
企業がキャリア自律を促すことによって、「離職リスク」「体制や評価制度の整備」「キャリア自律できない人がいる」といったデメリットや課題に直面する恐れがあります。それぞれ解説していきましょう。
離職リスク
キャリア自律を促すことで様々な刺激に接する機会が増え、帰属意識が低下し、離職リスクにつながるという指摘があります。
キャリア自律はひとつの会社でのキャリア形成にとどまらず、主体的に時代に合わせたキャリアを構築していくという考え方なので、「別の仕事(場所)でキャリアを形成していきたい」と感じれば、起業や転職などを選択する人材も増えてくるでしょう。
ただ、この点については調査・研究が進んでいる最中であり、キャリア自律を促すことで、現職への満足度が向上することも示されています。現職に就いたまま、副業や社会貢献などの活動を行う「パラレルキャリア」を形成できるのであれば、わざわざ現在の仕事を辞める必要はないと考えられるからです。
社内体制や評価制度の整備
社員にキャリア自律を促すためには、社内の体制や評価制度の整備が欠かせません。とくに人員配置については、社員の適性を把握し、それぞれの希望を叶えられるような柔軟性が求められます。具体的には、タレントマネジメントや社内公募制度といった、社員の希望や資質が尊重されるような仕組みを用意する必要があるでしょう。
社内体制や評価制度の変革は、企業によっては大きな負担・課題となるでしょう。
キャリア自律に適応できない人もいる
どれだけ企業側が体制を整えても、キャリア自律に適応できない人がいることは念頭に置いておくべきでしょう。趣味や家庭に重きを置き、キャリア形成に時間や労力を割きたくないという人もいるからです。
研修や1on1を通じてキャリア自律の重要性を説きつつも、上昇志向が低い人材がやりがいを感じられるようなキャリアパスを用意することも大切です。

キャリア自律支援の方法とポイント
社員のキャリア自律を支援するといっても、具体的にどのような取り組みが必要なのかイメージしにくいと思います。ここでは、キャリア自律を支援する方法とそのポイントについて解説していきます。
セルフ・キャリアドックの導入
まず、キャリア自律を促すために取り入れるべきなのが、セルフ・キャリアドックです。
セルフ・キャリアドックとは、人材育成の方針に合わせてキャリアコンサルティング面談やキャリア研修を実施し、社員の主体的なキャリア形成を支援する取り組みの総称です。2016年に施行された「改正職業能力開発促進法」でも、企業に対してセルフ・キャリアドックの努力義務が設けられています。
セルフ・キャリアドックの概要や導入方法については、厚生労働省が発行する「『セルフ・キャリアドック』導入の方針と展開」などを参考にするとよいでしょう。
管理職を「良き相談相手」にする
キャリア自律を促すためには、管理職クラスを「良き相談相手」にすることが欠かせません。
各種調査においても、キャリアについて相談する対象として必ず「上司」が候補に挙がります。管理職クラスがキャリア自律の考え方に対応できていないようでは、相談相手を担えないだけでなく、「この会社では理想のキャリア形成は望めない」と社員から見限られてしまう恐れもあります。
人事部のみならず、管理職クラスもキャリア形成を支援するためのスキルを取得することが理想となるでしょう。
学習支援に関する制度を整える
キャリア自律を促すためには、社員の学習を支援するための制度が必要となります。外部研修やeラーニングの導入、自己啓発(SD)の支援など、ステップアップに必要なスキル・知識を取得できる環境作りが求められます。
「時間がない、お金がない」といった障壁を取り除くことで、より多くの社員が自発的なキャリア形成に踏み出せるようになるでしょう。
人員配置の仕組みを見直す
社員が異なる職務に挑戦できるよう、人員配置の仕組みを見直すことも大切です。例えば、社内公募制度や社内FA制度を導入することで、離職することなく新たなキャリア形成に挑戦できるようになります。
企業側にとっても通常の異動よりもモチベーションの高い状態で人員の再配置が実現し、離職リスクを下げることにもつながります。
副業の解禁や社会貢献活動の推進
実感が伴うキャリア自律のためには、副業の解禁や社会貢献活動の推進などによって、社員が新たな刺激を得られる環境作りが求められます。とくに自律型人材としての活躍を期待するのであれば、異なる環境で主体的に活動する機会を経験させることが何よりも効果的です。
とくに副業は業務への悪影響や離職リスクを懸念されがちですが、スキルアップや人脈の広がりなど、会社に還元されるメリットも少なくありません。むしろ副業に対してネガティブな体制でいることで「キャリア自律が阻害される」と感じ、逆に離職につながってしまう可能性もあります。

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