ヒューリスティックとは 種類やバイアスとの違いを解説

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ヒューリスティックとは、経験則や先入観を頼りにある程度正しい回答を導き出す、情報処理の方法です。代表性ヒューリスティックや利用可能性ヒューリスティックなどの種類があり、無意識のうちに日常の様々な場面で表れています。

今回は、ヒューリスティックの概要を踏まえたうえで、バイアスとの違いやヒューリスティックの種類などについて解説していきます。

ヒューリスティックとは

ヒューリスティック(Heuristic)とは、経験則や先入観を頼りにある程度正しい回答を導き出す、情報処理の方法のことです。行動経済学や心理学においては、「意志決定の際に完璧な分析を行わず、簡略化した思考によって判断を下すこと」といった意味で用いられます。

ヒューリスティックは、脳への負荷を減らすために無意識的に行われています。脳は難しい問題の解決や複雑な動作に向き合うほどエネルギーを消費するので、通常はできるだけ省エネで済ませられるように、簡略化したプロセスの情報処理であるヒューリスティックを行なっているのです。

ヒューリスティックとバイアスの違い

ヒューリスティックに深く関わる言葉として、バイアスが挙げられます。バイアスも「先入観」という意味で用いられることが多く、ほぼ同じ意味合いで扱われることも少なくありません。

ただ、ヒューリスティックは「脳の情報処理の方法」を指す言葉であり、バイアスはヒューリスティックの結果として生じる偏りや偏見などを指す言葉となります。つまり、ヒューリスティックによる意志決定には、少なからずバイアスが生じるという関係性になるわけです。

なお、バイアスについては「ビジネスにおけるバイアスの種類とその対策」で詳しく解説しています。

関連記事:「ビジネスにおけるバイアスの種類とその対策」

ヒューリスティックの種類

ヒューリスティックにはいくつかの種類があり、日常の様々な場面で表れます。ここでは、代表的なヒューリスティックについて解説していきます。

代表性ヒューリスティック

代表性ヒューリスティックとは、もっともらしさや特徴的な事柄から無意識に下す判断のことです。

例えば、セルフレジの前で戸惑っているお年寄りを見かけて、「操作がわからないのだろう」と感じたら、それは代表性ヒューリスティックです。実際にその可能性は高いでしょうが、老眼鏡を忘れてよく見えていないだけかもしれません。

利用可能性ヒューリスティック

利用可能性ヒューリスティックとは、接触しやすい情報や慣れ親しんだ経験をもとに下す判断のことです。想起ヒューリスティックと呼ばれることもあります。

例えば、「有名口コミサイトの星の数でお店の良し悪しを判断する」「新しい電化製品を買うときに、使い慣れたメーカーの製品を選ぶ」などが利用可能性ヒューリスティックにあたります。

固着性ヒューリスティック

固着性ヒューリスティックとは、最初に入手した情報によって、後の意志決定に影響を与えることです。「係留と調整ヒューリスティック」「アンカリング効果」と呼ばれることもあります。

例えば、セール商品の値札を作成する際、「セール特価1,000円」と表記するより、「定価2,000円より半額」と表記するほうが安さを感じやすいといった心理が固着性ヒューリスティックです。定価2,000円という情報が、後の意思決定に影響を与えているわけです。

シミュレーション・ヒューリスティック

シミュレーション・ヒューリスティックとは、自身の経験とそれに伴う先入観から、将来に起こり得る出来事の結果を推測することです。

例えば、「学生の頃から数学が苦手だったから、データを活用したプレゼンなんて上手くいくわけがない」といった考えがシミュレーション・ヒューリスティックに当たります。

なお、シミュレーション・ヒューリスティックには「昔からくじ運がいいから、今回も上手くいくだろう」といったポジティブな予測も含まれます。

感情ヒューリスティック

感情ヒューリスティックとは、好き嫌いや気分といった感情によって判断を下すことです。

例えば、「同僚Aは仕事ができるけれど、いけ好かないから一緒のシフトになりたくない」「尊敬する先輩からおすすめされたから、間違いなく良いものだと思って購入した」などが感情ヒューリスティックに当てはまります。

ビジネスにおけるヒューリスティック

ヒューリスティックは日常生活のなかで必ず生じるため、様々なビジネスシーンにも関わってきます。そのため、あらかじめ起こり得るヒューリスティックの例を知っておくことで、ミスを減らし、逆に活用することもできます。

マーケティング

多くのマーケティング理論や施策は、ヒューリスティックを前提として考えられています。例えば「固着性ヒューリスティック」で解説したとおり、セール商品の値札の書き方ひとつを取ってもヒューリスティックの作用が関わっています。

ほかにも身近なところでは、繰り返し放送されるコマーシャルにもヒューリスティックが深く関わります。何か新しく物を買う際、「よくCMを見るから、これでいいか」と無意識的に手に取ってしまうのは典型的な「利用可能性ヒューリスティック」です。

このように、マーケティング施策を考える際は、どのようなヒューリスティックに作用させるかを考えることが成功の条件となるのです。

採用活動

限られた時間内で人材の資質を見極めなければいけない採用活動では、様々なヒューリスティックが付きまといます。

例えば、書類選考で候補者の学歴を目にして「○○大の卒業生なら優秀だ」と先入観を持ってしまい、面接時の判断が歪められてしまうのは「固着性ヒューリスティック」にあたります。

ただ一方で、同じ「固着性ヒューリスティック」でも、アピールに転用することもできます。例えば、業界の水準よりも高い給与をアピールしたいとき、自社の給与額だけを提示するのではなく、業界の平均給与額のあとに自社の給与を提示することで、より魅力を感じてもらえるでしょう。

人材育成

ヒューリスティックは人材育成にも関わってきます。例えば、スランプのときには「最近、商談で連敗が続いているから、次回も失敗してしまうだろう」といった「シミュレーション・ヒューリスティック」が悪循環を招いている可能性があります。

部下がこうした先入観や思い込みに捕らわれていることがわかれば、すぐにその解消につながるようなフィードバックを与えるなどの改善策が打てるようになるでしょう。

また一方で、「今月は調子が良いから、この波に乗っていこう」といったポジティブな効果を生み出すのもシミュレーション・ヒューリスティックです。人材育成の場面では、ネガティブな先入観を打ち消し、ポジティブなヒューリスティックを抱かせることも重要になるわけです。

ヒューリスティックの活用には「ビジネス数学研修」

「固着性ヒューリスティック」で挙げた値札の例のように、ビジネスシーンにおけるヒューリスティックには「数字」が深く関わります。

例えば、同僚Aから「営業成績が先月比で50%上がったよ」と言われたら、もっともらしい良い成果と感じる人が多いと思います。しかし、他のほとんどの社員の成績が先月比で80%上がっていたとしたら、どうでしょうか。同僚Aの「先月比で50%の上昇」は相対的にあまり良い成果ではないことになります。

このように、数字自体は嘘をつきませんが、人の見方によって印象や情報の意味合いは大きく異なってきます。先入観に捕らわれないようにするためには、数字の扱い方やデータの読み解き方を学んでいくことが大切であり、弊社の「ビジネス数学研修」ではまさにこうした「数字力」の向上を目指しています。

実はビジネスパーソンのなかには数字からイメージを広げる力が弱かったり、データを見ると思考停止に陥ってしまったりと、数字への苦手意識を持つ人が多くいらっしゃいます。

弊社の研修プログラムは、数字が苦手な方でも安心してステップアップできるよう「入門編」から「実践編」の4段階をご用意しており、実際のビジネスシーンを想定したワークで実務に活きる数字力を鍛えていきます。 「ヒューリスティックを活かした効果的なマーケティングを推進したい」「数字の先入観による失敗を防ぎたい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご活用ください。

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